杢の種類 |
読み・和名 |
資料 |
説明・メモ |
珠杢 |
たまもく |
【工芸】 |
連環の如く或は渦ける波の如きもの |
玉杢 |
たまもく |
【用語集】 |
円環状あるいは渦巻状の模様を呈し、ヤチダモ、クスノキ、ケヤキ、クワなどで見られる。 |
【辞典】 |
杢の一種。環状または渦状を呈する杢。ケヤキ、ヤチダモ、クワ、クスなどに現れる。(grain) |
【ハンド】 |
珠杢とも書く。円環を連ねたような、または渦巻くような杢。ヤチダモ、クスノキ等。 |
珠玉杢 (?) |
たまもく |
【要覧】 |
入道雲が重なったように見える。ケヤキ、ヤチダモ、クワ、クスノキなどに多く現れる。
(注)一般的には珠杢(たまもく)又は玉杢(たまもく)と呼んでいて、この「珠玉杢」の表記は目にしたことがない。 |
泡杢 |
あわもく |
【科学】 |
水泡状の丸い輪郭の模様を示すもの。 |
【用語集】 |
板目面に丸味のある泡状模様を示すもの。(blister figure) |
【ハンド】 |
木材の板目面あるいはロータリー切削面などに現れる丸い輪郭を持った小範囲の凸凹によってできる杢。 |
Blistered figure |
ブリスター杢
(泡杢と同様) |
highmountainforest.com |
もくもくとした雲あるいは泡のような形に似る。表面は完全に平滑であっても水ぶくれのように見える。材がロータリーカットあるいはハーフラウンドカットされると、年輪が凸凹しているためにこの特徴が発現する。ポメレに似るがまばらで、より大きな杢である。 |
牡丹杢 |
ぼたんもく |
【工芸】 |
花状を呈するもの |
【要覧】 |
花模様に見えるもの。ケヤキ、、ヤチダモ、クワ、ケンポナシなどに多く現れる。 |
【用語集】 |
牡丹花のような模様で、ケヤキ、ヤチダモ、クワ、ケンポナシなどでみられる。 |
【ハンド】 |
牡丹の花のような杢。ケヤキ、ヤチダモ、クワ、ケンポナシ等。 |
葡萄杢 |
ぶどうもく |
【工芸】 |
球体相連り玉杢の小なるもの |
【要覧】 |
葡萄の房が連なっているようにみえるもの。ケヤキ、クスノキ、カエデ、ヤチダモ、ハルニレなどに多く現れる。 |
【辞典】 |
木理が不規則で材面に葡萄の房が連なったように現れる木目。ケヤキ、クスノキ、カエデ、ヤチダモなどに多く見られる。(grapevine figure)
(注)grapevine figure は英訳語である。 |
舞葡萄 |
まいぶどう |
【工芸】 |
球体相連り葡萄の舞に異ならざるもの
清国より輸入せらるる安汶木と称するものは和名びらん又は舞葡萄と称し、花台、盆等に最も賞用せらる我邦にてはタブの瘤より取りたるものをびらんの舞葡萄と称す蓋し安汶木の模擬材なり |
如鱗杢 |
じょりんもく |
【工芸】 |
魚鱗の如きもの |
にょりんもく |
【要覧】 |
魚の鱗のように見えるもの。ケヤキ、ヤチダモ、タブなどによく現れる。 |
にょりんもく |
【辞典】 |
変形木理のひとつ。魚の鱗(うろこ)のように見えるもので、ケヤキ、ヤチダモ、タブなどに現れる。(fish scale figure) |
にょりんもく |
【ハンド】 |
魚鱗のような杢。ケヤキ、ヤチダモ、タブノキ等。 |
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メモ |
「にょりんもく」又は「じょりんもく」と読んでいる。
ケヤキの杢では如鱗杢が最高峰とされるが、ただ鱗のようだといわれてもさっぱりわからない。らしきものを写真で見ると、泡杢と波状杢が合体したような印象である。 |
縮緬杢 |
ちりめんもく |
【工芸】 |
其名の如きをいう |
【要覧】 |
縮緬のちぢれに似た紋様。杉、ヤチダモ、マホガニーなどに現れる。 |
【辞典】 |
変形木理の一つ。繊維がちぢれたように見える杢。トチノキ、ヤチダモ、カエデなどに現れる。(curly figure) |
【ハンド】 |
縮緬状の模様を呈する杢。トチノキ、イタヤカエデ、ツツジ、ホオノキ、ケヤキ、ケンポナシ等。 |
波状杢 |
はじょうもく |
【科学】 |
波状木理による模様で、ヴァイオリン杢とも呼ばれ、イタヤカエデやトチノキに見られる。(wavy-grain figure) |
縮れ杢 |
ちぢれもく |
【用語集】 |
波状木理 wavy grain で繊維が縮れて見える杢。タモ、トチ、カエデ、ホオノキ、ケヤキなどで見られる。(curly figure) |
縮杢 |
ちぢみもく |
【ハンド】 |
繊維の不規則な縮れに起因する杢の総称。マホガニーの羽毛状縮杢、ヤチダモ等。 |
