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街の鉄蓋
  都会の道路はマンホールの蓋や小蓋だらけだ!
  その1 下水の鉄蓋・・・前編


 鉄の質感が大好きであるため、都会ではめまいがするほど無数に見られる路面のマンホール蓋や小蓋にも目を向けてみることにした。
 そもそも、マンホール蓋や小蓋の中がどうなっているのかはほとんどの人が知らないはずで、特殊な工具や鍵がなければ勝手にのぞき見ることもできない。といいながら、マンホールの蓋を開けて工事をしている風景はしばしば見かけるのであるが、中はたぶん臭く汚れた怖い世界が広がっていることが想像できるから、積極的にのぞき見る気にもなれなかったのが正直なところである。特に大東京では、無計画、成り行きで、地下には驚くほど多数の大小の管路やケーブルが縦横に複雑に交錯していて、布設された設備や管きょの通道機能を維持するために、これまた恐るべき数のマンホール蓋が設置されているのであろう。
 したがって、特にマンホールの蓋は
暗黒の地下世界恐怖の迷宮の入り口を一般人から完全に隔離する堅固な秘密の扉となっている。 【2021.1】 


           古い角型マンホール蓋
 菱格子の地紋に右書きで「人孔」とだけある。毛筆書体がたまらなくいい。人孔はもちろんマンホールの和訳で、今でも官公庁ではこの語は健在である。こうして適度にすり減った鉄蓋の質感は実に魅力的である。東京市時代のものと思われるが、紋章の角度が少々変則である。下水道関連のマンホール鉄蓋と推定できるが、下水道台帳でも合流下水道管の人孔鉄蓋であるということ以上の情報はなく、残念なことに沿革的なこともわからない。
 
マンホール蓋中央部分の「人孔」の文字
 
 
 
 実はこの世にはマンホールマニアが結構多くいて、中には自らの半生を日本各地のマンホールの蓋の写真撮影に捧げて、これを公開している者もいるが、同じことを目指すエネルギーはないから、あくまで都内区部の自分の通常の行動エリアでのマンホール蓋や小蓋の多様性を認識するための備忘録としたい。

 理想をいえば、マンホール蓋、小蓋に関わる事業のおおよそのシステムを理解し、そこに蓋が存在する必然性を理解した上で、蓋とその中の写真を並べて、個々にこれらの機能に関して概略の説明を付記できれば、街中の蓋のおおよそを理解できたことになるが、そんなレベルに達することなど全く不可能であるから、ささやかな写真の整理をしてみることにした。
 
 まずは、下水道関連からである。
 
 
 
 基本的な事項の確認 
 都内区部では、国道、都道、区道を問わず、東京都下水道局が歩道や車道の地下に下水道管を布設し管理している。 
 下水とは汚水(し尿と生活雑排水)雨水を合わせた呼称である。 
 下水の処理には合流式分流式がある。
 合流式は、汚水と雨水とをひとつの下水道管(合流管)で集め、水再生センターまで運ぶ方式である。
 分流式は、汚水と雨水を別々の下水道管(汚水管、雨水管)で集め、汚水は水再生センターまで運び、雨水はそのまま川や海へ流す方式で、水再生センターの負担を軽減できる。
 東京都の区部では約8割が合流式となっている。  
 マンホ-ル manhole「人孔」ともいう。街路の地下に敷設された下水や電力・通信ケーブルなどの管路の途中に設けられる作業・点検用の出入口(立坑)。点検、清掃時の空気取入口でもある。また下水の場合、管渠を接続調整する場所ともなっており、管渠方向、こう配、管径の変化する個所、段差の生ずる個所、合流点及び起点等に設置される。マンホールの蓋(ふた)は、車道にあっては路面を通過する車両などの重量に十分耐えられるよう鋳鉄製のものが使用されている。(世界大百科事典・抄・一部改変)
 大きな鉄蓋に覆われていても、設備・装置で満杯状態のものや、小さな鉄蓋に覆われた装置などは、人が出入りするものではなく、マンホールの名になじまないから、それぞれの業種で慣用的な呼称が使用されていると思われる。 
 下水道管(管きょ)は太さは内径25cmから8.5mに及ぶものまである。(東京都) 
 都下水道局が管理している「下水道台帳」がネット上で公開されている。台帳では地図上で人孔、枡、下水道管、取付管の位置がキッチリ示されているほか、個々の施設の情報が提供されている。これは大変ありがたい存在である。
 マンホールの蓋に関する書籍として、「マンホールのふた 日本編」(林丈二 1984.3.30 株式会社サイエンティスト社)が著名で、インフラに関わる基本的な分野の鉄蓋について、特に古い時代のものを多数取り上げていて、沿革的なことについても可能な限り調べていることから、大変参考になる。これに並ぶものは見ない。
 本書の中で、特に興味を感じた古い鉄蓋をいくつか探索に出かけたが、既に撤去されたものが多く、残念なことであるがやむを得ない現実である。  
 
