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木の知恵 いろいろな木(1) 興味深い木の個性 国産樹種編 |
(注) | 1 | 主たる国産材に関する文献等の記述及び気づきの点を樹種毎に並列的に列挙した。 |
2 | 明治時代の文献は,そのリズム感が魅力であり,旧仮名遣い・文体のまま引用した。 | |
3 | 主たる引用文献の略号例は以下のとおり。(参考文献リストは別掲。) 【工藝】は「木材の工藝的利用」(農商務省山林局編纂,明治45) 【効用編】は「大日本有用樹木効用編」(諸戸北郎編著,明治36) 【原色】は「原色木材大図鑑」(保育社,昭和37) 【百科】は「平凡社世界大百科事典」(平凡社,1998) 【平井】は「木の大百科」(平井信二,1996) その他編著者名等を【 】内に付記。 |
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4 | 明治時代の文献で「近年・・」とあるのはもちろん当時の動向である。 | |
5 | 一部移入種を含む。 |
梧桐 (移入種) |
アオギリ1 | 種子は食用になり救荒植物の一つ。材の比重は0.47でキリよりかなり重い。建具や家具に使う。 |
アオギリ2 | 木材は淡色,比較的軽軟で,狂いやすくまた耐久性が低いため特別の用途はない。樹皮は強靱で縄とし,またその粘性物質を和紙糊料とする。種子はタンパク質や脂肪に富み,炒って食べられる。【百科】 | |
アオギリ3 | 【効用編】材は匣箱の類を製し甚だ佳なり昔は琴瑟(きんしつ)を作るのに此材を需要せりと云ふ | |
アオギリ4 | 材は建築(建具),家具(箪笥),器具(茶器・箱・下駄・箸),楽器,パルプなどに,樹皮の粘液は製紙用糊・整髪料(ビナンカズラの樹皮からとったものの代用品),その繊維は麻の代用品になる。【原色】 | |
アオギリ5 | 室内の家具類を侵すヒメマルカツオブシムシが多発しやすい。【桜井】 | |
アオギリ6 | 【コメント】材は日常お目にかかることはないが,黄緑色の樹皮が美しく,都内でも街路樹や公園樹として広く利用されている。剪定が激しくなければ秋になんとも不思議なかたちの実を付ける。(2003) | |
青だも |
アオダモ1 | 【効用編】材は木槌,筆立其他の器具及薪炭用に供す又床柱に用ゆ |
アオダモ2 | アオダモ類(マルバアオダモを含む)の材は運動用具すなわち野球のバット,(テニス,バトミントンのラケット枠),スキー材として最もよいものであるが,実際にはシオジ,ヤチダモの方が多い。【平井】 | |
アオダモ3 | 良材は北海道日高山系の国有林で採れる材のみといわれる。材はシオジ,ヤチダモよりも粘りがある。 | |
アオダモ4 | 生木でもよく燃えることから猟師などが薪として利用したとされる。 | |
アオダモ5 | 【コメント】バット材料としてのアオダモの資源が減少して先細り状態となったため,アオダモ資源の育成と市民参加の森づくりを目的としてアオダモの人工造林の取り組みが北海道の各地でみられる。(2003) | |
青肌 | アオハダ1 | 【効用編】材は小細工,寄木細工,旋削用に供す日光名産の卵形杯を作るに用ゆ又相州(相模国の別称)湯本細工に此材を用ゆ |
アオハダ2 | 材は旋作(挽物・杯),器具(寄木細工・木象嵌・玩具・小細工物・マッチ軸木)その他になり,葉は茶の代用。【原色】 | |
アオハダ3 | 寄木細工と木象嵌に白色材および青緑色を帯びた材として賞用される。青緑色の場合は,材を泥中に夏は1~2週間,冬は1か月ほど漬けておいて変色させたものである。【平井】 | |
アオハダ4 | 【コメント】自生のものは10メートル以上となるが,雌木は冬に赤い実を付け,庭木としても利用されている。 | |
赤蝦夷松 | アカエゾマツ1 | 建築,経木,ピアノ響板・鍵盤等。 ピアノ響板には主としてヨーロッパトウヒの良材を使う。楽器用材としては,バイオリンやピアノなどの材料としては,エゾマツより高く評価されることが多い。ピアノ鍵盤は日本ではアカエゾマツ,欧米ではバスウッド(アメリカシナノキ)やライム(オウシュウシナノキ)を使う。 |
アカエゾマツ2 | 【効用編】エゾマツに略ぼ同じ | |
アカエゾマツ3 | 建築(柱・床柱,ヒノキの代用),包装,パルプ等用途もエゾマツに類し,ことに楽器(ピアノやオルガンの響板・ヴァイオリンの甲板)として定評がある。【原色】 | |
アカエゾマツ4 | 【コメント】北海道の天然林の針葉樹として,トドマツ,エゾマツ,アカエゾマツが代表的であるが,これらのうちアカエゾマツが最も評価が高い。これらを利用した北海道置戸町のオケクラフトは都内のデパートでもおなじみとなっている。(2003) | |
赤樫 | アカガシ1 | 昔から建築材をはじめ舟,特に櫓や櫂,荷車特にその車輪など,堅くて強いことが必要な用途に用いられていた。中でも木刀や三味線のさおは,赤くておもみのあるところから賞用されてきた。鉋の台や鑿などの道具の柄に最高といわれる。 |
アカガシ2 | 【効用編】材は人力車,荷車其他工場の器械,下駄の歯,艪,櫂,鉋台,油締道具,籾摺臼歯及び鍬其他農具の柄等総て堅牢を要するものに用ひらる 又薪炭材として貴重せらる | |
アカガシ3 | アカガシは硬くして工作困難なるを以て櫂(かい)に用ひず又車にも用ひず【工藝】 | |
アカガシ4 | 【コメント】アカガシの木刀は定番商品。鑿(のみ)の柄は店頭で観察するに,一般に普及品はシラカシで,上級品はアカガシが使われている。(2003) | |
赤四手 | アカシデ1 | やや重く強さは中位。堅密で弾力に富む。 |
アカシデ2 | 【効用編】サワシバに略ぼ同じ | |
アカシデ3 | 材は器具(曲木細工・ステッキ・農具の柄・玩具・スキー・靴型・荷棒・漆器丸物の木地),家具(曲木椅子・洋家具),機械(滑車),車輌,彫刻(印判),旋作(紡績木管),薪炭,椎茸の榾木などに用いられる。【原色】 | |
赤松 | アカマツ1 | 岩手県の南部松,福島県の津島松,宮崎県の日向松が良材として有名。長野県の霧上松,九州霧島山系の霧島松は数少ない高地性のものである。 手入れをすると飴色になる。心材は水中では保存性がある。建築材としては強度を必要とする箇所に使われる。節のない美しい材は装飾材として珍重されており,床柱などにも使われている。 |
アカマツ2 | 【効用編】材は各種の用材及薪炭材となり枝葉も亦薪材として世に重用せられ,建築用材としてはスギ,ヒノキに劣るもその産出の多量にして価の廉なるがために多くスギに代用せらる。又土木工事の杭材としてはスギ材に勝り皮付きの円材を床柱及竿縁に用ゆるときは雅致多し。之を伊勢地方においては佐賀マツと称す。其他細工に用る削台はケヤキまたはサクラを上等とするもマツを用ゆることあり。 | |
アカマツ3 | 【効用編】近年は燐寸用材,セメント桶材とし,又岩手県下にては曲物を作ると云ふ。秋田県下に於ては皮付きにて内部に漆を塗りたる盆を製す。又此木炭は鍛冶屋炭として必要なり。又木毛を作り又土佐国においては長さ5尺の丸太に切り鉈にて割り,更にこれを薄く剥ぎたるものを打ちて縄となす。此縄は水に耐ゆるをもって船舶の繋留其他水中の用に供す。 | |
アカマツ4 | 材は建築(土台・軸組・垂木・床柱・敷板・羽目板・屋根板・建具),土木(橋梁・枕木・坑木・樋),船舶,車輌,家具(仏壇),器具(農機具・橇・木馬・木型・曲物・桶・樽・棺),包装(箱・経木・木毛・マッチ箱),パルプ,彫刻,楽器(太鼓の胴・オルガン枠),合板(芯板),薪炭(陶器焼成・鍛冶炭・煤煙から墨)等。中でも皮付磨丸太・木船用根曲材・鍛工用松炭・工業用活性炭・カーボンブラック用肥松は特殊用途。厚い樹皮は細工物,樹からは樹脂がとれる。【原色】 | |
アカマツ5 | 【コメント】格調高い和風の内装材として銘木級を含めたアカマツが多用される。木製品としては何といっても肥松(アカマツ,クロマツで樹脂により半透明となったもの)のろくろ製品が有名で,高松、宮島等の製品が知られている。下田脂松細工ではクロマツが使用されている。木製品としては突出した価格であるが,その美しさには魅力があり,年月を経るとさらに色が深まるという。(2003) | |
赤芽柏 | アカメガシワ | 【効用編】材は函箱,盆其他器具を作るに最も佳品なり又荷串を作る又(皮付きの)円材は床柱に用ゆ。 |
アカメガシワ2 | 材は建築(床柱),器具(杵・箱・盆・下駄),車輌,薪炭用。樹皮は薬用。葉や種子からも染料や薬がとれる。【原色】 | |
アカメガシワ3 | 材は淡黄色で柔らかく,薪炭材のほか下駄などの材料とされる。【百科】 | |
アカメガシワ4 | 【コメント】ごく一般的な道端雑木で,春先の赤い新葉が目立つ。木製品に接する機会はない。 | |
秋楡 | アキニレ1 | 【効用編】材は車の軸及棍棒となし,また旋工用材に適す 木炭となせば其質上等なり |
アキニレ2 | 材は車輌(車軸・轅棒),旋作,薪炭用。樹皮繊維から縄ができる。【原色】 | |
アキニレ3 | わが国では樹の大きいものは少なく,大きくても高さ15メートル,直径60センチくらいまでである。ハルニレより少し重硬。樹は庭園樹,街路樹に使われることが多く,赤みがかったまだら模様の樹皮でそれとすぐにわかる。イシゲヤキ、カワラゲヤキ とも。 | |
白辛樹 | アサガラ | 【効用編】材は桶樽の呑口(のみくち)を作るのに用いる。 |
- | アサダ1 | 特にフローリングには最も優秀な材として賞用される。 |
アサダ2 | 【効用編】材は櫛を作り,薪炭材となす 北海道に於ては橇或は船艪を作り又建築材として敷居に供し其他器具材に供すと云ふ | |
アサダ3 | 材は重硬で極めて割れにくく,切削そのほかの加工は困難である。表面仕上げは良好で磨けば光沢が出る。材が重く強いので強さが必要な用途に適している。器具材では工具の柄,木槌,橇など,建築材では敷居,フローリング,内部装飾材,また家具材,機械材,車輌材,船舶材(艪など),運動用具(スキーそのほか),紡績用木管,枕木などに用いられ,特殊なものに靴木型,鮑(あわび)の突き棒がある。とくにフローリングには最も優秀な材料で,サクラと称して出されることが多い。【平井】 (注)「アサダ桜」の語を見かけることがある。 |
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アサダ4 | 材は家具,器具(とくに靴の木型に賞用・運動具・経木),建築(とくに床板),土木(坑木),船舶,車輌などに用いる。【原色】 | |
梓 | アズサ | 梓弓は万葉集にも多く歌われている。この木にはミズメ,キササゲ,アカメガシワ説などがあったが,ミズメ説が有力。曲げ弾性係数や吸収エネルギーが大きいからイチイガシとともに豪弓用といえる。 ⇒ミズメを参照 |
翌檜 | アスナロ | ヒノキアスナロ(アスナロの変種,ヒバ/アテ)とともに,ヒバの名前で取り扱うことが多い。 ⇒ヒバを参照 |
小豆梨 | アズキナシ1 | 【効用編】材は旋作用又は薪炭用とす |
アズキナシ2 | 材は器具(木型),家具(洋家具・陳列棚),建築(造作),旋作,薪炭に,樹皮は染料にする。果実は食用。【原色】 | |
馬酔木 | アセビ | 材は建築(皮付き床柱),旋作,木象嵌,薪炭などになり,葉は殺虫剤に使う。【原色】 |
油桐 | アブラギリ1 | 中国原産で,種子油(桐油:きりあぶら,とうゆ)を目的に栽培した。昔は雨合羽,塗料,あるいは油煙墨の煤にこの油を用いた。油には毒性があるため,毒荏(どくえ)の別名がある。材は器具類に使う。 |
アブラギリ2 | ヤマギリと称してキリ代用の下駄材に用いられたことがある。薪炭材にもなるが,特に木炭は駿河炭,または静岡炭と称して,漆器,銅版の研磨用に特用される。【平井】 | |
アブラギリ3 | 【効用編】材は匣箱及木履を製するに用ゆ | |
アブラギリ4 | 【コメント】桐油は古くから油紙,雨合羽用などに使用されたが,現在でも,塗料,印刷用インキ等に広く利用されている。需要のほとんどは中国からの輸入に頼っている。(2003) | |
油瀝青 | アブラチャン1 | 種子の油は灯用とされた。枝葉も油を含み,生木でもよく燃えるのでたき木によく,そのためアブラチャン(油瀝青)と呼ばれるという。【百科】 [注]チャン(瀝青):炭化水素からなる化合物の一般的総称。普通、天然アスファルト・コールタール・石油アスファルト・ピッチなどをいう。 |
アブラチャン2 | 【効用編】材は専ら杖に作り又薪料となす実は油を搾採するに用ゆ故にアブラチャンと云ふ此油をぢさの油と称し燈油に用ゆ | |
アブラチャン3 | 【コメント】早春の黄色い小さな花が印象的で,都内の小石川公園や目黒林試の森公園にも植栽されている。(2003) | |
棈 | アベマキ1 | 【効用編】クヌギに略ぼ同じ |
アベマキ2 | 材は器具(農具・木型・台・柄・漆器木地・下駄の歯・三味線棹),船舶(艫・櫂・舵),車輌(荷車・車軸・車輪),機械(油締機・銃床・度器・織機部材),土木(枕木),建築(床柱),旋作,薪炭,椎茸榾木など。【原色】 | |
アベマキ3 | 【コメント】樹皮のコルク層がよく発達する特徴がある。このためコルククヌギの名もある。戦中・戦後の一時期に輸入品のコルクガシのコルクの代用として使用されたという。しかし,このコルク層が厚いために薪,木炭,椎茸ホダ木としてはクヌギより劣るとされる。 | |
粗樫 | アラカシ1 | 大木はまれにしか出てこないので,用材としてはシラカシなみだがそう使われない。【上村】 |
アラカシ2 | 材は車輌,器具(衡器・農具・柄類・運動器具・水車・台類・下駄歯),船舶(艫),薪炭などになる。【原色】 | |
アラカシ3 |
【効用編】シラカシに略ぼ同じ | |
飯桐 | イイギリ1 | 材は軽く,げた材,箱材にし,また実が美しいので庭木,街路樹にする。 |
イイギリ2 | 【効用編】材は箱材下駄材其他小細工用とす | |
イイギリ3 | 材は器具(箱・下駄・小細工),薪炭などに用いられる。【原色】 | |
イイギリ4 | 【コメント】イイギリは実がナンテンに似ていることからナンテンギリの別名もある。南天の箸は難を転ずるにかけて縁起物とされるが,実際にはイイギリを使用しているともいわれる。メーカーよっては「ナンテンギリ」と表示しているものもある。 ⇒ 「ナンテン」を参照 | |
- | イシゲヤキ | ⇒ アキニレ |
柞 | イスノキ1 | マンサク科の常緑中木で,本州中部以南,特に九州に多い。日本産の樹木のなかで最も硬くて重く(比重0.9),釘も曲がって打ち込めないほどである。古くはユスノキ(柞)といった。 材の色調が淡赤褐色なので一名赤木ともいうが心材には濃い赤褐色の縞模様ができるので縞黒檀の代用になる。櫛などが発掘されている。現在算盤の枠,床柱,楽器,高級床柱などに量は少ないが特殊用途をもっている。木刀の材料としても定評がある。 |
イスノキ2 | 日本産で最も重い材の一つ。心材は紅褐色~紫褐色,時に縞状に色調の濃淡がある。心辺材の境界はやや不明瞭。強度の点でも国産材中最も強い材に属する。耐朽・保存性は高いが,重硬なだけに切削,加工,割裂,乾燥はともに困難。用途としてフローリングには最適。ツゲ,シタン,コクタンの模擬材になる。【宮本】 | |
イスノキ3 | 埋れ木を「スヌケ」と呼ぶ。この木刀は極上品。結寿(ゆす)箸とした夫婦箸が祝い品として市販されている。 | |
イスノキ4 | 【効用編】材は屋柱とし頗る佳致あり之を長く拭へば光沢を生ず又襖,障子の閾(敷居)に用いるときは其走り極めて軽く音を出さず又床板,縁板に供し又櫛,箸,楽器,煙草盆,箱火鉢,机等を作り又盆其他旋工材に供す又柴薪として上等なり又焼て灰となし陶器製造の用に供す他の木灰より上等なり又此樹の心材は腐朽せずして永く残存す之をスヌケと称し帯赤紫黒色にして堅し之を以て茶台等を作る | |
イスノキ5 | 材は建築(床板・縁板・柱・床柱),器具(柄・箱・盆・桶樽ことに砂糖樽・ブラシ木地・算盤枠・櫛・茶托・ステッキ・寄木細工),楽器(三味線の棹・琵琶の撥),機械・薪炭(木灰は陶磁器製造用)などにし,シタン・コクタンの模擬材にもなる。樹皮からは鳥黐(とりもち)がとれる。【原色】 | |
イスノキ6 | 昔,武家ではツゲが主に罪人がながされる島産(八丈島など)であるのを嫌い,もっぱらイスの櫛を使ったという。【平井】 | |
イスノキ7 | 樹皮及び葉の灰は柞灰(いすばい)といって,陶磁器,とくに有田焼でうわぐすりを染め付ける際の媒材に用いられる。【平井】 | |
イスノキ8 | 【コメント】かつては国有林で利用度の低い広葉樹の需要開拓のため,イスノキを含む各種広葉樹の床板を自ら製造していた。床板としての評価は現在でも高いが,量の確保が困難となっている。宮崎県都城市は木刀の生産でも知られているが,漆黒のスヌケの木刀には数万円の価格表示があった。この木の床材の廃材で拍子木を作ったところ,なかなかいい音を出した。(2003) | |
板屋楓 | イタヤカエデ1 | 非常に硬く,割れにくい。粘り強く傷が付きにくい。心材は硬くて作業性が悪いため,主に辺材を使う。 |
イタヤカエデ2 | 【効用編】材は装飾材特に船室の装飾材とす又机案,匣箱等を作り又旋工用材,屋柱,橇,刀鞘,刀柄,杓子,農具柄,槌,銃砲の台等に用ひ又箕を作る又薪炭となして良好なり又杢理の處を取り指物材に用ゆれば雅致あり | |
イタヤカエデ3 | 材は建築(柱・内部造作),家具(とくに洋家具),器具(柄・刀の柄と鞘・天秤棒・鉋の台・杓子・橇・槌・農具・土木具・楔・漆器木地・木型・盆・箱・指物),運動具(バット,なかでもスキーには国産材中第一級),楽器(ピアノ・ヴァイオリン),機械(銃床),土木(枕木),船舶・車輌(内部造作),合板(表板・単板・経木),旋作(ろくろ細工・木管),彫刻,薪炭など用途広く,樹液からは糖分がとれる。【原色】 | |
イタヤカエデ4 | 材は緻密・強靱で,曲げ木にも適している。比較的薄い色の材なのでその用途は広い。器具材では工具・農具の柄類,鉈・小刀などの鞘,槌,紡績用木管,靴型,硝子木型,橇,杓子など様々なもののほか,農山村で日常の用具材に使う。家具材では机,箱物,飾り棚,椅子などの洋家具が多く,また箪笥,鏡台などの和家具にも使われる。建築材では縮れ杢を生かした床柱,床框,落掛など床回りその他の装飾材,造作材もあるが,またフローリングにも多く用いられる。船舶,車輌でも同じく内装材に使う。楽器材ではピアノのアクションその他,縮れ杢のものはバイオリン・ギターの裏甲板と側面板に賞用され,運動具では国産スキー用材の随一であり,そのほかの運動具にも多く使われる。【平井】 | |
イタヤカエデ5 | ボウリングのブームの時は,そのピンとボウリング場の床板にかなり多く使われた。旋削材では石川県山中温泉の丸物漆器(椀,盆など)の素地の第一等のものとしてイタギ物の名で知られていた。【平井】 | |
イタヤカエデ6 | 【コメント】カシの木が自生していない北海道ではイタヤカエデを柄物に利用する。 | |
一位 | イチイ1 | 心材は赤みがかった褐色系で木肌が緻密である。笏(しゃく),彫刻,鉛筆などの特殊用途を持っている。岐阜県飛騨産のものが最良とされる。しかし原料の不足から飛騨高山の一刀彫の素材は北海道産を多く使う。樹齢が古いほど木肌がきれいで色艶がよく良材。軽くて粘りがあり,弾力性がある。保存性がよい。アイヌはこの木が強く,狂わず時を経ても弾力を失わないとして弓に使った。 |
イチイ2 | 【効用編】材は杖,机案,函箱,硯箱,巻煙草入,色紙掛,短冊掛,写真掛,床置物,根付類を作りて雅致あり。又笠及敷物等を編みて美麗なり。鉛筆材その他の器具材,彫刻材に用いられ又床トコ板,床縁,天井板,鏡戸,障子,床柱に用ゆるも,良形のもの少なく常に節多きをもって用材に適せず。しかれども湯殿の板,釣瓶,風呂桶,水瓶の蓋に賞用さる。而して水中に用ゆるものは二三十年も其赤色を失はず又楊弓の矢となし日光及遠州秋葉山にては箸を作り加賀にては牙杖を作り飛騨の位山にては笏を作り北海道の土人は弓を製す木曽にては阿六櫛の棟を作り又日光中善寺及北海道にては下駄を作る又老樹は大抵中心腐朽し空虚にして其材理細密なるを以て横截して火鉢胴を作る。 | |
イチイ3 | 【効用編2】水中に用いるものは20~30年もその赤色を失わず。楊弓の矢となし日光及び遠州秋葉山にては箸を作り,加賀にては牙杖をつくり,飛弾の位山にては笏を作り,北海道のアイヌ人は弓を製す。木曽にてはお六櫛の棟を作り,日光中禅寺湖,北海道にては下駄を作る。老樹は大抵中心腐朽し空虚にしてその材理細密なるをもって横截(おうせつ)して火鉢胴を作る。 | |
イチイ4 | 材質が穏やかなことと材色が美しい紅褐色であることから工芸材の用途または特殊の用途が多い。最も知られているのは笏(しゃく)で,また飛騨の一位細工,北海道のアイヌの彫刻や細工物,仏像・置物・根付などの彫刻,箸,小楊子,ステッキ,寄木細工,木象嵌などがあげられる。そのほか建築材では床柱,床框,落掛,床板(床板),天井板,鏡板,障子などの装飾材の使い方が多い。さらに器具,家具,工芸的な装飾部材にも使われる。【平井】 | |
イチイ5 | 飛騨、北海道に産し飛騨産を上等とす飛騨産は時日を永く経るに従って多少黒味を帯びたる赤色となるも北海道産は色を吹くこと少し北海道産は材質柔くして工作し易く廉価なれば多く使用せらるイチイの主なる性質として木理細かくして通直狂ひ少く材色の美なる点にあるが如し【工藝】 | |
イチイ6 | 鉛筆材としては国産材中最適。彫刻(一位細工),器具(特殊用途として笏(しゃく)),建築(床柱・落掛)に,心材水浸液から赤色染料,山蘇芳(やまずほう)をとる。【原色】 | |
イチイ7 | 【コメント】最大の供給地である北海道でも出材量が減少している。また大径材は空洞を生じることが多く,したがって一尺を越えるサイズの丸盆は値段も高い。硬軟・色調の個体差があって,目が詰まった鮮やかな赤味の少々堅めの材は仕上がりが美しい。なお,依然として北海道の庭木の主役であり,山のイチイは減少しても,庭のイチイは多いという構図。(2003) | |
一位樫 | イチイガシ | 材はアカガシやシラカシよりやや軽くそれほど堅くないので加工しやすく,材質が優れていて長尺材が採れる。九州では重要な造林樹種になっていて,江戸時代には熊本藩,高鍋藩などで槍の柄専用の林を育てていたという。材の色はやや赤みを帯びた黄褐色である。【上村】 |
イチイガシ2 | 【効用編】材は古来船の艪材,槍の柄として最も賞用せられ鋤鍬の柄,轆轤,歯車其他堅牢を要する器具に賞用せらる 又堅牢にして水切れよきをもって下駄の歯に適す 此樹の老大なるものの内部は黴菌(ばいきん)の為めに蜂巣状を呈し雅なるをもって煙草盆,額縁,短冊掛等の如き堅牢緻密を要せざる所の装飾材に用いらる。 | |
イチイガシ3 | 別名櫓樫(ロガシ)。戦国時代に高鍋藩や細川藩では、長槍用に植樹していたという。一位樫のアラメは、一方の木口から息を吹くと他方に抜けるもので槍材として最良とされていた。イシメは全く息が抜けないもの。コマメはこれらの中間とされる。この槍の柄のお陰で鹿児島軍勢は強軍と言う評判を勝ち得たと言われている。 | |
イチイガシ4 | ・ 語源ははっきりわかっていない。産地ではいろいろな区分があり,代表的なものとして,アラメ,コマメ,イシメの区分があるが,遺伝的なものかどうかは明らかでない。アラメは最優良でかつて槍の柄に用いられ,また櫓材に一番よいとされた。昔,槍用の材は一方の口から空気を吹いて他端から出てくるものを選別したという。【平井】 ・ イシメは材が堅く狂いやすいとされる。 ・ カシ類のうちイチイガシだけはあく抜きが不要。 |
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イチイガシ5 | シラカシ,アカガシなどより軽軟なため加工しやすく,形質も良好なので,カシ類の中では最も有用なものとされている。特に16尺以上の長尺の艫材はイチイガシに限るとされ,そのためロガシという名もある。また,足駄歯としても上等のものであった。【平井】 | |
イチイガシ6 | イチイガシ老大樹のうろは蜂巣状をなし雅なるを以て煙草盆、額縁、短冊掛等となす【工藝】 | |
イチイガシ7 | イチイガシの槍柄及艪材等は割材を主とす柾目の方向に於いては液体の漏洩(ろうえい)最も少し又導管孔大なるものは木口より液体漏洩す【工藝】 | |
イチイガシ8 | 艪材商の言ふ所によれば艪材となすイチイガシは日に向きたる材部即アテ材は其反対の部分に比して二倍以上の高価を保つ日に向きたる材は質締りて生育し狂ひ少く弾力に富み日影の部分は柔くして粘(ねば)く(之を油木といひ又柔(やわい)といふ)狂ひ易きによる【工藝】 | |
イチイガシ9 | アカガシと同様,堅材的利用,すなわち器具(柄類・槌・算盤枠・運動具),船舶(艫),車輌(荷車),機械(歯車),旋作(紡績用木管),薪炭などに適し,シタンの模擬材,椎茸榾木にもなる。【原色】 | |
イチイガシ10 | 【コメント】大分県の宇佐八幡宮にはイチイガシの巨木が多く残っているが,九州でも利用可能な広葉樹資源が減少したため,市場には多くは出回っていないと思われる。まれにイチイガシのクラフト製品を見かけることがある。ただし、イチイガシの木刀がふつうに販売されているのは不思議である。素材の在庫があるのであろうか。柄材を目にする機会はほとんどない。(2003) | |
銀杏 | イチョウ1 | 年輪が目立たず,辺材心材も一様に淡黄色で,木目の変化には乏しい。比較的柔らかく,狂いにくく,加工しやすく,光沢もあり,何よりも大材を得られるので,碁盤・将棋盤(二級品。カヤに比べると音がよくないとされる。)などに使われる。ほかに俎板,彫刻材,器具材,家具材などに使われる。耐久性はよくない。 |