Curly
Curly figure |
カーリー杢 |
highmountainforest.com |
木理の方向に歪みがあると光を違う方向に反射するため、波状のうねりが出現する。カーリー杢は特にカエデ類やカバノキ類で一般的である。階段状のカーリー杢はアングルステップ(別出)、ローリングカール、十字砲火型と呼ばれる。 |
workshopcompanion.com |
カーリー杢は軸方向の細胞が波打って伸長することにより生じる。多くの樹種で発生するが、とりわけカエデ類で顕著である。 |
hearnehardwoods.com |
最も一般的な杢の一つがカーリーで、タイガーストライプ、リップルともいわれる。カールは硬軟の木繊維が交互に縞状になって材面を直角に横切る圧縮木理である。この構造から、見る人に材面が3次元であるかのような錯覚を与える反射効果を産んでいる。杢は板目挽き、リフト挽き、柾目挽きの材に現れる。柾目取りしたカーリーメープル Curly mapleは、フィドルバックメープル Fiddleback maple ともいう。(しばしば誤って、杢が強く出た板目挽きのカーリーメープルをフィドルバックと呼んでいる場合があるが、バイオリン製作家は裏板と側板には柾目板のみを使用する。)カーリー杢は多くの樹種に存在し、例えばカオ、すべてのカエデ類、ウォルナット、トネリコ類、オーク類、さらにコクタンにさえ見られる。 |
Angle step |
アングルステップ |
hearnehardwoods.com |
樹の切り株や根際部位をカットすることで現れる階段状のカーリー杢で、ウォルナット(Juglans spp.)でよく見るものであるが、トネリコ類(Fraxinus spp.)やメープル(Acer spp.)でも見られる。 |
woodmagazine.com |
Angel stairs とも。ねじれた樹幹を持った樹木から得られる材で見られ、特にカエデやウォルナットが典型。 |
Tiger stripe
Tiger figure |
虎縞、虎杢
タイガーストライプ |
hearnehardwoods.com |
タイガーストライプ(虎縞)は板の木理を横切る縞状の圧縮杢である。カーリー杢と似ていて、しばしば同じ意味で使用されるが、我々としては、虎杢は縞が長くて太いものを指し、カーリー杢は縞が短く、しばしば破線が重なったようなものを指す。 |
バイオリン背杢 |
ばいおりんせもく |
【用語集】 |
波状木理で、縞状あるいは帯状模様を示すもの。バイオリン背板として用いられる。(fiddle back figure)
(注)一般的に国内では「バイオリン杢」と呼んでいる。 |
バイオリン杢 |
ばいおりんもく |
- |
Fiddleback を参照。 |
Fiddleback
Fiddleback figure |
バイオリン杢
フィドルバック |
highmountainforest.com |
柾目取りによって現れるカーリー杢の形で、真っ直ぐな木理に対して端から端まで直交する縮れが見られる。この名前はバイオリンの裏板にこの杢が利用されることに由来し、伝統的にヨーロッパシカモア(シカモアカエデ
Acer pseudoplatanus)を利用している。一般的ではないが、他のカエデ類(Acer spp.)、アフリカンマホガニー(Khaya spp.)、マコレ(Tieghemella heckelii)、ブラックビーン(Castanospermum australe)、コア(Acacia koa)でも見られる。
(注)メープルに特定されることから、Flame maple, Flamed maple とも。 |
Ripple
Ripple figure |
リップル杢 |
highmountainforest.com |
フィドルバック(前出)のような波紋状の外観を持った杢。
(注)トチノキでふつうに見られる微細な縞模様をリップルマーク(漣紋)と称しているが、それとは異なる。 |
Quilted figure |
キルト杢 |
highmountainforest.com |
不規則なあるいは波打つ連結した模様が凸凹の材面を形成したものをロータリーカットあるいはハーフラウンドカットすると、枕のような形の3D効果が生まれる。これは、ポメレ杢やブリスター杢がより大きく強めに出た模様である。 |
hearnehardwoods.com |
ソフトメープルでは大きなくぼみ(dimples)がキルティングに似たキルト杢となる。これも、鳥眼杢のように菌類による。 |
Peanut shell
