特に針葉樹で顕著に見られる年輪について、細かいことはともかく、その由来について多くの人は概略のことは承知していることである。
例えばスギの材の横断面(木口面)を思い浮かべれば、同心円状に濃色の堅い部分と、淡色の軟らかい部分で構成されているのが年輪である。
前者は生長期の始めに形成された部分で、後者は生長期の後半に形成された部分である。しかし、これらを指す用語は以下のとおり3セットある。
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1 |
春材(しゅんざい:spring wood)と秋材(しゅうざい、autumn wood 又は fall wood |
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春材と夏材(かざい、summer wood ) |
3 |
早材(そうざい)early wood と晩材(ばんざい)late wood
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これらの個々の語はいずれも文部科学省主導で編纂した学術用語集に並列的に掲載(認知)されているところである。しかし、用語の不統一について何かと不便を感じたのは日本に限ったものではなく、国際木材解剖学者連合では用語を統一すべく、1957年に「国際木材解剖用語集」を制定・公表している。国内ではこの機会を捉えて、日本木材学会が学会員の意見を採り入れながらこの用語集の邦語訳を1964年8月に決定している。訳文は木材学会誌10巻4号に全文が掲載され、当該学会員その他の学会員に対して用語の統一的使用を呼びかけている。
今回採り上げた語に係る日本語訳は以下のとおりである。
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早材 |
Early wood(同義 Spring wood) |
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一生長輪の中で密度が低く、細胞が大きく生長期の始めに形成された部分。
訳注:同義 春材 |
晩材 |
Late wood(同義 Summer wood、Autumn wood(不賛)) |
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一生長輪の中で密度が高く細胞が小さく、生長期の後半に形成された部分。
訳注:同義 夏材、秋材 |
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なお、訳文中、「秋材(Autumn wood)」に「(不賛)」の語が付されているが、これは原文を訳出してはいるものの、樹木の生理上は秋には生長は既に止まっているのがふつうで、「秋材」の語は実態にそぐわないため、使用には賛成しかねるとの意味である。しかしながら、一般的な用語としてはこれに関わりなくまだまだ健在で、優先的に使用されている用語の実態は依然としてバラバラである。
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では、改めて「早材」と「晩材」は細胞の大きさが違うだけなのだろうか。これについては、年輪が明瞭な針葉樹を例にすると、樹種によって細胞の直径が変動する場合(イヌマキなど)と細胞壁の厚さが変動する場合(スギなど)、さらにはこれらの中間的な場合(ヒノキなど)に区分されるという。 |
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