木の雑記帳
緑檀とは何か
新聞広告に七福神を精緻に彫り上げた木彫作品が掲載されていた。その素材名を「緑檀」としていた。さて、緑檀とは聞いたことがない樹種名である。紫檀、黒檀、白檀までは知名度は高く、昔から貴重材として誰でもが知っている。しかし、いきなり緑檀といってもさっぱりわからない。木材で「緑」となると、ひょっとして・・・・・と感じるものはあるのだが・・・ 【2009.4】 |
新聞広告 2009.3(部分) | ||||||||||||||||||||
説明を読み進めると、ふんだんにヒントがちりばめられていた。そのキーワードは以下のとおりである。 | ||||||||||||||||||||
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これだけあれば絞り込むには十分すぎるほどである。間違いなく中米から南米北部に分布するハマビシ科ユソウボク属のリグナムバイタ(Lignum-vitae)Guaiacum officinale (写真)あるいは、同名で流通する同属他種、近縁種であろう。 「であろう」というのは、これらのうち、どれだけの種が輸入されているのかわからないのと、見たところで同定する自信などないからである。 |
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この思いっ切り硬くて加工困難な木材をここまで細かく仕上げていることには感心する。前からこの材の端材が販売されていることや、数珠に加工されたりしている例は承知していたが、こうした彫刻作品が存在することは初めて知った。 商品素材のネーミングとしての「緑檀」は知名度が低いが、「リグナムバイタ」ではお年寄りには親しみにくいし、かつての梅毒特効薬の名残の「癒瘡木(ゆそうぼく)」の名前では印象がよくない。これらに比べて「檀」の字の効果は絶大で、一気に高貴な雰囲気が漂ってしまう。なかなか商売が上手である。 なお、緑檀の名は、いつ頃から使われているのかはわからないが、数珠(念珠)の素材の名称としては使用されてきたようである。 |
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【追記 2011.1】 大阪で木材を取り扱っている方から、「緑檀」は「パロサント」ではないだろうかとの情報をいただいた。 異国の木材について断片的な情報に接するものの、生きた樹木を見ることができない。この名前も初めて聞くものであった。そこで、少々調べた結果の概略を以下に記すこととしたい。 パロサント Palo santo は、スペイン語で「聖なる木材」(英語で holy wood)の意で、スペイン語圏での呼称対象の差まではわからないが、以下のものを指すとする例が見られる。
「熱帯の有用樹種」(農林省熱帯農業研究センター)によれば、パロサントは上記②の Bulnesia sarmientoi の材につけられたアルゼンチン及びパラグアイでの名称で、アルゼンチンではこのほかに Retama , Retamo とも呼ばれており、輸入国アメリカでは Palo balsamo と呼ばれているとしている。 以下に同書での本樹種に関する記述の要点をまとめてみる。
類似する木材がいろいろあるようで、流通段階でどのように区別しているのか、人がどこまで識別できるのか、実態はさっぱりわからない。 |
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【追記 2021.2】 兵庫県で特殊木材を輸入している会社の方から、「緑壇の名前は、もともと中国人がリグナムバイタに対して名付けた名前である。」との見解を伺った。 そこで、中国語サイト「科普中国・科学百科」で見ると、「绿檀(緑檀)」またの名「百乐圣檀(百楽聖檀)」は材の色にちなんだ木の名前で、科学名は愈疮木(癒瘡木 Guaiacum guatemalense)及び神圣愈疮木(神聖癒瘡木 Guaiacum sanctum)であるとしていた。 癒瘡木(ユソウボク)の名はリグナムバイタの名とともに日本では普通に使われている呼称であるが、元祖がどちらなのかはさっぱりわからない。。 なお、ユソウボク属の種名はややこしいが、前出のGuaiacum guatemalense は Guaiacum sanctum のシノニムであるとする見解がある。(The Plant List) |
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