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木の雑記帳
 
  心落ち着く栗材
             


 栗材は水湿に耐え、耐朽性が高いことから、古くから住宅の土台として特に評価が高く、資源が豊かであった時代には鉄道枕木としても多用されてきた。そのほかに、柱、壁板、和家具、指物等にも広く利用されてきた。
 こうして生活に非常に密着した存在でもあったにもかかわらず、栗の材を認知する機会はほとんど無く、その存在感が希薄になっているように感じる。【2008.10】  


 あまり目にしない原因は、木材の資源として良質・大径の栗材の生産が落ち込んでいるという事実がある。
 随分前の話であるが、三内丸山遺跡に隣接して掘立柱建物を復元することになったものの、当時使われた直径1メートル級の栗材を国内で調達することができずに、ロシアの黒海沿岸から同等の栗丸太を輸入して、やっとのことで目的を達成した話は広く知られている。ということで、今や栗の大径材は貴重品であり、枕木なんぞに使われることは決してない。

 栗の座卓を長年使ってきたが、本音を言うと同じ栗材でオイル仕上げの製品が欲しいのを我慢しているところである。

 栗材の色合いはやや地味で、環孔材特有の木目が適度に出て、実に穏やかな質感で日常の家具、器具の素材として飽きのこない親しみの持てる素材である。
             クリの材面  
 
 栗材の家具はマイナーな存在ではあるが、しばしば栗材にこだわった家具作家もいて、頬ずりしたくなるような手作り家具が存在する。奥村昭雄氏(東京芸術大学名誉教授で木曽三岳奥村設計所代表)のはんぺん椅子(ハンペンチェア)も栗材である。また、栗材の碁笥はお手頃価格で、古くから普及品としておなじみである。気を付けて見ていれば、たまには栗材の小物も見られ、ときに栗にこだわった漆器(参照)も存在する。
   栗材の「ハスコースター」
 
オイル仕上げの製品である。
遊木舎西尾株式会社
「栗の木、無垢材の家具/    NISHIO-KURIMONO.COM」
 静岡県藤枝市潮106-1
       栗材の濡れ縁
 何ともうらやましい仕様である。
石谷家住宅(国登録有形文化財、智頭町指定文化財)http://www.hal.ne.jp/zaidan/
 鳥取県八頭郡智頭町智頭396番地
(財)因幡街道ふるさと振興財団
 以下の家具はいずれも「さしこう家具」の展示商品である。

有限会社サシコー家具店
手づくり家具の店 さしこう家具
 岡山県津山市加茂町桑原55

       栗材の座卓        栗材のテーブル
        栗材の棚        栗材の小引き出し
 
【追記 2011.6】 
 
  昭和の森のクリ

 北海道の野幌森林公園内(国有林の自然休養林・昭和の森のエリア)には、林野庁の「森の巨人たち100選」にも選定された「昭和の森のクリ」が存在する。
   
 
 説明板に記されたデータは以下のとおりである。
 
  推定樹齢 800年
  樹高    18m
  幹周    4.5m


 当地はクリの自生北限に近いとされるが、よく育ったものである。 また、樹皮がこれほどねじくれたクリの木を見るのは初めてである。材を利用する立場からすればヨダレが出るようなものではなさそうであるから、伐採を免れたのかもしれない。樹勢は衰弱しており,葉も極めて少ない。各地に残るクリの巨木は殆どヨレヨレのものが多く、いいものはとうの昔に伐採されてしまったのであろう。