イチョウ2 | 【効用編】材は彫刻物,碁盤,将棋盤,算盤珠,俎板,張り板,床トコ板,裁縫板,製紙乾燥板,塗物木地類,匣(ハコ)類を製し,また印判木となし筆法を失わず。又唐土にては園亭の額に作り,符を刻むに用ゆると云ふ。九州にては建築の用に供す。 | |
イチョウ3 | 材は器具(碁盤・将棋盤・漆器下地・箱),彫刻(印判・版木・木魚),建築(天井・床板),家具(茶棚・書棚・仏壇)などになる。【原色】 | |
イチョウ4 | イチョウの名前の由来に関しては諸説ある。 ①中国名の一つ「鴨脚樹」の鴨脚の発音を,日本で「ヤーチャオ」と聞き,それが「イーチャオとなり,さらに転訛したという説 ②葉が一枚であるため,イチヨウ(一葉)の意であるなど。 |
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イチョウ5 | 【コメント】イチョウのまな板は一般的に市販されている。福井県では県指定郷土工芸品とされている模様で,デパートの物産展では福井県の業者を見かける。その一つの株式会社双葉商店のしおりには,イチョウまな板の特等として,①抗菌力がある。②材質が均一である。③油味があるため,水はけがよく匂いが残らない。④柔らかくて復元力があるため,刃あたりがよく包丁を傷めない。 としている。<注>イチョウ葉の各種の薬効については古くから知られ,現に利用されているところであり,また,ヨーロッパでは医薬品としての利用もあるというが,材の抗菌力に関しては定説を聞かない。(2003) | |
イチョウ6 | 【コメント】ギンナン(種子)の外種皮は猛烈なにおいがある上に地面,路面を汚すため,雌木は街路樹や公園には不向きとの見方があるが,現実は雌雄がごちゃ混ぜとなっている。ギンナンを多数つけたイチョウは近所の年寄りや通行人の楽しみになっていることが多い。 | |
犬槐 | イヌエンジュ1 | まとまってイヌエンジュの材が産出されるのは主として北海道で,北海道では開拓の始まった明治初期以来,高級材として扱われてきた。材木屋はこの材をエンジュと呼んで扱う。 中国原産のエンジュはイヌエンジュに似ているが,それよりやや重く,やや荒く材質は多少落ちる。用途もイヌエンジュと同じだが,植栽木なので実際にはあまり使われていない。 |
イヌエンジュ2 | 【効用編】材は雅致あるを以て指物及旋削用材に供す又床柱,斧の柄,農具の柄,馬鞍,鼓の胴等を作るに用ゆ特に手斧(ちょうな),改良鍬の柄には此材を賞用す日光地方の如きは手緒斧の柄に供する為めに此樹の細幹を切り出すこと多し之れ此材は撓曲部分湿気の為めに異状を起こし原形に復することなきを以てなり而して曲ぐるには蒸気を以て柔軟ならしめ模型にて圧搾す又北海道にては鐵道枕木其他の上等用材に供す | |
イヌエンジュ3 | 材は建築(洋風建築・床板・床框・落し懸け),家具(洋家具・鏡台・茶棚・和風指物),器具(寄木細工・針箱・将棋の駒・額縁・菓子器・タバコ盆・盆・ラケット・柄・馬の鞍・漆器木地),楽器(三味線など弦楽器の胴・鼓の胴),土木(枕木),彫刻,旋作(挽物) ,薪炭などに,樹皮は染料および薬用に供する。【原色】 | |
イヌエンジュ4 | 材は木材屋間ではエンジュと称し,濃い暗褐色で雅致があるため,昔から床柱,床框,落掛などによく用いられてきた。また,指物,すなわち和家具,鏡台,針箱などに使われるが,和風のみではなく,洋家具にもよく合い,洋風の腰羽目のような内装材,フローリングなどにも好適である。曲げ木にしてよく,強度・靱性があるので,とくに手斧(ちょうな)の柄に賞用され,また一般の農具・工具の柄,機械・車輌の部品,かつては馬鞍,枕木に用いられたことがある。【平井】 | |
イヌエンジュ5 | そのほか小さいものでは挽物の煙草盆・盆・菓子器などがあり,また三味線・月琴の銅,太鼓の銅のような楽器,寄木細工,木象嵌,彫刻,将棋の駒,漆器の素地などとその用途は広い。【平井】 | |
イヌエンジュ6 | 植物学上の本当のエンジュの材もイヌエンジュとよく似ていて材だけでは区別することが極めて難しいが,実際に材が市場に出てくることはほとんどない。【平井】 | |
イヌエンジュ7 | 【コメント】延寿(えんじゅ)にかけて,長寿を願うプレゼント用小物を多く見かける。北海道みやげでおなじみの足寄町のどんころ熊もイヌエンジュ。 | |
犬榧 | イヌガヤ1 | 木が小さいので木材としての利用はほとんど見るべきものはない。 |
イヌガヤ2 | 材は小細工用及旋作用に供す【効用編】 | |
イヌガヤ3 | 大材がないので碁盤(?)・細工物等おもに小器具に用いられるが,建築材(床縁),鉄道枕木,ろくろ細工等にも供せられる。種子から灯火用あるいは理髪用の油がとれる。【原色】 | |
イヌガヤ4 | 種子油の灯りは明るくて厳寒でも凍結しにくいので,かつては屋外灯特に航路標識灯用に珍重された。延喜式にもある閉彌油または閉美油(へみゆ)であるが,悪臭がある。 | |
犬四手 | イヌシデ1 | 【効用編】材は多く薪炭材となす 又外面凸凹奇雅なるに因て細幹は床柱、杖及傘柄等に賞用せらる 此皮付の生木は椎茸を養成する料とす |
イヌシデ2 | 材は器具(柄・ステッキ),旋作(紡績木管),建築(皮付床柱),薪炭,椎茸榾木などに用いる。【原色】 | |
イヌシデ3 | 【コメント】地味な存在であるが公園樹として一般的で,灰褐色の平滑な樹皮に灰白色の縦長の網状の模様が特徴で,それとすぐに分かる。「イヌ」は一般に,似て非なるもの,本物より劣るといった意味合いであるが,本種の「イヌ」についての解説は聞いたことがない。 | |
犬黄楊 | イヌツゲ1 | 【効用編】材は小細工用材、版木材、印材、装飾材、旋作材とす又夏蠶(蚕)の簇に代用す又此材にて櫛を製作す因て髪かかずの名あり今訛ってびんかと云ふ以て天然の小楊枝を作る |
イヌツゲ2 | モチノキ同様,材は旋作(ろくろ細工),彫刻(印判・版木),器具(櫛・算盤玉・柄・下駄・楔・木釘・小細工)などに供し,内樹皮からは鳥もち(青もち)がとれる。【原色】 | |
犬橅 | イヌブナ | 材は器具,家具,薪炭などブナとほぼ同様の用途に供せられる。【原色】 |
犬槇 | イヌマキ1 | 保存性が高く,特にシロアリに対し抵抗性があるので,沖縄では貴重な建築材である。水湿に耐えるので桶類に賞用される。 |
イヌマキ2 | 【効用編】材は家屋の建築用材としてその勁(ケイ:つよい)剛力の点より稍々スギに劣るも,地中及び水中に使用すれば保存期限長きを以て,昔より棺桶を製するに用ひたり。又天井板,碁盤,椽[タルキ]板,落掛,箱材,桶材,井框(井戸の枠),水槽に用ゆ。又これを枌ぎて屋根板とすればサワラより強し。又伊豆地方にては炭材となす。 | |
イヌマキ3 | 材はその耐水性より桶・水槽・呑口等によく,器具(碁盤・指物・箱・下駄),建築(屋根・縁板・天井板),土木(とくに水工)材になる。【原色】 | |
イヌマキ4 | 【コメント】庭木,生け垣として千葉県以西ではおなじみの風景。ただし庭木としては変種で葉が小型のラカンマキが多いという。沖縄では人工林があるというが,天然の利用可能な太さのものをみかけることはない。(2003) | |
水蝋の木 | イボタノキ1 | 【効用編】材は杖或は鞭となす |
イボタノキ2 | 【コメント】しばしば生け垣としての利用を見かける。枝葉にはロウムシ(イボタロウカイガラムシ)がつき,イボタ蝋ができる。このイボタ蝋は木工品,桐タンスのつや出し用として知られている。(2003) | |
鵜松明樺 | ウダイカンバ1 | 心材は淡紅褐色,辺材は白色で,家具,床板,パルプ,ベニヤなどに賞用する。特に洋家具,あるいは建築の内装用としては高級材料である。木材市場ではマカンバ,マカバと呼ばれ,また,特に心材率の低いものを北海道ではメジロカンバという。 ⇒カバ参照 |
ウダイカンバ2 | 北海道産広葉樹材の代表的なものの一つで,蓄積はかなりあるが,樹木としての形質がよく材質が優れているため,戦時中は軍用材として,また戦後は合板用材として乱伐されたので,現在では材質良好のものをまとめて得ることは難しくなっている。【平井】 | |
ウダイカンバ3 | 辺材は白色,心材は淡紅褐色。材はやや重硬,また強靱であるが,乾燥も比較的容易であり,表面仕上げは良好,材が緻密なため接着性は良く,塗装性も良い。北海道の木材業者の間でメジロカンバと呼ばれているものがある。一般に辺材の割合が多いものをこういっているが,また材が軟らかく樹皮が白っぽいともいう。取引の上で通常の心材が多いものと値段を区別する場合がある。【平井】 | |
ウダイカンバ4 | 樹木としての形質がよく欠点が少なく,また材は緻密・均質で強度が大であるため,各方面の用途に広く賞用される。家具材,建築内装材,フローリング,敷居,ドアなどの洋風建具類,車輌材,船舶材,強度を必要とする各種器具材,とくに紡績用木管材・靴木型材・ミシンテーブル,機械部材,スキー材,ピアノのハンマー・外装などの楽器材,キャビネット材などがあげられる。また,合板用材のうちでは特別の位置にある。現在家具や建築内装の方面でサクラといっているものは,ウダイカンバが多い。【平井】 | |
ウダイカンバ5 | 材は合板(ことにベニヤチェスト),硬化積層材やカババイタ(リグナムバイタの代用として本材にパラフィンを注入した軸受用材),パルプ,家具,器具(紡績木管・靴型),車輌,機械,建築(床板)などに重用され,いわゆる改良木材の原料として歓迎されている。樹皮は屋根葺・篝火(かがりび)用。【原色】 | |
ウダイカンバ6 | 市場ではマカバと称し、芯材の色具合を、「赤味が張る」と表現する。 | |
ウダイカンバ7 | 【コメント】心材の比率が高い大径材は内装用等の天然木化粧合板用として,突出した高値で取り引きされる。家具材としての評価も非常に高く,高級家具材料となる。(2003) | |
卯木/空木 | ウツギ1 | 【効用編】材は主として木釘を作るに用いられ又樽の呑口、楊枝、寄せ木細工に用ゆ此木は大樹とならずして久しく小形を保つを以て東京附近に於いては畠地の境界に植ゆ |
ウツギ2 | 呑口胴となし汚れ目付かず【工藝】 | |
ウツギ3 | 木釘としてウツギは乾固するに従ひ堅硬となるを以て用ひらる【工藝】 | |
姥芽(目)樫 | ウバメガシ1 | カシの中も一段と堅いので,櫓枕(ろまくら),櫓臍(ろべそ)などすり減っては困る小部品に使われてきた。樹皮は染料になる。 備長炭(堅いので火力が強く,安定した持続性がある。)の原料。これは,紀州の木炭商,備中屋長左衛門が開発したもので,紀州藩では重要な財源となり厳重な専売制が取られていた。今でも和歌山の県木はウバメガシである。【上村】 |
ウバメガシ2 | 【効用編】材は最も上等なる炭所謂備長炭を製するに用ふ 此炭は火力強きと灰を残すこと少なきを以て鰻屋又は料理店の賞用する所なり 又水を注ぐも水を吸収すること少なき故に直ちに再び用い得るの効あり 而して其質緻密にして重く打つときは金属の如き音を発す 又此を磨きて印材となすを得べし | |
ウバメガシ3 | 【効用編】又艪臍,艪頸は此材に限ると云ふ 又槌,杵等を作るにも適当す 但し此材は割り難きをもって分割して使用する薪材には不適当なり 故に10年乃至20年毎に伐採して丸木の儘(まま)炭に焼くを最も利益なりとす | |
ウバメガシ4 | 材の用途の最も著名なものは木炭(備長炭)であり,活性炭であるが,その他に船具(艪・艪臍),車輌,農具,下駄の歯などがある。【原色】 | |
ウバメガシ5 | 【コメント】生け垣,公園木として見かけるが,身近で木材の使用例を見ることはない。木材そのものよりも黒く変身した備長炭で有名。(2003) | |
梅 | ウメ1 | 大きい材は採れないが,紅褐色がかった堅い,緻密な材なので,櫛,数珠など細工物,印材,根付けなどの細かい彫刻をする材料などに用いられる。 |
ウメ2 | 辺材は淡黄褐色,心材は紅褐色。仕上げ面は良好で光沢が出る。割裂しにくく耐朽性は大きい。材の用途は器具材が主で,櫛にはツゲ,イスノキに次ぐものとして賞用された。数珠にもなり,とくに日蓮宗では星下がりのウメと称して白梅の中心材を用いた。そのほか算盤玉,将棋の駒,箸,台・箱などの小細工物,工具の柄,旋削して盆などの漆器木地,洋傘の柄,ステッキ,彫刻物(一般彫刻,根付,印材),床柱にも使われる。【平井】 | |
ウメ3 | 【効用編】材は櫛材、盆其他の旋作用材に供す又器械の摩擦部に用ゆ又床柱となすに雅致あり又板に雲容の美観あるを以て指物として賞用す | |
ウメ4 | 材は重厚な感じがよろこばれ,床柱をはじめ器具(小細工・箱・算盤玉・念珠・櫛・柄),彫刻に,樹皮は薬用に,果実は食用と染色媒染剤になる。【原色】 | |
ウメ5 | 日蓮宗にては星下りのウメと称し白梅の木髄部を数珠に用ふ【工藝】 | |
ウメ6 | 【コメント】大分県大山町の「梅の木工房」では,若者が更新のために伐採したウメの木を利用して赤味の美しい「ニマ工法」による器を製作・販売している。(2003) | |
裏白樫 | ウラジロガシ1 | 利用上はシラカシと区別されることなく一般に同一に取り扱われている。 |
ウラジロガシ2 | 【効用編】シラカシに略ぼ同じ | |
裏白樅 | ウラジロモミ | 材は建築(板),下駄,パルプなどになる。【原色】 |
漆 | ウルシ1 | 【効用編】材は装飾材、寄木細工材、漁網の浮け木、下駄材及び旋作用材とす |
ウルシ2 | (移入樹種) 漆液採取の目的で植栽されることはいうまでもないが,材は建築(建具),器具(寄木細工・木象嵌・浮子・弓の側木・箱・桶樽・味噌樽・柄・膳・下駄),土木(土工用),旋作,薪などになり,中果皮から蝋と馬の資料,葉から染料がとれる。【原色】 |
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上溝桜 | ウワミズザクラ1 | 【効用編】材は旋製物、印版、家の造作物、盆類、小家具、板、小細工、傘の柄等を作るに用ゆ |
ウワミズザクラ2 | ヤマザクラと同様に,材は建築(内部造作・板類),器具(小家具・小細工・菓子型・柄・丸物漆器木地・盆・橇),車輌(車台),彫刻(印判・版木),旋作,薪炭などに,樹皮は小細工(タバコ入れや山刀鞘に貼用市,曲げ物を縫う)に,また根とともに染料(鳶色)をとる。果実も食用。【原色】 | |
- | エゴノキ1 | 材は硬い。玩具,傘のろくろ(傘の柄の上部にとりつけて骨の端をはめこむ小さな臼状の部品),くり物などに利用する。「ろくろぎ」の別名がある。エゴノキの炭はガラス器や漆器の研磨用になる。 |
エゴノキ2 | 【効用編】材は主として傘柄の轆轤を作る又漏斗、独楽、樽桶の呑口、煙草入其他の旋作用に供し又は杖を作るに用ゆ | |
エゴノキ3 | エゴノキは芯持材を以て旋作するも割るることなし傘の轆轤、道具の柄、玩具等に賞用せらる【工藝】 | |
エゴノキ4 | 材は建築(床柱),器具(柄・ステッキ・将棋の駒・玩具・こま・漏斗,樽の呑口・タバコのパイプ・粗朶・簔の縁に、種子からは油,果実は肥料・小鳥の飼料・捕魚用になる。【原色】 | |
エゴノキ5 | 【コメント】現在でも和傘の轆轤(ろくろ)に使用されている。チシャノキを使用しているとして紹介されていることがあるが,その場合のチシャノキは標準和名でいうチシャノキではなく,エゴノキの地方名である。なお,春にハクウンボクに似た白い花を見事に付けるため,公園樹としても利用されている。 | |
蝦夷松 | エゾマツ1 | 比重の割には強い材。耐朽性・保存性は低い。最高品質のパルプ材が得られる。特定用途として,ピアノ響板,ヴァイオリンの甲板に賞用される。 |
エゾマツ2 | 【効用編】北海道においては建築材に賞用せられ,船材帆柱器具類を作るに用いらる。将来は製紙用材として広く使用せらるるに至るべし,北海道に於てはこの枝葉を元旦の門松及緑門の装飾に用ゆ。 | |
エゾマツ3 | 材はパルプのほか,建築(屋根板・屋根柾・柱),家具,土木(坑木),器具(マッチ軸木・経木),船舶(帆柱),車輌,楽器,包装,機械(織機),航空機,等用途広く,特定用途としてピアノ響板・ヴァイオリンの甲板に賞用される。樹皮からは鞣皮用タンニンをとり,屋根葺き用にもなる。 (商品としてのエゾマツには本材のほかアカエゾマツも含まれている。)【原色】 |
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榎,榎木 | エノキ1 | 古くはよのきとも呼ばれた。エノキは一里塚の木でもある。また,エノキは道祖神とも結びついている。古代から杭(登呂),碗,皿(山木)などに利用され,中世には緑陰と馬鞍の用材をかねて城内によく植えられたという。木目がケヤキに似ているので家具,造作に適する。 |
エノキ2 | 【効用編】材は多く薪炭材に供す 火力強く生材にても能く燃焼す 又靱力に富むを以て此性質を利用して荷鞍其他器具となし又爼(=俎まないた)となす 此材はケヤキに似るを以て之を板に挽きて色を着けケヤキ材に擬し種々の器具を製することあり | |
エノキ3 | 材は一応,建築,器具(俎板・截板・運動具ことにラケット枠・柄類),家具(洋家具),機械(滑車),薪炭などに,枝条は海苔粗朶になる。ケヤキの模擬材。【原色】 | |
エノキ4 | 【コメント】道端にしばしばエノキの大木あるのは普通の日本の風景。一里塚の目印としてよく植えられたとも言う。葉は国蝶のオオムラサキやゴマダラチョウの幼虫の餌になる。 | |
大島桜 | オオシマザクラ | 用途はヤマザクラに同じ。材は薪として,また葉は塩漬けに有名。【原色】 |
大葉麻殻 | オオバアサガラ | 材は器具(樽の呑口・マッチ軸木)および薪炭になり、実から油をとる。【原色】 |
大葉菩提樹 | オオバボダイジュ | シナノキに同じく,材のみならず樹皮も有用。【原色】 |
大山桜 | オオヤマザクラ | 材は建築(洋風建築・敷居),家具(和洋家具・陳列棚・鏡台),器具(木象嵌・パイプ・スキー・木型・ステッキ・柄・箱・定規・額縁・念珠・漆器木地・櫛),機械(測量用三脚・時計枠・度衡器),楽器(琴柱・三味線の棹・琵琶の胴・腹板および撥・ヴァイオリンの弓・ピアノやオルガンの外囲),彫刻材(版木),旋作(挽物・紡績木管)に,樹皮は桜皮として小細工に用いる。【原色】 |
御賀玉樹/招霊の木 | オガタマノキ1 | 【効用編】材は床柱となし又小器具を作るに用いらる |
オガタマノキ2 | 【コメント】招霊(をぎたま)の木が転じてオガタマノキの名になったともいわれ,神社に植栽された大木をしばしば見かけるが,一般的ではない。(2003) | |
鬼胡桃 | オニグルミ1 | 一般にブラックウォールナットに比べてずっと軽く,柔らかく,また加工しやすく扱いやすい。堅さにばらつきがある。銃砲の台座としてはこれに勝るものはないといわれる。 |
オニグルミ2 | 【効用編】材は小銃の台木に適当し銃台としては此材に優ものなし故に北海道の南部及内地の山中より盛にこの材を切り出し且外国よりも多く之を輸入す又此材は磨きによりて光沢を生ずる故に文房具,鏡台,箱類,机,椅子,木履(きぐつ)等の制作に適す又此材は染めて種々なる色を付け易し又下等の材及小枝材は薪材に供すべく火力稍々強し近来は摺附木の軸木に用ゆ。 | |
オニグルミ3 | 狂いが少なく,強靱であるから,器具材,家具材,銃床材などに賞用され,東北,北海道が主な主産地である。 | |
オニグルミ4 | 材は建築(洋風建築・敷居),家具(洋家具・鏡台),器具(桶・箱・農具・ラケット枠),彫刻,機械(三脚・枠の類),旋作,工芸(杢象嵌・マホガニーの模擬材)その他用途多く,なかでも銃床用材として最も賞用される。樹皮からは染料がとれ,種子は食用,果皮も工芸的に利用できる。【原色】 | |
斧折れ樺 | オノオレカンバ1 | 本州以北の寒地に多いカバノキ科の落葉中木で,比重は0.85ぐらい。この埋もれ木の心材が非常に硬くて斧の柄も折れるというところからこの名が付けられたという。算盤の珠や彫刻その他器具類にも使われる。 |
オノオレカンバ2 | 【効用編】材は小器械用材となしカシ材に代用す 故に盆類を?削し木硯,傘柄,杖,梭(カイ,オサ),杼(ヒ),櫛等を作り深雪の地にては橇を作る 又炭に焼くときは上等なり | |
オノオレカンバ3 | ミネバリ(オノオレカンバ)は信州木曽にて御六櫛と称する梳櫛の材料にして硬度重量他樹に優る其心材は紅色を帯び繊維細密なり故に梳櫛の如き細密なる歯立てをなすも欠損することなく又塗櫛としてツゲに擬す【工藝】 | |
オノオレカンバ4 | 材は旋作に適し,器具(軸や柄類・木型類・橇・台類・ブラシ木地・漆器丸物の木地・木魚・算盤枠・ステッキ・細工物),建築(洋風建築造作・土台・敷居),家具(洋家具),船舶(櫂),車輌(車軸・輻),彫刻,薪炭などに,樹皮は壁下地に用いる。【原色】 | |
オノオレカンバ5 | 【コメント】岩手県二戸市の有限会社プラム工芸が製作しているオノオレカンバを使用した肩たたき,しゃもじ,靴べら等の小物は都内のデパートでもおなじみとなっている。しかし,材料の調達に苦労している模様である。(2003) | |
- | オヒョウ1 | 【厚司織】:アイヌの厚司布は,本来ニレ科のオヒョウニレの靱皮繊維で作った厚地の織物である。材はハルニレに似て諸器具類に使われる。 |
オヒョウ2 | 樹皮は強靱であるから,織物,縄,皮箕,鉈の鞘などを作る。 | |
オヒョウ3 | 【効用編】材は器具材及薪炭材となす 樹皮は繊維柔軟なるに由り北海道の土人は此を以て布を織る | |
オヒョウ4 | 用途は器具,薪炭用,樹皮からアイヌの衣料アツシ・縄や編物・刃物の鞘を作り,製紙原料にもなる。【原色】 | |
槭 | カエデ | ・ カエデの材は若干の例外を除けば中庸の堅さで緻密,優れた家具材や内装材になる。日本ではイタヤカエデが代表格であり,北米ではより大材が採れるサトウカエデが代表格である。北米のカエデ材はその材の硬軟でハードメープルとソフトメープルに分けられる。シュガーメープル(さとうかえで)やブラックメープルが前者で,シルバーメープルやレッドメープルなどが後者である。ダンスホールの床,ボーリング場のアプローチやピンなどの特殊用途には前者が使われるが,両者はしばしば混用されてしまう。 ・ 楽器では,バイオリンの裏板や側板がカエデに限るとされるが,これは高い周波数が良く響く,つまり倍音が強くなるからだとされる。シカモアメープルなどの欧州材,特にバルカン材が最良とされる。【上村】 ・ 鳥目杢がでたものはバーズアイメープルとして評価が高い。 |
柿の木→黒柿を参照 | カキノキ1 | 材は建築(床柱・内部造作),器具(寄木・木象嵌・櫛),機械(ことに)紡織用のシャットル)などになり,果実は食用,ことに渋柿の実からはタンニン(柿渋)をとる。【原色】 |
カキノキ2 | 心材のでき方は一般に不規則で、辺材は灰白色、心材に当たるものは黒色の縞が入り混じったものになりになり、また色の濃淡があり、ときには一面に黒色になるものがある。これをクロガキ(黒柿)といって珍重する。材は緻密であるが、縦断面に道管の条が粗く見える。床柱・床(とこ)周りを主にした建築装飾材、箪笥・机・手箱・火鉢などの家具材、額縁・箸・櫛・定規などの器具材、紡績シャトル、寄せ木細工、象眼材、彫刻材、化粧合板などに利用される。【平井】 | |
鹿子木 | カゴノキ1 | 木材はくすんだ褐色~暗褐色を示し,光沢がある。気乾比重約0.70,やや重硬でやや緻密な散孔材。地域的に建築,器具,小細工などに用いられる。【百科】 |
カゴノキ2 | 加工の時に不快な匂いを発するとの記述を目にしたが、経験的には生材は臭くても乾燥材は特に臭いは感じなかった。小細工物に適し,殊に楽器材としては古来より鼓の胴として珍重され,また船の檣(ほばしら。帆柱。マスト。)の楔や艪臍に用いる。 | |
カゴノキ3 | 材は器具(小細工物),楽器(鼓の胴),船舶(帆柱の楔・艪臍),建築、薪炭などになる。【原色】 | |
カゴノキ4 | 材は散孔材で,辺材は黄白色,心材は淡紅褐色,年輪は明瞭,材面にピスフレック(褐色斑,髄斑)があらわれるものがある。材の利用は一般に器具材,小細工物,薪炭材であるが,鼓の胴として特殊な用途があり,また船舶用部材(帆柱の楔,艪臍など),建築材の一部(柱,敷居,板など),家具材(鏡台など),車輌材(車輪-和歌山県南部)の記載もある。【平井】 | |
カゴノキ5 | 【効用編】材は専ら器具及小細工用材に供す又檣(ほばしら)の楔、鼓の胴に用い又薪炭に供す | |
カゴノキ6 | 【コメント】鹿(か)の子まだらの樹皮から,すぐにそれとわかる。 | |
柏 | カシワ1 | ミズナラとほとんど同様の組織構造を持つ環孔材で,ミズナラより重硬,また繊維が乱れていることがより多いため加工が困難で,狂いが出やすい。材の利用はミズナラと同様で,ナラ材として出材されているものの中にカシワが混じっている場合がある。用途として器具材,家具材,建築材,枕木,船舶材,シイタケ榾木などがあげられるが,導管にチロースが多いので,ウィスキー,ビール,葡萄酒の樽材にはよいといわれる。【平井】 |
カシワ2 | カシワの最もめざましかった用途は樹皮のタンニンを鞣皮,漁網染色に利用することであった。明治35年(1902)頃から北海道にタンニンエキス工場が建てられ,日露戦争を経て大正初期までに十勝を中心としたカシワ林を全く荒らしてしまった。【平井】 | |
カシワ3 | 【効用編】材は薪炭材としてコナラ、クヌギに次ぐ 其木口梅鉢形をなし雅なるを以て此れにて根付其他装飾用の小器具を作る | |
カシワ4 | 材は器具(ビール樽・ぶどう酒樽など桶樽類・定規),家具,建築(内部造作・床板・土台・床柱),土木(枕木),機械,船舶,薪炭,椎茸榾木などに,樹皮からは鞣皮用タンニン・染料がとれる。堅果は食用,葉も柏餅や肥料に使う。【原色】 | |
