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刃物あそび
 
  柿を採るにはやはり道具が要る
             


 11月にもなると、葉を落としたカキノキの赤く稔った柿の実がよく目立つ。住宅の庭先や道端などではこんなにカキノキがあったかと思うほどあちこちで見られ、枝がたわむほど多くの実を付けている。いずれも持ち主がいるわけで、よけいなお世話かも知れないが、カラスにも見向きもされずに腐れ果てる実が実に多い。その一方でスーパーでは同じ柿がそれ相当の値札が付いて澄まし顔で並んでいる。何とも不思議な光景である。やはり、柿はもっと食べてあげるべきである。【2008.12】 


                 豊かに実をつけたカキノキの例 
柿色は秋空の青色に映えて眩しい。これは特に実の付きがよくて重そうである。
 柿をもっと食べてあげるためには、効率的に柿を採る道具が必要である。昔は先の割れた竹でグリグリっと捻って、枝が少々傷もうとお構いなしに採ったような気がするが、今ではいろいろ便利な道具があって、庭木剪定用の高枝はさみ高枝ハサミ高枝鋏高枝切高枝切はさみ等の表記・呼称もある。)があれば百人力である。

 高枝はさみの中でも果樹等の採取兼用のものがあり、このタイプでは切った枝付きの果実を落とさずに保持できる機能が付加されている。この切った枝に噛みつく部分を指して、メーカーによっていろいろな呼称があり、採取部つかみ金具キャッチ金具キャッチャー等の名を目にする。メーカー、製品のグレードによってもいろいろな仕様が見られる。

 そこて、手が届くところにあった製品で柿採り試験をしてみた。

高枝はさみ NO.1 メーカー不明
        
 つかみ部分はアルミで、切り刃側のみに縦ギザあり。ハンドルは回転し、ポールは固定長。
高枝はさみ NO.2 アルス  つかみ部分はアルミで、ギザなし。ハンドルは回転せず、ポールは固定長。
高枝はさみ NO.3 アルス  つかみ部分は樹脂で、横ギザあり。ハンドルは回転し、ポールは伸縮。
高枝はさみ NO.4 アルス  つかみ部分はアルミ、横ギザあり、首振り。ハンドルは回転し、ポールは伸縮。
高枝はさみ NO.5 カマキ  つかみ部分は樹脂で、横ギザ。幅はこの中で最大。ハンドルは回転し、ポールは伸縮。
 結果として少々メーカーに偏りが生じているが、ホームセンターでは上記メーカーの他に「株式会社ムサシ」(兵庫県加古川市八幡町宗佐1440-3)、「カインズ」(群馬県高崎市高関町380)が発売元のもの等が見られた。
 つかみ部分の素材はアルミ又は樹脂で、ハサミ部分の片面にビス止めされている。枝切り専用とする時はこれをはずすことができるのは共通仕様である。材質の違いによる機能的な差は見られない。耐久性はアルミが優るのはいうまでもない。
 なお、つかみ部分はいずれも2本のビスで止めてあり、剪定のみに使用する時はこれを取り外すことを勧めている。
 ポールが伸縮するか否か、さらに伸長量は価格差を伴う仕様の差であり、用途によって選択することとなる。
 上級品は先端のハサミ部分の角度を調整できる首振り機能を有する。
 グリップが使いやすい角度で回転させることができるものと固定されたタイプが見られる。もちろん、ハサミの使用角度にかかわらず好きな角度でグリップできる回転可能なものの方が使い勝手は格段によい。
 今回の試験で最も関心を持って臨んだ点は、柿の重さに耐えてこれを落とさずにしっかりと保持できるかということであった。

 柿の付いた枝を保持した状態で、前後に振動を与えてみたところ、誠に残念ながら、各製品ともに合格で、ギザギザの有無、その形態に係わらず、特段の差を見いだすことはできなかった。

 この道具があれば、実に快適に柿を採ることができる。勢いでよその家のものまで採りたくなってしまう。しかし、これはできないから、みなさん、使いやすい道具を使用してせっせと柿を採り、自分で消費できないほどであれば道端に並べて「ご自由にお召し上がり下さい」と書いておけば、空しく腐らせる量を減らせると思うのだが・・・
補足:写真で紹介した以外のタイプとしては、ハサミが交差するのではなく、切り刃を樹脂部に押しつけて切るタイプ(「アンビルタイプ」の名がある。)があって、切断能力のアップを謳っている。
アルスコーポレーション株式会社
 大阪府堺市中区八田寺町476-3
カマキ 有限会社岸本農工具製作所
 兵庫県加古川市八幡町船町114