Peanut shell figure
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ピーナツシェル
ピーナッツの殻 |
highmountainforest.com |
キルト杢やブリスター杢が出やすい材は、ロータリーカットすることでピーナッツ杢を出すことができ、その模様はキルト杢やポメレ杢に似ている。その表面は平らであるにもかかわらず凸凹したように見える。ピーナッツシェル杢は特にヤチダモで見られ、他の材でも現れる。 |
Crossfire |
クロスファイアー
十字砲火 |
highmountainforest.com |
フィドルバック杢やモトレ(斑)杢のようなうねった木理を突っ切る何らかの模様で、非常に華やかに見える。 |
鳥眼杢 |
ちょうがんもく |
【要覧】 |
鳥の目のように小さな環状に見えるもの。 |
【科学】 |
接線断面(注:板目面の意。)に鳥の目の模様を示すもので、メイプルなどによく見られる。(bird's- eye figure) |
【用語集】 |
鳥目杢とも。板目面に鳥の眼のような小さい円形の模様を示すもので、カエデ、カラマツ、トウヒなどでみられる。(bird's eye grain ) |
【辞典】 |
木理のひとつ。樹木が木部の造成過程で外部圧などの原因を基として生じた繊維の錯走によって、製材のときに現れた紋様で細い泡状をしていて鳥の眼に見えることから出た名。カエデ、マツ、トウヒ、カラマツ(?)などにみられる。(bird's eye figure) |
【ハンド】 |
板目面で鳥の目のような模様を現す杢。イタヤカエデ、マツ類、トウヒ、カラマツ(?)等。 |
メモ |
鳥眼杢の名は bird's eye figure の訳語で、主として北米産のシュガーメイプル(サトウカエデ)から得られるバーズアイエープル(バーザイメープル)は国内で広く知られている。
なお、上記資料で言及のあるマツ、トウヒ、カラマツの鳥眼杢に関しては、その存在を確認できない。 |
Bird's- eye figure |
鳥眼杢 |
hearnehardwoods.com |
バーズアイはハードメープル(サトウカエデ)に最も関係する杢の模様の名称である。しかし、私は他の多くの種、例えばカオ、ブラックウォルナット、チェリー、タスマニアブラックウッドのほか稀にローズウッドでも見たことがある。眼の大きさは砂粒からダチョウ革の突起ほどまでの幅がある。眼の密度は点在するものから高密度のものまである。バーズアイメープルの最も発生頻度の高い地域はメイン州、ミシガン州の東部半島、カナダその他の冬が厳しく成長期間が短い地域である。これら地域の木挽きたちによれば、密度の高い植林地の北面で多く見られるという。ある時点で間伐が実施された場合、通常は鳥眼の形成が止まってしまう。ということは、眼は後生出芽か休眠芽の一形態で、光に当たれば新たな枝を出すものと理解される。鳥眼杢は板目取りした板や単板で現れるため、単板はロータリースライサーで生産される。 |
advancedlasercuttin.com |
バーズアイ杢は小さな“眼”で構成され、しばしばそれらを取り囲んだ波状木理の模様が見られる。この杢はロータリーカットされたサトウカエデで典型的に見られ、マホガニー、カバノキ類、アメリカブナ、ウォルナット類、トネリコ類でもまれに見られる。 |
workshopcompanion.com |
カエデ類で見られる鳥眼杢は細胞の層における小さなくぼみ(dimples)に起因する。これらは軸方向の細胞の成長に影響を及ぼす菌類によって引き起こされるものと考えられている。
(注)菌類説は確認されていない。 |
highmountainforest.com |
ほぼハードメープル(サトウカエデ)に限って見られる小さな丸い形の光沢のある斑点。 |
Cluster burl |
クラスターバール |
hearnehardwoods.com |
材面に不規則に分散して見られる小さな瘤が形成されたもの。材や単板で、鳥眼に似た杢を見せる。その「眼」を活かすためにはロータリースライスしなければならない。製材は板目取りする必要があり、さもないと引っ掻き傷に終わる。 |
Pippy |
ピピー |
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多数の小さな斑点が不規則に散らばったもの。ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)やセシルオーク(Quercus petraea)が代表的。