カシワ5 | 【コメント】北海道芽室町の芽室公園にはカシワの大木が多数あることで知られる。北海道開拓前の鬱蒼たる平地林の名残である。(2003) | |
桂 | カツラ1 | 適度に硬く,細かい道管が均等に分布しているので,広葉樹のなかで最も均質な材である。従って木目が細かく,狂いが少ないので,仏像,その他彫刻に適し,碁盤,将棋盤にはカヤに次ぐ適材(イチョウ説もあり)とされている。引き出しの側板としては定評があった。かつては洗濯用の張り板,和裁の裁ち板などの用途があり,馴染みの深い木材であった。日高の緋ガツラ(赤味の張り具合,木味の柔らかさ良し)は評価良し。 cf.「アオガツラ」 |
カツラ2 | 【効用編】材は家屋,橋梁,造船,其他建築材とし又神像,図板,裁板,張板,版木,下駄,下駄の歯,碁盤,机,箱,煙草盆,釜蓋,鉛筆其他器具を作るに用い又薪材とす | |
カツラ3 | 材は建築(内部造作),器具(仏具・看板・俎板・裁板・碁盤・将棋盤・図版・額縁・ラケット・木型・ブラシ木地・盆・箱・漆器木地・寄木木象嵌・下駄とその歯・櫛・鉛筆軸木),家具(和洋家具・仏壇),機械(度器・調革車・時計枠);楽器(ピアノやオルガンの外囲・琵琶の胴),土木(枕木・橋梁),船舶(船底),彫刻(版木・神仏像),旋作(挽物)に樹皮は屋根葺用および染料に,葉は抹香になる。【原色】 | |
カツラ4 | 椎葉神楽の面はカツラ。各地で家に使う場合は人の下の材(踏み板や敷居などの人が踏んだりするところ)には使うなという言い伝えがある。一方,カツラの階段板は非常に足に優しく具合がよろしいとの記述を目にしたことがある。 | |
カツラ5 | 出材を扱うものの間で,材色が濃くて赤身が多いものをヒガツラ,色が淡くて白っぽいものをアオガツラといって区別していることがある。そしてヒガツラの方が材が素直で狂いが少ないという。北海道日高産の材はヒガツラが多いので優良材として評価が高い。【平井】 なお、雄株を緋桂、雌株を青桂と呼ぶとの説がある。 |
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カツラ6 | 【コメント】学校教材用の版画板として,従前からホオノキと並んでおなじみ。また,比較的出来の良い家具の引出の側板にはよくカツラが利用されている。(2003) | |
- | カナクギノキ1 | 【効用編】材は器具又は木釘を作るのに用い又香気あるを以てクロモジに次ぐの用あるべし。 ⇒ (注)カナクギは釘のことではない。木釘を作るとの記述は誤りのようである。 |
カナクギノキ2 | 材は小細工,楊枝,薪炭などに用いる。【原色】 | |
カナクギノキ3 | 【コメント】名前は印象的であるが,釘とは関係ないようで残念。花も実も小さく手目立たない。(2003) | |
要黐 | カナメモチ1 | 檜皮(ひわだ)剥ぎのヘラとして利用する。 |
カナメモチ2 | 材硬し扇の骨となす【工藝】 | |
カナメモチ3 | 我が国産の広葉樹材中では最も重硬なものの一つ。近縁のカマツカよりかなり重いが,それに近い用途に使われる。すなわち,鎌などの農具・工具の柄,扇の骨その他の器具材,和船の艪臍,荷車の車輪・車軸,下駄などである。樹は若葉の紅葉が美しいので庭木にも植栽され,ことに生垣に最も多く用いられるものの一つである。【平井】 | |
カナメモチ4 | 【効用編】材は車輪,車軸、艪臍を作るに用い又扇の要?,鎌柄、牛の鼻木となす 注:「扇の要(かなめ)」はあり得ない(誤り)とされる。 |
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カナメモチ5 | 材は器具(鎌の柄・扇の要・牛の鼻輪),船舶(艪臍),車輌(車輪・車軸),薪になる。 注:「扇の要」は誤り。 |
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カナメモチ6 | 【コメント】生け垣としての利用もあるが,本種と中国産のオオカナメモチとの交配種であるレッドロビンは生け垣としてより広く普及している。(2003) | |
樺 | カバ | 良材は芦別,津別方面と静内地区,噴火湾沿岸に産するという。 |
鎌柄 | カマツカ1 | 【効用編】ウシコロシとも 材は鍛工,石工の器具の柄及杖に用ひ又皮を去り曲げて牛の鼻木(注:鼻輪、鼻環、鼻ぐりとも。)に用ゆ故にウシコロシと云ふ又鎌の柄に賞用するを以てカマツカと云ふ |
カマツカ2 | 材頗る粘靱にして堅く、鎌の柄に用いらるるに由り鎌柄の名を得、又牛の鼻に綱を通す時此の木を以て鼻障孔を穿つより牛殺しと称す。【牧野】 | |
カマツカ3 | 石工玄翁の柄にはウシコロシ(カマツカ)を用ふ弾力強く折るることなし,ウシコロシは折るるも玄翁の頭飛ぶことなし故に石工其他は怪我をなすことなく且付近の石材に衝突して之を損することなし,ウシコロシは弾性強きを以て手に響かず力強く加はるを以て其効果大なり【工藝】 | |
カマツカ4 | 材は重硬・強靱で,割裂しにくく加工困難である。古くから農具・工具の柄に用いられ,とくに石工・鍛工の玄翁などの柄に最も賞用された。そのほか洋傘の柄,和船の艪臍,櫛(おもに塗櫛用),旋削による小細工物などの用途がある。【平井】 | |
カマツカ5 | ワタゲカマツカに同じく材は器具,旋作,薪炭などに用いる。【原色】 | |
カマツカ6 | 【コメント】上記1と2では、利用方法が全く異なっている。 | |
榧 | カヤ1 | 木部の90%以上を占める仮道管の大きさが割合そろっているので,針葉樹のなかでも均質である。碁盤,将棋盤の最高級材。耐朽・保存性が高く,水湿にも耐え,縄文,弥生時代には丸木舟,柵,あるいは鼠返しなどに用いられている。独特の匂いがある。樹脂分が多いので経年変化が美い。 |
カヤ2 | 昔,碁盤は四方柾目を最上としたが,今はそのような盤の採れる大材はない。碁盤の標準寸法は縦が45センチ,横が42センチだから,厚さ6寸(18センチ)とすれば断面円形の丸太なら直径が歩留まりを見て80~90センチ以上は必要になる。今では芯が偏っていて断面が長円形のものは柾目に近いものが採れるので,径50~60センチでも1立方メートル当たり300~500万円の高値を呼ぶという。〔例〕昭和57年綾営林署 末口70センチ,長さ4.3メートル=2,802万円(1,330万円/立方メートル) 碁盤の材は四角に粗木取りするが,盤面には木表を当てるのが原則,辺材が入って目立つような場合にはやむを得ず木裏を盤面に取る。これを自然乾燥させるのだが,厚さ1寸で少なくとも1年かかるとされ,6寸なら6年以上置かなくてはならない。【上村】 |
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カヤ3 | カヤ材は,その付加価値からできるだけ碁盤,それに次いで将棋盤を取る。寸法が足りないものは張り合わせた普及品なども作る。残材や盤として使われない材には将棋の駒,算盤玉など特殊な用途もあるが,カヤ材は水湿に耐え腐りにくい特徴があるので,浴槽や浴室用材として喜ばれる。その他の建築用材,家具材,器具材,彫刻材などあらゆる用途に使われ,無駄がない。【上村】 | |
カヤ4 | 【効用編】材は木理細密にしてよく水湿に耐へ保存期永く,乾裂乾縮の恐れなきを以て建築造船の最良材にして,又土中に埋めて朽ちず浴室の材に用ゆ。又此材を以て船底を作るときは香気あるを以て虫蝕の害なく,又和船の「こべり」になすときは水の為めに濡ふことあるも滑ることなしと。又碁盤,将棋盤,算盤珠,大鍬の台等を作る。又此材を焼けば蚊を遣るに効あり,カヤの名はカヤリノキより転訛したるなり。 | |
カヤ5 | 表面仕上げの状態は良好で保存性が高く,とくに水湿によく耐える。したがって建築材では土台,浴室用材に賞用され,また良質のものは床柱,縁板などに用いられる。カヤ材の用途で最も知られているのは碁盤であろう。とくに宮崎県産のものが最上とされ,旧来の製法では採材したものを10年ほどの年月をかけてゆっくり乾燥させる。将棋盤,将棋駒にも同様に用いられ,そのほかの器具材では桶類,とくに風呂桶,漆器木地,箱類,算盤珠,数珠,木櫛,洋傘の柄,大鍬の台などがあり,箪笥・椅子などの家具材,車輌材,和船の船底・船縁など,仏像などの彫刻材,木象嵌,寄木細工,薪材などがある。【平井】 | |
カヤ6 | 碁盤・将棋盤として最優秀,ことに日向・奈良春日山産のものが名高い。器具(ことに風呂桶・浴室用材として),建築(床柱),土木,船舶,彫刻になる。【原色】 | |
カヤ7 | 【コメント】カヤの木は公園樹としておなじみであっても高級碁盤・将棋盤を所有していなければ材は一般になじみがない。しかし,九州では表札としても普通に利用している。黄色みの強いしっとりとした色沢が魅力である。(2003) | |
烏山椒 | カラスザンショウ1 | 箱根細工では黄色材の一つとして用いられる。やや軽軟であり材も白いので,地方によってはキリの代用材として下駄に用いられた。【平井】 |
カラスザンショウ2 | 【効用編】材は小細工用及木履(ぼくり,ぽくり,ぽっくり,きぐつ)となす | |
カラスザンショウ3 | 材は加工の際に,独特の匂いがする。 | |
唐松 | カラマツ | 心材の水中での耐久性には定評がある。天然の材は天(テン)カラと呼ばれ,細かい木目が美しく造作材として賞用される。出材量が極めて少ないため銘木扱いされる。 |
カラマツ2 | 【効用編】材は赤褐色美麗なるをもって柱,長押,床柱などの装飾を兼ぬる建築及艦船,橋梁,電柱,鐵道枕木などに使用す。信州にては間伐材を農作用丸太,足場丸太,磨丸太,堤防用材及垣根用材となす。又其老根又は脂多き部を取りて彫刻を加へ,茶盆,煙草入類を造れば大に雅致ありて透刻を施し易し。 ⇒天然カラマツと人工カラマツを束ねて記述しているものと思われる。 |
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カラマツ3 | かつては坑木として,特に炭坑で最も多く用いられていた。【平井】 | |
カラマツ4 | 材は土木(坑木・電柱・枕木・橋梁),建築(柱・土台・屋根板・床柱),船舶,製紙パルプ,彫刻などに,間伐材の地形杭・農漁業用・堤防用材などは特定用途。樹皮から船長,タンニン,樹脂からテレピン油。【原色】 | |
カラマツ5 | 【コメント】カラマツの郷土はもちろん信州であるが,造林面積は北海道の方が多い。(2003) | |
川柳 | カワヤナギ1 | 【効用編】材は火薬製造用の木炭に供す 又牙杖となす樹は護岸の用をなす |
カワヤナギ2 | バッコヤナギに同じ。【原色】 | |
- | キササゲ1 | 材は軽いので下駄,器具,版木にする。【百科】 |
キササゲ2 | 【効用編】材は木履を作るに用ゆ | |
黄檗 | キハダ1 | ・材は軽軟で耐久性はあまりないが,木目がきれいで造作,家具に使われる。 ・床柱,床板,家具,杓子,盆,椀などに使われる。 ・銘木業界では慣用的に「木和田」と書いている。【春永】 |
キハダ2 | 【効用編】材は鉄砲類の台木となしクルミ材に次ぐ又杯盞(はいさん→さかずき),盆,椀などを旋削し,木理美麗なるものは家具の装飾用材とし又机,書棚,箱類等を作るに用い木曽,富士等にては木履[ボクリ,キグツ]を作る又薪材となす | |
キハダ3 | 材は建築(床柱・床板・屋根板・造作),家具(書棚・鏡台・箪笥の前板),器具(箱・火鉢・タバコ盆・杓子・寄木細工・下駄・経木),土木(坑木),旋作(盆・杯・椀),燃料になり,クワの模擬材。樹皮ことに内樹皮(漢方で黄蘗にはベルベリン多く胃腸薬となり塩基性黄食染料もろれる。だらにすけは黄蘗とアオキの葉の水製エキス。【原色】 | |
キハダ4 | 材はあまり強くないが水湿に対する抵抗性があり,クリに次ぐと言われている。材は独特の色であるがくすんだ暗い色であまりきれいとはいえない。家具材,建築内装材にも用いられるが上級ではない。ただ色と木理がややクワに似ているので鏡台,針箱,茶箪笥などにクワの模擬材として使われる。そのほか各種器具材,経木,寄木,薪材としての用途がある。【平井】 | |
キハダ5 | 【コメント】生活上の馴染みからすれば,キハダ樹皮を主原料とした長野県の百草丸,奈良県の陀羅尼助丸がよく知られている。ただし,原料を中国に依存して久しいとも。木製品としては,木曽の南木曽町で製作していたキハダの樹皮を残してろくろ加工した菓子器はユニークであった。 | |
桐 | キリ1 | 衣服,貴重品の収納には,我が国特有の桐材が第一であることは,今昔変わらざるところ。桐ダンスは,関東では春日部,川越製などの名があったが,今は新潟の加茂が全国的な有名産地。琴は福山。 良材は福島県の会津,岩手県の南部のもので,主として関東以北に植栽されている。関東のものは昔からやや質が劣る。 |
キリ2 | 材の比重は0.3で本邦産材中最も軽い。昔からキリは湿気を通さず,また火に強いから箪笥や金庫の内装に最適だといわれているが,キリの吸湿性や膨張収縮,着火温度,発火温度,熱伝導率など,この話に関係のありそうな物理的性質は,ほぼ同じ比重の他の木を比較してそれほど違いはないことから,この言い伝えの科学的根拠は弱い。 | |
キリ3 | 国内需要のほとんどが輸入。米材は日本のキリと同一種。今,山に自生する良質のキリを相当量産出できるのは,アメリカ,中国,台湾である。 | |
キリ4 | 【効用編】材は琴瑟(きんしつ)などの楽器,机,箱,菓子折,?製柄杓,箪笥,書厨,長持等の家具,木履,浮票(ブイやうき),呑口等を作り又建築の装飾材に用ゆ老樹の木理緻密なるものは縞桐(シマギリ)と称し賞用せらる | |
キリ5 | 【効用編】東京神田同朋町桐紙製造所においては経木を作り紙に張り,キリ紙を製し菓子箱の外張りに用ゆ材の幅及び質等により価異なるも竪1尺6寸5分,横2尺4寸5分の者1枚1銭6厘ないし3銭なり又キリ及び神代スギ張紙問屋(東京神田栄町藤井清蔵)あり下駄材は越後国松の山より出るものを上等とす又桐炭は磨用に供し又火薬の合剤とす | |
キリ6 | 下駄材として古来キリを賞用し殊にその木理の太くして判明なるを貴び柾目取を賞用す キリは下(くだり)ギリと称し奥州南部産を可とせり是れ孔環大にして環外の導孔小なるによる キリ下駄の価格は年輪数の多少によりて定まる 然るに駄ギリ又地ギリと称するものは目眠り居る故「ぼけ」木称し之を賤しむ【工藝】 | |
キリ7 | 材は建築(天井板・欄間・建具・内装),家具(ことに)和風家具・箪笥・仏壇・屏風),器具(ことに書箱・表具箱・折箱・羽子板・胴丸火鉢・火鉢・金庫の内装・下駄その他箱・指物・寄木木象嵌・人形の煉芯・浮子・呑口・木器・経木・棺),楽器(八雲琴・二弦琴・琵琶の腹板),運動具(ピンポンのラケット),彫刻(人形・仮面),旋作,木炭(研磨用桐炭・火薬用)など特殊用途が多い.樹皮からは染料がとれ、葉は除虫用。【原色】 | |
キリ8 | 【コメント】桐ダンスが激減し,「桐たんす更正」の語も死語になる恐れがあるが,上質の家具の引出には桐がよく使われるほか,大切なもの,貴重品は桐の箱に収めることになっている。百貨店の物産展ではしばしば桐のまな板が登場する。桐の名刺は評価が高く,きれいな印刷が可能であることが知られている。(2003) | |
樟 | クスノキ | 樟脳を含み独特の芳香と防虫,防臭性を持つ。中国では漢代に棺材として珍重されたと伝えられているが,日本でも,古くから鉢,漕あるいは仏像,伎楽面などに使われている。朱印船時代には造船用材として大いに利用された。現在は彫刻,家具,ツキ板,木魚その他諸器具に広く用いられている貴重材。 熊本県,宮崎県,鹿児島県が多産地である。心材は黄褐色から紅褐色,辺材は灰白色から黄褐色で心辺材の区別がやや不明である。肌目ややあらく,交錯木理を表すことが多い。玄関式台,床地板などのほかに材の特性を利用して,便所や洗面所,脱衣室の床板に好まれる。 |
クスノキ2 | 飛鳥時代,白鳳時代の仏像はすべてクスノキの材で彫られている。富山県井波の特産,彫刻欄間は今でもクスノキで彫られている。また,伊勢の一刀彫はクスノキを使っている。 銘木屋仲間では九州の材がよいとされるが,特に熊本のものは熊樟と称して,白太が少なく,色も良く,割れにくいとして喜ばれている。なお,銘木界ではクスノキと呼ばずにクスと呼びならすのが一般的である。【上村】 |
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クスノキ3 | 【効用編】材は古より船艦材に賞用せられたり然るに近来は船艦に鉄を応用するに至りクスノキは鉄を腐食するの点より退けられ只其香気を有すると其光沢及杢理の美麗なるより船中の机,食卓,小銃の掛け台,楷梯の欄干,食堂及雪隠,床板其他の艤装用に供せらるるに過ぎず但し小なる和船及台湾のジャンク船並に丸木船等は今尚此材を以て製造すること少からず然れども針虫の害は免れず | |
クスノキ4 | 【効用編】又普通の用材としては床板,戸棚,衣裳棚,小箱,細工物,彫刻材等に用いられ其木理の美なるものは殆ど舶来のマイブドウに近し之を薄く剥ぎて貴重なる楽器,手箱などに貼り付くることあり但し此材を以て作りしものは樟脳の香あるを以て書物及衣類を入るるに可なれども食物を入るるには宜しからず | |
クスノキ5 | 【効用編】此材にて製したる者は虫を防ぐ効あるも其伐採時期悪しきときは其材自身に虫害に罹り宜しからず又不要の木片は蚊遣りに用いらる今日最も必要なる用途は樟脳製造なり而して樟脳を含有する量は80年生以上の老樹に多く且つその部材により同じからず | |
クスノキ6 | 材は建築(とくに)洋風建築・欄間・床柱・床板),器具(寄木木象嵌・額縁・木魚・衣料箱・木型・浮子),家具(洋家具・仏壇・衣装棚),楽器,船舶(木船・ジャンク・船内造作),車輌(水車),彫刻,旋作に,材・根および葉からは樟脳をとる。【原色】 | |
クスノキ7 | ・赤褐色の心材で作った箪笥類は,衣類の保存用として虫も付かず最適である。【梅田】 ・耐水性が強いため、海中に建つ厳島神社の鳥居もクスノキを柱に用いている。 |
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クスノキ8 | 【コメント】各地の神社,公園などの平場で力強く枝を広げた巨木を数多く見ることができる。古い時代に移入された外来種ともいわれ,山中でお目にかかることはない。都内の日曜フリーマーケットで,クスノキの木っ端に紐を付けて,タンスの防虫用として販売しているのを目撃した。(2003) | |
櫟・櫪 | クヌギ1 | 古くは木あるいは果実いわゆるドングリを「つるばみ」と呼び染料に用いた。材の比重は0.85で弥生時代から農耕具,杵,槌などに使われた。現在は椎茸の榾木や炭に用いられ,木目のきれいなものは高級家具にもなる。 |
クヌギ2 | 【効用編】材は我国薪炭材の王と称すべきものにして薪材としては殆んど之に勝るものなく木炭としては其火力の保存カシ炭に及ばずと雖も其性質殆んど之れこに次ぐ。有名なる佐倉炭,池田炭の如きは此材を以て製したるものなり 此炭を菊炭と称するはその木口菊型に割目入るを以てなり而して此割目は空気を誘導するの力あるものなり 故に其焼方にて菊の如く割目の入らざるものは菊炭と称するを得ず従て其品位も劣等なり 又皮付の丸太は垣根其他庭園用杭及漁網の張杭に用ゆ 此皮付の生材は椎茸を養成する料とす | |
クヌギ3 | 材は器具(柄類・桶類・橇)。船舶(艪・艫腕),車輌(車軸・水車),椎茸榾木,木炭(佐倉炭の原木として有名)に,樹皮は殻斗とともに染料・鞣皮用タンニンの原料になる。【原色】 | |
クヌギ4 | 建築材としては,皮付き丸太のまま床柱とし,また茶室等の化粧材とする。 | |
クヌギ5 | 木材としての用途はあまり重要でないが,特殊なものでは和舟の艪腕に賞用された。薪炭材としては我が国産一番の重要材。【平井】 | |
クヌギ6 | 材はナラ類より重硬であるが,乾燥すると狂いが生じやすいのであまり使用されない。 | |
クヌギ7 | 【コメント】木製品は全く見かけないが,コナラと並びシイタケのホダ木としてはごく一般的で,山間部の林内でズラリと伏せ込みされたホダ木はおなじみの風景。(2003) | |
熊四手 | クマシデ1 | 【効用編】材は多くは薪炭材に供せられ又農具の柄を作るに用いらる 又椎蕈育成の用材となす |
クマシデ2 | 材は器具(ことに)曲木椅子),器具(荷棒・農具などの柄・紡績木管・玩具),機械,薪炭,椎茸榾木などに用いる。【原色】 | |
クマシデ3 | シデ類中最も材が硬い。シイタケの榾木には不適。 | |
熊野水木 | クマノミズキ1 | 心材は紅褐色のちに灰褐色,辺材は淡黄白色,心辺材の境界は明瞭ではない。材が硬く,ミズキより薪炭材として適する。 |
クマノミズキ2 | ミズキと同様に、材は器具(柄・玩具・ブラシの背板),彫刻,旋作(木管),薪炭などになる。【原色】 | |
クマノミズキ3 | 材はミズキより重硬で,心材は淡紅褐色,辺材は淡黄白色。薪炭材としてはミズキよりまさるが,細工物には劣る。樹皮の内部の色または心材の色に着目して,西日本では本種をアカミズシ,ミズキをシロミズシなどと呼ぶ例が多い。関東地方西部ではクマノミズキはカタソギまたはカタソゲなどと呼ばれるが,木理が通直でないため割ると片方へ削げる故の命名かもしれない。【倉田】 | |
クマノミズキ4 | 辺材・心材の区別がつくことが多く,心材は普通淡紅褐色である。ミズキより重硬で,炭材にはクマノミズキの方が勝っている。【平井】 | |
クマノミズキ5 | 【コメント】ミズキの葉は互生であるのに対して,本種は対生。名前は三重県熊野地方にちなんだだけで,北海道以外の各地で見られる。 | |
栗 | クリ1 | 水や腐朽菌に対しては際だって強い。このため,昔から建物の柱,壁板,土台,あるいは枕木など腐朽しやすいところによく使われた。また年輪がはっきりしていてきれいな木目をあらわすので,家具,彫刻にも適する。 |
クリ2 | 腐りにくく,水湿に非常に強いので,防腐処理をしなくても土台などに使えて百年以上持つとされる数少ない広葉樹。心材の部分が多く辺材が少ない。 木材としてのクリの産地は,岩手,福島など東北地方がよいとされ,群馬,静岡,岐阜なども挙げられる。古建築にもクリ材が使われている例は少なくないが,それもおおむね東北から北関東に限られているようである。 クリ材にはタンニンが多く,刃物など鉄に触れると材が黒くなるので注意が必要。【上村】 |
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クリ3 | 青森県の三内丸山遺跡は,縄文時代の千年以上も続いた大規模集落跡として世の注目を集めた。直径1メートルにも及ぶ巨大な柱をはじめとするおびただしいクリの建築材,土木用材,木工材,燃料材が出土した。 この遺跡の復元に当たって国内では太いクリが入手できず,ロシアの黒海沿岸から直径1メートル,高さ25メートル級の丸太を何本も輸入した。【上村】 |
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クリ4 | 【効用編】材は家屋の土台,井桁,湯殿板,流し板,溝板,屋根板,樽板,船の舵,櫂,及び各種の杭等に用いて保存期の永き他木の決して及ぶ所にあらず 近来又鐵道枕木として此材を賞用す。 | |
クリ5 | 【効用編】又丹波国北桑田郡弓削村にては天生の栗樹の生木を薙刳斫て六角形造りたる者を名栗(なぐり)丸太と称し,長さ6尺乃至1丈2尺,直径1寸乃至3寸余 多くは京阪神等機内の都市に出す 大なるは床柱,違棚柱,手摺,神垣柱等とし,小なるは捶木,竿縁,窓桁子等に用ゆるなど風雅なる主旨を取れり 此製は従来手斧を以て作りしも近頃は鑿をもって巧みに作ると云ふ。 | |
クリ6 | 【効用編】又此材を水土の中に沈め置き渋を抜くときは漸次黒色に変じて雅致ある色彩をなす 之を磨きて本箱,書棚,鏡台,額縁,煙草盆,其他器具類を製すること多し また旋工家は此材を以て盆,飯椀,汁椀,椅子,食卓の脚その他帽子掛けの類を作る 又薄く漆を塗りて木理を表はし使用することあり。 | |
クリ7 | 心材の耐朽性が極めて高く,よく水湿に耐えることがクリ材の最も大きな特徴になっている。特に枕木では防腐剤を注入せずに無処理のまま使用する随一のものとされており,その耐用年数は7~9年と言われる。ことに木造家屋の土台,浴室用材として最も賞用される。建築,家具,器具,彫刻などにも用途が広い。特殊な使い方として名栗丸太は有名。【平井】 | |
クリ8 | 名栗丸太:丸太の名があるが丸太ではなく,断面の輪郭を主に六角にし,その面に凸凹の形を斧で加工した棒材で,その一辺は細いもので1.5センチくらいから太いもので13センチ位のものまである。面の加工に波形,竹節形,突鑿の3種類がある。【平井】 | |
クリ9 | 材は用途広汎,建築(柱・床柱・違い棚・土台・窓格子・手摺・屋根板・床板・流し板・洋風内部造作・ことにいわゆる名栗丸太は著名),家具(箪笥・書棚・洋家具・食卓・椅子・火鉢),器具(箱類・額縁・盆類・ビール樽・葡萄酒樽・柄類・漆器木地・下駄),土木(枕木は最も有名・坑木・杭・橋梁・水工材),船舶(舵・櫂・曲材),車輌,彫刻,旋作(紡織木管),薪炭(鍛冶用炭),椎茸榾木などに,枝条は海苔粗朶に,樹皮からは鞣革・染料用タンニン,種子はもちろん食用に供される。)【原色】 | |
クリ10 | 【コメント】大径材が出回ることはほとんどないが,住宅の土台角は現在でも供給されている。木製品としてクリの碁笥(ごけ:碁石の入れ物)はおなじみである。(2003) | |
黒柿 | クロガキ1 | 銘木中の銘木。外見は普通のカキといっしょでまったく区別がつかない。関東,山梨,信州,岐阜などが良材を産することで知られている。 |