     
  下水道局・合流管マンホール鉄蓋T-20
 現在都内区部の歩道で最も普通に見られる鉄蓋である。種別は最下部の「文字座」に明示されているように(合流式の)合流管のマンホール蓋である。内径は60センチ。
 この鉄蓋のデザインは、中央部から順にソメイヨシノの花、イチョウの葉、ユリカモメの飛翔する姿を前から見た形態をデザイン化したものとされ、写真のデザインのものは平成13年(2001年)から導入されている。デザインの細部にバリエーションはあるが、下水道局の鉄蓋のシンボルマーク的な存在である。このデザインは慣用的にサクラマークと呼んでいるようである。
  下水道局・汚水管マンホール鉄蓋T-20
 文字座の標記は「おすい」としている。「汚」の文字はイメージが悪いから避けたものと思われる。分流式エリアの汚水管のマンホール蓋である。
 このT-20型と後出のT-25型のマンホール蓋が多数見られ、前者は主として一般の車道や歩道で普通に見られ、後者は少し強度を高めたもので、大型車が通行する広い車道のほか、広い歩道でも普通に見られる。 
   
  下水道局・雨水管マンホール鉄蓋T-20
 分流式エリアの雨水管のマンホール蓋である。なぜか、文字キャップが取り付けられていない。取り付けは後処理なのか?  
 下水道局・合流管マンホール鉄蓋T-20・ゴム栓付き
 ガス抜きを目的とした孔に,赤いゴムキャップがはめ込まれている。合流管には当然ながらウンチが流れ込むから、条件によっては,臭気が外に漏れることがあり、苦情があればこうした対応をしているようである。 
   
   
  下水道局・合流管マンホール鉄蓋T-25 
 T-25型の合流管のマンホール蓋である。内径は60センチで、T-20型と同じである。
 下水道局のマンホール鉄蓋の構造や表面模様については、「東京都下水道設計標準」に定めがあり、さらに品質、性能等については「仕様書」が定められている。
 T-25型はT-20型より、少々肉厚で、強度が高められている。  
   下水道局・再生水管の仕切弁鉄蓋 
 文字座に「再生・仕」とあるのは、再生水送配水管に設置された仕切弁(制水弁)が収められた施設の蓋である。
 水再生センターで処理された汚水は放流される一方、一部は高度な処理をされて、「再生水」としてオフィスのトイレ用水などに利用するため送配水されている。仕切弁は工事等に際してして一時的に止水するためのバルブである。
   
   再生水の排水弁が収まったマンホール鉄蓋とされる。

 上の「仕切弁」と同様に、下水道管では見られない施設で、再生水の送配水の施設であり、水道管で見られる「排水栓」、「配水室」と同様の機能を有しているものと思われる。

 管路工事後の通水時における管内洗浄水の排除や維持管理に必要な管内清掃時の配水のために設置される配水設備である。 
 下水道局・再生水管・排水弁マンホール鉄蓋T-25   
   
 
         マンホール鉄蓋の各部位の名称
 改めてこのデザインを観察すると、滑り止めの機能を確保することに関しては、あまり重点が置かれていないようである。要はツルツルの面が多すぎるのである。耐久性を優先したデザインといえる。カギ穴に青いキャップのあるものは、地震などの際に仮設トイレの設置が出来るマンホールであることを示すものとされるが、目にしたことがない。そもそも、歩道、車道の真ん中に設置されたものでは、通行の支障となって仮設トイレにはなりえない。 
 なお、令和3年4月から、デザインの一部を変更した鉄蓋が登場する模様である。近年のトレンドを意識して、全体にイボイボの突起を配し、滑り止め機能を高める予定である。 
   
