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樹の散歩道
 
  菊は木になれるか 
  

     小菊盆栽のワンダーランド
             


 菊花展があると、大輪の各種の菊や、巨大な懸崖とは別のコーナーで必ず小型ながらも重厚な小菊盆栽が多数展示される。石(岩)付け、・・・・と形態は様々で・・・・これは、どう見ても「菊の木」であり、立派な小低木である。岩に張り付いた根はマツの盆栽を思わせるほどである。
 さて、この盆栽、毎年冬を越してまた花を付け、さらに太くなっていくのだろうか。
【2008.6】 


日比谷公園における菊花展(2006,2007)より


 栽培される花としてのキクは奈良時代の初期に中国から渡来した宿根草とされる。したがって、ふつうは花が終われば地上部は枯れて根だけ残り、翌春改めて茎を伸ばす多年草である。
キク科は約1000属、およそ2万3000種にのぼり、顕花植物中最も大きい植物群で全世界に広く分布し、日本には約70属,370種あるとされる。また、キク科には少数の木本性のものがあるが、大部分は草本性である。(平凡社世界大百科事典)

  ユリオプスデージー

    コウヤボウキ

     ハマギク
 木本のキク科植物として最も身近なものは黄色い花を付けるユリオプスデージーである。しばしば、茎がガッチリ木質化した巨大な株を見かける常緑低木(時に半耐寒性常緑多年草としている説明もある。)である。その他、コウヤボウキも小さくて頼りないが落葉低木とされ、ハマギクも小低木(亜低木、半低木としている説明もある。)とされる。

 さて、小菊盆栽について。最近、たまたま小菊盆栽の教室がこれから開催されようとしている場に遭遇して、チャンスとばかりに小菊盆栽の先生に立ち話で少し伺ってみた。

 質問のポイントは、「小菊盆栽は複数年にわたって冬を越し、毎年花を咲かせることができるのか」ということである。答えは、「特別の環境、管理下で、数年にわたってもたせることが可能である。」ということであった!! 樹木のように数十年にわたって地上部を維持できないものの、短いながらも木になれることがわかった!!ただし、こうしたものはむしろ特殊で、前の年に挿し芽して育てた苗を使用して、その年限りのものとして仕立てるのが普通であるとのことであった。

 そこで、特に「菊の木」についてもう少し知りたくなってにわか勉強をしてみた。教科書として選定したのは、たまたま図書館にあった以下の図書で、ポイントは以下のとおりであった。

図解キクの仕立て方:ガーデンライフ編集部(昭和55年10月17日、誠文堂新光社)
必携 小菊盆栽:宗田栄一(昭和58年9月30日、誠文堂新光社)
@ 一般の小菊盆栽

 菊の盆栽にはその特性が盆栽作りに適合した小菊の品種を利用している。
 樹木の盆栽は最低でも10年を要するが、小菊盆栽作りは挿し芽をしてから14ヶ月前後で完成できる。
 前年に挿し穂を採取して挿し芽で苗を確保し、摘心摘芽を繰り返して枝を作り上げていく。

A 古木盆栽仕立て

 キクは宿根性であるから地上部は毎年花が咲き終わると枯死してしまう。しかし、品種や管理によっては樹そのものが古木化して数年生き続けることができる。この特性を生かして同じような樹態が数年続けて作形できる。  
 古木保存年数の記録は東京周辺でも最高15年くらいで、平均すると寒冷地に古いものがある。 
 管理上、早めに花を取り除く必要があるほか、古木は勢いが弱いため、これに配慮した特別の管理が必要となる。