(注)Pippy はイギリス英語で、cluster burl figure を指す。 |
Cat's paw |
キャットポー
猫の手
猫の足 |
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ピピー材(Pippy 既出)あるいはバール材の変形で、ねこちゃんが上を歩いて、足跡を残したように見える。 |
根杢 |
ねもく |
【工芸】 |
普通のスギ材にても根際より取りたるものは根杢と称し腰嵌又は開戸板に用ひらるツゲの根杢美なるを以て莨盆(たばこぼん)となす |
【要覧】 |
根張りの部分から取った板に出る。スギ、ツゲ、ハンノキなどに現れる。 |
Butt figure |
バット杢
(根杢と同様) |
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根が張り出す部分で木理の乱れにより生じる波打った、あるいはさざ波のような模様。アメリカンウォルナット(Juglans nigra ブラックウォルナット)において非常に味のあるバット杢が得られ、根株単板として利用される。
(注)ここでの Butt は残念ながら「尻」の意味ではなかった。 |
笹杢 |
ささもく |
【要覧】 |
笹の葉のような模様になるもの。スギ、イチイ、神代杉などに現れる。 |
【工芸】 |
神代スギ、吉野スギ、春日スギには笹杢あり |
【辞典】 |
木理が笹の葉のような模様を呈したもの。スギ、イチイなどに見られる。(bamboo leaf grain)
(注)bamboo leaf grain は英訳語である。 |
白杢 |
しろもく |
【工芸】 |
スギの白色辺材より紋理材を取りたるものを白杢と称し賞用せらる |
【要覧】 |
銀杢とも。スギの白太(注:辺材)に現れる紋理材。 |
舞杢 |
まいもく |
【工芸】 |
三味線胴の如きは花櫚の辺材に接したる処より取りたるものを上等とし之を舞杢と称して賞用す舞杢は必ず密なる同心環状をなし其の環の中心は胴の中心にあるを要す |
蟹杢 |
かにもく |
【工芸】 |
蟹杢と称するは同心環状をなさずして左右に蟹の脚の如く流れ居るもの又場合によりては裏杢と称し心材に面せる方即木裏を表面となし舞杢を取ることあれども杢美ならず又板杢と称するは毫も左右相称の杢を現さざるものをいふ
年輪の殆ど直線的に密に平行せる部分は舞杢となり年輪の距離大なるもの又は甚しく円弧をなすものは長巻となり遂に蟹杢となる、年輪斜行するときは板目となる。
(注)出版物の写真を見ると、中心に板目の出る「中杢」と波状杢が合体したような印象である。
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筍杢 |
たけのこもく |
【要覧】 |
筍のような円錐状の紋様が重なって見えるもの。ケヤキ。
(注)わざわざ「杢」の字を使用することには違和感がある。 |
【工芸】 |
ケヤキの普通杢は之を筍杢と称す |
【辞典】 |
木理が筍状をしているもの。普通、板目に見られる木目。(bamboo shoot like grain)
(注)bamboo shoot like grain は英訳語である。 |
Cathedral
Cathedfal grain |
カテドラル
大聖堂
(筍杢) |
highmountainforest.com |
積み重ねの連続あるいは逆V字型で、板目挽きの単板に現れる。
(注)ただの板目模様を指しており、筍杢と同じ。 |
Roll |
ロール |
highmountainforest.com |
斜走する大きなうねり又はねじれ模様で、ブックマッチ(注;隣接して木取りした2枚の板を左右に本のように接ぎ合わせたもので、ほぼ左右対称の杢目となる。)とすれば、ヘリンボーン(注:矢はず(杉綾)模様)として知られる模様となる。 |
鶉杢 |
うずらもく |
【要覧】 |
雉杢(きじもく)とも。鶉や雉の胸毛のような曼荼羅模様のもの。 |
【工芸】 |
屋久スギには鶉杢、野鶏班(きじもく)あり |
【用語集】 |
ウズラの羽に似た模様を呈す。屋久杉、ネズコ、神代杉などでみられる。 |
【辞典】 |
杢目の一種。屋久スギなど捩れの多い樹木から採れる。 |
【ハンド】 |
ヤクスギ、クロベ、神代杉等。 |
雉杢 |
きじもく |
【工芸】 |
屋久スギには鶉杢、野鶏班(きじもく)あり
(注)鶉杢と雉杢の違いは、多分羽根の模様に幾分違いがあることによるものと思われるが、一般人にはよくわからない。両者を同義としている場合も見られる。いずれもゆらぎのある細かに年輪の原木から板目取りした複雑・緻密な木目模様が出たものであることには違いない。 |