クロガキ2 | カキノキの心材のでき方は一般に不規則で,黒色の縞が入り混じったものになり,また色の濃淡があり,ときに一面に黒色となるものもある。それをクロガキといって珍重する。【平井】 | |
クロガキ3 | 【効用編】材はその心材の黒き部分を俗にクロガキと称し,また純黒ならざるものはシマクロガキと云い,装飾用の建築材と云って貴重す。また机,箱の類を製し器具を旋削して甚だ雅美なる故に,黒色の器具および寄木類を作るに用いる。かつ堅実美麗なるが故に所用少なからず。 | |
クロガキ4 | 【工藝】秩父産を最上とすれど今日は殆どなし其他房州甲州及東北地方より産する者代用となる通常綠り取り撮み等に用ふるのみ堅くして光沢あり黒檀より膠利き善し然れども歪み易きものなるを以て巧妙なる技術を以てするにあらざれば製品に狂いを生ず山形地方に於ける製品よりも酒田町鶴岡地区の製品は比較的欠点少なし | |
クロガキ5 | 【工藝】クロガキは火鉢の縁に用ひ焼けるもささくれのたつことなし | |
クロガキ6 | 材は床柱・床(とこ)まわりを主にした建築装飾材,箪笥・机・手箱・火鉢などの家具材,額縁・箸・櫛・定規などの器具材,紡績シャトル,寄木細工,象嵌材,彫刻材,化粧合板などの用途がある。黒檀と同様の使い方が多くみられる。【平井】 | |
クロガキ7 | 【コメント】その希少性と美しさから,挽物,指物の製品価格は腰を抜かすほどである。日本橋にある島根県のアンテナショップにはクロガキの1尺チョットの大きさの丸盆に12万円の表示を目撃。同じくカキノキ科カキノキ属の黒檀と同様の用途が多く,その模擬材と見る見方もあるが,価格的には黒檀を遙かに上回っていると思われる。(2004) | |
黒鉄黐 | クロガネモチ | 材は器具(柄)などモチノキに準ずる用途に供され,内樹皮からは鳥もちがとれる。【原色】 |
黒松 | クロマツ1 | アカマツと比較してクロマツは樹脂が多く,アカマツと同様に肥松(こえまつ),または脂松(やにまつ)として銘木扱いされるものがある。しかし,赤味の割合に白太が多く,芯出来も悪い(節が高い)。また,ヤニツボが多く,目揃いが悪くて曲がりが多いなど,欠点が多く良材が少ない。 熊本県の茂道松,宮崎県の穆佐松(ムカサマツ)などが有名。その他千葉県,島根県,静岡県にも良材を産するが減少。 面材として使用する場合,長い年月空拭きして磨くと重厚な光沢のあるものに仕上がる。耐朽性・保存性は中位であるが水湿にはよく耐える。 |
クロマツ2 | 【効用編】材は橋梁,土台,土工用杭等に適し又薪材とすれば火力強し。然れども其質粗にして脂質多きを以てアカマツより下等なれども,粗建築及器具に用ゆべし。又脂質の多き部分をもって器物を旋製す。その色赤褐半透明美麗なるを以て之を賞す。またマツ縄を作ることアカマツの如し,ただし品質下等なりと云う。 | |
クロマツ3 | アカマツと大差はない。すなわち建築,土木,船舶,車輌,家具,器具,包装,パルプその他。【原色】 | |
クロマツ4 | 伊豆の下田脂松細工はクロマツだけを使用した指物で、全国的にも珍しく、ほかに例がない。 | |
黒文字 | クロモジ | 【効用編】材は専ら皮付の小楊枝に用ゆ又皮付の小木を小細工用に供す |
桑 ⇒ヤマグワを参照 |
クワ1 | ・和家具用材として第一等。 ・用材として珍重される所以は,緻密で光沢があり,木目が美しく,狂いが少なく,細工に適する粘りけがある。用材としては,少なくとも百年以上の樹齢を要する。用途は建築材料=床柱,楽器,仏壇,彫刻,そして和家具全般に用いられる。とりわけ伊豆七等=御蔵島,三宅島の,樹齢何百年といった「本場もの」,「島桑」は,その昔から斯界で珍重されてきた。代用品はケンポナシ。ただし,桑に比し,木目,光沢がややハードで厳つい感じ。 |
クワ2 | ・日本でクワといえば普通ヤマグワを指す。木目がきれいで,飾り棚,鏡台その他高級家具,楽器,弓などに広く用いられる。 ・伊豆七島産(三宅,御蔵島)のものが最も良材として知られる。 |
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クワ3 | 御蔵島産が最も光沢に富み,三宅島産はこれに次ぎ,「地グワ」の中では日向産が最も光沢がある。【浜田】 | |
クワ4 | 豆南諸島の三宅、御蔵産を上等となし光沢の点に於て前者優るというものあるも多くは後者を最上とせり堅さは同じきも色宜しく光沢も宜し 御蔵産は黒き胡麻班あるを特色とす「アク」多し故に石灰にてアク出しをなせば色を呼び出し茶色となる 北海道産は材質柔くキハダ材より少しく堅し 小笠原産は孔環なく木理引立たず材堅くして細工容易ならず クロクワ、カラクワの二種あり指物には後者を用ふ地クワは材色宜しからず靱性に富むも柔かにしてクワ材として最も劣等品なり【工藝】 | |
クワ5 |
日向産の山桑と称するものが最も美しい。御蔵島のものは黒い胡麻斑があり、小笠原島のものは変色して暗黒色になる。
桑の材面は普通石灰で「あく」出して蝋磨きで仕上げる。銘木界では御蔵島産のものを高級材としている。【銘木要覧】
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欅 | ケヤキ1 | 質は堅硬で,耐温,耐久性に優れ,木目の美しさと共に,我が国広葉樹中第一の良材とされている。大黒柱,梁,上がり框,また,建具,造作,自在,囲炉裏などに用いられる。また,寺社の彫刻,一般家屋の恵比寿大黒の彫刻,仏壇,太鼓,臼杵,農機具,墨壺,和家具のおびただしい品種に利用されている。国内ではかねてより,長野,埼玉,群馬のものが良質とされる。岐阜,静岡地方にも優れた欅製品を見る。 現代和家具の欅材製品として有名なものに,岩手県江刺市の「岩谷堂(いわやどう)箪笥」と,これを源流とする「仙台だんす」・和家具類がある。 |
ケヤキ2 | 昔は槻(ツキ)と呼ばれた。万葉人はケヤキを御神木と崇めかつその紅葉を賞でていた。ほぼ同心円的に並ぶ単列の道管がきれいな木目になってあらわれるので,家具,仏具,楽器その他に広く利用されている。また随分古くから什器類に利用されている。 | |
ケヤキ3 | ケヤキは伐採してから50年は生きているといわれ,その生きているうちに材として利用すると,特に素性のよい材を除いては,必ずといってよいほど取り付け後に暴れ出し変形するので要注意である。【吉田正毅】 | |
ケヤキ4 | 「地ゲヤキ」と称し平地に生長し十分日光に触れたものは強いが,「下りゲヤキ」と称し,深山あるいは密生して生長したものは弱いといわれる。【浜田】 | |
ケヤキ5 | 【工藝】日向,薩摩の産を最可とし,東京付近似ては相馬産を可とする。孔環の幅小にしてかつ年輪幅広からず,地ゲヤキと称するものは東京近傍の産にして年輪広く木理美ならず。 | |
ケヤキ6 | 【効用編】材は船艦,建築及器具材に多く用い就中椅子,食卓,馬車,汽車の客車等に多く賞用せらる 古来神社,仏閣其他大家高楼の門柱,門扉,銭函及木工の削台等に用いたり 但し土中に埋むれば保存期永きも土際腐朽し易きを以て土台に用ふること稀なり 又旋削用材,漆器の木地,飯杓子等に用いらる | |
ケヤキ7 | 【効用編】其如輪杢,鶉(うずら)杢,玉杢、牡丹(ぼたん)杢等を有する材は殊に貴重なる室内装飾品,文房具,上等の箱類,戸棚,戸板,煙草盆,小箱などの制作に供せらる 又此この辺材は柔軟なるを以て曲げて用ゆるに宜し 又枝材は斧其他道具の柄となし又薪材となす | |
ケヤキ8 | 材は建築(構造・造作・ことに社寺建築),器具(臼・杵・盆・漆器下地・柄類・ガラス木型・台・櫛・下駄の歯・経木),家具,土木(ことに電柱の腕木に最適・枕木・橋梁),船舶(梁・竜骨・船首尾・造作),車輌(車体・造作・荷車),機械(調革車・滑車・衡器),彫刻,旋作,薪炭など用途広く,枝条は海苔粗朶。【原色】 | |
ケヤキ9 | 【市場の視点】特に山ケヤキは尊重され,大量に出てくる里ケヤキとは区別される。ケヤキの中心は,筑波,山陰,南九州等各地にあるが,最も力があるのは岐阜,愛知である。 | |
ケヤキ10 | 俗に赤ケヤキと青ケヤキを区別し、赤味の多い赤ケヤキを上質とする。 | |
ケヤキ11 | かつて、徳川幕府は船用材としてのケヤキの重要性から、伊豆のケヤキを保護したという。なお、かつて竜骨の適材としてケヤキが利用されたというが、和船には竜骨構造はない。 | |
ケヤキ11 | 【コメント】神社仏閣,山車,御輿などでで多用される。小田原漆器にも見られるように,ケヤキの盆は生活用品の定番。また,摺り漆の汁碗にもケヤキが多く利用されるほか,ひょうたん型の唐辛子入れもこの材である。ケヤキのムク,張りの座卓も従前からよく目にしたが,和室の減少や嗜好の変化と共に減った。地方の純和風の新築住宅ではケヤキをふんだんに使用した豪華な作りを目にする。なお,赤坂の迎賓館の床はケヤキの寄せ木が基本になっていた。(2003) | |
玄圃梨 | ケンポナシ1 | やや赤みを帯びた美しい木目を持っているので,唐古人や,篠束人に愛用されたのであろうか。主に造作,家具に用いられるが,すりこぎも作るという。楽器材としては三味線の胴に用いる。 |
ケンポナシ2 | 辺材は黄白色,心材は褐色であるが,中には肌色に近いものもある。ケヤキと同様にやや軟らかく,粘性があり,割れも少ないという特徴がある。仕上げ方によってはクワにも見える。家具用材,木象嵌,挽物,彫刻用材として用いられる。【梅田】 | |
ケンポナシ3 | 木理は優しく,はっきりしていて品もよく,非常に美しい。家具用面材として最高級の材だが,量的に少なく,特に杢の美しい大径木は減少している。【宮本】 | |
ケンポナシ4 | 【効用編】材は旋作用、指物用に供し又盆類、火鉢、文房具、櫛等を作るに用ひらる | |
ケンポナシ5 | 材は建築(床板・落し懸け),家具(洋家具),楽器(三味線の胴),器具(箱・:盆・指物・櫛・木象嵌・火鉢),旋作,薪炭に,花梗は食用になる。【原色】 | |
ケンポナシ6 | 辺材は黄白色,心材は黄褐色から紅褐色である。年輪も明瞭。肌目は粗いが木理が明らかで,時には玉杢などの杢が現れるものがあり,それが縮み様の光沢をあらわして美しく雅致がある。ケヤキやセンダンにも似ているが,特にクワの模擬材とされることが多い。建築装飾材および家具用材として好適であるが,量的にまとまって出材されることは少ない。特に杢板はテーブルの鏡板に賞用される。【平井】 | |
楮 | コウゾ | 灌木性でクワに似た葉を持ち本州,四国,九州に多い.和紙材料としてのコウゾ繊維は平安期から使われはじめ,鎌倉から室町時代にかけてミツマタと共にその主流となり,若い枝の皮を剥いで晒す川水の水質と気象条件に恵まれた土地にそれぞれ独特の和紙が生まれた。 コウゾの繊維はミツマタやガンピのそれに比較して一番長く,太くて強い。従って楮紙も一番丈夫だがそれだけに面が粗く素朴である。 |
高野槇 | コウヤマキ1 | その名の示すように高野山に多い。特に水と湿気に強いので,古代宮殿の柱や木棺によく利用され,現在でも風呂桶や手桶の高級品にはこの木を使う。ナギと共に東照宮や日吉神社など権現系の神社では御神木としているところが多い。また,お盆や涅槃会にこの枝を仏前に供える地方もある。 |
コウヤマキ2 | 【効用編】材は風呂桶,水桶等を作るのに最も適当す。又漬物桶,味噌桶などとなす。又船材或は建築用材とし,又工作を施し易きをもって天井板及其他の板材とす。橋梁の杭に用ゆれば能く久しきに堪ゆるものにして,東京府千住の大橋は永禄年間北条市の架したるものにして明治18年の頃大水の為め落橋せし際其杭を改め見しに,コウヤマキにして少しも不朽せざりとしと云ふ。木曽産の材は鉄釘を打ちて黒く流れず,又鵜縄用いて良好なることは他国産の及ぶところにあらず,樹皮を槇肌と称し船,桶,井戸側等の漏水を塞ぐに最も賞用せらる。 | |
コウヤマキ3 | 一般的な材の保存性は中庸といったところであるが,水湿に接するものでは耐朽性がある。江戸の千住大橋は永禄年間(1558~1569)に架設されたものであるが,明治18年(1885)に洪水で橋が壊れたとき,その橋杭を調べたところコウヤマキで,まだ材としては健全であったという。なお,古い時代には棺材として用いられたことが出土品から明らかになっている。樹皮は繊維質で強いため,マキハダあるいはマイハダといわれて,舟板,水桶,井戸側などの隙間の充填物として広く使われた。(この用途としてはヒノキの樹皮も多く使われている。)【平井】 | |
コウヤマキ4 | 材は建築(板類とくに天井板),器具(碁盤・将棋盤・桶・風呂桶),土木(橋梁・杭),船舶などに用い,中でも風呂桶・流し板など耐水湿材として定評がある。樹皮はまき肌と称し,船舶,桶などの漏水防止充填物および屋根葺に用いる。【原色】 | |
広葉杉 | コウヨウザン1 | 中国で〈杉〉といえばスギ科のコウヨウザンをさす。 |
コウヨウザン2 | 【効用編】材は天井板,箱類,附木,燐寸材に供す。又地方によりてはヒバ材と称してヒバと混称して東京に輸出する処(ところ)あり。木曽山中に於ては良材なきをもって主に薪材に供す。台湾及支那の沿岸地方においては最も必要なる建築材にして,我国の内地に於て杉を用ゆべき所に皆之を用ゆ。又棺材,梁材其他の用材となす。 | |
肥松 | コエマツ1 | アカマツ及クロマツの根部等にて樹脂浸潤して半透明となりたる部分を取り茶盆,茶托等に旋作し叉は彫刻す綿布を以て摩擦すること久しければ一種の光沢を発するを以て関西地方にて大に愛玩せられ其価格も亦甚だ大なり,アカマツ材の方を優品とす【工藝】 |
コエマツ2 | 盂蘭盆会(うらぼんえ)で迎え火として肥松等を燃やす習慣が各地にある。(九州各地,徳島県板野郡等) | |
コエマツ3 | <参考>肥松のことを東北地方ではアブラマツとかマツキ、関東地方ではヒデ、シデ、シデマキ、中部地方ではネマツ、カンマツ、アカシ、タイ、トボシ、近畿地方ではサイトボシ、中国四国地方ではコイマツ、コエマツ、九州地方ではアカシ、タイ、コイマツ、ワリマツ、ツガマツ、などと、さまざまな名称で呼んでいる。【宮本馨太郎】 | |
コエマツ4 | <参考>松の脂の多い部分を関東ではヒデ、関西地方では肥松と呼んでおり、東北地方ではアブラ松、浜松付近ではベタ松、岐阜県ではロウ松、京都付近ではジンドといっているという。【有岡】 | |
- | コシアブラ1 | 材は器具(箱・天秤棒・箸・杓子・楊子・扇子の骨・下駄・経木・マッチの軸木),船舶,彫刻(印判・版木),旋作・薪炭に,若芽は食用になる。【原色】 |
コシアブラ2 | 材は白色,軽軟,特に経木材として賞用され,また,箱,箸,楊子,下駄などに利用する。山形県米沢市笹野地区の特産物の木彫りである笹野一刀彫による「お鷹ぽっぽ」はこの材が使われる。 | |
小楢 | コナラ1 | 【効用編】材は薪炭材となす 小枝を柴となすに枯葉を帯ざるを以てクヌギに勝れりとす 良材は雪車,箱,椅子等を作るに用ゆ |
コナラ2 | ミズナラに準じ,材は器具(農具・柄類・樽・箱・細工),建築(床板),家具(洋家具),土木(枕木),機械(滑車),薪炭,椎茸榾木に,枝条は海苔粗朶に,樹皮は染料に,種子は食用(澱粉採種・醸造)に供される。【原色】 | |
コナラ3 | 材は建築,家具などに用いられるが,ミズナラほど優秀でない。【百科】 | |
コナラ4 | 北海道ではイシナラ(コナラの材質は一般にミズナラよりも重硬で加工がしにくく,乾燥で割れや狂いが出やすい。)といって区別する。出材としては普通ナラ材に混入して出材され,用途もミズナラと同様といってよいが,福島県地方などでは優良なコナラのみまとまって出材することもある。コナラはミズナラほど有用と言えないが,薪炭材ではクヌギに次ぐ第一級の木で,黒炭の楢丸,楢割の名でよく知られている。【平井】 | |
小判黐 | コバンモチ | 材は建築,器具(銃床・箸),椎茸榾木,薪などになり,実は食用。【原色】 |
辛夷 | コブシ1 | ・皮付きのまま茶室の床柱や軒の垂木に使われる。渋く自然な感じが風流人に好まれる。 ・銘木業界では「香節」(コブシ)と書いている。【春永】 |
コブシ2 | 【効用編】材の用途はホオノキと略ぼ同じ 又筏師の水棹とし又割りて箸となす又丸太は床柱として雅致あり。 | |
コブシ3 | 材は建築(床柱),器具(漆器木地・裁板・俎板・図版・杓子・箸・鉛筆軸木・マッチ軸木・下駄・経木・楽器),船舶(棹),彫刻(印判),旋作,薪炭(とくに金銀研磨用木炭)などに,樹皮をアイヌは糸の代用に,花からは生附子という薬品や香料をとる。) 【原色】 | |
コブシ4 | 材は鉋仕事が楽しくなるほど良い香りがするという。 | |
米椹 | コメツガ | 建築,器具(茶盆・農具)その他ツガに準ずる。樹皮からタンニンがとれる。【原色】 |
行李柳 | コリヤナギ1 | 【効用編】幹の皮を去り晒白して編成用に供す 其製品を柳行李と云う 又幹の細短なる部分は小細工編成用とし太きに過ぎ編成に供し得ざる部分は割りて用ゆ 又近来は但馬のみならず各地に於て栽培製造するに至れり 此ヤナギは丈高く伸長し其本来の太さに大差なき故に至極密美の細工に使用し得るを以て其価コブヤナギに比して1割も高しと云う 但しその収穫量はコブヤナギに劣れり |
コリヤナギ2 | [柳行李]コリヤナギは細長完満に生長し色沢の純白且折れ難きものを可とす而して一ヶ年以上経過せるものは色沢悪しく質脆くなり工作悪しきを以て材料の新しき内に製作すべし又虫害は稀に秋苅のものに存することありと【工藝】 | |
コリヤナギ3 | [杞柳(きりゅう)細工に際しての準備]:秋に刈り取り冬の間保存。春に田に挿すと新芽を吹き、このタイミングで皮を剥がす。遅れると中の養分が抜け出て柳が軽くなる。剥皮後、川で洗ってぬめりを落とし陰干しして干し上げる。そして土用を過ぎてから使用する。土佐柳が最高の品物が出来ると言われた。【塩野】 | |
コリヤナギ4 | 葉の形によって大葉種と中葉種、細葉種の三種類がある。細葉種は浸水や病虫害などに弱く、収量も少ないが、枝条が細長く小枝があまりないので、細工に最も適している、藩政時代には円山川の河畔の但馬柳(兵庫県豊岡市)が有名であった。【宮内】 | |
コリヤナギ5 | ヤナギには髄があり、そこに先端が錐状で後ろが何枚かに割れた刃物を食い込ませ、材料を押すと刃数に応じて割ることができる。さらに刃物で幅をそろえ、厚さを一定にする。【宮内】 | |
五葉松 | ゴヨウマツ1 | 【効用編】材は建築材,船材に用ゆ,また米沢にてはこの木の炭を鍛冶屋用とす。 |
ゴヨウマツ2 | 用途はヒメコマツにほぼ同じと見てよい。【原色】 | |
- | サイカチ1 | 材の用途は建築,器具,家具材などで,かつて荷鞍,井戸の側,つき杵の支柱などに使われた。材が淡紅色を呈すので寄木細工にも用いられる。【平井】 |
サイカチ2 | 【効用編】材は小細工用とす又は箱類、舂(臼)杵の支柱を作るに用ゆ又久しく土中に埋むるも腐朽せざる故に井戸側に宜しく又薪炭材となす | |
サイカチ3 | 材は建築,器具(箱・寄木細工),家具,薪炭に,莢は洗濯・染料・薬用に,樹皮・樹刺も薬用になる。【原色】 | |
榊 | サカキ1 | 伊勢参宮箸はこの木で作られる。【平井】 |
サカキ2 | 【効用編】材は旋作用及小細工用となす又笏を作るに用ゆ又宇治山田にては箸を作り伊勢参宮者の土産となす | |
サカキ3 | 材は建築(床柱・桁),器具(柄・杵・天秤棒・箸・笏・ブラシ背板・櫛・小細工物),船舶(船の棹),旋作,薪炭に,枝葉は神事に用いる。【原色】 | |
桜 | サクラ1 | 材の色は赤みがかったきれいな淡褐色。楽器,家具,彫刻,室内造作,斧の柄など広い用途を持っている。 サクラの材はヤマザクラのものが多いが,堅く,緻密で狂いも少ない良材で,家具や指物に適している。特殊用途には定規,版木,鼓の胴,そして縁起を担ぐのか大相撲での拍子木などがある。 サクラの材は供給量が少ないため,家具など量的に使われる材はミズメ,カバなどが多く,ミズメザクラ,カバザクラなどとも呼ばれている。 |
サクラ2 | カバの材をサクラと呼ぶのとは反対に,ヤマザクラ類の樹皮を貼った工芸品は樺(かば)細工と呼ばれている。【秋田県角館町】 | |
サクラ3 | 化粧合板でサクラとして使用される化粧材は、殆んどがマカバであるという。 | |
サクラ4 | 現在,家具や建築内装の方面でサクラといっているものは,マカンバが多く,本当のサクラであることはほとんどない。なお,わが国の中部以南では同じカバノキ属のミズメの材をサクラとしているのが普通であるし,そのほかのカンバ類,すなわちダケカンバやシラカンバ,また同じくカバノキ科であるが別属のアサダまでサクラとされていることが多い。【平井】 | |
サクラ5 | 古来サクラは版木彫刻材として唯一の良材たり其他菓子型,置物彫刻等に欠くべからず【工藝】 | |
山茶花 | サザンカ1 | ツバキ同様,材は建築,器具,機械,彫刻,旋作,薪炭などに,やはりツゲ・サクラ・ナツメ・コクタンの模擬材にもなり,種子からは油(かたし油)がとれ,その油滓は駆虫剤。【原色】 |
サザンカ2 | 材は堅く,建築,器具,彫刻などに用いられ,良質の木炭ができる。 | |
沢胡桃 | サワグルミ1 | 材の保存は極めて困難で,変色・腐朽しやすい。主に下駄材の俗称としてヤマギリと呼ばれる。 |
サワグルミ2 | 材は白色軽軟,下駄材,経木,マッチ軸木などに利用し,樹皮は丈夫で,皮箕を作り,山小屋の屋根に使用する。マッチの軸木としては,火を摺ったときに道管のくぼみを伝わって煙が昇ってきて,品が悪いとされてポプラ類より評価が低い。焦げにくいということで,茶道の炉縁に使われる。 | |
サワグルミ3 | 【効用編】材は下駄材としてキリに次ぐ。又箸,燐寸の軸木,火附木に賞用す。併(しか)し此材は釘付き悪しきを以て器具材に適せず。鉋にて削りたるものを以て編みて座布団を製す。此樹の内皮を寿光皮と称しこれを磨きて外皮を去り紋理を表はし巻き合して匣(ハコ),盆其他の細工物を製す。頗る雅美にして能く久しきに耐ゆ。 | |
サワグルミ4 | 広葉樹のうちでは軽軟な白色材の代表的なものである。かつて,キリの代用として下駄材にさかんに使われ,木材業者の間ではヤマギリといって取り引きされた。【平井】 | |
サワグルミ5 | サワグルミは茶道爐縁に用ふ又土蔵の戸の板に用ふ盗賊火を掛けるも焼けず信州辺りにて之を用ふ(大和本経)【工藝】 | |
サワグルミ6 | 材は下駄(ヤマギリはおもに下駄材としての俗称),マッチ軸木,器具,家具,経木に,樹皮は寿光皮と称して文庫・硯箱・簔などの細工に用いる。【原色】 | |
沢柴 | サワシバ1 | 【効用編】材は薪材としてはクヌギ、コナラに次ぎ 炭材としてはカシ類に次ぐ 伊豆の天城山にては此炭をシラカシ其他のカシ炭と混じカシ炭を称し売出すと云ふ 又此材は丸太の儘皮を剥ぎ磨きて床柱に用ふることあり細き材は洋傘の柄又は洋杖となす 又此材より櫛を製する處あり 此皮付の生材は椎茸を養成するの材料に供せらる |
サワシバ2 | 材は建築(床柱),器具(ステッキ・洋傘の柄・靴型・櫛),機械,椎茸の榾木用など。【原色】 | |
沢蓋木 | サワフタギ | 材は器具(尺度・ノミの柄),彫刻(版木・印判)などになり,ツゲの代用品と考えればよい.材の灰汁は紫染色に際しての媒染剤。【原色】 |
椹 | サワラ1 | 軽軟な木材で,水湿によく耐える。かつて風呂桶によく使われた。建築,器具,包装など,特徴的な用途はなんといっても桶,台所用品,浴室用品などの日用雑貨の類である。 |
サワラ2 | 【効用編】材はスギと同様に用いられその湿地に於ける保存期はスギより短し。剥板材,桶工材例へば手桶,盥(たらい),風呂桶,飯櫃及曲物,扇子箱,弁当箱等の底板,戸障子,指物類を作り又建築材に用ゆ。又また箸に作りて杉箸に偽せるも臭気あり故に使用するときに熱湯を注ぎて用ゆ。 | |
サワラ3 | 【効用編】又屋根の葺板に用ゆればマキに優り宮殿は之を以て葺く。又年輪柔軟にして栓口には最適当にして新川の酒舗にて「カサ」釘と称する酒樽の栓はこの材に限ると云ふ。この「?(口編+利)き酒」を為し,その跡を填塞するに此材を用ゆるときは挿込みて脆く押れ,其折口の鉋削せし如くなるが故なり。又サワラは木曽産を上等とし飛騨産を下等とす。 | |
サワラ4 | 桶樽材としてサワラは乾燥に対し伸縮少きを以て賞用せらる【工藝】 | |
サワラ5 | 材の用途はヒノキよりもむしろスギに類し,建築,建具,家具,器具,包装,船舶,車輌,彫刻,パルプなど.特殊用途としては風呂桶その他の桶類。【原色】 | |
サワラ6 | 【コメント】木製の桶,樽類は,残念ながら日常生活の場では確実に絶滅への道を歩んでいるが,サワラの浴室用の湯桶,手桶は上級の製品として百貨店でも生存している。(2003) | |
山椒 | サンショウ1 | 擂り粉木として特別賞用されるが,それは強靱で摩滅しにくいことにもよるが,また材からの侵出物が魚毒を消すためとも言われる。【平井】 |
サンショウ2 | 【効用編】材は樹皮に疣瘤の如きものあり老樹には特に多し故に太きは筆筒等に作り細きは擂木、洋杖等に作り頗る雅なり又旋作用に供す之をヤマサンショウと称す | |
采振木 | ザイフリボク | 材は小器具,小細工(櫛),旋作,薪になる。【原色】 |
椎 | シイ1 | ① ツブラジイ(コジイ)はスダジイ(イタジイ)に比べ一般に樹幹は通直で,材質が素直で狂いが少ないとされる。【鹿児島市 共栄木材株式会社のチラシ】 ⇒ 下線部の記述には疑問がある。 ② ツブラジイは特に保存性が低い。一般的にツブラジイはスダジイに比較して材質的には劣っている。【須藤】 ③ ツブラジイは材質は落ちる。【上村】 ④ ツブラジイはスダジイの材に比ぶれば,やや劣るといわれる。【牧野】 ⑤ 家具には大部分ツブラジイを使う。【宮本】 ⇒エー・・材質はスダジイが良し,素性はツブラジイが良しということかな・・フムフム・・? |
