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出来上がった木炭の樹種による違いについて考えてみれば、物理的には空隙の違いやこれにも関連した硬さの違い、さらには成分として灰分の構成、含有量の違いがあるであろうことは想像できる。しかし、こんな理屈ではなく、実用の素材として経験則でいろいろなものを比較して行き着いた知恵がみられる。
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アカマツ【マツ炭、松炭】 |
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マツ炭(主としてアカマツ炭)はコークスが現れない明治以前の銑鉄および鋼の製造に多く用いられ、また鍛冶屋炭として特別の需要があった。それはマツ炭が急速に高温に達し、また下降も早いためである。【木の大百科等】
注: |
鍛冶屋炭としての利点に関しては、火が起きやすいこと、ふいご(鞴/吹子)による火力調整が容易であることがよく掲げられている。火が起きやすいのは空隙が多く、軽い炭であるから理解できる。燃えやすい(火持ちが悪いのと同義)炭であるから、ふいごで強く空気を送り込めば直ちに強く燃焼して高温にすることができることも理解できる。なお、焼き物の窯の割り木としてもアカマツは高い温度を確保できる特性があるとして好まれているが、これは脂成分の存在(十分な空気の供給が前提)に起因するものと思われる。 |
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黒色火薬用の木炭はアカマツ炭を主に使っているが、松煙、キリ炭、クロウメモドキ炭、ハンノキ炭なども使用している。硫黄、硝石は充分に精製できるのに対して、木炭は精製ができないため、黒色火薬が一定状態で燃焼するためには、木炭の品質が極めて重要であるとされる。【岸本定吉】 |
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ハンノキ/ヤマハンノキ |
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黒色火薬には前項に掲げたとおりいろいろな樹種の炭が使用されているようであるが、特にハンノキの炭は炭質が火薬に適しているといわれる。 |
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大東亜戦争中に、特に高い性能を求められた高射砲弾の導火薬の研究が行われて、当時研究の進んでいたフランスがセイヨウクロウメモドキの木炭を使っていたのを参考とし、この代用としてヤマハンノキ材を320〜350度で焼くことによって目指す品質に到達したが、これは終戦の直前であったという。【岸本定吉】
注: |
結局のところB29による一般市民を対象とした無法な大量殺戮を阻止できなかったことは誠に無念なことであった。 |
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3 |
キリ【桐炭】 |
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桐炭は粒子が細かいので、絵画用木炭、眉炭(まゆずみ)、火薬合剤などに使われる。【木の大百科】 |
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ホオノキ【朴炭】 |
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ホオノキの木炭は均質なので金、銀、銅、漆器などを磨くのに用いられ、特に印刷用銅板研磨にアブラギリ炭とともに必要なものとされている。これは白炭に近い作り方で製炭されたものを使う。また、昔は眉墨に使われた。【木の大百科】
注1: |
研磨用に利用される炭のことを研磨炭、研ぎ炭(とぎずみ)と呼んでいる。 |
注2: |
研炭としては、ホオノキやアブラギリのほかにチシャノキ(エゴノキ)、アセビ、ツバキ、サルスベリなども使用されている。【炭活用研究会】 |
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5 |
クヌギ【櫟炭】 |
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茶の湯で茶釜を使って湯をわかすのには、古くからクヌギの若木の炭が利用されてきた。 |
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菊炭とも呼ばれてその姿が美しいことはもとより、着火性のよさ、火力の強さ、火持ちの良さが知られている。茶の湯にあっては単に燃材であることを超えて、茶席の重要な演出となっている。 |
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昔から有名であったのは、東の佐倉炭、西の池田炭である。 |
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アブラギリ【駿河炭/静岡炭】 |
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アブラギリの木炭は駿河炭または静岡炭と称して漆器、印刷用銅版の研磨用に特用される。【木の大百科】
注1: |
駿河炭、静岡炭の名は静岡県が発祥の地であることによるとされるが、現在では静岡県ではまったく生産されておらず、現在生産しているのは福井県名田庄村の生産者のみとされる。なお、同村では朴炭、ろいろ炭、椿炭等も生産されている。 |
注2: |
アブラギリを「ニホンアブラギリ」と記している例が見られるが、日本にあるものが自生であるかは確認されていない。 |
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その他 |
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画用木炭:
デッサン用の木炭で小枝の皮を剥いだもの又は木の幹を小割りにしたものを素材に炭化したもの。専門メーカーがあり、製品の例としては、ヤナギ炭、クワ炭、ハン炭、カバ炭、クリ炭、トチ炭、シナ炭、ウコギ炭、ホオ炭、ミズキ炭の名が見られる。それぞれ硬軟、濃淡、色合い等の特性があって、選択されている。 |
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以上に掲げたような多様な事例が見られるところであるが、木材の使い分けと同様にこうして炭まで見事に使い分けているのは、まさに長い間に得られた知恵の結晶である。樹種によるこうした炭質の違いに関しては科学的な講釈は少ない。 |
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