雲紋杢 |
うんもんもく |
【要覧】 |
雲が重なり合っているように見える。黒部スギ、サクラ、アズキナシなどに現れる。 |
(雲頭の杢) |
|
【工芸】 |
黒部スギには雲頭の杢あり甚美なり天井板に適す焼きて摺る時は杢現はれて鮮なり |
斑杢 |
まだらもく |
【ハンド】 |
木理の中での不規則な水平方向の波によってできた断続した帯による杢。 |
Mottle |
モトレ
(斑杢に同じ?) |
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交錯木理(cross grain )の別のタイプで、旋回する逆向きの木理が波状の木理と結合して斑点状、しわ状の外観となる。文様は不規則あるいは、幾分チェス盤風(Block
mottle)で、よりきめが細かく小さい模様の場合は「ビーズウィング」(Bee's wing 後出)として知られている。モトレ杢はマホガニー(Swietenia spp.)、サペリ(Entandrophragma cylindricum)、ブビンガ(Guibourtia demeusii)、カオ(Acacia kao)などに見られる。 |
Block mottle figure |
ブロックモトル |
- |
Mottle を参照。 |
Bee's wing figure |
ビーズウィング |
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イーストインディアンサテンウッド(Chloroxylon swietenia)、マホガニー(Swietenia spp. )、ブビンガ(Guibourtia demeusei)や何種類かのユーカリ類で見られる小さな目のつんだ斑杢。 |
虎斑 |
とらふ |
【要覧】 |
虎の縞(しま)模様のように見えるもの。ヤチダモ、ミズナラ、ブナの柾目に多く現れる。 |
【工芸】 |
三味線棹として紅木の虎斑あるものは最も貴重せられ其価格頗る大なり |
【科学】 |
広い放射組織を有する樹種の放射断面に現れる模様を「銀杢」(silver grain)といい、特にミズナラでは「虎斑」(とらふ)という。 |
【用語集】 |
柾目面に現れる幅広の複合放射組織が虎の縞模様にみえること。光線により銀色に輝くことから「銀杢」 silver grain ともいう。カシ、ナラ、ブナ、ミズナラなどでみられる。(ray fleck) |
【辞典】 |
ナラの捩れのある原木の柾目挽きに多く現れる模様。虎の腹部の毛並みに似ているところから出た名。ブナにも見られる.透明塗料を塗ると鮮明になる。(tiger grain) |
【ハンド】 |
大きい断面を持つ放射組織が柾目面に現す模様。 |
Button |
ボタン |
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大きな放射組織を持った材で、その硬くて艶のある放射組織が現れるように柾目挽きすることで、通直な木理を背景とした中にボタンあるいはフレーク様の模様が現れる。とりわけアメリカシカモア(アメリカスズカケノキ
Platanus occidentalis)、ホワイトオーク(Quercus app.)、レースウッド(Platanus spp.)で見られる。 |
Flake figure |
フレーク杢
虎班(とらふ) |
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一般にオークやレースウッドの柾目で見られる。虎斑は暗色部分でステインの乗りが悪いため、しばしば好ましくない杢と見なされる。 |
Flake
Fleck
Ray fleck |
フレーク
フレック
レイフレック |
highmountainforest.com |
レースウッド(lacewood , European plane, Platanus hybrida)、オーク(Quercus spp.)、シカモア(sycamore , Acer pseudoplatanus)は材が放射組織に平行(注:柾目の意)あるいは平行に近い木取りがされることで、放射組織に由来する様々な光沢が現れる。 |
Lacewood |
レースウッド |
【ハンド】ほか |
レースウッドは多くの樹種の柾目木取りの材面に現れる密集した斑紋模様のことを指す。Cardwellia sublimis の材の一般名でもある。また、柾目面が似たアメリカンシカモアの材も意味するほか、イギリスではロンドンプレーン(Platanus × acerifolia モミジバスズカケノキ)の柾目材を意味する。 |