シイ2 | 材質は重硬で其の割に加工しやすいが,やや狂いやすい。スダジイに比べて,ツブラジイの方が劣っていて割れやすくもある。耐朽性はスダジイのほうがやや腐りにくく,ツブラジイの方が腐りやすい フローリング,屋根板などの一部の建築材,櫓や櫂,下駄の歯,枕木などに使われる。かつては炭材によく使われたが,これもツブラジイの方が劣っている。 |
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シイ3 | 椎絞り:ツブラジイの小丸太の皮を剥ぎ,丸太の面にあらわれる椎絞りと呼ばれる縦溝の模様が床柱として利用された。高知県が生産地であった。 | |
シイ4 | 【効用編】材は普通薪炭材(此炭は立ち消するをもって下等なり)と為すも其上等なるものは縁板,建築材,土台(之に用ゆる地方あれども保存期短),砂糖樽の榑木(くれき→へぎ板),諸器具用材,艪腕(ロワン),艪臍,塩浜にて用いる塩柄杓の柄,斧鉈の柄,農具の柄及荷棒等に用ゆ 又皮去りの円材は外面に縦皺多く稍(やや)ソロノキ(アカシデ)に似たるを以て床柱となす 又此皮付の生木は椎茸を養成する料とす | |
シイ5 | ツブラジイの材は集合放射組織が明らかで割裂しやすい。 | |
シイ6 | シイは一般に狂いが生じやすい。特にツブラジイは狂いが多く,また割れやすい。材の耐朽性はスダジイは普通かやや低い程度であり,南九州ではむしろ耐朽性の高い方の部類として扱われることもあるが,ツブラジイは著しく低いとされる。シイノキの材はくすんだ色で狂いが出やすく耐久性もあまりよくないので,一般的には優良な材として扱われない。ことにツブラジイはスダジイにくらべて数段劣るものと評価されている。炭としてもツブラジイは劣るといわれている。【平井】 | |
シイ7 | ツブラジイ: 材は薪炭をはじめ建築(床柱・屋根板・縁板),器具(柄類・荷棒・樽の栓・下駄の歯),家具(和洋家具・椅子・棚類),船舶(艪);椎茸榾木になり,樹皮からは漁網用染料や渋(タンニン)をとり,種子は食用になる。ツブラジイ・スダジイを一括してシイ(椎)として取り扱うことが多い。【原色】 |
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- | シウリザクラ1 | 色合いと木理がヤマザクラに似ている。北海道からまとまった量のシウリザクラが入るようになったのは戦後のことで,家具や内装材として量産され始めたのは最近である。【宮本】 |
シウリザクラ2 | 【効用編】材は盆類,小細工物,版木,魚船具などを作るに用い,また鮑を衝く鉾,昆布を採る竿などに用いる。 | |
シウリザクラ3 | 材は家具(洋家具),器具(箱・算盤枠・木環・ブラシ木地・木型・漁具・昆布採取用の竿),機械(測量用三脚・機械容器),楽器(ピアノやオルガンの外囲・琵琶の胴),船舶(船具),彫刻(版木)などになる。【原色】 | |
シウリザクラ4 | 心材は淡褐色,褐色,紅褐色で,材の用途はヤマザクラ類と全く同一といってよく,むしろ多少量的に多く木材を扱うところでカンバ類でない真のサクラ材としているものは,北海道産のシウリザクラであることが多いと思われる。【平井】 | |
シウリザクラ5 | 【コメント】北海道旭川の事業体が開発したシウリザクラを使用した木製サッシ(耐火木製窓枠)が知られている。(2003) | |
塩地 | シオジ1 | 【効用編】材は家屋の建築材,器具,川船,船具,天秤,農具,把柄,戸車,盆,椀,銃砲台,下駄等を作るに用ひ又鐵道枕木及薪料となす |
シオジ2 | 材は建築(洋風建築,床柱・鏡板・内部造作・建具),合板(表板・化粧単板),家具(洋家具,陳列棚・箪笥・鏡台・仏壇),運動具(ボートのオール・野球のバット・ラケットの枠),器具(指物・火鉢・額縁・盆・椀・算盤の枠・ブラシの背板・天秤棒・農具・柄・下駄),機械(部材・滑車・滑車枠),楽器(ドラムの胴・ピアノやオルガンの外囲・琵琶の胴や腹板・キャビネット),土木(枕木),船舶(川船・船具),車輌(内装),彫刻,旋作,薪炭など。ケヤキ・クリ・ケヤキの模擬材。枝に生ずる虫白蝋は工業用。稚樹の樹皮は編物用。【原色】 | |
シオジ3 | 材はヤチダモよりやや軽軟な環孔材で,建築,家具,運動具,ベニヤ,その他に広く賞用される。【倉田】 | |
シオジ4 | 実際はシオジの出材は減少しているため,世上でシオジといっているものはほとんど北海道産ヤチダモのことであると思われ,また普通両者の区別を見分けるのはほとんど出来ない。昔から秩父あたりのものが有名であるが,今はずっと少なくなっている。天竜川流域の水窪も多少多いところである。【平井】 | |
シオジ5 | 東北地方から出るシオジと称する材は、すべてヤチダモである。【奥村】 | |
シオジ5 | シオジは水分を吸収し易からざるを以てオールに作らる【工藝】 | |
樒 | シキミ1 | 清楚で美しい木味を持つ材としては代表格。 |
シキミ2 | 【効用編】材は棒材、旋作用材及薪材となす | |
シキミ3 | 材は旋作(棒類),器具(寄木木象嵌・念珠・傘の柄・鉛筆軸木),薪に,枝葉は仏前に供える。【原色】 | |
枝垂れ柳 | シダレヤナギ1 | 【効用編】材は張板、俎板(まないた)等に用い又器具材とし匣箱の類を作りて頗る雅美なり 又伐採して柴薪となす |
シダレヤナギ2 | 中国原産といわれる。材は器具(張板・俎・箱),楊子などになる。【原色】 | |
四手 | シデ | クマシデ,アカシデなどがある。樹名は雄花の穂が四手すなわち玉串に下げる紙の形に似ていることによる。材は重く強く椅子,寝台類や工具の柄に用いられている。ピアノの内部のアクション部の主材はショックに強いシデである。 |
木偏+品(科)の木 | シナノキ1 | 比重は0.5,その割りに材の木肌が緻密で均質なので塗料ののりがよい。造作,家具,器具類その他に広く用いられている。 <科布>:シナノキの繊維はコウゾやミツマタと同じように若い枝の樹皮を剥ぎ灰汁で煮て内皮から取り出し,冷たい川水でよく洗って漂白した後乾かして細く裂き,これを布に織る。だから織り目は粗いが,艶がありさらりとして肌触りがよい。水に強く明治初期まで,野良着,蚊帳,袋,漁網,荷造り用縄などに作っていた。シナノキは北海道に多く,その頃樹皮を科布用に内地へ移出していたことが記録されている。 科布は長野県の特産だったので信濃布ともいった。古事記には信濃を科野と書いている。 |
シナノキ2 | 腐りやすいほかは欠点もないので器具材,家具材,建築内装材,箱材などの幅の広い用途を持つが,生産量の最も多い北海道ではシナ合板として合板の表面材に多く使われてきている。 シナノキの表面は塗装に適しているので,建具,キャビネット,壁材などに広く利用される。ただし,シナノキはユリア樹脂接着剤では接着力が低い欠点があるので注意が必要。 その素木を生かした用途には経木,木毛,アイスクリームのヘラ,キャンディの棒などの小物もいろいろある。【上村】 |
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シナノキ3 | 接着性は良好でなく,ことに尿素樹脂接着剤を使う場合には注意を要する。耐朽性・保存性は低い。表面仕上げは中位だが,合板の面材,塗りつぶしの下地材として使われることが多い。【宮本】 | |
シナノキ4 | シナ合板で一つ問題があるのは,ユリア樹脂接着剤を使うと接着力が低いことで,原因は解明されていない。【平井】 | |
シナノキ5 | 【効用編】材は小細工用、箱、器具、板、彫刻材、鉛筆材、下駄材及び薪材に供す樹皮は強靱なるを以て製紙の原料とし又細裂して糸となし畳表の経線、箕、簑、脛布等を作り又縄に作り牛馬具其他の荷縄に用い又能く水湿に耐ゆるを以て船綱に用ゆ又織りて布となし之をまだ布又しな布と云ふ桑葉摘用袋、酒、醤油等の漉袋其他の袋類、蚊帳を作るに用ゆ又米穀等蒸物の下敷となす又農馬の脛及腹に掛け虻を防ぐに用ゆ | |
シナノキ6 | 材は建築(とくに)洋風建築・板・内部造作),合板(ことに局面に張る合板),器具(桶樽・箱・下駄・鉛筆軸木・マッチ軸木),機械(部材),に,内樹皮の繊維は織物(シナ布・酒や醤油の漉袋・桑摘用袋・蚊帳),綱(荷縄・船縄・簔や畳表経糸),和紙に,花は薬用に供される。【原色】 | |
シナノキ7 | 北海道の熊の木彫りはシナノキを使用している。 | |
シナノキ8 | シナノキは別名「アカジナ」ともいう。これに対して、オオバボダイジュを「アオジナ」とも呼ぶ。オオバボダイジュはシナノキほど大径材とはならないが、材色が白いため、シナ合板の表面材として好まれる。 | |
シナノキ9 | 【コメント】最も身近な存在はシナ合板で,ホームセンターには必ずあり,また,机等の引出の底板にもよく見かける。教材用の大きめの版画板としても昔からおなじみ。芯材,面材ともにシナを使ったものをシナ共芯(ともしん)合板と呼ぶ。(2003) | |
石楠花 | シャクナゲ | 材は何よりも杖として珍重され,その他器具(定規・小細工物・箸),彫刻(印判)などになる。【原色】 |
シャムツゲ | シャムツゲ | 俗にシャムツゲというのはアカネ科のクチナシ属の木である。タイ,ビルマ,インドに多い落葉灌木で,材は淡黄色,比重0.75で緻密。ツゲに似ているので現地でもボックスウッド(ツゲ)と呼んでいる。木櫛にも使う。 |
白樫 | シラカシ1 | アカガシに比較して持ったときの感触が柔らかいとされている。大工道具の柄,体操の平行棒,木刀など。アカガシと類似の用途ながら鉋の台,工具の柄など広く用いられて,アカガシよりやや軽いものの,粘り強いのが特徴とされる。 |
シラカシ2 | 【効用編】材は維新前は槍の柄として最も貴重せられ又和船の柁(舵),短艇(ボート)の櫂,馬車,人力車の柁(かじ)棒,銃台,水車の器具其他の諸器械等に用いらる 近頃は体操器械なる亜鈴,球竿,棍棒,銃槍等を作り 又矯曲して用材に任えざるものは薪炭材とす | |
シラカシ3 | 材は器具(柄・運動具・算盤枠・木型類・橇・荷棒・台類・槌頭・杵・擂粉木・楔・農具・ブラシ木地・漆器木地),機械(織機・歯車・杼・滑車・度器・秤稈),土木(枕木),楽器(太鼓や三味線の棹と撥),船舶(舵・櫂・ボート),車輌(荷車,・水車),建築(屋根板・敷居),椎茸榾木などになり,シタンの模擬材に用いられる.枝条は海苔粗朶,果実は食用。【原色】 | |
シラカシ4 | 【コメント】ホームセンターをのぞけば大量の製品があり,鉋(かんな)の台,罫引(けびき),金槌・玄翁の柄,木槌の頭と柄,鑿(のみ)の柄,鉈・斧・両手鎌等はまずシラカシである。継続的に供給されていることは驚異的である。(2003) | |
白樺 | シラカンバ1 | カバ材中やや軽軟な散孔材。良質の材はマカンバと同じように利用できるが,樹の素性がよくなく腐れが入るため,一般に上等の材とはされず,昔はほとんど薪炭材とちょっとした器具材や玩具材として使われるに過ぎなかった。大正初期に紡績用木管として利用されたが,ブナに移った。近年になってパルプ材としての評価が高まった。【平井】 |
シラカンバ2 | 【効用編】材は腐朽し易く黒褐色の班條を生ずるを賞し之を指物又は物物→?の材となすこと多し又此材は枯るるも分割し易きを以て分割せる薪材に適す | |
シラカンバ3 | 材は器具(木型・漆器木地・ブラシ木地・柄),家具(洋家具),彫刻,旋作(紡績木管),曲木,鉛筆材,マッチ軸木,薪炭,パルプ,木酢の原料などに,樹皮は細工物,屋根葺,篝火(かがりび)染料や樺油の原料。【原色】 | |
シラカンバ4 | 割り箸やアイスクリームのスティックになるが,漂白されているので白色になっている。 | |
シラカンバ5 | 【コメント】現在,割箸,爪楊枝としてごく普通に利用されている。北海道置戸町の「白い器」オケクラフトの用材としても加わっている。 | |
白檜 | シラベ1 | 【効用編】材の効用は略ぼモミに同じくして篩(ふるい)の框(かまち),戸障子框,屋根板,菓子箱となし又書棚,衣桁,額縁,小箱類,帯戸,鏡戸等を作り其外木材の不足する所にありては建築材に供す又製紙原料として富士製紙会社にては第一等とせり。 |
シラベ2 | 材は建築(板類とくに屋根板)・包装・パルプ・器具・家具等になる。【原色】 | |
尻深樫 | シリブカガシ | 【効用編】材は船の艪材となし又皮を去りたる円材の太きは床柱となし細きは船竿となす |
- | シロダモ | 材は建築,器具(小細工物),薪炭に,種子からは油と蝋燭用“つづ蝋”をとる。【原色】 |
杉 | スギ1 | ・ 杉は大材が採れる故に,斯界でも衝立,屏風,座卓,天井の網代組,水屋,飾り棚,額縁など,比較的大きなものに用いられる。屋久杉は,材は淡紅褐色,木目は年輪の読めないほど複雑美麗,質は密,脂が多く狂いは少ない。 ・ 秋田スギ,魚梁瀬スギ(高知),霧島スギ(宮崎県),屋久スギ(鹿児島),春日スギ(奈良県) ・ 一般の建築材としては奈良県の吉野杉が最も優れている。その次に,鳥取県の智頭,愛媛県の伊予三島,徳島県 ・ 宮崎県の飫肥スギは腰が弱いため建築材には向かない。 弁甲材(和船造船用材として仕立て)は耐水性に優れ,強靱で弾力背があり岩石に衝突しても破損しにくく,釘の利きも良いなどの点で評価が高く全国に出荷された。 ・ 小割り類には愛媛県の伊予三島のスギは非常によい。 |
スギ2 | 心材が桃色から濃赤褐色までかなり幅がある。時には黒くなっているもの(黒芯)があるが,含水率が高く,利用上も種々問題があって低く評価される。材質は生産地の範囲が広く,各産地における造林方法や品種の違いにより,幅広く変動している。 | |
スギ3 | 【効用編】材は普通最も多く用られ家屋の建築,橋梁,船材,電柱等及酒樽曲物(秋田県下にては曲物の内部に漆を塗り水滴を製す)其他器具に用いざることなく,其用途枚挙に遑(いとま)あらず。加之伊勢の御山スギのごとき老木は柾目極めて細密にして光沢あることを以て,大なるは天井板及長押等に用い,小なるは短冊掛,柱掛,菓子器及茶器等を作るに供す。脂気多きものは木香(きが)と称し近年はこれをもって各種の流動物を製し,清酒に香気を付くるに利用す。 | |
スギ4 | 【効用編】又世に屋久スギと称するものは別種にあらず。故に幼木は紋理を有せず,老樹又は土中に埋没したるものは紋理美麗にして赤褐色なるをもって,天井板等の装飾材として貴重せらる。然れども脂気多きをもって衣服又は器具を蓄うる用器に作るは宜しからず。又世に神代スギと称する蒼色の材は水中又は渓間等に埋没し年を経たるものにして,其色の雅美なるを以て大に賞賛せらる。此材は脂気なきをもって用途極めて広し。 | |
スギ5 | 【効用編】又経木として紙に張り菓子箱の外に張るに用ゆ。但しキリ紙より安価なり。又京都白スギの如きは磨き丸太として上等の建築に用い,吉野産スギは酒樽に,天竜産のスギは電柱及船材に,東京四谷丸太のごときは足場用となす。 | |
スギ6 | 用途は非常に広汎。建築(柱・貫・板類一般)はもとより,建具,土木(電柱),船舶,車輌,家具,包装,器具(桶樽・下駄・箸)等。特記すべきは天井板(秋田杉・屋久杉・神代杉など)・磨丸太(京都北山産などの床柱・垂木)・酒樽(吉野産など)・船舶用弁甲材(飫肥産など)等であろう。樹皮は屋根葺用。【原色】 | |
酸実 | ズミ | 材は旋作,器具(とくに櫛)などになり,樹皮から葉黄色染料がとれる(ズミは“染み”の意)。セイヨウリンゴの砧木(注:台木)に使われる。【原色】 |
栴檀・樗・楝 | センダン1 | 古くはあふち(おうち)とよんだ。材の色調はやや赤みを帯びた明るい褐色で,香気はなく木目はケヤキに似ている。家具に好適で,かつて日本で「女の子が生まれたらキリノキを植えよ」といったように,中国では「女の子が生まれたら棟樹(タイワンセンダン)を植えよ」という。唐櫃の材料である。家具のほか,室内造作,太鼓の胴,木魚,筑前琵琶の胴,数珠などにも使う。樹皮や果実は毒性を持ち駆虫薬の原料になる。京都の獄門のまえにあったあふちの木に数々の武将の首がかけられて曝されたことから「獄門の木」とも。 |
センダン2 | 【効用編】材は装飾用及家屋の造作用に供し,板(俎のことか?),机,箱,器具などを作り其用途ケヤキに略ぼ同じ又近畿地方にては木履を作り肥前地方にてはケヤキに代用す但し此材は古来罪人を梟首(きょうしゅ)するに用ひし故にこの材を用いることを嫌う人多し罪人の首を此木に掛けし事は源平盛衰記等にあり又塩基性の物質を含有するをもって蝕虫の患なしと云ふ | |
センダン3 | 大和本草に罪人の首を此木に掛けしこと源平盛衰記に見えたり故に他に用ひずといふ(大和木経)【工藝】 | |
センダン4 | 材は建築(板・腰羽目・内部造作),家具(箪笥の前板),器具(箱・指物・運動具ことにラケット・木魚・花台・寄木木象嵌・下駄),楽器(琵琶の胴)などになり,ケヤキ・キリの模擬材に用いられる。樹皮(苦楝皮
くれんぴ)は根皮とともに駆虫薬。葉は肥料・殺虫剤・薬用。外果皮(苦楝子 くれんし)は薬用,種子は念珠用。【原色】 注:材は念珠に利用されている模様であるが、種子は念珠にならない。 |
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センダン5 | 材は辺材が帯黄色,心材は帯赤褐色,保存性が高く,きれいに磨きうるので装飾材として家具などに利用される。【倉田】 | |
センダン6 | 【コメント】暗い伝説にもかかわらず,学校や公園によく植栽されており,材も赤味があって明るく柔らかい印象がある。(2003) | |
栓の木(針桐) | センノキ1 | ・ハリギリ。ヤマギリ。木目が桐に似ているのでこの名がある。大正時代にはキリ,ホオノキ,スギと共に下駄によく使われた。新葉が食用になる救荒植物である。 ケヤキによく似ているので,その代用として家具,器具に使用される。タモなどより粘りが少ないので,椅子などには注意が必要。 ・大雪山の東側,北見・十勝方面に良材が多い ・太くて細かい目合いの上,柔らかな木味を持っているものを「糠栓(糠セン,ぬかせん)」,日高地方の材は白くて粘りがあり木口の断面がおむすび型になった材が多く「カバン」と称する。 |
センノキ2 | 木材関係ではセンと呼ばれていることが多く,木材屋の間の俗字として栓が広く使われている。木材屋の間でセンにはオニセンとヌカセンの2種類があるといわれることが多い。オニセンの材はかたく狂いが多く,ヌカセンは軟らかく加工しやすくて狂いが少ない故,普通の用途にはヌカセン系統のものがよいとされている。【平井】 | |
センノキ3 | 【効用編】材は旋作用及指物用に広く用いられ盆、膳、重箱、杓子其他小器具、舁棒(かきぼう?:舁はex.駕籠を舁(か)く)、柄類、船材、木履、指物板、農具、軸木等を作るに用いらる北海道にては鐵道枕木及家屋の建築用に供す | |
センノキ4 | 材は合板(表板・単板・化粧合板),建築(ことに洋風建築の内部造作・鏡戸・建具),家具(ことに洋家具・陳列棚),器具(火鉢・漆器木地・膳・盆・木鉢・箱・指物・タバコのパイプ・木銃・柄・棒・農具・洗濯板・ブラシの背板・看板・米櫃・杓子・鞘類・臼・算盤枠・下駄・櫛・マッチ軸木),運動具(ことに)ラケットの枠),機械(滑車・調革車),楽器(オルガンの外囲・バイオリンの甲板),土木(枕木・橋梁),車輌,船舶(内装),彫刻,旋作などに用いられ、コクタン,キリなどの模擬材。若葉は食用。【原色】 注:バイオリンの甲板(表板)として、センノキの利用は考えられない。 |
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センノキ5 | 【コメント】北海道のセンノキはかつてはアメリカ,ヨーロッパにフリッチ材として輸出され,高い評価を得ていたという。現在は枕木などに利用することはなく,良材は化粧合板用のツキ板となる。拭き漆仕上げとした盆はケヤキとやや紛らわしい。(2003) | |
- | タイミンタチバナ1 | 材は建築(内部造作),家具(装飾的単板として),器具(箱・小物細工)などになり,果実は食用。【原色】 |
タイミンタチバナ2 | 硬いが薪炭材としてははぜるためかえって良くないという。【平井】 | |
鷹の爪 | タカノツメ | コシアブラと同様,材は器具(箱・杓子・扇の骨・楊子・箸・天秤棒・下駄・経木・真田紐・マッチ軸木),薪炭になる。【原色】 |
岳樺 | ダケカンバ1 | 材は緻密で,質のよいものは雑カバ材あるいはサクラ材として家具材にされるほか,建築材,器具材などに利用される。【山渓】 |
ダケカンバ2 | 材質はウダイカンバに似ているが、曲がりが多く、断面の凸凹や繊維の走向の乱れが多い。【奥村】 | |
ダケカンバ3 | 材はマカンバ同様,器具,家具,彫刻,合板,パルプ等に,樹皮も屋根葺・篝火(かがりび)用に用いられる。【原色】 | |
ダケカンバ4 | 材質はマカンバ(に似ているが,マカンバより劣り,脚物に多く活用されている。 | |
立柳 | タチヤナギ | シダレヤナギ同様,材はマッチ軸木,図版,截板などになる。【原色】 |
椨の木 | タブノキ1 | 有用な散孔材。心材は紅褐色,ただし濃色のもの(ベニタブまたはアカタブ)と淡色のもの(シロタブ)とを区別し,前者の方が材質がよいというが,シロタブはアオガシを指す場合がある。根のこぶを美欄(びらん)といって,装飾的目的に賞用する。 |
タブノキ2 | 【効用編】材は器具材としてクスノキに次ぐ。また彫刻材に供しあるいは土台用材および枕木材に供す。然れども良形の幹少なきをもって多く薪炭に供せらる。八丈島においてはこの材を小舟用材に供す。根部に生ずる瘤塊は美欄と称し机,美術器具,茶棚,置物台,盆その他高等なる指物類に用いる。 | |
タブノキ3 | 材は建築(土台・板類・内部造作),家具(洋家具・陳列棚),器具(木魚・柄・箱・ブラシ木地・下駄の歯),土木(枕木),船舶(小舟用具),彫刻,薪炭,パルプに,樹皮からは塗料(鳶色)・香料をとる。根の瘤をとくに美欄(びらん)といって装飾的用途に賞用する。【原色】 | |
タブノキ4 | 鹿児島県,宮崎県では量的にかなり多いので,人工乾燥を施して特にフローリングとしての利用開発に努力されたことがある。 線香はスギの葉,時には樹皮を粉末にしたものが主原料で,これを固めるのに昔は天然の粘物質を使った。その一つにタブノキ樹皮の粉末があって,椨粉(タブコ)といわれる。【平井】 樹皮は黄八丈絹の褐色の染料とされる。 |
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タブノキ5 | 【コメント】身近で木材の利用例に遭遇することはないが,九州で古い建物の床材に使用されているものを見ることがある。暖地の公園樹として広く利用されており,都内の浜離宮にはタブノキの多くの大木があり,これは暖地の海岸付近の過去の植生の名残ともいわれる。なお,タブ粉は線香、蚊取り線香の粘着剤(糊剤)として現在でも使用されている。 | |
- | タモ | ・ヤチダモがほとんどで,良材は十勝,北見方面,士別の奥 ・中国ダモは色が若干濃いめ ⇒ ヤチダモを参照 |
(木偏+怱)の木 | タラノキ1 | 【効用編】材は仲仕(なかし:港や河川で、船の貨物のあげおろし作業に従事する人。)の用ゆる鉤の柄に最も適し又小細工用及下駄材に供す |
タラノキ2 | 高さ5m,胸高直径20cmに達する。 材は器具(箱・茶盆・下駄・杓子・経木・マッチ軸木・小細工物),船(艪),家具(机)などになり,若芽は食用。【原色】 |
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檀香梅 | ダンコウバイ | 材はとくに有用ではないが,香りが良いので同属のクロモジと同様につまようじにする。 |
萵苣の木 | チシャノキ1 | チシャ,ジシャ,カキノキダマシ。ムラサキ科。シオジに似た雰囲気があるが,シオジよりも硬い。心材は光沢のあるものや,墨を流したような渋い縞模様の染みが入ったものがある。縞模様の入った材は日本人好みの雅味があり,一時期クロガキの代用として出回った。箪笥,茶箪笥の鏡板,前板などとして,装飾的に用いられる。筆箱など民芸的な小物にも使われる。宮崎県を中心に,大分,鹿児島,屋久島,四国の一部に分布するが,国有林の中でしか採れない。 |
チシャノキ2 | 材は建築材,家具材,器具材などに用い,特にきれいな斑の入ったものは箪笥の前板に賞用する。【倉田】 | |
チシャノキ3 | 用途は主に器具材で洋傘の柄,荷棒,牛鞍,旋削して菓子皿,オーバーコートのボタン,小工芸品などが作られる。特に縞模様が出る材はクロガキと称して箪笥の前板,茶棚,内部装飾材に使われた。【平井】 | |
チシャノキ4 | 【効用編】材は装飾用及器具用となす又某及牛鞍を作る又巻く曲して種々の用途に供す | |
チシャノキ5 | 【コメント】なぜか神社に植栽されていることが多い。チシャ又はチシャノキの名はエゴノキの地方名・別名でもあるが、特に断りなく使用されていることがあるので要注意。(2003) | |
千鳥の木 | チドリノキ | イタヤカエデ同様,材は家具(洋家具に賞用),器具(箱・刀鞘・刀柄・農具・柄・指物・木型・楔),建築(内部造作),旋作(紡績用木管)などになり,樹液から糖分がとれる。【原色】 |
中国原産で漢名は香椿 | チャンチン1 | 一般にマホガニーを代表とするセンダン科の材は良質で,家具材,装飾材として最もよいものに数えられる。チャンチンもまたその例に漏れないが,中国原産で国内には植栽されたものしかないので入手が困難。耐朽性も大きく,ことに水湿に強い。【平井】 Chinese cedrela,Chinese mahogany |
