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樹の散歩道
 
  イチョウの「おっぱい」はやはり雌木か?


 イチョウ(銀杏)の巨木で、しばしば枝から垂れ下がったように下に伸びた棍棒状の突起物を見かけることがある。これを乳根ちちね)と呼ぶそうである。
 イチョウはもちろん雌雄異株の樹木である。おっぱいということから雌木に固有のものであれば非常にわかりやすい。しかし、残念なことにこの乳根は雄木でも雌木でも大きく育ったイチョウでしばしば見られるもののようである。一方どんなに巨大なイチョウでも、ないものはないということである。
という事情から、オスのおっぱいではどうも違和感があるので、以下写真では便宜上、雄木の場合は、雌木の場合は大好きな単語の「おっぱい」と呼ぶこととする。   


 雌木のおっぱい (日比谷公園)
 
雄木の乳
(品川 稼穡(かしょく)稲荷のイチョウ) 
  雄木の乳 (日比谷公園)     雌木のおっぱい (小石川植物園)


 この乳根(ちちね)は気根であるとして普通説明されている。水湿地に生育するラクウショウ(ヌマスギ)が地表からニョキニョキと気根(膝根とも)をのばしている風景を目にすれば、これが気根で土壌が酸欠気味なので、この根で窒息を免れている・・・・という説明は理解しやすい。

 しかし、イチョウの場合は水で窒息しそうな条件にある場合はなく、これを気根といわれてもその必要性は理解しにくい。案の定、何の機能を担っているのかよくわからないそうである。身近でよく見かける風景の「なぜ」は依然として謎であるようだ。

 地域によっては乳根が見事なイチョウの巨木を「乳イチョウ(乳銀杏)」とか「垂乳根(たらちね)のイチョウ」とか呼んで、乳のでない母親たちがお参りすると、乳がよくでるとされる言い伝えがしばしば共通して確認できる。

<補説>
 
@  垂乳根(たらちね)はもちろん「母親」「親」にかかる枕詞で、これを「垂れたおっぱい」と直感的に理解しては、おっぱいに対して失礼になるようである。乳の満ち足りた意ともいわれ、正確なところはわからないようである。
   
A  乳根(ちちね)を「にゅうこん」と読むと、全く別物になって、乳頭の真下にある第五肋骨間にあるツボを指すそうである。母乳の出をよくしたり、バストアップに効果があるツボだそうな。
   
B  イチョウの雄株と雌株の見分け方については果実のギンナンや葉の形で判断できるとするなど様々な説を目にするが、定説にはなっていない。それよりも、長く生きてきた知り合いのお爺ちゃん二人が雑談する中で意見一致した内容の方が説得力がある。それは、雄の木はスラッとしてスマートな感じであるが、雌の木は枝をダラッと広げている傾向があるというのだ。(実はまだ検証していない。)
   
  【参考】
 これと同様の見解が「樹木大図説」でも紹介されていて、
 「雄株の枝は立ち、雌株の枝は開度が大で横に広く拡開する。」という説について、
 著者は「これは多少の例外はあるが大体当たっているものと思う。」としている。 
   
  【追記 2012.4】
 同様の内容が、一般向けの書籍にさりげなく記述されていた。
 「イチョウの雌株は枝が水平に、雄株は鋭角に立ち上がる傾向があるので、街路樹などを見るときの参考にしてください。(ほんとの植物観察2:地人書館 2003.5.20) 
   
C  雌の木、特にギンナンをたっぷり付けるイチョウは、お爺ちゃんやお婆ちゃんに評判がいいが、街路樹としてはその悪臭と歩道を汚すことから嫌われる。このため、街路樹には一般に雄とわかっているイチョウをさし木増殖して植栽しているという。
:古い街路樹では雄株と雌株が混在しているのがふつうである。
   
  【参考:イチョウの雄株と雌株の樹形の様子についてはこちらを参照】