トップページへ 樹の散歩道目次へ 樹の散歩道 わしは右巻きなのか左巻きなのか
一体どっちなんじゃい!(苛つく山藤氏)
図鑑によっては,例えば藤棚でおなじみのフジ(ノダフジ)のツルの巻く方向について,これを「右巻き」としている場合と,「左巻き」としている場合がある。もちろん,言わんとしていることは同じでも,上から見るのと下から見上げるのでは巻き方向が逆に見えることによるものである。(さらに理屈を言えば,上からたどるのか,下からたどるのかによっても違うという言い方もある。) このことについての前置きなしで,いきなりノダフジは右巻きだ左巻きだ,これとは反対にヤマフジは左巻きだ,右巻きだということでは親切ではないし,また,共通するルールがないのも奇妙なものである。 |
ここでは上から見ることを前提とする。 ・ ノダフジのツルは下から上に向かって右回り(時計回り)で伸びている。(右巻き) ・ ヤマフジのツルは,下から上に向かって左回り(反時計回り)で伸びている。(左巻き) この分類で馴染みの植物を例示すれば,次のようになる。(上から見た場合) |
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この前提の場合,一目で判断する方法として,横から見た場合に,「ミ」の字になっていたら「右巻き」であるという覚え方がある。 参考までに,これとは逆の前提(ヤマフジを右巻きという表現を採用する場合)で,一目で判断する方法として,右手の親指を上に立てて,他の4本の指が向いている方向にねじれていくのが右巻きという覚え方がある。(左手の場合は左巻き) なお,ノダフジで,下の方が右巻きで,上の方が左巻きとなっている場合があるといわれ,これは,ヤマフジを台木としてノダフジを接木したものであるという。 ここで,少し余談を。 普通の木ねじは右ネジ(時計回りに回転すると入っていく)で,これを立てた状態(頭は上でも下でも同じ)で横からネジ山を見れば,右肩上がりで,左巻きのヤマフジと同じらせん模様に見える。仮にヤマフジを下から見て,右巻きと表現すれば右ネジと同じ右巻きのらせん模様ということで,言葉の上では一致するが,個人的には下から見るというのはどうにもなじめない。素朴に言えば,陸上競技のトラックは左回りである。電柱に左肩を向けて回るのは左回りである。 以上とは全く関係はないが,台風,竜巻,排水口の水は,地球の自転に伴うコリオリの力の影響が大きく及ぶ場合は,北半球では左巻き,南半球では右巻きでそれぞれ中心に向かって渦となるというのはよく知られた事実である。 |
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【追記 2009.7】 聞くところによると,「DNAの二重螺旋は右巻き」と表現されることになって以来,上記で採用した日本の古典的植物学の捉え方とは逆の呼称が優勢となっている模様である。 簡単に言えば,横から見て右肩上がりになっていれば右巻き,左肩上がりになっていれば左巻と覚えざるを得くなってきたようである。仕方がないので仕切り直しとする。 |
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口直しのため、次にフジの花に登場願うこととしたい。 |
ノダフジ(和気町藤公園) | ノダフジ(浜離宮恩賜庭園) |
ヤマフジ(岡山県内) | ヤマフジ(岡山県内) |