チャンチン2 | 木材は心材が赤褐色~褐色の環孔材で,気乾比重約0.53。加工しやすく,建築,家具,器具などに用いられる良材であるが,量が少ない。チャンチン属 Cedrela は東南アジアと中南米の熱帯を中心に約20種あり,とくに中南米のセドロC. odorata L.(現地名 cedro,英名 Spanishcedar,West Indian cedar)の材は葉巻ケースやその他装飾用材として世界的に知られる。【百科】 | |
チャンチン3 | 【効用編】材は装飾材とし又机、箱、三弦の胴、木履其他の器具を作るに用ひ又強きを以て丸太の儘(まま)用いて梯子等となす又能登にては味噌桶及漬物桶に用ゆ之れ塩気の外に浸出せざるが為めなりと云ふ | |
チャンチン4 | 【コメント】製品にはなかなかお目にかかれない。公園樹としても多くないが,港区三田4丁目の三田台公園で比較的太いチャンチンを目撃。 | |
朝鮮五葉 | チョウセンゴヨウ | 材は建築(柱・板・建具),土木(橋梁・枕木),車輌,船舶,器具(楽器・棺),包装,彫刻など。樹脂の多いところは松明にする。【原色】 |
栂 | ツガ1 | 「トガ」ともいう。夏材部がせまくて彫りやすいが,木肌はヒノキやカヤなどに較べ手粗い。 関西では昔からツガ普請といって,ヒノキ普請よりも高級とされていた。(京都などではツガがヒノキとは違った意味での雅致から,建築や建具用材として好まれた。) 建築材としては,柱,土台,造作材をして使われ,特に四方柾柱,長押,鴨居として賞用される。 |
ツガ2 | 天然のツガは成長が遅くて,年輪の幅が狭くそのため製材品の柾目面はいわゆる糸柾になる。削った材面をみると白い粉のような物質が筋状に出ていることが多いが,これはフロコソイドという有機物でよく似た木材との区別点になる。古くから,ツガはネズミに噛まれないといわれてきている。 | |
ツガ3 | 【効用編】材は柱材,土台等に適当しツガの四方柾は有名なるものにして賞用せられ,其他敷居,鴨居,屋根板等に作り近頃又製紙の原料に供せらる王子製紙会社の遠州気田工場及富士製紙会社はこれを原料とす。又此材は薪材として火力大なるをもって信州飯田地方に於ては製糸家好んで薪材とす。唯此材は概して節多くして堅く工作を施し難し此木片にて屋根を葺くときは30,40年の久しきに耐ゆると云う。 | |
ツガ4 | 建築(柱・土台・造作),土木(枕木・橋),器具(指物・経木・箸),包装,車輌,パルプなど。ことに四方柾柱・長押・鴨居として賞用される。樹皮からはタンニンがとれる。【原色】 | |
ツガ5 | 杉皮剥ぎの伝統的な木のヘラとして利用する。 | |
衝羽根樫 | ツクバネガシ1 | 【効用編】シラカシに略ぼ同じ |
ツクバネガシ2 | 材は建築,器具(運動具・柄類・漆器木地・木型),機械(歯車・調革車・織機・紡績木管の心棒),楽器(三味線や太鼓の棹や撥),船舶(舵・櫂),車輌(荷車),椎茸榾木などに用いられ,シタンの模擬材になる。枝条は海苔粗朶に,果実は食用。その他アカガシに準ずる。【原色】 | |
黄楊 | ツゲ1 | 材はやや黄色を帯び,緻密で重く(比重0.75),小木ながら櫛や算盤の珠の外,将棋の駒,印材,三味線や琵琶の撥(ばち),巻物の軸など広い特殊用途を持っている。イヌツゲと区別して「本つげ」とも呼んでいる。 |
ツゲ2 | 鹿児島の薩摩ツゲが良質で,その次は伊豆諸島の三宅島,御蔵島産の島ツゲがよい。 | |
ツゲ3 | 御蔵島産のもの(本島ものといふ)は材質軟にして三宅島産のものは硬し三宅島のツゲには根及幹の下部に虫孔あり御蔵島産にはこれあるを見ず然れども天然木にして直径一尺以上のものには心腐れあり薩摩のツゲは三宅島産に似るも木理疎にして材質硬し主として関西にて使用せらる【工藝】 | |
ツゲ4 | ツゲは我邦に於る精材中の王にして美術的絵画の版木及洋風木版,字母,印判,根付等に賞用せらる殊に此木は木口強きを以て此断面を利用する場合甚だ多し,薩摩産は木理疎にして質平等ならず,三宅御蔵両島産を可とす【工藝】 | |
ツゲ5 | ツゲのことをアサマツゲと呼ぶこともある。アサマツゲはツゲの異称で、漢字は「朝熊黄楊」である。伊勢神宮に近い朝熊山(あさまやま。三重県伊勢市にある山。国土地理院地図では「朝熊ヶ岳(あさまがたけ)」。)のツゲが有名であったことによるといわれる。まれにこれを浅間ツゲと表記しているのを見かけるが、これは誤りである。 | |
ツゲ6 | 本邦産のツゲの特性は木取後十分乾燥し年月を経るに従ひ黄色を増し櫛に製し脂油之に浸潤すれば益々其色を美にし黒変することなく歯先尖ることなく毛髪に善く適合し軟かに且つ平らかに減るものとす | |
ツゲ7 | 東京上野池之端の木櫛製造販売の「十三や商店」(元文元年創業)の主人に薩摩ツゲと伊豆諸島産のツゲの違いを聞いたところ、薩摩ツゲの方が緻密で、伊豆諸島産はやや癖があるとのことであった。【2007.2】 | |
ツゲ8 | 鹿児島県下では200年以上も前から宅地周辺などでの植栽が行われており,その産出材はサツマツゲとして名が通っている。伐期50年程度で管理されている。もっともこの植栽樹はいくらか生長の早いタイワンツゲが多いとも言われる。伊豆七島には自生品とともに植栽されたものもあって,ことに三宅島,御蔵島では櫛材として東京に出すツゲが明治中期における島第一の産物であった。【平井】 | |
ツゲ9 | 古い昔から近年まで櫛の随一の材として用いられてきて,南九州や伊豆諸島の植栽も櫛用が主な目的であった。櫛に比べると現在でもなお確固としてとした地歩を保っているのは印判であろう。そのほか置物などの彫刻材,将棋の駒,算盤玉 等々に用いられ,昔は偽歯にも使われたという。なお,ツゲの代用材として輸入されることがあるシャムツゲは,ツゲ属ではなく,アカネム科のクチナシ属のものと思われる。【平井】 | |
ツゲ10 | 【効用編】材は多く西洋式木版画の彫刻其他美術品の制作に用ひられ又印其他貴重なる小細工,義歯,櫛,算盤珠,琵琶の撥,将棋の駒,精巧なる定規其他の図引器械等に用ひらる | |
ツゲ11 | 材は器具(唐木細工・寄木細工・木象嵌・櫛・将棋の駒・ブラシ背板・算盤玉・ステッキ・柄),機械(定規・測量具・杼(オサ)・尺度・紡績用木管),楽器(木管楽器・笛・三味線や琵琶の撥),彫刻(字母・版木・印判)などに重用される。【原色】 | |
ツゲ12 | ・日本在来のツゲは,学名上が Buxus microphylla var. japonica で,より小型のクサツゲ(Buxus microphylla,ヒメツゲとも。)の変種として扱っているが,むしろクサツゲの方が園芸品種と見られている。 ・ツゲと同様に園芸的に利用されているイヌツゲはツゲ科ツゲ属ではなく,モチノキ科モチノキ属で全く別物。また,黄金色の新芽が美しく広く植栽されているキンメツゲは,イヌツゲの園芸品種である。 |
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椿 | ツバキ1 | 材は堅く緻密で磨けばよい光沢が出る。炭はその緻密さから蒔絵や金箔張りの研磨用に専用される。木や葉の灰は媒染剤になり,葉は土器の研磨用にもなる。備長炭の代用としても。 |
ツバキ2 | 銘木としてのツバキは,庭木として植栽されるツバキではなく,山にあるナツツバキ(シャラノキと誤称される。)のことである。【春永剛聖】 | |
ツバキ3 | 【効用編】材は旋作用に供し又農具の柄、櫛、版木、木槌の類を作り又尺度を作りてツゲの代用となす又炭を製するに用ゆ此木炭は蒔絵金粉研磨用とす | |
ツバキ4 | 材は建築,器具(丸物漆器生地・菓子盆・木型・ブラシ背板・木魚・撞木・木槌・将棋の駒・柄・杵・喫煙パイプ・櫛),機械(杼・尺度),楽器(撥),船舶(滑り台),彫刻(版木),旋作(筆立・算盤玉・コイルの芯),薪炭(蒔絵金粉研磨炭・生木の灰(やまあく)は媒染剤)などになり,ツゲ・サクラ・ナツメ・コクタンなどの模擬材。葉は土器の研磨に,花は蔬菜の駆虫剤に,種子からは椿油がとれる。【原色】 | |
ツバキ5 | 材は重硬・緻密なため各種の用途に使われ,ツゲ,サクラ,ナツメ,コクタンの模擬材ともされる。器具,建築(小物部材),器械,楽器,版木などの彫刻材,船舶用滑り台,硝子木型(最適とされる)などの用途がある。【平井】 | |
吊花 | ツリバナ | 材は版木・弓・篩(注:「櫛」の誤植と思われる。)・細工物になる。【原色】 |
唐檜 | トウヒ1 | 【効用編】材は曲物に適するをもって薄片となし篩(ふるい),蒸桶の外囲を作りヒノキの代品として用いられ,天井板,柱等の建築材及机類戸障子等の制作に用いられ又枌(そぎ)板となして屋を葺くに用い,又子持箸を作る。近頃人力車,馬車の車輪の泥除を作る。 |
トウヒ2 | 量的にまとまって出材しないので,一般的にはあまり重要でない。用途はエゾマツと同様。特殊な用途として,曲物材料として最もよく知られ,また箸,漆器木地,提灯の重化(じゅうげ),畳縁木などがある。【平井】 | |
トウヒ3 | エゾマツに準じ,ヒノキの代用材と考えてよい。建築(屋根板・天井板・建具),器具(箸・曲物・篩・桶・漆器下地),船舶,包装(経木・箱・マッチ軸木と箱)その他。もちろんパルプにも適している。【原色】 | |
栂椹 | トガサワラ | 建築,土木(坑木),船,器具(桶・棺材)。【原色】 |
栃(橡)の木 | トチノキ1 | 一名七葉樹ともいう。比重は0.5だがその割りに緻密で削りやすく,明るい単褐色の地に絹糸光沢の杢,いわゆるトチ杢があらわれるので家具,造作特に盆,鉢材として珍重される。耐朽・保存性は極めて低い。最も古くから我々の祖先の生活の中に取り入れられた木の一つである。 |
トチノキ2 | 材は総じて柔らかく加工しやすい。しかし腐りやすく狂いやすいので,木材としての高い評価は与えられていない。昔からろくろ細工の木地とか,杓文字や杓子などの器具材に使われてきた。漆器の木地もある。面白いのは,たいていの樹種では辺材よりも心材の方が大事にされるが,トチノキでは赤トチ呼ばれる黄褐色から淡紅褐色心材は収縮が大きく狂いやすいとして,それより淡色の青トチ(白トチ)と呼ばれる辺材の方が喜ばれていることである。材全体が薄赤いのは赤トチと呼ばれて材質はよいとされている。 材の表面には細かい波状紋があることから絹のような光沢があり,それに老齢になると生長が部分的に不規則になるためいろいろな杢が出るので,装飾的な羽目板や扉の鏡板などにもよく使われる。【上村】 |
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トチノキ3 | 【効用編】材は装飾材とす即ち老樹の根部には縮絞あり之ちぢれとちと称す又一寸に十個の縮絞あるを俗にとちぢみと称し上品とす又彫刻材、漆器木地(殊に会津漆器丸物)、板、製紙乾燥板、建具材、橋梁、門扉、机案、箱類、家具、盆、椀、大形木鉢、火鉢、臼、丸木船、船具等を作るに用いらる又老樹の根に瘤あり小なるものは拳の如く大なるものは一尺にして其外形のみならず内部の木理も亦頗る奇雅なるを以て其用途あるものなり | |
トチノキ4 | 材は建築(内部造作・天井板・鴨居・床板・門扉・板類),家具(ことに洋家具),器具(箱・寄木細工・木象嵌・碁盤・張板・裁物板・和紙の乾燥板・ブラシ背板・漆器木地・・火鉢・臼・杓子・木魚・指物・額縁・下駄・マッチ軸木),楽器(ことにヴァイオリンの裏板),土木(橋梁),船舶(船具・丸木舟),車輌(内部造作),合板(とくに杢板合板の表板・単板),彫刻(椀・盆・木鉢・木管),などに賞用され,コクタンやカエデ(モミジ)類の模擬材になる。樹皮は薬用・タンニン材料・器具になり,堅果は食用(栃餅)。【原色】 | |
トチノキ5 | 銘木トチの産地としては岐阜が有名で最高とされるが原木は減少。 | |
トチノキ6 | 板目面で肉眼でも明らかなリップルマーク(波状紋)が認められ,トチノキ材の著しい特徴となっている。日本産の主要材でこのように明瞭なリップルマークがあるものはほかにはカキノキくらいである。アオトチといわれる白色材が賞用されるが,心材相当部分の色の濃いいわゆるアカトチは敬遠される。【平井】 | |
トチノキ7 | トチノキはブナよりも狂ひ多きも亀裂することなく且刺(とげ)の立つことなきを以て木地の外大なる木鉢を製するに用ひらる【工藝】 | |
トチノキ8 | 【コメント】日常生活用品ではトチノキの盆は,ケヤキの盆と並んで一般的であり,通常拭き漆仕上げされることから,目を凝らせば縮緬状の模様が見えて,容易に確認できる。こね鉢の素材としても一般的で,長野県栄村・秋山郷の製品は有名。ウン万円のコネ鉢を愛用にしている人も多いはず。(2003) | |
椴松 | トドマツ1 | 比較的軽軟。耐朽・保存性は低いが,土木用材としてはエゾマツより腐朽しにくい。 エゾマツとともにパルプ原料として最適。 水食材(水食:心材でも辺材と同様,含水率が高くなっている部分)を持つものがみられる。 |
トドマツ2 | 【効用編】材は北海道に於ては内地のスギの如く最も普通に利用せられ建築材,船材および器具材に用いらる。 | |
トドマツ3 | トドマツは北海道全般にわたりエゾマツと混生していることが多く,ふつういっしょに生産して出材され,その取扱い及び利用の上において特定の用途以外は両者を区別することなく,エゾ・トドとして一括される。土木用材では,特に水工用に賞用され,以前は電柱にもなった。かつて石炭業がさかんな頃には小径木が坑木として大量に用いられた。包装用材では各種箱材として最も普通な材料であり,輸出もモミチェストの大きい部分を占めていた。(モミそのものよりシェアが高かった。) * モミチェスト:大正から昭和初期にかけて紅茶用組み立て箱として,モミチェストの名で多く輸出された。【平井】 |
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トドマツ4 | 建築(土台・屋根柾),土木(電柱・坑木・土工用・水工用),その他パルプ・器具材・包装等用途広く,特筆すべきはパルプ・モミチェスト・屋根柾。 【原色】 | |
- | トネリコ1 | モクセイ科トネリコ属の落葉高木で,北陸地方では田のあぜに稲架木(はざぎ)として植えられ,タモ,タモノキ,サトトネリコともいう。葉裏の脈沿いに白い毛がある。木目はアオダモほど明瞭ではない。 |
トネリコ2 | 材は運動具(ことに野球のバットに最も賞用され、庭球やバドミントンのラケットの枠・スキー),器具(指物・杓子・柄・洋傘の柄・ステッキ・棒・漆器木地),機械(測量三脚・部材),車輌(車輪),旋作(ろくろ細工),薪炭などになり、樹皮の浸出液は薬用(洗眼剤)に,枝にできた虫白蝋は潤滑用。【原色】 | |
- | トネリコ属1 | トネリコ属 Fraxinus(英名 ash)は,いずれも材は環孔材で強く弾力があるので,野球のバットなど運動用具材として優れ,器具・建築・車両材などとしても賞用される。 ①アオダモ F.lanuginosa Koidz.は日本全土と南千島,朝鮮半島南部に分布し,5または7枚の小葉をもつ。これと②マルバアオダモは小高木であるが,③ヤマトアオダモは高木となる。前年枝に花序を側生する④シオジ F. spaethiana Lingelsh.は高さ30mになり,小葉は5~9枚。栃木県から宮崎県に至る太平洋側の温帯山地の湿潤地にときに純林をつくる。⑤ヤチダモ F. mandshurica Rupr.var. japonica Maxim. は高さ25mになり,小葉は7~11枚と多い。本州長野県以北,北海道,サハリンおよび朝鮮半島,中国北部からウスリー地方までの河岸や湿地付近の肥沃地に純林をつくる。 |
トネリコ属2 | アオダモ: コバノトネリコ,アオダゴとも。小葉は先が鋭く尖り,縁には明瞭な鋸歯がある。 心材は淡褐白色。世界で最も強靱,堅硬で,白く美しい材。野球のバット材として珍重され,スキー板,楽器などにも使われている。良材は北海道日高山系の国有林で採れる材のみといわれる。 プロ野球用にはアメリカトネリコやアオダモ,メープルが使われるという。 |
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アオダモの材は建築(床柱),家具(箪笥),器具(漆器木地・柄・槌・天秤棒・箸・洋傘の柄・櫛),運動具(野球バット・ラケットの枠),機械(部材),薪炭に、樹皮の浸出液は製墨用糊に用いる。【原色】 | ||
トネリコ属3 | マルバアオダモ: ホソバアオダモ,コガネアオダモとも。鋸歯は低く不明瞭。 |
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トネリコ属4 | ヤチダモ: 小葉の付け根に茶褐色の縮れた毛が密生する。 心材は淡黄褐色。良質有用な材で,建築,家具,器具,運動具,楽器など広範な用途がある。 |
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トネリコ属5 | シオジ: 葉柄の基部は著しくふくらみ,茎を抱く。 心材は淡黄褐色ので,年輪の明瞭な環孔材。木理や杢が美しく,ヤチダモより色が明るく,目が細かく詰んでいて狂いも少ないが,ヤチダモより粘りがなく軟らかいので,脚物家具には使えない。シオジとして扱われる家具のほとんどはヤチダモだといわれる。 |
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泥の木 | ドロノキ1 | マッチの軸木,パルプ,箱,器具,包装,経木,木毛などにも使われる。木炭は火薬の原料になる。 マッチの軸木として大量に用いられたが、サワグルミの軸木と比べると、火を摺ったときに煙が材面に沿って上がってこないので、品がよいとされ高く評価されていた。【須藤】 |
ドロノキ2 | 【効用編】材は舊(=旧)時は専ら小舟の底材、丸木舟、白箸、房楊枝、扇筥、短冊等を作るに用いたり。明治10年頃より燐寸の軸木に用ひ始めし以来軍用次第に増加したりしに又近年は鉋片として縦割したるもの或は之を以て真田紐を編みて輸出し或は繊細なる長き糸状の鉋片となして織物を編製し帽子、器物及び座蓆(ムシロ)を作り其内部に鉋片屑を填めて膨張せしむ。或は此鉋片を細割して絹糸状とし或は之を各種に染めたるは婦人の髪飾となし絹糸に代わるのみならず蒸気に逢ふて柔軟屈撓せざるの効あり。 | |
ドロノキ3 | 材はマッチ軸木(最も賞用されている),器具,包装(箱・経木),パルプに,枝条は行李に用いる。【原色】 | |
ドロノキ4 | 刃物の持ちが非常に悪いという。 | |
泥柳 | ドロヤナギ (ドロノキに同じ) |
耐朽性は低い。マッチの軸木として最も賞用され,ランバーコアの芯にも使う。 |
梛・竹柏 | ナギ1 | 【効用編】材は皮付きのまま磨きて床柱となす。又家具及器具を作るに用ゆ。 |
ナギ2 | 建築(ことに皮付のままの床柱として賞用される。),家具,器具など大体イヌマキに準ずる用途をもっている。樹皮からは染料や鞣皮料が得られる。【原色】 | |
ナギ3 | 材はイヌマキに劣るが,家具材などに用い,樹皮からタンニンを採る。 | |
夏椿 | ナツツバキ1 | ヒメシャラと同様に,材は建築(皮付床柱),器具(柄・杵・酒の搾り木),薪炭などに用いられる。【原色】 |
ナツツバキ2 | 皮付き丸太は茶室の床柱に用い,器具材としても多くの用途がある。名木としてのツバキは本種を指す。(シャラノキはナツツバキの誤称。) | |
七竈 | ナナカマド1 | 材が堅いため,細工用に利用されることがある。 |
ナナカマド2 | 【効用編】材は器具用材、旋作用材及小細工用材とし又槌等を作るに用い又薪炭材となす | |
ナナカマド3 | 材は器具(小細工物・槌・鉋台),機械(車類),旋作,薪炭などに,樹皮からは染料,外皮は薬用。【原色】 | |
楢 ⇒ミズナラを参照 |
ナラ1 (ミズナラ) |
・正柾(しょうまさ)で虎斑(とらふ)がでる。 ・つき板では斑が目飛びを起こすため,最近は追柾傾向。 ・大雪山を中心に西側の石狩・上川一帯と日高山脈の西側に良材が得られた。 ・カシワ系のナラは十勝方面に産出し,導管が細いことからウィスキーの樽に重宝がられる。←ホンマかいな。少なくとも国産ナラはウィスキー樽用としては一般的ではないと聞くが。 ⇒ ミズナラを参照 |
ナラ2 (ミズナラ) |
生長が良くて年輪幅が広ければ重硬になり,生長が悪くて年輪幅が狭くなると軽軟になる。辺材はヒラタキクイムシの食害を受けることがある。ミズナラは生産量が多く,硬質の環孔材として代表的なものであって,強度が大きくしかも材面は重厚な感触を与えるという両面をそなえているため,あらゆる方面に広く用いられる。家具材,器具材,機械材,建築(フローリング,窓枠,階段,手摺り,ドアなどの造作や壁板などの内装材),内装用合板材料,船舶材では強度を必要とする内装部材や壁面材になり,和船では重要な部材としてのほか櫓,櫂にも使われた。そのほか枕木,電柱腕木,榾木等々。過去に多くのインチ材を輸出していた。【平井】 | |
南天 | ナンテン1 | あまり大きくなる木ではないが,有名なのは何といっても京都の鹿苑寺(金閣寺)にある茶室の夕佳亭(せっかてい)の床柱である。これは足利義満が海路はるばる琉球王国から取り寄せたものと伝えられている。東京葛飾柴又帝釈天の客殿の南天の間にある床柱も実に見事である。8本に枝分かれしており,もっとも太い幹は下から50センチのところで周囲28センチ,直径8.7センチある。これは伊吹山下の坂田郡春照(すいじょう)村の旧家,的場徹氏の家の庭にあったもの。【菱山】 |
ナンテン2 | ・「なんてんの柱」:南天の木はなかなか柱になるほど太くなりにくいところから,)珍しいもの,豪奢なもののたとえ。【小学館日本語大辞典)】 ・「南天の柱」といわれているものは,普通イイギリなどの別種の材である。【湯浅浩史:小学館日本大百科全書】 |
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ナンテン3 南天の箸 |
普通南天の箸として市販されているものは,イイギリや南方産のアピトン(フィリピンでの呼称で,マレーシア・インドネシアではクルインと呼ぶ。心材はくすんだ赤褐色)材であるともいわれる。 南天は難転につながることから,縁起物とされるが・・・ |
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ナンテン4 南天の箸 |
一般に「茶南天」といわれるものは,輸入材の鉄木が使われている。また,「白南天」と称しているものは木地を漂白したものであり,様々な外材が使用されている模様。当社では,本物の南天の箸(皮付き)を少量ながら製作している。【2004 株式会社 兵左衛門】 | |
苦木 | ニガキ1 | 【効用編】材は箱類、荷馬車、農具、木履、曲物等を作るに用い又装飾材とし或は天秤棒とす |
ニガキ2 | 材は器具(曲物・箱・農具・天秤棒・寄木木象嵌・下駄),車輌(荷車),薪炭などに,樹皮・根皮からも同様薬剤・染料がとれる。【原色】 | |
錦木 | ニシキギ1 | 【効用編】材は弓、杖、木釘、櫛等を作り又寄せ木細工及旋作工用に供す |
ニシキギ2 | 材は版木に賞用され,弓・杖・木釘などにもなる。樹皮は薬用になる。【原色】 | |
偽アカシア 針槐 |
ニセアカシア | (北米原産) 材は土木(枕木・杭・支柱に好適),器具(指物・柄・とくに木釘中でも絶縁用の釘としては最適),車輌(荷車のこしき),機械(部材),包装(函),船舶(部材ことに帆柱には最適),旋作,薪などに用いる。樹皮は馬には有毒であるという。【原色】 |
接骨木/庭常 | ニワトコ | 材はおもに寄木・木象嵌などの小細工に、髄は生物実験用に供されるので著名。【原色】 |
白膠木 | ヌルデ1 | 枝を折ると白色の樹液を出すので白膠木ともいう。真言宗では本来ヌルデを護摩木に使う。(インド菩提樹やウドンゲノキの代用。) お歯黒は「ふし粉」に「かね水」をつけて歯に塗る。ふし粉はヌルデの五倍子を採り乾燥したものでタンニンを多く含んでいる。かね水は酢に古鉄類を入れて酸化させたもので悪臭が強い。 |
ヌルデ2 | 【効用編】材は小細工箱類を作るに用い又薪材となして中等なり之を焚けば爆発聲(声)をなす故に僧家にて護摩木となす此材は勝の木と云ひ昔は年始の祝木に用ひ又削り掛けを作りしものなり | |
ヌルデ3 | 材は器具(箱・浮子・旋作・下駄・小細工),薪炭(護摩木として焚く),椎茸榾木などに,樹皮からは染料をとる。葉の五倍子からはタンニン,実から蝋がとれるが,漆液は問題にならない。【原色】 | |
捩木 | ネジキ1 | 材は旋作,器具(ことに)櫛・洋傘の柄),木炭(漆研出し用炭)になる。【原色】 |
ネジキ2 | 材が堅く緻密(ちみつ)なので,櫛(くし)や傘の柄などの細工物に用い,これから作った木炭は漆器をみがくのに用いる。【百科】 | |
鼠子・黒檜 | ネズコ・クロベ1 | ヒノキチオールなどを含んでいて保存性は高い(がベイスギより劣る)。神代杉の代用にされ,床まわり,いろいろな器具や和家具,細工物,内装にも重用される。網代にも多く使われる。 |
ネズコ・クロベ2 | 【効用編】材は淡黒色を帯びて雅美なるを以て天井板,欄間などの用材及煙草盆,机,茶箪笥,書箱,戸障子等を制作し,又柾目材を以て男下駄を作り,板目材を以て婦人用の下駄を作る。又此材は水に浸すときは能く曲ぐることを以て日光地方に於ては枌板となして曲物を作る。此材にて作りたり桶は能く水を保つものなり,而して下野国栗山村より出る桶を粟山桶と云ふ。又屋根板に賞用せらる。樹皮は火縄に用ゆ。 | |
ネズコ3 | 材の保存性は普通高い。外観,感触が神代スギににていることに由来する利用も見られる。ネズコ材を使う木工場でアレルギー性喘息が起こった例がある。【平井】 | |
