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樹の散歩道
   ツツジ科樹木の毒性


 ツツジの漢字「躑躅」はバラ「薔薇」と並んで読めても書けない典型的な例となっている。また、この漢字は興味深いことに「足がふらつく」ことを意味することが知られている。日本では昔からレンゲツツジには毒があることは知られていて、花を便所の蛆殺しに使った例も伝えられているが、ツツジ属ではこれ以外に有毒な種があるとは聞かないし、したがって、足がもつれるようなツツジがほかに存在するとは思えない。そもそも、漢名の元祖中国ではツツジ科、ツツジ属及びその種名の表記がどうなっているのであろうか。 【2011.2】 


   まずは主たる疑問点の整理である。 
   
 
Q1:  中国語でツツジ科、ツツジ属、さらには個々の種名の表記はどうなっているのか。「躑躅」の表記がどれだけ存在するのか。
Q2:  古文書での「躑躅」に関する説明はどうなっているのか。
Q3:  ツツジ属で、有毒であることが知られている種は何か。日本及び諸外国での中毒(死)事例の記録はないのか。
   
   身近な資料により可能な範囲で調べてみると、概略、以下のようなことが見えてきた。 
   
 
  中国の図鑑で、ツツジ属の種名に「躑躅」の文字が使用されているのは、「羊躑躅」のみで、これは中国原産の Rhododendron molle (var. molle) 、ロドレンドロン モレ( モレ)、和名 トウレンゲツツジシナレンゲツツジとも。花は黄色。)を指している。したがって、中国では「躑躅」は広くツツジ類を指しているものではない
  中国の「本草綱目」では、「羊躑躅」の名は、「羊がその葉を食へば躑躅して死ぬところから名づけたものだ。」とする説を紹介している。
  中国伝来の「躑躅(てきちょく)」の漢字は、日本では広く「ツツジ」の漢字表記として転用・使用されるところとなって定着しており、日本の各種国語辞典には「ツツジ」の意と併せて中国語伝来の語彙である「行きつ戻りつ、さまよう」等の意味も説明している。
  ツツジ属植物の毒性に関して、中国の図鑑で毒性に触れているのは、「羊躑躅」のみで、本種は有毒種であると同時に、中国では薬効も知られていて、本草綱目でも採り上げている。日本産のツツジ科で有毒植物とされているのは、ツツジ属ではレンゲツツジのみで、その他の属ではホツツジ(ホツツジ属)、イソツツジ(イソツツジ属)、アセビ(アセビ属)、ハナヒリノキ(イワナンテン属)の名を見る。
   
 
レンゲツツジ レンゲツツジ キレンゲツツジ
   
    以下に資料と併せてまとめてみる。
   
  (ツツジ科・ツツジ属のあらまし)

 ツツジ科は世界の亜熱帯から寒帯に約125属3500種が知られ、日本には約22属108種が分布する。【樹に咲く花】
 ツツジ属はツツジ科最大の属で、約850種が知られ、日本には52種ほどが分布する。【樹に咲く花】
 リンネは、今日のツツジ属植物をロドデンドロン Rhododendronアザレア Azalea という2つの属に分類したが、現在、学名としては後者は前者の異名であるが、英語などでは落葉性のツツジ類をアザレアと呼んでいる。【朝日百科植物の世界】
   
  (国語辞典での説明例 【広辞苑第四版】)

躑躅 てきちょく
 足ぶみすること。ためらうこと。ちゅうちょ。
 ツツジの漢名。 (漢名:一般的には中国での名称のことを意味する。)

躑躅 つつじ
 ツツジ科ツツジ属(シャクナゲ類を除く)の常緑または落葉低木の通称。山地に多く自生または観賞用として栽培。小枝を多く分岐し、枝・葉には細毛がある。春から夏にかけ、赤・白・紫・橙色などの大型の合弁花を単立または散形花序に開く。種類が多い。
 襲(かさね)の色目。表は蘇芳(すおう)、裏は萌葱(もえぎ)。または、表は白、裏は紅。
管理者注:日本国内で「漢名」というと、一般的には中国での名称と解されるが、日本に存在しないことが原因となって、あるいは誤って、中国名を全く異なる日本の自生種に適用するなど、中国語の名称と一致しないものも多い。従って、単に漢名とするのではなく、(中国国内での)中国名、(日本国内だけでの)漢字名などとして使い分けないと誤解が生じる問題がある。
   
  (中国の図鑑での扱い) 
 
 「中国樹木誌」で「躑躅」の語の所在を確認すると、以下のとおりである。(クロンキスト体系による。)

    日本語      中国語  学 名
 ツツジ科  杜鵑花科  Ericaceae
 ツツジ亜科  杜鵑花亜科  Rhododendroideae
 ツツジ属  杜鵑花属  Rhododendron L.
 レンゲツツジ亜属  羊躑躅亜属  Subgen. Pentanthera K. Koch
 トウレンゲツツジ
(シナレンゲツツジ)
 羊躑躅(神農本草経) 
 羊不食草(本草拾遺)
 閙羊花(湖南)、黄躑躅
 惊羊花(本草綱目)
 Rhododendron molle G. Don (注)