銀杢 |
ぎんもく |
【科学】 |
広い放射組織を有する樹種の放射断面に現れる模様を「銀杢」(silver grain)といい、特にミズナラでは「虎斑」(とらふ)という。 |
【辞典】 |
木材の柾目の上に大きな髄線が帯状に現れる杢。ナラ、ブナ、カシによく見られる。(silver grain) |
Silver grain |
銀杢(ぎんもく) |
highmountainforest.com |
光沢のあるレイフレック又は柾目取りした材の別名で、オーク類(Quercus spp.)が典型。 |
縞杢 |
しまもく |
【用語集】 |
交錯木理に起因して、柾目の鉋削面で光線に反射して縞模様を呈するもので、リボン杢ともいう。 |
【辞典】 |
交差木理(注:交錯木理に同じ。)の一種。ラワン類、マホガニー、クスなど交差木理を持つ樹の柾目面に現れる幅の広いリボン状縞目に見える杢。(ribbon figure) |
メモ |
縞杢は、上記のような木理由来のものではなく、材色に由来して縞模様が出る、ゼブラウッドのようなものを指すという説も見られる。 |
リボン杢 |
りぼんもく |
【科学】 |
交錯木理の放射断面に見られる帯状模様で、メランチなどの熱帯広葉樹に多く見られる。(ribbon figure) |
【辞典】 |
製材品の表面に現れる縞模様の木目。マホガニー、ラワン類に多く見られる.透明塗料を表面に塗ると鮮明になる。(ribbon figure) |
【ハンド】 |
交錯木理の木材の柾目面において認められる濃色と淡色能島によってできる杢。縞杢。 |
Ribbon stripe |
リボン縞 |
highmountainforest.com |
軽く捩れたリボンに似た印象で、柾目取りしたマホガニー(Swietenia spp.)やサペリ(Entandropphragma cylindricum)で見られる。 |
Ribbon figure |
リボン杢 |
workshopcompanion.com |
例えばマホガニーのような樹種で、軸方向の細胞の旋回方向が層状に変わることでリボン杢が発生する。
(注)stripe figure も同様。 |
Roe
Roey figure |
はららご杢
(仮訳) |
highmountainforest.com |
交錯木理に由来して、ある種の柾目取りした広葉樹に見られる短く崩れた縞杢、リボン杢。 |
網杢 |
あみもく |
- |
黒柿の心材部でしばしば見られる網目状の文様を指す。 |
孔雀杢 |
くじゃくもく |
- |
網杢のうち、模様がクジャクの羽根を思わせるような印象のあるものを指し、希少品となっている。 |
瘤杢 |
こぶもく |
【用語集】 |
瘤 burl は樹幹や根株部に異常に膨れ出た部分。変化に富む瘤杢が出る場合があり、高い評価を受けることがある。(burl figure) |
【辞典】 |
木材の繊維が交差して木理が瘤のような感じを現すもの。クス、ケヤキなどに見られる。(burls figure)
(注)上記説明では「瘤のような・・」としているが、名前の「瘤」は瘤そのものを指しているから、誤解されやすい表現で疑問がある。 |
Burr
Burl
Burl figure
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バール杢
瘤杢 |
highmountainforest.com |
瘤状の変形した成長で、通常は根部又は幹に、時に枝部で見る。通常、樹皮への何らかの損傷又は樹皮下での感染の結果形成され、あるいは正常に成長しない未成熟な芽に由来する。樹の成長ととも瘤も成長でき、取り巻く木部は捩れあるいは波打ち、結果として非常に美しい木を生み出す。バール杢はヨーロッパニレ(Ulmus spp.)、トネリコ類(Fraxinus spp.)、ポプラ類(Populus spp.)、センペルセコイア(California redwood, Sequoia sempervirens)、ウォルナット(Juglans spp. クルミ属)などでしばしば見られる。
(注)Burr はイギリス英語。 |
hearnehardwoods.com |
バーズアイのように、バール杢は板目取りで現れるため、単板はロータリースライスされ、柾目取りとしてはならない。さもないと杢は眼にならないでピンになる。伝統的な利用は車のダッシュボード、家具の引き出しの前板や天板、銃床などがある。 |
