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続・樹の散歩道
  フキの花を再確認


 フキ(蕗)はキク科のくせに雌雄異株とへそ曲がりで、ハンディな図鑑でさらっと読んでもシンプルな雌雄異株ではないため、何だかよくわからない。一応、雄株と雌株の基本的な認識だけは持ちたいう気持ちだけはあったため、目にしたものの写真は撮ってあった。しかし、ややこしいことに関しては目を背けていたため、詳しいことは未だに認識のないままとなっていたことから、過去に撮影した写真の範囲で、無理のない程度に既存情報の整理をしてみることにした。 【2016.2】 


 フキの外観  
 
 
 
                       フキ(アキタブキ)の葉
 フキ科フキ属の多年草。 Petasites iaponicus
 ヒガンバナこちらを参照)のように、葉が出る前に花茎が現れ花をつける。若い花茎をフキノトウと呼ぶ。アキタブキはフキの変種で、葉の茎(葉柄)が2m ほどの高さとなる。
 茎は地上に伸び出ず、地下茎を伸ばして殖える。栽培は地下茎を短く切った種根を植える。
 選抜された栽培種では、種子ができない3倍体が多いという。 
 
     
 
 アキタブキ・フキノトウ 1  アキタブキ・フキノトウ 2   アキタブキ・フキノトウ 3(雄株) 
     
  アキタブキ・雄株の花茎(花後)
 お役目を終えて、花冠が萎びて茶色になっている。 
   アキタブキ雌株の花茎
 成熟途中のそう果で、冠毛はまだ広がっていない。 
 アキタブキの冠毛をつけたそう果
 成熟そう果で、タンポポのように冠毛を広げ、飛散直前の状態である。  
 
     
 キク科植物の小花が同花受粉を防ぐためのシステムを有することは別項(こちらを参照)でツワブキをサンプルとして学習したが、フキの場合は意欲を持ってさらにこれを徹底しようとしたものなのか、雌雄異株の道を選択した経過があるようである。元々、キク科植物では種子をたくさんつくってこれを風に任せて広範に散布するずば抜けた繁殖能力を身に付けているなかで、さらなる合理性を実現しようとしてきたものと思われる。

 ただし、属性の異なる花の構成や、小花の構造に着目すると、役に立っていない部位の切り捨てがまだ徹底していないようであり、直ちには理解しにくい理由となっていて、花の呼称についても、形態的には・・・であるが機能的には・・・であると講釈されるなど、簡潔な説明を困難にしている現実が見られる。
 
 
   まずは散房状の頭花の観察である。   
     
2   フキの雄株及び雌株と呼んでいる頭花の外観    
     
   雄株の小花は筒状花で、形態的には両性花、機能的には雄花で、雌しべを有するが、棍棒状の柱頭は花粉を押し出すためにだけ存在し、子房も成熟しない。
 
 雌株の雌花は雄しべを欠き、蜜も出さない多数の雌性の筒状花(細いため糸状花とも呼ばれる。)で構成され、中心部に数個の蜜の分泌に特化した花をもつ。この花の呼称はやっかいで、形態的には一般に両性花と呼ばれるが、花粉も出さず、結実もしないことから中性花とも呼ばれる。何と呼んでも、花そのものの形態が中途半端であることに起因して、わかりにくい存在となっている。

(注)以下、雄株の両性花風の小花は雄花と呼び、雌株の雌しべだけの小花は雌花、両性花風で密だけを出す腺体のような存在の小花は密花と呼ぶ。また、以下の写真はほとんどがアキタブキであるが、便宜上フキと呼ぶ。  
 
     
 
       フキ雄株の頭花
 個々の頭花の雄花は外周部から開花する。つぼみは淡黄色であるため、一般に「雄花は黄色い」といわれる。
    フキ雄株の頭花の雄花 
 花冠は5裂。棍棒状の雌しべは受粉はせず、葯筒の花粉を押し出すのが役割で、柱頭には花粉がこんもりとついている。 
      フキ雌株の頭花 
 個々の頭花は多数の雌花と数個の蜜花(中性花)からなる。
 
     
             フキ雄株の雄花
 雌しべの柱頭の花粉はほとんど落ちている。柱頭部はまるで雁首のような形態となっている。雌しべは受粉しないので、柱頭部は2裂しない。  
        フキ雌株の雌花と蜜花(中性花)
 雌花の雌しべの柱頭は2裂している。5裂する花冠をもつ蜜花(中性花)は花粉を出さず、棍棒状の雌しべも何の役割も果たしていないが、蜜を出して昆虫を招く。柱頭部には必要もないのにキク科の筒状花で見られるような集粉毛が確認できる。
 
 
3   雄株と雌株の要素の整理表   
     
   頭の整理のために、雄株と雌株の花の要素等について表整理してみた。   
     
   (フキの雄株と雌株の要素の整理表)   
区分 雄株 雌株
花茎 10〜30cm で、花粉を出し終わると枯れる。 30〜80cm となる。冠毛をつけたそう果を遠くに飛ばすために果実の成熟過程で背丈を伸ばす。
頭花 黄白色で、小花はすべてが両性花風の筒状花である雄花からなる。頭花の周辺にはまれに不稔の雌花がつく。 白色で、小花は多数の雌性の筒状花である雌花と中心部に存在する数個の両性花風の筒状花である蜜花(中性花)により構成されている。
小花 雄花の小花の花冠は筒状で先端が5裂する。雄しべが花粉を出すが、実を結ばない(不稔)。つまり、形態的には両性花であるが、機能的には雄花 雌花は雄しべを欠き、花冠は筒状であるが、非常に細くて糸状であることから糸状花の名があり、先は斜めに切形、蜜も出さない。
数個の不稔の蜜花(中性花)は雄株の小花と同様に花冠の先端が5裂するが、胚珠は退化し、花粉は出さず、昆虫を招く蜜を出す役割を担っている。
雄しべ キク科植物でふつうに見られるように、葯が合着・筒状となった集約雄しべで、筒の内側に花粉を出す。 雌花では雄しべを欠く(退化)。
蜜花(中性花)の雄しべでは花粉ができない。
雌しべ 雌しべは葯筒の中を伸びて、花粉を押し出すのが役目で、柱頭を含む全体が棍棒状。 雌花の雌しべ柱頭は先が2裂して開く。
蜜花(中性花)の雌しべにも棍棒状の雌しべが見られるが、何も役に立っていない。
子房 発育が悪く不稔性 雌花の子房はそう果として成熟する。
蜜花(中性花)の子房の胚珠は退化。
冠毛 雄花の冠毛は不要な存在。 雌花の冠毛はそう果の冠毛として、散布の役割を果たす。
蜜花(中性花)の冠毛は不要な存在。
三倍体個体
(不稔株)
柱頭の先端に花粉がつかず、雄しべが褐色の皮膜だけの小花をつけた三倍体個体(不稔株)を見ることがある。 花が終わっても花茎が伸びず、先の方の頭花から次第に褐色化し、冠毛も開かず種子が稔らない三倍体個体(不稔株)を見ることがある。
食用としてのフキノトウ 雄株と雌株で、明らかな食味の違いがあるとする見解は目にしない。
 
 情報源:日本の野生植物、植物の世界ほか  
 
 こうして整理してみても、なおややこしい。要は、雌雄異株として、形態的に特化し切れていないことに問題がある。フキに文句を言っての仕方がないが、進化するのなら、ちゃんと進化してくれないと迷惑である。今後の努力≠期待したい。