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 木の雑記帳
 
 下駄がなくても下駄箱?  昔の名残いろいろ  


 古くても新幹線、動いても不動産とか、日常の言葉には矛盾に満ちたおもしろい世界があるが、かつて木や竹が主役であったある日用品が、時代の変化の中で名前だけが取り残されて、昔の素材の名残を今にとどめている例が多くある。また、木偏の字や竹かんむりの字も同様である。これから先も痕跡を残してずっと生き残るであろうと考えると、これ自体が民俗学であることに気づく。以下はほんの一部の例である。


下駄箱 下駄が収まっていなくても下駄箱である。現在、小学校では「下駄箱」と「靴箱」の語が混在しているようである。新築マンションや戸建てのチラシでは「シューズボックス」、「下足入(箱)」となる。なお、日常生活では、下駄が見られなくなったが、下駄を預けたり、下駄を履かせたりと、言葉の上では下駄は健在である。
筆入れ 筆が入っていなくても筆入れである。もっとも「鉛筆」の語にも「筆」の字がしっかり生き続けている。筆の軸には竹が主に使用されてきたことが知られている。なお、大人用の商品は、なぜかペンケースと呼んでいるが、学童用はあくまで筆入れである。
棺桶 桶ではなくても桶である。本来は棺に用いる桶であるが、かつて桶に死者を座らせるように納めた時代の名残である。
機械 なぜ何れも木偏なのか? 漢字の意味として、「機」は、木製のしかけの細かい部品、わずかな接触でかみあう装置のこと。また、「械」は、手足をいましめる木製のかせ。転じて、しかけのある道具の意とされる。【小学館漢和大辞典】
昔は大小問わず杭は木杭と決まっていたから木偏。都内の旧丸ビル(1920年起工)の基礎杭にも米松丸太が大量に使用されていたという。
例えば、雨樋は現在では樹脂製が多いが、かつては木、竹などが用いられた。
「箱」は、なぜ竹かんむり?  箱は、もと一輪車の両わきに対(ツイ)をなしてつける竹製の荷かごのこと。【小学館漢和大辞典】 
かつて橋は木製が当たり前で、また木に代わる素材がなかったわけで,従って木偏。現在では鋼鉄橋、コンクリート橋となった。木橋は公園等における演出と文化財に見られるのみである。
なぜ、枕が木偏? 日本でも中世までは木枕(こまくら)が多く使われていたという。木の枕といえば、網走監獄博物館で小丸太の枕を見た。道路開設等の屋外作業時の仮設小屋で、複数の受刑者にこれを枕にさせ、起こすときにはこの丸太の一方の端をひっぱたいて、正にまとめて叩き起こしたという。実にシンプルかつワイルドな代物で感動してしまった。実はこのタイプの枕は、かつて寺社の参籠用や火消連中、雇人用などにも用いられたという。
枕木 枕木の素材の主体はとうの昔に木製からコンクリート製になってしまった。枕木の文字は歴史の痕跡として、このままで一向に差し支えないが、JRは少し気にしてか、「マクラギ」とカタカナ表記を意識して使用しているようである。
材質により、「椀」と「碗」があるが、樹脂製でも「椀」である。
フェアウェイウッド パーシモンから各種新素材に変化しても、ウッドはウッドである。しかし、「メタルのウッド」では困ったものだが、仕方がない。