わが日本国での総論として、開花の早い樹木として、まず頭に浮かぶのはまず咲くマンサクであるが、北海道にあっては、マンサク類はマルバマンサクが奥尻島に分布するというが一般的でない。次にクスノキ科の黄色い小さな花を付けるアブラチャン、ダンコウバイ、クロモジ等がお馴染みであるが、いずれも北海道には分布しない。唯一オオバクロモジが渡島半島に分布するというが、これも一般的ではない。
そこで、仕方なく登場願うのがハンノキ属である。カバノキ科の他の樹種同様、虫たちを引きつける必要のない風媒花であるため、本当に色気がない。とりわけハンノキ類のいくつかの樹種はまだ辺りが雪に覆われた風景の中で、誰の目を引こうというわけでもなく、地味な暗い色の雄花序をぶら下げているだけである。したがって、多くの人は気付きもしないし、たまたま目に入ったとしても、一般的には“花”として認知してもらえない。
さて、目の届く範囲の植栽樹種を眺めていたところ、2012年のトップバッターはタニガワハンノキ(コバノヤマハンノキ)であった。
なお、ハンノキも雪の中で開花する風景がおなじみの樹であるが、不思議なことに本年は身近なものでは全く花(雄花序)をぶら下げていなかった。木々にはそれぞれ事情もあるようである。 |
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“満開”のタニガワハンノキ
昨年の花穂がたくさん残っている。4月中旬のまだ雪が残った状態での風景である。 |
タニガワハンノキの雄花序と雌花序(上部) |
タニガワハンノキの樹皮の様子
樹皮は比較的平滑である。 |
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タニガワハンノキの雄花序のアップ
カバノキ科樹種の雄花序はどれも同じで面白くない。 |
タニガワハンノキの
雌花序のアップ
小豆粒のように小さく、赤い花柱がチョロチョロ出ているが、目を引く代物ではない。 |
タニガワハンノキの葉の様子
コバノヤマハンノキの別名のとおり、葉はケヤマハンノキより小さい。 |
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付近にはハンノキ以外にケヤマハンノキ、ヤマハンノキ、ミヤマハンノキが植栽されていたが、この時点ではいずれも開花はまだまだ先のようであった。
タニガワハンノキの小さな花穂は赤く(もちろんそんなことは至近距離で目を凝らさなければわからない。)、何とか美しく撮ってあげたいのであるが、接写してもちっとも美しくない。
さて、二番手であるが、ナニワズ(ナツボウズ)が目に入った。
ナニワズは葉を付けたままで雪の下で全身がペチャンコになった状態で絶え続け、雪解け時には既に蕾(正確にはまだ閉じた萼片?)が準備されていて、早々に黄色い萼片をきれいに開く。早咲きの樹木は、開葉前に開花するパターンが多いが、ナニワズの場合は少々風景が異なる。(落葉は夏季)
一方、草本類となると、福寿草、継いでミズバショウ、エゾエンゴサク、エゾノリュウキンカが目に入った。 |
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以下は先のタニガワハンノキの開花後に目にしたハンノキ属、カバノキ属の実に地味な雌花序の例で、いずれも見向きもされない花たちである。美しくないとか地味とかの印象はヒトの勝手な捉え方で、これら木々の花は風媒花であり、別に虫たちに媚びる必要もないし、余計なお世話と言われそうであるが、やっぱり花らしくない。 |
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ミヤマハンノキの雌花序 |
シラカンバの雌花序 |
ヤチカンバの
雌花序 |
プベスケンス
カンバ(ケカンバ)
の雌花序 |
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ハンノキ類やカンバ類の雌花は、肉眼では赤い花柱の存在を確認できてもその質感、形状はわかりにくい。そこで、
顕微鏡の助けを借りると、意外な美しさを発見する。 |
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ミヤマハンノキの雌花序
花柱は砂糖をまぶしたゼリーのような質感で、非常においしそうに見える。 |
シラカンバの雌花序
苞の角度、反り具合は個体差があるが、花柱の観察には邪魔である。 |
シラカンバの雌花序(断面)
雌花序の断面で花柱の様子を観察できる。粒状のものは花粉。 |
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<参考1> その他の地味な花たち |
地味な花のついでに、今度はアサダ属、イヌシデ属、コナラ属の雌花の例を掲げる。いずれも全く目立たない。それぞれの雄花序もやはり今までに登場したものと同様に地味な茶褐色の紐状で、美しくない。 |
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アサダの雌花序 |
イヌシデの雌花序 |
クマシデの雌花序 |
コナラの雌花序 |
ミズナラの雌花序 |
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<参考2> 北海道のサクラ |
花らしくないものが続いたため、口直しといったら樹に少々失礼であるが、気分転換として、北海道で咲いたサクラの花を紹介。 |
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オオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)
北海道では最も一般的なサクラで、ソメイヨシノやヤマザクラよりも花が大きく、色はピンクがかっていて美しい。
写真は2012年5月上旬時点。(札幌市近郊) |
ソメイヨシノ
ソメイヨシノは、左のオオヤマザクラが既に葉桜となった時期に満開となっていた。
写真は2012年5月中旬時点。(札幌市近郊) |
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