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天然チクルは現在でも使われているのか
英語の GUM は日本語ではモノによって「ゴム」と書いたり「ガム」と書いたりする。ここではガムである。昔、ロッテのガムは「天然チクル」を使っていることをCMで強調していた。天然チクル(chicle)とはメキシコ、中南米原産のアカテツ科サポジラ属の常緑高木であるサポジラ(Achras sapota サポディラとも)の樹皮を傷つけてでた樹液(乳液)が固まったもので、ガムの基材として使われてきたものである。 |
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天然のチクルの大きなブロック。普段はなかなかお目にかかることはない。(日本チューインガム協会による展示品。)
チクル chicle の語はアステカ語族ナワトル語でねばねばしたものという意味の tziktli が語源とされる。 |
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サポジラの葉
国内では植物園の温室の定番樹種である。 |
サポジラの花 1
地味な花をつけていた。 |
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サポジラの花 2
花は釣鐘形で、これ以上開かない。 |
サポジラの果実
現在はこの甘い果実を目的に、特にタイとマレーシアで栽培されているという。 |
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サポジラは、野生では高さ30〜40メートルの高木となるが、果樹に適した低木に品種改良が行われ、植えてから2〜3年で果実が収穫できるようになった。果実の果肉は赤みをおびており、非常に甘い果汁を多く含んでいる。生食するほか、缶詰やシャーベットの材料に利用される。
サポジラの樹液(乳液)を煮詰めたゴム質はチクルと呼ばれかつてはチューインガムと言えば全てメキシコ南部、グアテマラ、ベリーズ産のチクルが原料とされていたが、やがて合成品に取って代わられるようになった(植物の世界)とされる。 |
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ガムの包装の原材料名を見ると、見事にカタカナ物質のかたまりであることがよくわかる。ガムの基材は「ガムベース」として十把一絡げに表示すればいいことになっているようで、さっぱりわからない。中味は天然チクルもあり、酢酸ビニル樹脂をはじめとした各種の合成樹脂もこれに包含されている。では、現在、天然チクルが使われているのかと言えば、配合しているものもあればすべて合成樹脂のものもあるということである。フーセンガムは合成樹脂でなければできないそうである。天然チクルはよい噛み心地を演出できる特性があるとされるが、多分コストの問題と、それ以前に量的な確保も困難なのであろう。メーカーとしては、化学合成物資のマイナスイメージを恐れて、成分の内訳は明らかにしたくないのが本音であろう。
日本チューインガム協会のホームページでは、ガムベースとなる植物性の樹脂は中南米、東南アジアの一帯に野生し、植物分類学上「アカテツ科」、「キョウチクトウ科」、「クワ科」、「トウダイグサ科」に属する樹木から採取される樹脂をいい、代表的なものにチクルがあるとしている。
子供の頃から駄菓子として、フーセンガムや鮮やかに色づけされたガムはおなじみであった。個人的には、最初だけ甘くて後になってはき出すという、胃袋に納まらないようなものに金を使うのには子供心にもやや抵抗があったが、くじの誘惑に負けて買ったのが正直なところであった。
なお、かつてのCMのせいか、ロッテのガムは天然チクルが百パーセントであると思い込んで安心している人がいるらしく、これは不幸なことである。表示義務が甘いことに起因しているともいえる。 |
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キシリトールの素性 |
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キシリトールそのもの(単体品)である。さらさらの結晶質で、グラニュー糖のような感触である。
キシリトールは水に溶解する際に吸熱反応を起こすとされ、なめると口の中でひんやりとした清涼感がある。
(日本チューインガム協会による展示品。) |
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キシリトールを含むガムが出始めた頃の説明として、「キシリトールはシラカバから作られます。」という記述があったのを記憶している。久しぶりにキシリトールに関してネット検索したところ、例によって「壮大なる孫引きの連鎖」と思われる内容が見られた。
以下はメーカーを含む記述の事例である。 |
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@ |
キシリトールはシラカバやカシを原料におもにフィンランドで生産されています・・・ |
A |
キシリトールは白樺や樫などの樹木から採れる・・(明治製菓→その後削除) |
B |
キシリトールは白樺や樫の樹木から採るセルロース成分で作られる・・・(現代用語の基礎知識(2006)) |
C |
キシリトールは白樺などの樹木から抽出される・・・ |
D |
キシリトールは白樺、トウモロコシを原料とする・・・ |
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キシリトールは樺の木やトウモロコシの穂軸などのキシランを原料とし(神奈川歯科大学 平田)・・・→(問題なし) |
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キシリトールはトウモロコシの芯や白樺を原料として・・・ |
G |
キシリトールシラカバやカシなどの樹木や植物からつくられる・・・(ロッテ) |
H |
キシリトールは樺の木やその他の樫木のキシラン・ヘミセルロースを原料として作られます。(日本歯科医科大学) →(問題なし) |
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なぜ白樺、樫なのか