   鉄蓋のガス抜き孔とスリップサイン
 全体に多数の丸い凹みがあるが、そのうち一部のみが貫通した孔となっている。スリップサイン部は摩耗の程度を目視チェックして、蓋の取替時期の判断基準とするためのものである。
    鉄蓋の文字キャップの例
 4個の樹脂キャップのうち、左側の3個は管理上の記号、番号で、右側の水色の1個が管布設年を示していて、写真の例では2005年を意味している。1900年代の場合は、黄色のキャップが使用されている。 
   
 次は一世代前の下水道局仕様のサクラマーク鉄蓋で、違いはわずかである。管理上の文字キャップはない。
 T-20、T-25の区分表示は見られない。 
   
   下水道・局雨水管マンホール鉄蓋
 前出のマンホール蓋の前の代のマンホール蓋である。平成4年(1992年)から導入されたのである。通常のサイズ(内径)は60センチである。
   雨水鉄蓋(下水道局表示なし)
 中心部がのっぺらぼうで、「東京・下水道」の表示がない。ということは、ひょっとすると、都建設局が管理する雨水管のマンホール蓋なのかも知れない。 
   
   下水道局・合流管マンホール鉄蓋
 普通の合流管のマンホール蓋である。 
   下水道局・再生水管の空気弁鉄蓋
 文字座に「再生・空」の表示がある。これは、再生水送配水管に設置された空気弁が収められた施設の蓋である。
 空気弁は水道の場合と同様で、管きょの通道の支障となる空気を排除する等の機能を有するバルブである。 
   
  下水道局・合流管マンホール鉄蓋・大型
 写真では大きさがわからないから、一見すると、普通の合流管のマンホール鉄蓋であるが、よーく見るとイチョウの葉の丸い凹みの数が多い。やや大きめのマンホール蓋で、外径が約79センチであった。 
  下水道局・合流管マンホール鉄蓋・ゴム栓付き
 臭いにおいを封殺する赤いゴム栓付きである。外径は左と同じである。 
   
   下水道局雨水管マンホール親子鉄蓋
 親子蓋とは内径90センチ(外径94.5センチ)の親蓋の内側に子蓋として内径60センチの標準蓋をはめたものである。通常の点検では子蓋のみを開け、作業に際して機械を投入する必要がある時は親蓋を全開とする。
 写真のものは小蓋の文字座に「雨水」とあるから、雨水管のマンホール鉄蓋である。  
   下水道局・合流管マンホール親子鉄蓋
 こちらは合流管のマンホール鉄蓋である。
 目にしたものでは、ほとんどの小蓋はT-25型であったが、一部にT-20の小蓋がはまっているのを見た。
 親蓋は東京都のシンボルマークで覆い尽くされている。 
   
  飛散防止鉄蓋 GLV型・ノーマルタイプ 1 
 中央に下水道局のサクラマークがあり、下方の文字座にはGLVとある。これは、集中豪雨による管内の圧力上昇によって鉄蓋がぶっ飛ぶのを防止する機能を有する鉄蓋とされる。
 写真のノーマルタイプは車道で見られる。
  飛散防止鉄蓋 GLV型・歩行者対応タイプ 
 こちらはノーマルタイプの長六角形の孔の長い方向の中央に仕切りを入れて開口部を狭くしたもので、歩道や横断歩道での適合も図ったものである。ハイヒールのかかとが落ち込んだり、人為的なゴミの落下を防ぐことが出来そうである。
   
  飛散防止鉄蓋 GLV型・ノーマルタイプ 2
 こちらは、下水道局のかつてのシンボルマークが入っている。このマークの鉄蓋はまだ多数残っている。  
  飛散防止鉄蓋の設置例の様子
 右手前の鉄蓋が歩道用で、左奥の鉄蓋が車道用である。 たまたま隣接して設置されていた。  
   
 GLVとは、Grating(格子) Lock(錠) Valve(弁) の頭文字であると講釈されており、東京都と鉄蓋工業株式会社(東京都千代田区)が共同で開発した飛散防止鉄蓋で、管内の圧力を開放・自動調整するステンレス製空気弁が内蔵されているという。平成15年に東京都下水道設計標準に認定されているという。 
   