ネズコ4 | 材は建築(天井板・屋根板),建具,器具,家具,下駄,経木等に,神代杉の模擬材。樹皮は火縄。【原色】 | |
鼠刺 | ネズミサシ1 | 【効用編】材は腐り難きをもって主に桶材として用いられ,また土台,庭園の垣柱に用いらる。京都にては箕(み)の縁とす。この材を焚けば蚊遣火の効あるもカヤノキ,クスノキに劣る。燃材にも能く適当し生木にて能く燃ゆ。また脂香馥郁たり故に和白檀と称し装飾用の柱及小器具に用ゆ。外皮あるときは其皮内に蠧(きくい)虫を生じ喰いたる痕を残し其蠧痕の奇雅なるに由り茶杓に製す。 |
ネズミサシ2 | 心材は淡褐色,辺材は黄白色,光沢が美しく,堅硬で耐朽性が高いので,建築(床柱など),土木,桶,彫刻などに賞用し,仏像彫刻に和白檀と呼んで珍重することがある。 | |
ネズミサシ3 | あまり用いられていないが,材は建築(土台・床柱・床廻りなどの装飾),土木,船舶(船具),器具(桶・浴槽・把柄),彫刻(仏像)などになり,和白檀(ワビャクダン)と称して白檀の模擬材になる。【原色】 | |
ネズミサシ4 | 【参考】 ・標準和名はネズである。別にムロ、ムロの木とも。 普通は5~6メートルほどにしかならないため、年輪が緻密で光沢がある。 ・東京港区の八芳園の壺中庵(当初の呼称は「日本館」)の床、柱、建具、家具すべてがムロの木で作られている。【宮本茂紀】 |
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合歓木 | ネムノキ1 | 鎌の柄(特に女性用)としても利用されたという【工藝】。宮崎県でメンパの曲げ木部分にも利用例が見られる。ネムノキを宮崎県内でコウカンボウとかコウカノキと呼び,これを使ったメンパをコウカメンパと呼んでいる例を耳にした。 |
ネムノキ2 | 【効用編】材は多く薪炭に供するに過ぎざるも其質堅硬なるを以て下駄の歯,馬の鞍並に車輪の骨其他旋削物,斧の柄,机等の小細工用材となす又この材を黒焼きにして飯にてねり塗るときはリュウマチを治すと云ふ | |
ネムノキ3 | 材は建築(屋根板),家具(箪笥の前板・机),器具(胴丸火鉢・馬鞍・桶・箱・柄・天秤棒・小細工物・下駄およびその歯),車輌(車輪の骨),旋作,薪に,葉は抹香・洗濯用。【原色】 | |
ネムノキ4 | 材は粘り強いことを生かして斧,鎌の柄,腐りにくいことから屋根板などに使われる。【中川】 | |
ネムノキ5 | ネムノキの材は,辺材は黄白色,心材は暗黄褐色,木目はキリに似て,軟らかくて緻密で粘りが強い。【草川】 | |
ネムノキ6 | 辺材は黄白色,心材は帯黄灰褐色,淡褐色などである。やや軽軟であまり強くない。耐朽保存性は低い。また,割裂性が大きい。材の用途は一般に器具材(道具の柄,馬鞍,桶,天秤棒,洋傘の柄,小細工ものなど),箱材,薪炭材であるが,地方的には屋根板(対馬),胴丸火鉢,下駄とその歯(以上宮崎県),箪笥の前板(五木),その他特別な使い方の記録がある。【平井】 | |
糊空木 | ノリウツギ1 | 【効用編】材は木釘を作るのに用いられ又此樹は木心に細孔あるを以て近年パイプを作るに用ゆ而して奇形の處は根部にあれども小刀を以て切目を入れ再び癒着せしめて人工的に奇形を作るに至れり此くの如くして作りたるパイプ及び杖は北海道の名産となれり 〔注〕ノリノキともいう。北海道ではサビタと呼ぶ。この木の根部で作ったパイプを「サビタパイプ」と呼んだ。 |
ノリウツギ2 | 材は楊枝・木釘その他の小細工に供され,樹皮ことに内樹皮からは和紙に使う糊をとるのでノリウツギの名がある。【原色】 | |
灰の木 | ハイノキ | 材は器具(将棋の駒・箸・小細工物),薪炭になり、この木を焼いてその灰汁から媒染剤をとる。【原色】 |
羽団扇楓 | ハウチワカエデ | 材は家具(ことに洋家具),器具(箱・農具の柄・刀の鞘と柄・指物・楔・靴型),旋作(紡績用木管),彫刻などに用いられる。【原色】 |
白雲木 | ハクウンボク1 | 材は器具(杓子・へら・こま・経木・マッチ軸木,ことに将棋の駒としては全国生産の90%(注:当時)を占める山形県天童町においておもにこの材),彫刻,旋作(傘のろくろ),薪炭など、種子からは油をとり蝋燭を作る。【原色】 |
ハクウンボク2 | 杓子などの器具材,こけしなどのろくろ細工,彫刻材として利用する。 | |
ハクウンボク3 | 材は淡黄白色,緻密(ちみつ)で堅く,傘のろくろ,将棋の駒などの器具,彫刻材に用いる。また,種子の油を絞ってろうそくを作り,木は庭園にも植えられる。【百科】 | |
箱柳 | ハコヤナギ | ヤマナラシの別名。ハコヤナギの名前は材を箱の材料にしたことからという。 |
ハシドイ | 材は耐久性があり,柱材,土台材,器具材などに利用する。 | |
榛 | ハシバミ1 | 材はおおよそ緻密である。一般に強靱で折れにくい。大きい樹がないので材の有効な利用はないが、幹の真っ直ぐなものはステッキ、洋傘の柄などになり、また工具の柄、箕の縁その他の小器具材および薪炭材に使われる。【平井】 |
ハシバミ2 | 材は器具(ことにステッキ・柄),薪炭に,種子は食用に供する。【原色】 | |
ハシバミ3 | ハシバミの材は、淡黄白色をし、堅硬、強靱で、工具の柄、傘の柄、小器具材、薪炭材として利用されてきた。木炭は火薬や炭筆にも用いられてきた。果実からクルミ油に似た乾性油がとれ、絵の具や香料に用いられてきた。【小学館園芸植物大事典】 | |
黄櫨 | ハゼノキ1 | 古名をハジという。ただしハジにはヤマハゼ,ヤマウルシ説もある。樹皮は赤褐色系草木染めに使う。果実は江戸時代の和蝋燭の原料として貴重な資源であった。 |
ハゼノキ2 | ウルシ科の落葉小木。木蝋はウルシやハゼノキの果実の,主として中果皮の細胞内に結晶性の粒状で蓄積されている。両者の科学的成分に変わりはないが,果実中の粗蝋の割合はウルシが15~35%,ハゼノキが20~30%で,ハゼノキの方が収率がよい。どちらも果実を蒸して粗蝋を絞り取り,加熱して繊維などの不純物を除く。次に灰汁と共に煮て冷却後日光にさらして真っ白に漂白する。さらし蝋の融点は40~50度。 | |
ハゼノキ3 | ハゼの心材は美なる黄色をなすが故に之を黄金木と評し定規,紙切,筆立,筆軸,襖引手,掛物軸,引出撮み,土瓶敷,小皿等となす【工藝】 | |
ハゼノキ4 | 【効用編】材はすす竹と併用して弓を作る又中心深黄にして美なるを以て装飾、寄せ木細工、箱、其他小細工材に用ふ | |
ハゼノキ5 | 種子から蝋をとる目的で栽培されることもちろんであるが,材は器具(寄木細工・木象嵌・弓の側木・筆の軸・定規・箱・小物細工・マッチ軸木),旋作などに用いられる。【原色】 | |
針桐 | ハリギリ | → センノキ を参照 |
春楡 | ハルニレ1 | ・家具,車輛,船舶用材のほか,特に手斧の柄に最上とされる。 ・硬くて重く,強靱。曲げに強いので曲げ木には適している。 ・北海道では防腐しないでそのまま用いる二種枕木のおもなものの一つであった。【平井】 |
ハルニレ2 | 仕上げた材面の光沢が少なく,手で材面をなでてざらつく感じのあることが特徴的で,外観がよく似たヤチダモなどの材と区別がつくことがある。しかし,割れにくく,多少の粘り気があるので曲げ木には適している。材の保存性は良くない。ハルニレの材はヤチダモと同じような用途に使われるが,材色も暗くくすんでいるので,それより劣等な材と考えてよく,また,ケヤキ,ヤチダモの代用材とされていることが多い。【平井】 | |
ハルニレ3 | 【効用編】材は椀、盆、独楽其他の器具を旋製し又大八車の軸、斧柄、楔等に用い又其木理の玉杢をなすものは最も美麗なるを以て貴重せらる 北海道にて梓と称するものは此材を以て製したる弓なり | |
ハルニレ4 | 材は旋作(椀・盆・こま),器具(柄類・指物・棒弓),建築(内部造作),家具,楽器(太鼓の胴),船舶(船底),車輌(荷車),土木(枕木),薪炭,椎茸榾木に,樹皮の繊維にも縄や革靴などの用途があり,樹皮を粉砕して得る楡麵(楡麺 にれめん)は瓦石の接合剤。根からは製紙用の糊がとれる。【原色】 | |
ハルニレ5 | 【コメント】北方系の樹木であるが,公園樹として九州でも見かける。ハルニレで有名なものは北海道豊頃(とよころ)町の十勝川河川敷にある二本の大木で,町のシンボルとなっている。 | |
榛の木 | ハンノキ1 | 昔は榛木(はりのき)と呼ばれ草木染めに使われた。比較的湿地を好み,かつては水田の農道の並木として夏は木陰に憩い,収穫期には稲を干す稲架(はさ)に利用された。漆器木地や鉛筆用材になる。アイヌ語でケネという。 シナの代用として多く使われている。 |
ハンノキ2 | 材面が特に美しくはないので,表面に出る用途にそのまま使われることは少なく,芯材にされたり,塗装されることが多い。器具,建築内装,家具,木製玩具,漆器木地,箱などがある。炭質が火薬に適するため黒色火薬用の炭の原料となる。木象嵌,寄木細工などにも用いられる。 | |
ハンノキ3 | 【効用編】材は主として薪材となす 其火力クヌギ、カシ類に及ばざるも用ふるに足る 又炭に焼き得るも其質下等なるを以て鍛冶屋用に供す 良材は之を建築用に供するを得べし 日本に於ては用材としては多く小屋掛け又は水利土工の杭として用ふ 此等の杭は生木を用ふるときは多く活著するものなり 又此炭を火薬の原料に供す 火薬用には周り七八寸前後にして無節のものを最良とす 陸海軍の火薬庫にて使用する量極めて大なりと云ふ | |
ハンノキ4 | 材は建築(床柱・梁),器具(柄類・鋳型・仏具・櫛・ブラシ木地・漆器木地・太鼓の胴・マッチ軸木・鉛筆材),家具,船舶(船具),旋作,薪炭(火薬用木炭)に,樹皮からは染料・タンニンをとる。【原色】 | |
- | バッコヤナギ | 材は器具(箱・截板・小細工用)に,樹皮の繊維は製縄に用いる。【原色】 |
柊 | ヒイラギ1 | 【効用編】材は主として算盤玉を作るのに用い,また櫛,箸,印,画軸,将棋,三弦の撥および駒をつくるのに用い,また旋削用に供す。 |
ヒイラギ2 | 材は器具(木槌・画軸・将棋の駒・算盤の玉・腕・こま・箸・洋傘の柄・木剣・櫛),楽器(三弦の撥と駒・琵琶の撥),彫刻(印判),旋作,薪炭などになる。【原色】 | |
ヒイラギ3 | 材は淡黄白色を呈し緻密(ちみつ)強靱なので,器具,楽器,印判,櫛(くし),将棋の駒,そろばん珠などに賞用される。 | |
ひ榊 | ヒサカキ1 | 材は器具(小細工),薪炭(灰汁は媒染剤)などに,木灰は和紙製造に,枝葉は神事に,果実は染料になる。【原色】 |
ヒサカキ2 | 全国で広く枝葉を榊として神事に用いる。 | |
檜 | ヒノキ1 | ヒノキは「火の木」,つまり古くから火切臼や火切杵に使ったことからきているといわれる。 Chamaecyparis obutusa ・木曽ヒノキ(長野県),吉野ヒノキ(奈良県),天竜ヒノキ(静岡県)など ・その他関西で好まれているヒノキ⇒岡山,広島,熊本各県産 ・東京で使う柱材⇒紀州(和歌山県),尾鷲(三重県),東農(岐阜県) ・奈良時代以降の仏像はすべてヒノキで彫られてきた。法隆寺や正倉院もヒノキ。 |
ヒノキ2 | 【効用編】材は建築,船舶,橋梁其他器具材に供し,而して埋木様になりしものを神代ヒノキと称し,装飾用に供せられる。又枌板として各種の曲物及飯器を作り,又春慶塗の木地に用ゆる等其需要の広き我邦木材中の主なるものと謂べし。然れども脂質に富むを以て,箱材として用ゆるときは内の品物に脂気を伝えるを以て殊に注意すべきこととす。而して其材質は緻密柔靱なるを以て薄板を作り,また模型を作るに欠くべからざるものなり。 | |
ヒノキ3 | 【効用編】信濃及飛騨にては長さ2尺,幅3分に薄く枌ぎたるものをヒデと称し,ヒノキ笠を編むの原料とす。又細かく割きて綯(ヨ)りたるものの細きものは鵜飼の縄に用い,又数条合して綱となし桴筏及船舶を繋ぐに用いこれを檜縄と云ふ。又ヒノキ材を原料として製造する製紙は是迄主に諸般の物品包紙に用い来りしが,近年米穀及茶袋に適用すべき方法を案出し,米の如きは此紙にて包き置くときは入梅と雖ども湿ふ憂ひなく土用を過ぐるとも腐蝕を被る如きことなきを以て,保米には欠くべからざる品なりと云う。 | |
ヒノキ4 | 【効用編】また鉋にて薄く削りたるものを以て編みて小箱及坐蓆(むしろ)を作り,又結髪の根掛等に作る。又升材に用ゆ。而して水量には柾目を用い殻量には板目を用ゆ。又此木に火の木の称あるは林木相摩擦して火を発するに因みしものにして燃焼し易きをもって古来鑽火(きりび)の台に用い,又附木用材とする。樹皮は屋根を葺き又綯(な)ひて火縄に作りマキハダの用をなす。 | |
ヒノキ5 | ヒノキは樹脂あるが為に箪笥或は箱に用ひず抽出の出入りを妨ぐるのみならず脂を揮発する為に蔵置せる紙幣の捺印部印肉溶解したること曾て印刷局に起こりたる事実なりしといふ【工藝】 | |
ヒノキ6 | 材は世界的にも優秀なものだけに用途はすこぶる広汎。建築(社寺建築・柱・板・床廻り・縁甲板などとくに高級なものに),家具(和洋家具・仏壇),器具(漆器下地・櫃・曲物・指物・看板・製図板・俎・把柄・棒類・木型・木釘・箱類・風呂桶・桶類・祭葬具・棺・櫛・マッチ軸木),機械(織機・度量衡器),土木(枕木・橋梁),船舶(帆柱・ボート・オール),車輌,彫刻(仏像・仮面・人形・鏇作),包装(箱・経木),パルプその他。なかでも社寺建築・彫刻・磨丸太・蓄電池隔離板は特殊用途。生木の辺材から作る桧縄は鵜飼の縄・釣瓶縄・錨縄・船や筏をつなぐ縄として,埋れ木は神代桧と称して装飾用に重用され,樹皮が屋根葺や縄となり,葉から香油がとれる。【原色】 | |
檜葉 | ヒバ アスナロ |
アスナロもヒノキアスナロ(変種。ヒバ。アテ。)も木材としてはヒバとして同様に扱われている。独特の匂いがある。心材部分の保存性が高く,よく水湿に耐える。抗菌性のあるヒノキチオールを含む。平泉の中尊寺はヒバを使用。 |
ヒバ2 アスナロ |
【効用編】材は諸般の建築用材,建具用材に適す。殊に水湿に堪ふるを以て家屋の土台,井框等土に接する所に使用するに最も適す。故に近来鐵道枕木に使用し保存期極めて長し。又漆の附着宜しきを以て能登の輪島に於ておいては多く之を漆器材に用い,羽後の能代に於ては能代春慶の材とす。又加賀,越前地方にてはヒノキに代用して各種の建築材に用ゆ。 | |
ヒバ3 アスナロ |
【効用編2】地方により屋根板,曲物,鉛筆材等を作るところあり。唯家屋の建築用材としては其雅致香気ヒノキに及ばず北海道にては建築材,船材の外,魚家鰊(ニシン)を乾かす「サキリ」材に使用す。青森県三戸郡八戸町亀勝経木製造工場にては明治35年3月初めて此材を以て真田材料の経木を制作したるに,一種の黄金色を呈し頗る高尚趣致に富み需要多しと云う。 | |
ヒバ4 アスナロ |
【効用編3】樹皮は火縄を作り又槇肌の用をなす。またおはぐろを付くる時に用ゆる楊枝及漆羽毛に用ゆ。樹は庭園樹及生垣に用ゆ。之れ其枝葉容易に燃へざるを以て防火の用に供するが為なり。 | |
ヒバ5 アスナロ |
アスナロ:材は建築(床柱・土台・柱・屋根板),土木(橋梁・枕木・坑木・水道樋),船舶,車輌,家具(仏壇),器具(指物・曲物),彫刻,経木用,特殊用途には漆器木地があり,輪島塗(石川県)はそれである。樹皮は屋根葺・火縄・槇肌に用い,アスナロンはポマードや歯磨きに使われる。【原色】 注:石川県に自生するのはヒノキアスナロであり,アスナロではない。 |
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姫胡桃 | ヒメグルミ | オニグルミと同様,材は銃床をはじめ器具,建築,機械,彫刻,旋作の用に供せられ,マホガニーの模擬材になる.樹皮からは染料,種子は食用。【原色】 |
姫小松 | ヒメコマツ1 | 肌目はアカマツ,クロマツより緻密。乾燥したものは狂いが少ないので,木型をつくるのによく使われる。また,和風の指物,建築,彫刻などの用途に使われる。 |
ヒメコマツ2 | 【効用編】材は建築材となし天井板,竿縁,長押,杵尖,障子,漆器の木地,楽器殊にオルガンの鍵盤等に用ゆ。又枌板となす近来燐寸及経木用材となす。又此材はマツ類中第一等の彫刻材なり。故に古代の彫刻物は多くこの材を用ひたり,是れ刃物の当たり順逆極て寡きによる。 | |
ヒメコマツ3 | 材は建築(敷居・鴨居・建具),器具(漆器下地・枡),土木,船舶,家具,楽器(ピアノ・オルガンの鍵盤),彫刻(仏像)など用途広く,ことに木型・ピアノ響板として定評がある。【原色】 | |
姫娑羅 | ヒメシャラ1 | 材は建築(とくに)皮付床柱として賞用),器具(玩具・箱・柄・杖・酒の搾り木・塗物木地・櫛・小器具),船舶(滑り台),彫刻(印判),旋作(盆などの挽物),車輌(荷車の柄),薪炭などになる。【原色】 |
ヒメシャラ2 | ナツツバキより大木となり,また量的にまとまって出材されることがあるので,九州などでは有用樹の一つである。建築(皮付き床柱,内部造作材,フローリングなど),器具(鑿などの工具の柄,槌,農具,漆器木地,櫛,杖,酒の搾り木など),家具,車輌(荷車の柄),船舶(造船の滑り台),旋削した玩具・小物,印判などの彫刻などかなり広い範囲の用途がある。【平井】 | |
柏槙 | ビャクシン1 | 【効用編】材は床柱,匣箱,机案等の器具材として雅なり。又鉛筆材となす。 |
ビャクシン2 | 辺材は暗紅褐色で,よい匂いがある。材が緻密なため加工性がよく,耐朽性が高い。量的にまとまって出材することはほとんどないが,建築装飾材(床柱など),器具材(箱類そのほか),家具材,彫刻材,寄木細工,薪材などに用いられ,鉛筆材には優秀である。属に白檀と称して香材に使う。中国では棺材に用いる。【平井】 | |
枇杷 | ビワ1 | 材は硬く,装飾用建材,つえ,木刀などに加工,利用される。 |
ビワ2 | 我が国のものは本来自生していたものかどうかわからない。(自生ありとの報告もあり。)現在,果樹として栽培されているものは江戸時代末期以後に支那から入ったトウビワ系統のものである。【平井】 | |
ビワ3 | 材は灰褐色から淡紅褐色で,重硬,強靱。木刀,棒,薙刀,杖のような特別の用途があり,また,種々の器具材,小細工物に用いられる。漂白してツゲの模擬材として櫛や印判にも用いられた。【平井】 | |
ビワ4 | 【効用編】材は小細工用に供し又薙刀、棒の類を作るに用ゆ又琵琶なる楽器は此材を以て作られたる故に名けられたるものなりと云ふ | |
ビワ5 | ビワの木刀は強靱で珍重されるとともに、あまり堅靭靭なため、「枇杷の木刀は真剣に勝る」とされ、武芸者が木刀試合の時に枇杷の木剣を持つことは卑怯とされたくらいであった。【成田】 | |
フカノキ | 材は器具(模型・下駄・刀鞘・浮木・農具・箱・杓子・マッチ軸木),旋作(ろくろ細工)などになり,樹皮からは縄をつくる。【原色】 | |
房桜 | フサザクラ1 | 【効用編】材は挽物細工、櫂、艪其他小器物を作るに用ゆ又薪材とす |
フサザクラ2 | 材は建築(ことに建具),船舶(艪櫂),旋作,薪炭用。【原色】 | |
藤 | フジ(ノダフジ) | <藤布>:(ノダ)フジその他フジ類の茎の靱皮を灰汁で煮て川水に晒して採った繊維を用いた手織の布。藤蔓と共に古代の重要な生活物資であった。 Cf.葛布,芭蕉布 |
- | フジキ1 | 【効用編】材は器具材、旋作材、及建築材に用い又鐵道枕木、天秤棒等を作るに適す又薪炭材とす |
フジキ2 | 材は器具(天秤棒・柄),旋作,建築,土木(枕木),薪炭などに,樹皮も器具に用いる。【原色】 | |
橅、椈、 山毛欅 |
ブナ1 | 年輪の不明瞭な散孔材。柾目面に赤みがかった特有の斑点がある。心材と辺材の区別が不明瞭で,全体に白か淡黄白色。また心材にあたる中心部分がほんのり褐色になるが,これは偽心材と呼ばれる。このために材の表情が色むらになり,揃えにくい。材質は硬くて粘りがあり,弾力性に富む。曲げやすく,薄くして使え,接着がしやすい。乾燥しにくく,カビやしみが入りやすい。乾燥が十分でないと,ねじれて狂いが生じやすい。広範の用途を持っているが,中でも曲げ木家具に適する。【宮本】 |
ブナ2 | 国産のものはねじれやすく,色むらが出るなどの癖がある。しかし,その性質をよく知って使うなら,これほど安価で便利な材はない。 国産のものと違い,欧米,特に東欧では,長くてねじれや偽心材の少ない,色むらのない良材が採れる。そうした加工性のよい良材を押さえているのはデンマークで,そのためこの国ではブナの無垢材の家具がたくさんつくられている。Yチェアなどウェグナーの作品の大部分もこれである。【宮本】 |
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ブナ3 | ①ブナ合板はフローリング・成形家具用合板・パチンコ台用合板に使われています。【江間忠合板】 ②特にパチンコの裏板で音の反響はブナ材に勝るものはないといわれている。【北海道上磯町HP】 |
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ブナ4 | ブナ材の近代的な本格的利用のきっかけとなったのは,1930年頃から国有林が人工乾燥設備を以てフローリングボードを生産し始めたことであって,その後,第二次世界大戦中は軍需用の合板と硬化積層材の材料に大量に使われた。戦後今日までに,時期的に多少の消長はあるが,一般合板およびベニヤチェスト(輸出用組み立て茶箱,ゴム箱),紡績木管,ミシンテーブルなどの家具,モザイクパーケット,防腐枕木,パルプおよびファイバーボード・パーティクルボード,各種の木製品の重要な材料となってきている。また曲木もブナの独特の分野である。【平井】 | |
ブナ5 | 【効用編】材は北陸、奥羽地方に於ては親船の伝馬を造り又冬時雪掻きに用ふる木鍬、鍬柄、下駄の歯等を作り又盆、椀、飯櫃、盃、菓子盆、鉢等の塗物生地、柄杓、杓子、箆、糸繰機械、紡績用木管其他?製物を作る | |
ブナ6 | 材は器具(農具その他の柄類・荷棒・運動具・漆器木地・算盤枠・木型類・橇),家具(洋家具ことに曲木椅子),旋作(紡績木管),合板(ベニアチェスト),土木(注入枕木・坑木),機械(ことに硬化積層材の歯車),船舶(船底・櫂),車輌(荷車・車輪),パルプ,薪炭等広汎の用途をもっているが,中でも曲木・ベニヤチェスト・硬化積層材・防腐剤注入枕木などに特色がある。【原色】 | |
紅松 | ベニマツ | チョウセンゴヨウマツ。日本の本州中部の亜高山帯にjも分布しているが,市場で取り扱われているものは,ロシア産のベニマツである。軽軟な木材で加工しやすい。この類の木材は寸度の安定性があるため,古くから木型用材として使われる木材の代表的なものの一つである。【須藤】 |
朴の木 | ホオノキ1 | 昔はほほがしわとよび厚朴と書いた。材は適度に柔らかく均質で,材質が安定しているから絶好の彫刻用材である。将棋の駒のほか,製図板や運動具にも使われる。広島県宮島名物のしゃもじはかつてこの木で作られていた。和包丁や手鉤類の柄もほとんどこの木で作られる。手にマメができないことから。 |
ホオノキ2 | 広葉樹の中でも極めて良質の散孔材。軟らかく,軽く,粘りがあり,繊維が均質で緻密。昔は朴歯の下駄がホオノキの最大の用途であった。 | |
ホオノキ3 | 【効用編】材は刃物鞘,製図板,刻板,断物板,俎板,塗物(殊に会津漆器板物),木地,楽器,機具,木履,船具,柄杓その他旋削物,傘の柄,燐寸軸木,火附木,曲製面通,箱類,彫刻物,印刷及糸枠を製するに賞用せられ又建具材及棒材とし又鉛筆用材に供せらる又炬燵櫓の如き火熱の吸収を避くべきものを作るに適す | |
ホオノキ4 | 【効用編】此木炭は其質微細なるを以て金銀及金漆器琢磨料として賞用す | |
ホオノキ5 | 木炭は柔らかく,漆器,金属(金銀)。石類の研磨用に使われる。 | |
ホオノキ6 | 刀刃を損せざるものを要すホオノキを最上とす[裁縫板、俎板、蒲鉾台、蒲鉾板]【工藝】 | |
ホオノキ7 | 旧藩時代は会津を以て有名なるホオノキの産地とせしも其実は附近諸国産ホオノキの集散地たりしなり現今は岩手、秋田、青森、山形の諸県及北海道より産す就中岩手産を最上とす北海道産は軟かにして工作し易しと雖もしみを存し且、磨きによりて光沢を生ぜず故に塗鞘には適すべきも白鞘には不適当なり[刀鞘関連]【工藝】 | |
ホオノキ8 | 材は建築(ことに建具),器具(漆器木地・膳椀・箱類・盆・額縁・木魚・将棋の駒・扇の骨・刃物の鞘・農具・模型・鋳型・ブラシ木地・図版・裁板,張板・柄・運動具とくにノックバット・ピンポンラケット,寄木木象嵌・下駄とその葉・マッチ軸木・鉛筆軸木),機械(度衡器・織機・測量板・定規),楽器(ピアノ・オルガンの鍵盤と外囲・琵琶の胴),船舶(船具・艪腕),彫刻(印判・仏壇の欄間・仏像),旋作(木管),包装(箱・経木),木炭(金銀研磨用)などになり,サクラ,コクタン,クロガキ,クワ,カエデの模擬材。【原色】 | |
ホオノキ9 | 板物ホオノキ材の最高の名声を保っていたのは,(ムクの)製図板。裁板はカツラが多く用いられているが,これはカツラ材に大材があるからであって,上等品はホオノキであった。俎板としても上等の方に属する。【平井】 | |
ホオノキ10 | 【コメント】学校教材用の版画板として,従前からカツラと並んでおなじみ。手と刃物にやさしいとされ,和包丁の柄は基本的にホオノキを使い,日本刀の鞘には必ずホオノキを使用した。また,切り出し小刀の柄・鞘,錐(きり)の柄にも利用されている。(2003) | |
- | ホルトノキ1 | 材は建築(板・柱)その他になり,樹皮からは染料,実は食用。【原色】 |
ホルトノキ2 | しいたけホダ木としては良好。【平井】 | |
ホルトノキ3 | 【コメント】名前から外来種と誤解されることがあるが,在来種である。暖地で公園樹等に利用される。大分市では市の木とされており,街路樹としても多用されている。また,市内の柞原八幡宮 ではホルトノキの巨樹が見られる。 | |