植物の細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニン等で構成されていることは一般的に知られているが、キシリトールはこのうちのヘミセルロースに多く含まれるキシランが原料となっているという。木材であれば針葉樹と広葉樹があるが、広葉樹の方がキシラン成分比が高い。樹種はパルプ向けのもので材価が安く、数量が確保しやすい上に化学処理のしやすいものが選定されると考えられる。海外のホームページを見ると木材由来の製品の場合は
Birch tree(Birch wood)が使われるとされている。
Birch はカバノキ類(カバノキ科カバノキ属の樹木)であり、シラカバに限定されるものではない。ヨーロッパシラカンバは、英名で Silver Birch 又は White Birch とされ、その他いろいろな Birch が存在し、「白樺」に限定するのは正確性を欠き、誤訳に由来するのではないだろうか。
また、「樫(カシ)」とはいかにも唐突である。樫(カシ)は、ブナ科コナラ属の常緑高木を指す語であり、そもそもヨーロッパでは南部にしか存在しないという。これもひょっとすると
Hardwood tree(広葉樹の意)を堅い木 → 「樫」(カシ)として誤訳したものが伝染したものではないだろうか。また、「その他の堅木」の語の使用例もあるがわかりにくい。
なお、トウモロコシの穂軸も原料となっていて、この場合穀粒は使用しないことから、単に「トウモロコシ」とするのは正確ではない。 |
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(2) |
キシリトールに関するよろず情報
ネット上その他のキシリトールに関する情報を拾い上げて、少々整理の上で以下に箇条書きで列挙してみる。 |
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ドイツの化学者が、19世紀後半にカバノキ(Birch)の樹皮から発見していた。
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第二次世界大戦中にフィンランドで砂糖が極度に不足して、科学者が代替品を探す中でカバノキ(Birch)の樹皮から改めて発見した経過がある。
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キシリトールが注目されたのは、1974年にフィンランドのトゥルク大学のカウコ・マキネン教授とアリエ・シャイエン教授が、世界で初めてキシリトールによる虫歯予防効果を確認した臨床研究を発表したことによる。
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キシリトールは英語で wood sugar 又は birch sugar とも呼ばれる。
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現在はカバノキ(Birch)のパルプに由来する製品とトウモロコシの穂軸に由来する製品があり、前者の方が優れているとする多くの記述が見られるが、両者に品質的な差はない。次第にトウモロコシの穂軸由来の製品にシフトしている。
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摂取したキシリトールの大部分は体内に吸収されず、腸に達し、吸収されたキシリトールのほとんどは代謝されないで尿中へ排泄される。
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糖尿病の者が口にしても問題はない。キシリトールは小腸から体内に吸収されるが、代謝をする際にインシュリンに頼らないためである。
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袋入りの製品が国内で販売されている。(本家ダニスコジャパン製、500gで1570円)
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溶ける時に熱を吸収するので、独特の清涼感がある。この反応を利用した衣類が商品化されている。
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日本国内では例えば東和化成工業株式会社が生産しているが生産量は少ない模様で、ほとんどが輸入品である。生産技術の問題ではなく、生産コストの事情から輸入に依存している。
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中国からはトウモロコシの穂軸を原料としたキシロース(これに水素添加することでキシリトールが生成される。)及びキシリトールが輸入されている。
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かつて、グリコの「ポスカム<クリアドライ>は,一般的なキシリトールガムに比べ約5倍の再石灰化効果を実現。」とする比較広告をロッテが訴え、@広告の使用差し止め、A10億円の損害賠償、B謝罪広告の掲載 を求めた結果、1審はロッテ敗訴、控訴審で(グリコの実験内容が否定されたものではないが、)@のみが認められた経過がある。
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アメリカ獣医学協会の発表によれば、犬はキシリトールを少量でも摂取すると大量のインシュリンを分泌し、その結果血糖値が下がって危険な状態になるとされる。 |
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<参考:キシリトールを主体とした製品の例> |
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フィンランドでは虫歯予防を目的としたキシリトールの利用が広く普及している模様で、言わばキシリトールの本場と言える。 写真はそのフィンランドのキシリトールのトローチ製品(英語では
pastille と表現している。)の例である。ファッツェル製菓 Fazer Cnfectionery のキシリマックス Xylimax の名の製品の一つで、フィンランドらしくムーミンのキャラクターを使用している。タブレット化するための添加物、天然香料、着色料以外はキシトール100%としている。キシリトール特有の清涼感のある控えめの甘さを感じるが、国内で広く普及している強烈なミント味と別の人工甘味料でつくった錠菓(タブレット菓子)とは一線を画している印象である。 |