 サクラマーク・鉄筋コンクリート製汚水管マンホール蓋
 コンクリート製マンホール蓋は、元々高い強度を求められない歩道用(鉄の使用量を節約できる低コストの仕様)である。  
       同左部分
 汚水管のマンホール蓋で、文字キャップ付きである。
 コンクリート製のマンホール蓋は、薄汚れた暗い印象があるが、周りの舗装材と一体となって、靴にとっては滑りにくい、普通の素材感がある。標記は「おすい」である。 
   
サクラマーク・鉄筋コンクリート製雨水管マンホール蓋 
これは雨水管のマンホール蓋である。コンクリート蓋では、蓋の周りにコンクリート縁のあるものが多い。
 サクラマーク・鉄筋コンクリート製合流管マンホール蓋
 これは合流管のマンホール蓋である。
 これと同類の蓋には、文字キャップのスペースのない仕様のものも目にする。
   
 
 旧下水道局マーク・鉄筋コンクリート製マンホール蓋
 前出のコンクリート蓋よりも古いタイプと思われる。
 中心に東京都紋章を配したかつての下水道局のシンボルマークは、なぜか近年は使用されていない。
 写真の種別は明示されていないが、合流管用であろう。
 旧下水道局マーク・鉄筋コンクリート製マンホール蓋
 下水道局マークにはバリエーションがあって、都紋章のトゲに長短がある。中心に凹みがあるのは都紋章に対して無礼な扱いである。古いタイプのコンクリート蓋は令和元年10月1日からは新規の設置はなされていない模様である。  
   
  旧下水道局マーク・格子地紋マンホール鉄蓋
 この下水道局のマークでも、中心の東京都紋章のトゲが短く、亀の子状態である。こうした都紋章のメタモルフォーゼはしばしば見られる。 
 旧下水道局マーク・東京市型地紋マンホール鉄蓋
 この下水道局のマークでは、東京都紋章の形態は正しく表現されている。地紋は東京市型である。 
   
 旧下水道局マーク・東京市型地紋マンホール鉄蓋
前出の鉄蓋のバリエーションである。  
 旧下水道局マーク・東京市型地紋マンホール鉄蓋
  雨水管マンホール蓋である 
   
 旧下水道局マーク・東京市型地紋マンホール鉄蓋
  汚水管マンホール蓋である。堂々と「汚」の文字を使用している。
 
  旧下水道局マーク・東京市型地紋マンホール鉄蓋
  霞ヶ関地区で見かけた、大きな鉄縁付きの変種である。
  この鉄縁は、「マンホールのふた」によれば、蓋を収める鉄枠を保護したり、蓋と路面とのレベルを維持してなじみをよくするような役目をしているという。
   
 旧下水道局マーク・東京市型地紋マンホール鉄蓋
外径が95センチの大型の変種である。枠に模様がある。 
 旧下水道局マーク・蜘蛛の巣型地紋マンホール鉄蓋
 蝶番のついた、片開きのタイプである。 
   
 都紋章・6穴鉄筋コンクリート製合流管マンホール蓋
 都紋章のある公共枡蓋は普通に見られるが、都紋章のあるマンホール蓋は下水道用としては一般には見られない。これは架道橋下通路で例外的に見られたものである。 
    【参考】私道のマンホール蓋の例
 写真では都紋章こそないが、鉄筋コンクリート製の6穴マンホール蓋は私道の排水管(合流管)のマンホール蓋としても見られるから、ごく一般的な製品であることがわかる。 
   
 次は目にしたデザインマンホール蓋の3種の例である。こうした方向性には公費の使途として少々疑問を感じるが、まずは現実直視である。高額なものは特別の鋳型で製造されたものに、手作業で手間を掛けて色つきのエポキシ樹脂を流し込んで製造しているようである。 
   
   デザインマンホール鉄蓋 1 ・アトム
 複数の特別区・市部でそれぞれ演出されている。
 このマンホール蓋の製作にはは相当のコストがかかっているはずである。 内径60cmの合流管マンホール鉄蓋である。
   デザインマンホール鉄蓋 2・ウラン
 その他、お茶の水博士も付近にいるようである。
 (千代田区神田)
   
    デザインマンホール鉄蓋 3・シナモロール
 なぜかサンリオのシナモロールである。内径60cmの合流管マンホール鉄蓋である。(品川区大井) 
            同左部分 
 滑り止めのザラつきのある樹脂プレートをトルクスネジで留めている。コストを抑制している点はエライ! 
   