鯖杢
さば杢 |
さばもく |
- |
Crotch figure を参照。 |
ー |
ー |
【工芸】 |
樹幹の分岐点又は幹枝分岐点に於ては一種の杢を現はすマハゴニーに於て此部分より取りたる材は普通材より高価にして Blumen-oder, Pyramiden-Mahagonie (注:ドイツ語の呼称)と称し貴重せらる |
Crotch figure |
クロッチ杢
さば杢 |
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樹幹から枝の分岐した部位に形成される特にY字型の紋様。Burning bush, feather, flame, plume, rooster-tail(雄鶏の尾の意) はすべてクロッチ杢の変形である。マホガニーとウォルナットの単板が最良の供給源である。 |
メモ |
和名は「鯖杢」又は「さば杢」の表記を目にする。この「さば」は鯖ではなく、捌(さば)くの「捌」であろうとの説がある。しかし、捌くというイメージ、使い方は違和感がある。「鯖」の語は鯖の尾のイメージから先割れした形態を指す意味があり、先の英語サイトの説明での「Y字型」と同様であり、たぶん「鯖」でよいと思われる。ただし、杢に生臭いにおいが移りそうであるから、個人的には平仮名の「さば」を使うことを支持したい。 |
Flame |
火炎 |
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crotch を参照。 |
Swirl |
渦巻 |
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クロッチ杢(前出)の穏やかなタイプで、木理は渦を巻き、曲がりくねり、時に折り重なる。チェリー(Prunus spp.)、マホガニー(Swietenia spp.)、メープル(Acer spp.)、ウォルナット(Juglans spp.)でふつうに見られる。 |
Bear claw |
ベアクロー |
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ベアクローの呼称は楽器のトウヒ表板に関係して使用される。クマの爪で引っ掻かれたような模様が木目を横切っていて、美しい光の反射が見られる。
(注)ギター表板の素材としての利用実態がみられる。Bear scratch ベアスクラッチの名もある。 |
Pommele figure |
ポメレ |
【ハンド】 |
斑紋の模様をあらわすときに、木材卸商はしばしばポメレ(Pommele)という言葉を使うが、それはビロードのような外見ということを意味している。立体感のあるポメレはときどきドレープ(drape)と呼ばれることがある。 |
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小さな円形又は楕円形の模様がしばしば重なり合う。小雨の中での水たまりの表面に例えられてきた。ブリスター杢のより細かいものに似て、ブビンガ(Guibourtia demeusii)、アフリカンマホガニー(Khaya ivorensis)やサペリ(Entandrophragma cylindricum)などのアフリカ材でふつうに見られる。 |
highmountainforest.com |
樹の切り株や根元を切ったときに見られる階段状のカーリー杢。ウォルナットで多く見られるが、トネリコ類やカエデ類でも見られる。 |
Flower grain |
フラワーグレイン(花斑) |
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小さな不規則な斑中に見られる斜めの波紋で、ヨーロッパトウヒ(Picea abies)でしばしば見られる。 |
Spalting figure
Spalted figure |
スポルテッド杢 |
- |
菌が取り付いて腐りかけた材で見られる黒い線が模様となって、予想外の効果をもたらすことがある。樹種がメープルの場合にはスポルテッド・メープルの呼称がある。figure 、杢の語とは異質。 |
略記参考資料 |
【用語集】
【辞典】
【科学】
【ハンド】
【要覧】 |
図解木材・木質材料用語集(株式会社東洋書店)
新編林材用語辞典(財団法人林野弘済会)
木材科学講座3(海青社)
木材工業ハンドブック(丸善株式会社)
名木要覧(日刊林業新聞社) |
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