ファッツェル製菓のキシリマックス |
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3 |
グリコVSロッテ
裁判の再現ではないが、両社の原材料を比較しながら調べてみた。 |
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原材料 |
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説 明 |
マルチトール |
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○ |
還元麦芽糖水あめ。日本で開発された低カロリーで虫歯にならない甘味料。 |
還元パラチノース |
○ |
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砂糖を原料に作られた低カロリーで虫歯の原因にならない甘味料。 |
リン酸化オリゴ糖カルシウム |
○ |
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口内を歯が再石灰化しやすい環境に整え、歯を丈夫で健康にする効果があるとされる。 |
リン酸一水素カルシウム |
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○ |
口内を歯が再石灰化しやすい環境に整え、歯を丈夫で健康にする効果があるとされる。 |
デキストリン |
○ |
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クラスターデキストリンはコーンスターチを原料として江崎グリコが開発したもの。粉末基剤ともなる。 |
ゼラチン |
○ |
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増粘・安定剤。主として牛骨および牛皮、豚皮を原料として製造され、食用のほか医療用品、写真用、工業用として広く利用されている。 |
キシリトール |
○ |
○ |
虫歯の原因にならない甘味料。トウモロコシの穂軸や木材を原料として工業的に生産されている。 |
アスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物 |
○ |
○ |
味の素が製造法を開発したトウモロコシから作られる人工甘味料。 |
ガムベース |
○ |
○ |
植物性樹脂(中南米、東南アジアの一帯の「アカテツ科」、「キョウチクトウ科」、「クワ科」、「トウダイグサ科」の樹木から採取される樹脂(チクルは代表的))、酢酸ビニル、エステルガム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウムなどを製品により調製している。具体の表示義務はないようである。 |
香料 |
○ |
○ |
具体的な表示義務はないため、多分企業秘密。ミントなどの天然植物性の香料が主体という。 |
光沢剤 |
○ |
○ |
一般にラックカイガラムシの分泌するシェラック、石油から製造されるパラフィンワックス、カルナバヤシの葉から採れるカルナバ蝋、ミツバチの巣から採れる密蝋などがある。この中では何と言ってもパラフィンワックスが格安である。具体の表示義務はないようである。何の蝋であろうと消化できないから心配するなということか。 |
着色料・紅麹 |
○ |
○ |
紅麹由来の天然色素 |
着色料・紅花黄 |
○ |
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紅花由来の天然色素 |
着色料・クチナシ |
○ |
○ |
クチナシの果実由来の天然色素 |
増粘剤(アラビアガム) |
○ |
○ |
マメ科のアラビアゴムノキ又は近縁の植物の樹皮を傷つけて採取した分泌物を乾燥させたもので、粘性を高めるために使用する。 |
ヘスペリジン |
○ |
○ |
柑橘類の青い果実から採れ、風味改良剤としても利用されている。 |
フクロノリ抽出物(フノラン) |
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○ |
海藻のフノリ科フクロノリからの抽出物で、虫歯を引き起こす菌が歯に吸着するのを阻害する。 |
・グリコポスカムのサンプル:フレッシュマスカット
・ロッテキシリトールガムのサンプル:ニューライムミント |
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成熟商品であり、両社の原材料にほとんど差はない。また、ガムの銘柄による違いは、色素と香料のみであろう。
ガムを改めて見つめ、考えてみると、石油化学製品でもある酢酸ビニル樹脂を口に含んでくちゃくちゃやっているのは、やはりどうみても不自然で、無理矢理プラス効果も謳っているが、好ましい姿ではないと感じてしまう。日本人の本来的な生活習慣に照らしても全く異質なだらしのない悪い習慣が安易に輸入されたのは極めて残念なことである。この点で、韓国系企業のロッテの責任は特に重大である。また、ガムに起因する日本全国のコンクリート舗装や歩道ブロックの汚れはもはや施設管理者が除去不能な状態に陥って久しい。こうした広汎にわたる汚れについてはガムで大きな収益を得ている企業の職員がボランティアで清掃するくらいの償い的な対応を求めたいところである。 |
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<追記>
素材としてのキシリトール販売のマーケティングが大成功した過程については、当人の藤田康人氏の著作「99.9%成功するしかけ」(2006.11.20、株式会社かんき出版)に詳しい。
なお、なお、韓国ロッテは日本国内の企業の菓子のデザインを手当たり次第にパクる悪辣さでつとに有名で、この点で他の韓国企業の追随を許さない野良犬ぶりを発揮している。ロッテは既に地獄に落ちるにふさわしい存在となっている。 |
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