真樺 | マカンバ | 高級家具や内装材として広く使用されている。 ⇒ウダイカンバを参照 |
馬刀葉椎 | マテバシイ1 | 材はカシ類に類似し,シイ類より硬くて強く,薪炭材として優れ,農具の柄その他器具材となる。九州では正月用の箸を作ったり,年木として使われる。 |
マテバシイ2 | 【効用編】は多く薪炭材とし上等のものは農具の柄其他の器具を作る等畧(ほ)ぼシイノキに同じ | |
マテバシイ3 | シイと同様,材は薪炭のほかに,器具(柄類・箱類・下駄の歯),船舶(艫),椎茸の榾木に,種子は食用になる。【原色】 | |
マテバシイ4 | 【コメント】公園樹,街路樹として都内でも相当量植栽されている。 | |
豆柿 | マメガキ | 【効用編】材は其心材の黒き部分を俗に黒柿と称し又純黒ならざるものは縞黒柿と云ひ装飾用の建築材として貴重す又机案、匣箱の類を製し器具を?製して甚だ雅美なり故に黒色の器具及寄せ木類を作るに用ゆ |
檀 | マユミ1 | 靱皮繊維が長くて強く,和紙の原料として有名。この木の丸木弓も弾性があり豪弓であったと想像される。材は緻密で堅く,将棋の駒,こけし,玩具,箱類などに利用する。北海道ではエリマキと称し,木彫の材として重用されてきた。 |
マユミ2 | 【効用編】材は机卓、函箱及室内の装飾に用い又器具を旋作す木曽にては櫛を作る又丸木の儘弓に用ゆる故にまゆみと云ふ | |
マユミ3 | 材は彫刻(版木・印判),器具(小箱・櫛・ステッキ・木釘・ペーパーナイフ・玩具・寄せ木細工・木象嵌・弓・柄・刀の鞘),家具,建築(室内造作),旋作(挽物)に,実は薬用になる。【原色】 | |
マユミ4 | 北海道では一般にエリマキと呼び、材が白く緻密であるため、民芸品のこけしや彫刻によく利用されている。 | |
満作 | マンサク1 | 材は土木(蛇籠・棚),器具(筏のねじ木),薪炭になり,樹皮は縄にする。【原色】 |
マンサク2 | マンサクは枝をねじっていかだや合掌造の骨組みを結わえると,たいへん強靱でゆるまない。【百科】 | |
マンサク3 | 輪かんじきに用いた。現在でも健在。 | |
マンサク4 | 一般にやや堅硬・強靱で、曲げに対して強い。樹皮も強靱(?)なので皮付きの枝条は土木工事用の柵や蛇籠を作るのに用いられ、また、背負籠の骨組にも使われる。山でのそだや薪の結束、筏を組むねじり木にも使われた。越中五箇山、飛騨白川の合掌造りの大きな屋根の軸組みは釘を使わずにネソで縛り合わせたものである。樹皮はまた縄に作られた。(?)【平井】 (注)マンサクの樹皮も強靱であるとしているが、実感はない。さらに樹皮の縄への利用については現在のところ確認できない。 |
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蜜柑 | ミカン | ミカン科。これほど黄色みの強い材は,ミカンのほかには少ない。硬くて仕上がりもよい。象嵌細工,墨の原料などに使われる。 |
水木 | ミズキ1 | 淡黄白色で緻密。東北地方のこけし用材として有名。また,小正月のまゆ玉木にしたり,子供は枝の又を掛け合って相撲遊びをするなど,民俗と最も関係深い木の一つである。 |
ミズキ2 | 【効用編】材は旋作用に供し又農具の柄、下駄、箸、楊枝等を作るに用ひ又薪炭材とす | |
ミズキ3 | 材は建築,器具(漆器ことに丸物の木地・台・柄・天秤棒・鞍・橇・箸・杓子・玩具・タバコのパイプ・花立・糸巻・看板・ブラシ背板・楊子・下駄・櫛),彫刻(印材),旋作(組紐台・ラムネの玉抜・木管),薪炭などに用いられる。 | |
ミズキ4 | ミズキは古来之を勝木(かつのき)といひ箸材として由縁あるものなり材質軟にして白く肌濃かにして粘りありスギより折れ難し【工藝】 | |
水楢 | ミズナラ1 | 柾目面には帯状に虎斑杢(とらふもく)があらわれる。軟らかく,刃物の通りがよく加工は容易。着色,塗料の食いつきもよい。ミズナラに混ざってコナラが出荷されることがあるが,コナラは硬くて加工性が悪いので注意が必要。(石楢呼んで好まれない。) |
ミズナラ2 | 国産ナラ Oak 材の代表樹として材面の随線の紋様が美しい。 樹皮は暗灰・帯褐暗色,やや深い不規則の割れ目ができる。若木では灰褐色でやや光沢があり縦に割れる皮目が著しい。北海道のミズナラは良材として珍重され,戦前はオタル(小樽)オークと称して,明治時代からヨーロッパに輸出されている。イギリスの高級家具や,ヨーロッパ各国の家具の表面材に使われ続けてきた。また,棺材としても高く評価されたという。ヨーロッパへの輸出は昭和30年代まで続いたという。 | |
ミズナラ3 | 【効用編】オオナラQuercus crispula:材は秋田にて艪および櫂とす又臼を作りて石臼に代用す ミズナラQuercus grosserrata:オオナラに略ぼ同じ ★ここではオオナラとミズナラは別扱い |
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ミズナラ4 | わが国産ナラ材( Oak )の代表として材面にあらわれる髄線の紋様が賞美され,材は家具,建築(内部造作・床板),船舶・車輌(内装),機械(滑車),運動具,合板,ことにインチ材・コフィンボード(棺材)として輸出され,また洋酒樽,曲木,器具(農具・木型),包装(箱類),薪炭,椎茸の榾木等になる。【原色】 | |
ミズナラ5 | 芦別営林署管内から出材される広葉樹は良質なものが多く、特に芦別川流域で伐採されるミズナラの材質は切断面や板面から独特なピンクの色彩が滲み出る特徴を持ち、「紅ナラ」と称して日本でもこの地域のみが産出する銘品として珍重され、戦前、戦後を通じ海外にも輸出された。【北海道営林局(直轄)50年史】 | |
ミズナラ6 | 【コメント】ダイニングテーブル用材としてミズナラは最も一般的。普及品には集成材を使用する。重厚感を演出した暗色の仕上げが多い。 | |
水芽 | ミズメ1 | 材は器具(ことに木器・盆に賞用),漆器木地・指物・ガラスの木型・柄・三味線の棹・琵琶の胴・算盤・櫛,家具,合板,建築(内部造作)などかなり広く用いられる。【原色】 |
ミズメ2 | カバノキ科。肌目は緻密で美しい。弾力性に富み,比較的強い。堅さを生かしたフローリング,ミズメザクラ(業界用語)として家具に。梓弓の梓はミズメとされる。別名ヨグソミネバリ。 | |
ミズメ3 | 材はウダイカンバなどのカンバ類と同様であるが,ウダイカンバに比べると大径材にならず,樹幹のかたちが悪く,また量的にまとまって出ることが少なくなっている。辺材は黄白色,心材は紅褐色である。材質がウダイカンバに近いので,用途も同様で古来各地で有用な材の一つであった。【平井】 | |
ミズメ4 | 材質的にはウダイカンバと似ているが、より緻密で硬く、木理が乱れている。辺材は少ないが、色調、艶上がりは悪い。【奥村】 | |
深山桜 | ミヤマザクラ | ヤマザクラと同様,材は器具(ステッキ・小細工),薪などに,樹皮からは染料(鳶色,郡内縞の染料)がとれる。【原色】 |
深山榛の木 | ミヤマハンノキ | 用途はヤシャブシに準ずる。【原色】 |
椋の木 | ムクノキ1 | 和風荷馬鞍の特用材。剛毛のある葉は木地やべっこうなどの研磨用に賞用される。 |
ムクノキ2 | 【効用編】材は天秤棒として第一等なり 或は斧鉞の柄となすに適す。舊(旧)式の大砲の台木には多くこれを用ひたりと云ふ | |
ムクノキ3 | 用途は旋作,器具(農具・運動具ことにバット・ブラシ木地・下駄の歯・三味線の胴・櫛・度工具の柄・荷棒),機械(滑車),建築(皮付床柱),船舶(櫂),薪炭に,枝条は海苔粗朶に,葉は骨・角細工における研磨用に供される。【原色】 | |
ムクノキ4 | 俗にアオムクというのは壮齢林からのものが多く重硬であり,アカムクは老木ものものである。用途は器具材が多く,靱性があることから,かつては天秤棒,馬鞍,ショベルなどの工具の柄材に賞用された。【平井】 | |
ムクノキ5 | 【コメント】神社,公園等で巨木をしばしば目にする。樹皮がケヤキにやや似ている。葉にざらつきがあって,硬木の表面を磨くのに使用された。 | |
無患子 | ムクロジ1 | 【効用編】材は担棒(にないぼう)、箱、机其他諸器具を作るに用ゆ |
ムクロジ2 | 【コメント】果皮を石鹸のように使用したことから,かつてはよく人家近くに植えられた。現在では公園樹としてしばしば見かける。 | |
目木 | メギ | 【効用編】材は寄木細工に用いて黄色なるを貴ぶ |
目白樺 | メジロカンバ1 | 心辺材の区別が極めて明確で,鳥のメジロの目のように白身がはっきりしていることから,この名がある。 |
メジロカンバ2 | ウダイカンバでのうち,特に心材率の低いものを北海道ではメジロカンバという。 | |
黐の木 | モチノキ1 | 材は帯白色,緻密で,刻印用,櫛材,刷毛木地などとして利用される。 |
モチノキ2 | 【効用編】材は印材及び旋工用材となす | |
モチノキ3 | 材は旋作,器具(ブラシ背板・櫛),彫刻(印判・版木)などに用い,内樹皮からは鳥もちやゴムの原料・染料をとる。【原色】 | |
モチノキ4 | 【コメント】緑化木として一般に利用されている。 | |
木斛 | モッコク1 | 暗褐色の材もあるが一般に美しい紅色。硬く強くて粘りがある。耐朽・保存性は高くことにシロアリに対して強い。木味はツバキによく似ている。床柱,家具,木象嵌に使用される。 |
モッコク2 | 耐朽性大きく,シロアリに強い。耐蟻性の主な成分はサポニンである。この耐蟻性のため,琉球では建築その他に最も有用な材の一つとされてきた。また材は紅色材の一つとされていて美しいので床柱や内部装飾材に賞用される。器具,家具に用いられ,ことに寄木細工,木象嵌では紅色材の主なものとして使われる。【平井】 | |
モッコク3 | 【効用編】材は文房の具及び旋作材となし又床柱となす | |
モッコク4 | 材は建築(沖縄では有用,床柱に賞用),器具(文具・寄木細工・木象嵌・櫛),旋作,彫刻(印判),薪炭になり,樹皮からは茶褐色の染料がとれる。【原色】 | |
モッコク5 | 【コメント】庭園樹として多く植栽されている。 | |
樅 | モミ1 | 昔は臣(おみ)の木といわれた。ヒノキに較べて木肌が粗く耐久性に劣る。材は白色,軽軟,耐久性は低いが大径材があるので,建築材,土木材,包装用材,パルプ材などに利用され,また棺材,卒塔婆,祭神具などには最も賞用される。 |
モミ2 | 【効用編】材は建築用材に適当せず,故に天井板,白木台,折箱板および障子の小かまち,大鍬の台等に用ふ。近来は茶箱又は製紙の原料となすもの多く,茶箱はインドに輸出し製紙の原料としては材質柔軟なるをもって賞用せらる。又此木炭は鍛冶屋の用ゆるものなり。 | |
モミ3 | 【工藝】古来不浄木として之を用ひず 蓋し其葬祭具に用ひらるるに由るなり | |
モミ4 | 香りがほとんどないことから、昔からお櫃やすし桶、茶箱、そうめん箱などによく利用されてきた。また、かまぼこの板にもよく使われている。【週刊日本の樹木】 | |
モミ5 | モミの特殊用途で一番よく知られているのは棺材,卒塔婆,各種葬祭具で,材が白色で清浄な感じを与えることによる。ただし,神棚の宮用材には用いられない。ウラジロモミ,シラベもモミと同様の用途。【平井】 | |
モミ7 | 材は建築(板・貫(ぬき)・建具として戸障子や屏風の骨),家具(箪笥・仏壇),器具(漆器の木地・ことに棺) ,土木,包装(とくにモミチェスト)およびパルプ材など用途が広い。【原色】 | |
モミ8 | モミは比較的腐食しやすい材である。この土に帰りやすい性質のためか、昔からよく棺に用いられた。卒塔婆にモミが使われるのも同じ理由からだといわれている。 | |
モンゴリ楢 | モンゴリナラ | ミズナラに準じ,材は器具(洋酒樽・指物・木釘・楽器・船具),家具,車輌,枕木,薪炭,ことに曲木・合板にも用いられ,椎茸榾木にもなる。樹皮からはタンニン・染料をとる。【原色】 |
夜叉五倍子 | ヤシャブシ1 | 【効用編】材は旋作材に供す又材を剥ぎたる円材の外面は奇雅なるを以て床柱となす又薪炭材としてなす |
ヤシャブシ2 | 材は旋作,床柱,櫛あるいは薪炭用。【原色】 | |
谷地だも | ヤチダモ1 | 家具材,器具材,ベニヤ材,運動用具などに賞用され,北海道が主産地で,(木材としては)タモと呼ばれる。【倉田】 ⇒ 「タモ」を参照。 化粧単板としての用途は広い。 |
ヤチダモ2 | 材は建築(建具・鏡板・内部造作),家具(洋家具・陳列棚・仏壇),合板(表板・装飾的単板),器具(指物・算盤の枠・ブラシの背板・盆・額縁),運動具(ホッケーのスティック・ボートのオール・ラケットの枠・スキー),機械(部材,滑車,滑車枠),楽器(太鼓の胴・琵琶の胴と腹板・書楽器の外囲・キャビネット),土木(枕木),車輌(車体・内装),旋作,薪炭などになり,クリの模擬材。【原色】 | |
ヤチダモ3 | ヤチダモはわが国産の広葉樹材のうちでおそらく樹幹が最も通直であり,枝下が長く横断面も正円に近く,欠点も少ない上に加工が比較的容易であり,かなりの大材が量的にまとまって出材されるので,家具材を始め各方面に最も広く使われる有用材の一つである。【平井】 | |
ヤチダモ4 | ・ 王子製紙の森林博物館のホームページに以下の興味深い記述があった。 「材は弾力があるため、軟式野球のバットに使われるほか、木目が美しく、合板、家具、器具などに使われます。この木にはオスとメスがあり、オスの木で試合用のバットが作られます。メスは材質が悪く、せいぜいバッティングセンター行きだそうです。また、湿地での防風林として、よく植えられています。」とある。 (注)森林博物館及び同館のホームページはその後閉鎖されている。 ・ 上記の記述の参考としたと思われる書籍の記述を目にした。以下のとおりである。 「ヤチダモがバットに向くのは、粘着力があり、ショックに強いからだ。また、反発力があるので、ボールがよく飛ぶ。しかし、この木にはオスとメスがある。オスは石目(いしめ)といって波形の木目がはっきりしているが、メスはヌカ目といい、オスほど波形の目がはっきりしない。ヌカ目は試合用バットにならず、せいぜい、バッティングセンター行きである。・・・ 【北方植物園:朝日新聞社(S.43)】(注:取材源は不明。) ・ しかし、雄木と雌木で材質が異なるとの説は今まで聞いたことがない。そこで、大手のmizunoに聞いたところ、以下の回答を得た。 「以前は軟式用バットに(ヤチダモを)使用していました 。 但し、表面が他の素材に比べ弱い(剥がれ易い)ため、現在、弊社においては 使用いたしておりません。 雄と雌での使い分けはしていなかったとのことでございます。 あくまでも、その材自体の質での選別方法を取っていたとのことです。」【2005 mizuno】 |
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ヤチダモ5 | 生木でもよく燃え、火もちがよいので、昔は冬のたき物として最上のものと言われたという。 | |
藪肉桂 | ヤブニッケイ1 | 【効用編】材は各種の器具を作り又旋工用に用ゆべし然れども長大なる良材少く用材に適するもの稀なり小木はカシ類と共に薪炭材に供せらるるも炭質カシ類に劣る |
ヤブニッケイ2 | 材は家具(椅子),器具,旋作,建築(床柱),薪炭に,種子から油(肉桂脂といいカカオ脂の代用)・蝋をとる。【原色】 | |
山漆 | ヤマウルシ | 材はわずかに杭や小細工に用いる程度。漆液は問題にならない,葉から染料がとれる。【原色】 |
山柿 | ヤマガキ | ゴルフ・ヘッドとして良好。干し柿用渋柿の一種で,標高200~300メートル,樹齢200~300年,幹の直径30~50センチのものが材質が締まっていてよいという。 |
山桐 | ヤマギリ | ⇒ ハリギリ,アブラギリ,サワグルミ |
山車 | ヤマグルマ1 | 【効用編】材は旋作用に供す |
ヤマグルマ2 | 材は器具,旋作に用い,樹皮からはとりもち(鳥もち)をとる。【原色】 | |
山桑⇒クワを参照 | ヤマグワ1 | 優良な環孔材だが木材としての蓄積が極めて少なく貴重。美しい杢の出ることが多い。 やや硬く粘りがあり,曲げにも強い。床柱,床板,鏡台,箪笥など高級装飾的用途がある。 |
ヤマグワ2 | 【効用編】材は各種の装飾用材とし箱類,文房具,茶盆,火鉢,柱時計等の器具を製作するに適し又彫刻材,旋工材に用ひらる 其他提琴,三弦の胴を作れば其音の優美なること他木の上に出づ 其他馬鞍,電車を作り,長材は柱及び床の間の落掛,床板等となし又北海道にてはアイヌの弓及び雪路用カンジキを作るに用ゆ (注)ヤマグワは現在でも北海道でかんじき用材として使用されている。【2008】 |
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ヤマグワ3 | 材は建築(とくに)和様建築の内部造作に賞用され,床柱・床板等),家具(和洋家具とくに鏡台・箪笥),器具(火鉢・煙草盆・額縁・寄木木象嵌・漆器木地・椀・木魚・撞木・ブラシ木地・弓の側木・箱類・櫛),機械(柱時計・銃床・滑車),楽器(ヴァイオリン・三味線の胴),車輌,旋作(挽物・ろくろ細工一般),彫刻,など高級装飾的用途に供され樹皮は製紙原料,葉は養蚕用と桑茶・桑酒,果実は食用・醸酒用。【原色】 | |
ヤマグワ4 | 材質は強靱で,心材の保存性は高い。材の色合いと木理は重厚な感じがあり,材質が良好なため装飾材として賞用され,ことによい杢が出るものは銘木として扱われる。器具材では火鉢,煙草盆,文具類,旋削したものでは盆,椀,碁石入れなどがあり,家具材では箪笥,机,台,棚,箱類などがあるが,とくに鏡台,針箱の貼り板としてよい。建築装飾材では床柱,床(とこ)まわりの材が多く,その他機械材,三味線の胴などの楽器材,彫刻材,寄木,木象嵌などに使われる。【平井】 | |
山桜 | ヤマザクラ1 | 山桜の材質は粘りがあり脆くなく、切削加工が容易で表面が奇麗に仕上がる性質があり、それを活かし版画の台木に使われました。江戸時代の浮世絵や書籍の印刷用の版木は殆ど山桜です。桜材は測量器械や写真機の三脚、蛇腹の付いた組立暗箱写真機枠等の精密機械に使われます。木管楽器、薩摩琵琶の胴、ピアノ、オルガンの外装、バイオリンの弓、琴柱、三味線の棹などの楽器に使われます。算盤玉、漆器の木地、サラダボール、ブラシの柄、額縁、三角定規の様な道具類にも良く使われています。家具材では桜材製の洋服ダンスは高級品のレッテルをつけられて珍重されています。 |
ヤマザクラ2 | 心材は赤褐色,辺材は淡黄褐色で,心辺材の境界は明瞭。肌目は緻密,均質で,カバ類の材と性質も見た目も非常によく似ている。重さの割には材質が素直で,反りも少なく狂わない。粘りがあって強い。水に強く虫がつかず,保存性は高い。磨くだけで光沢が出る。【宮本】 | |
ヤマザクラ3 | 【効用編】材は版木,彫刻物,旋削盆,椀,木匙,漆器の木地,家屋の屋柱及装飾用造作物定木,製図の定木,裁板,細工台,器械,歯車,糸繰器械,紡績用木管,卓子(タクシ→つくえ),文房具其他小器具類を作るに用ゆ但し生材は収穫甚だしく歪を生じ易し又土中に埋め置き掘り出して用ゆれば堅硬となる又薪材となし或は木炭となすもクヌギ,ケヤキ,カシ等に次ぐ。 | |
ヤマザクラ4 | 【効用編】樹皮は褐色にして外面光沢あり美麗にして且其強靱なるを以て小器具を作り或は箱の帯となし又曲輪を縫ひ或は箕を編み箒の柄を巻き鉈の柄,煙草入れを包み北海道アイヌは舟板を綴り弓を飾り,刀鞘,箭(矢)筒を包む等用途極めて多し又魚毒を解するの効ありと云ふ又此皮に斑紋あり手美なるに模して革紙を作り煙草入れ,下駄の先掛等に用ゆ | |
ヤマザクラ5 | 用途は広汎にわたり,材は建築(内部造作・柱・天井板・床柱・敷居・鴨居),家具(琴に洋家具・仏壇・陳列棚),器具(額縁・筆立・算盤枠および球・箸・タバコのパイプ・木さじ・杓子・木環・弓の側木・柄・木型・ブラシ木地・漆器木地・盆・椀・念珠・裁板・定規・箱・塩田板・ステッキ・橇・下駄の歯・櫛・小細工物),機械(糸繰機・尺度・時計枠・機械箱・織機・測量用三脚・調革車・歯車),楽器(ピアノやオルガンの外囲・琵琶の胴や撥・ヴァイオリンの弓・琴の胴や琴柱・三味線の棹),船舶(櫂・船底・造作),彫刻(版木),旋作(紡績木管・ろくろ細工),包装(経木),合板,薪炭などに,またシタン・コクタンの模擬材になる。樹皮はいわゆる樺細工・桜細工および曲輪を縫い合わせ,簔を編み,箒の柄・鉈の柄などに巻く。葉・果実・花はともに食用。【原色】 | |
山梨 |
ヤマナシ1 | 囲炉裏の桁によいという。 |
ヤマナシ2 | 【効用編】材は机案、匣箱及文房具を製して甚だ雅美なり又印板及櫛となし又諸器具を旋作するに用ゆ 陸奥にては敷居及爐(炉)縁を作る又石盤の縁板を以て最も上品となす | |
ヤマナシ3 | 材は器具(箱・櫛・まさかりの目釘・柄),旋作,彫刻(印判),薪炭などになる。【原色】 | |
ヤマナシ4 | 材は淡黄褐色から淡紅褐色で,重硬で割裂しにくい。材が緻密なため比較的小型のものに各種の用途がある。器具材として文房具,箱,道具の柄,丸物漆器(椀,茶筒,煙草入,菓子器など)の木地,箸,数珠,そろばん玉,玉突きのスティック,古くは石版の縁板,まさかりの目打その他があり,特にツゲ,イスノキ,ナツメの模擬材として櫛によく用いられた。また,彫刻,印判,寄木細工(箱根細工の褐色材)にも使われる。建築材としては床柱,敷居,炉縁材,その他の雑用材,家具材では机などがあり,薪炭材にも用いられる。【平井】 | |
ヤマナシ5 | 【参考1】「ヤマナシ」の名は,オオウラジロノキ(ヤマナシと同様に,バラ科ナシ亜属,又はナシ科)の地方名(方言)として最も広く言われているという。【平井】 | |
ヤマナシ6 | 【参考2】「ウメ櫛」は専らナシ材の赤味を用ふ【工藝】 | |
山鳴らし 白楊 |
ヤマナラシ1 | 材は適度に柔らかく,マッチの軸木や楊子あるいはキャンディ・スティックなどに用いられる。 |
ヤマナラシ2 | 【効用編】材は箱筥を作りて最も佳なり。キリに次ぐ故にハコヤナギという。又房楊枝及印判となす 花葉を彫刻すれば頗る佳なり 古来佛像を刻むに用ひして以て佛木の名あり又火薬用木炭を製する用いらる 明治10年頃より燐寸用材に供するに至れり | |
ヤマナラシ3 | マッチの軸木としては国産材では最上のものとされる。 北海道で材を扱う場合に,普通ヤマナラシをドロ又はアオドロと呼び,ドロノキの方をワタドロといって区別する。また,ヤマナラシは心材に相当するところもほぼ白いのでシロドロといい,ドロノキはうす黒い心材があるのでクロドロと分けることもある。 東北ではヤマナラシが山腹より上に生えるのでヤマドロ,ドロノキは水流の近くに出るのでカワドロという。【平井】 |
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ヤマナラシ4 | 材はマッチ軸木をはじめ器具,包装,パルプ用など,ドロノキに同じ。【原色】 | |
山黄櫨 | ヤマハゼ | 材は旋作,器具(寄木細工・小細工)に用いる程度。【原色】 |
山榛の木 | ヤマハンノキ1 | 【効用編】材は茶箱其多の匣類、挽物及小細工物を作るに用いられ又薪炭材として貴重せらる |
ヤマハンノキ2 | 材は器具(箱類・玩具・小物細工・鉛筆材),土工杭,パルプ,薪炭(火薬用木炭)などになる。【原色】 | |
山法師 | ヤマボウシ1 | 【効用編】材は堅実なるを以てカシのなき寒国にて代用して鉋台,鑿柄,槌其他農具の柄,油搾器械,橇等に用ひ又下駄の歯とす併(しか)し堅に過ぎて滑る患あり又櫛材および旋削材となす |
ヤマボウシ2 | 材は器具(柄・杵・楔・槌・鉋の台・木綿打・橇・櫛・下駄とその歯),機械(織機・搾油機・部材),旋作などになり、果実は食用。【原色】 | |
ヤマボウシ3 | 材は堅硬で強靱,そのため農具,工具の柄や木槌,杵の材料とされる。【百科】 | |
ヤマボウシ4 | 材はかたくて割れにくく,木槌の頭などに使われる。 | |
ヤマボウシ5 | ミズキに比べてずっと重硬である。材の利用は器具材,薪炭材が主であるが,かたいのでカシの代用とされ,鉋台,鑿の柄,槌,杵,橇,農機具,櫛,下駄歯,機械の部材,旋削して玩具,寄木細工などがある。【平井】 | |
ヤマボウシ6 | 俗にヤマグワとも呼ばれ,鐘突きの撞木(しゅもく)に適当な材としても利用されたという。【井波】 | |
ヤマボウシ7 | 【コメント】しばしば公園樹として見るものの,派手な印象の米国生まれの同じミズキ属のハナミズキに圧倒されて少数派となっており,国産のヤマボウシの清楚な美しさを見直したいもの。(2003) | |
山桃 | ヤマモモ | 材は器具,旋作,燃材用に,樹皮はタンニンが多く漁網の染料や火傷の薬用に,果実は食用になる。【原色】 |
交譲木 | ユズリハ1 | 【効用編】材は匣箱の類を作り又器具を旋削するに用ゆ |
ユズリハ2 | 古名をゆづるはといい,万葉集にも歌われている。縁起木として庭木として好まれ,よく見かける。 | |
令法 | リョウブ1 | 【効用編】材は旋削用となす又皮付きの円材を床柱となす木炭に焼けば浅炭中最良のものなり |
リョウブ2 | 材は建築(皮付き床柱),旋作(盆),器具(茶器・筆立),薪炭(良質)などになる。若葉は食用。【原色】 | |
リョウブ3 | やや重硬で割裂しにくい。一般的に器具材に利用され、洋傘の柄、旋削による盆、茶器、筆立てなど、玩具その他がある。良質の木炭が得られる。皮付きの丸太は床柱に用いられる。【平井】 | |
和白檀 | 和ビャクダン | ⇒ ネズミサシ |
綿毛鎌柄 | ワタゲカマツカ | 材は器具(柄・杖・牛の鼻環・櫛),旋作,薪炭,椎茸の榾木などになり,果実は食用。【原色】 |