  デザインマンホール鉄蓋 4・品川紋次郎
 サンリオの品川紋次郎の登場で、品川橋を渡る風景だという。(品川区南品川)  
  デザインマンホール鉄蓋 5東京五輪
 東京2020大会エンブレム入りで、日比谷公園前ほかで見られる。仕様は品川と同様である。
   
    サクラマーク・亀甲型地紋・角型合流管鉄蓋
 大型の角型鉄蓋
で、長方形の小蓋が5〜7枚で構成されているのを見る。小蓋の下方には何やら説明書きがある。凸型の亀甲模様である。
     同左小蓋の下方部分
 「反対側もうかせ.手前に引いてください」と丁寧な言葉で説明書きがあるのはほほえましい。小蓋を開けるときの注意書きと思われるが、本当は、こんな説明が不要な扱いやすさが必要である。ガス抜き孔が見られる。 
   
      サクラマーク・亀甲形地紋・角型雨水管鉄蓋 
 この蓋にも同じ注意書きがある。3枚構成の例である。
   
   旧下水道局マーク・亀甲型地紋・角型鉄蓋
 前出と、マークが異なるだけである。この蓋では、長方形の小蓋5枚で構成されていた。種別表記はない。   
     同左小蓋の下方部分
 説明書きも前出と同様である。 
(注)人によっては、凹凸が逆転して見えることがある点は悪しからず。亀甲模様はあくまで凸型である。)
   

   旧下水道局マーク・○×型地紋角型鉄蓋
 この地紋は別種のかなり古いマンホール蓋でもしばしば見かけるもので、角型鉄蓋のデザインとしては寿命の長さを感じる。4枚の長方形の小蓋で構成されている。種別表記はない。
     同左鉄蓋の小蓋の様子
 少々古いためか、前出の鉄蓋のような説明書きは見られない。 
   
  「マンホールのふた」(林丈二)によれば、このマークは明治44年10月26日東京市公報告示による東京市下水改良事務所の紋章に由来するとされる。

 三重マルの中に東京都紋章が収まったように見えるが、最も外側のマルは東京市型地紋に由来する。なお、都紋章は灯台の地図記号とほとんど同じであるが、トゲの先が尖っている点が異なっている。

 二重丸の上方をよーく見ると、「下」の文字が配されていて、左右の半円は「水」の文字の左右の部分をデザイン化したもののようである。

 このマークのある鉄蓋は旧型であるため、次第に消える運命にあり、やがてすべてがサクラマークの鉄蓋に置き換わることになる。  
  参考:旧下水道局マーク(鉄蓋中央部分)   
   
★ 以下は参考資料である。   
   
   左の図は「東京市下水道設計標準図 昭和4年」によるもので、このデザイン自体はそれ以前から使用されていた模様である。

 一定の滑り止め効果とマンホール蓋の丸い形態への適合を意識したマンホールデザインの草分け的な存在と思われる。

 現在でも下水関係のマンホール蓋以外でもこのデザインを踏襲したものが多数見られる。

 かつて、下水道用マンホール蓋のJIS規格で、図の表現の都合でこのデザインを便宜上掲載してしまったことから、これを「JIS型地紋」と呼んでいる例を見るが、これは誤解を招く呼称で適当ではない。したがって、「東京市型地紋」と呼ぶ方が適当である。  
          参考:東京市型地紋  
   
     マンホールの中の様子
 「虹の下水道館」の展示写真である。
 出入り口部は通常60センチ径で、奥は少し広くなっている。 下水道管が底部両端に接続されていて、立坑の底部では下水道管は開放状態となっている。写真は高圧ホースによる洗浄作業中のものである。 
     マンホールの縦断面図

 「図説土木用語辞典」より 
   
       下水道工事風景 1 
 この工事の何たるかはさっぱりわからないが、スチールとコンクリートの大口径の管きょが露出している。
       下水道工事風景 2
 同じ現場で、これは合流管の付け替え埋設工事と思われる。深さは背丈以上ある。奥の側に見える白いずんぐりしたものは、マンホールのコンクリート製立坑部である。 
 
 
   下水道のマンホールの中や下水管の様子に関しては、社団法人日本下水道管路管理業協会がユーチューブ動画を紹介しているほか、個人ホームページでも紹介している例が見られる。