 羊躑躅の毒性・薬効に関する記述部分:「全株有劇毒、可作麻酔剤、也可製農薬;花治皮有癬特効。」 

管理者注 
1:  「杜鵑」はホトトギスの意である。
   
2:  ツツジ属の中国産の種名で、「躑躅」の文字の使用が見られるのはレンゲツツジ亜属の唯一の種である「羊躑躅」のみであった。ちなみに日本国内産では、本亜属にはレンゲツツジがある。(花が黄色又は橙黄色のものをキレンゲツツジ、葉裏が粉白色のものをウラジロレンゲツツジと呼んでいて、品種として扱っていることがある。)
   
3:   日本のツツジの名を持つツツジ類は、漢字で書けばすべて○○躑躅となるため、中国人がこれを知ったら、日本のツツジ類は、すべて(羊が食べたら足がもつれるような)有毒種なのかと思う人がいるかもしれない。 
   
4:  トウレンゲツツジの学名は、Rhododenndron molle としている図鑑が多く、原産国である中国の図鑑「中国樹木誌」及び「中国植物誌」でも同様であるが、Rhododendron molle var. molle とするのが適当であるとの見解(朝日百科 植物の世界)もある。

 日本に自生するレンゲツツジの学名は、トウレンゲツツジの変種 Rhododendron molle var. glabrius 又は亜種としている。
   
  (本草綱目での羊躑躅)

【本草綱目 草部 第十七巻下】~新註校定 国訳本草綱目第6冊より(抄)

羊躑躅(本経下品) 
和名 たうれんげつつじ(新稱)
学名 Rhododendron molle G.Don.
科名 しゃくなげ科(石楠科)
釈名 黄躑躅(綱目) 黄杜鵑(蒙筌) 羊不食草(拾遺) 鬧羊花(綱目) 驚羊花(綱目) 老虎花(綱目) 玉枝(別録)
弘景曰く、羊がその葉を食へ躑躅(てきしょく)して死ぬところからなづけたものだ。鬧(だう)とあるは悩(たう)と書くべきで、悩乱の意味である。〔原文:羊食其葉、躑躅而死、故名
集解 ・・・頌曰く、・・・羊がこれを食へば死ぬ、・・・時珍曰く、・・・花は五出、蘂、弁は皆黄色で、気、味いずれも悪い。・・・
花 気味 【辛し、温にして大毒あり】・・・ 主治 【賊風が皮膚の中に在って淫淫として痛む者、温瘧、悪毒、諸痺】(本経) 【邪気、鬼疰、蠱毒】(別録)
発明 ・・・時珍曰く、この物には大毒がある。曾てある人が、その根を酒に入れて飲んで遂に死亡した。和剤局方の中風癱瘓を治する伏虎丹中にもこれを用ゐてあるが、多く服してはならないものだ。
附方 ~(略) 
   
  本書註釈: 
 
 牧野云ふ、羊躑躅は我邦のレンゲツツジの中のキレンゲツツジに酷似した品であるが、固より別種で我邦には産せず。其れ故之れを我邦のキレンゲツツジに充てては不可である。
 躑躅 とどまりて足にて地を打つこと。又行きつもどりつすること。
 現在、中薬市場ではトウレンゲツツジの花は「閙羊花」と呼ばれている。有毒であるため現在は内服薬とはせず、殺虫剤、農薬とする。また果実も「閙羊花実」と称して薬用にするが、湖北では「八里麻」、江蘇では「六軸子」と呼び、鎮痛作用があるという。
 木村(康)曰く、成分は未だ研究せられざるも、欧州産同属植物中有毒成分として、アンドロメドキシンを含有するもの多数あり。本種の有毒成分も亦同物質名なんか、劇毒ある故注意を要す。
 
  (中国の現在の薬用植物図鑑におけるツツジ属樹木に関するする記述例)

【中国東部地区薬用木本植物野外鑑別手冊】より(抄)

羊躑躅(閙羊花) Rhododendron molle
花、果実和根入薬、花有袪風除湿、定痛、殺虫的功効、用于風湿痺痛、偏正頭痛、跌打種痛、齲歯疼痛、皮膚頑癬、疥瘡;果実有袪風燥湿、散瘀止痛、定喘瀉的功効、用于風寒湿痺、曆節腫痛、跌打損傷、喘咳、瀉痢、癰疽腫毒;根有駆風除湿、化痰止咳、散瘀止痛的功効、用于風湿痺痛、痛風、咳嗽、跌打種痛、痔漏、疥癬。

馬銀花 Rhododendron avatum
根入薬、有清湿熱、解瘡毒的功効、用于湿熱帯下、癰腫、疔瘡等。

杜鵑(映山紅) Rhododendron simsii
花、根、葉和果実入薬、花有調経、止咳、祛風湿、解瘡毒的功効、用于吐血、衄血、崩漏、月経不調、咳嗽、風湿、痺痛、癰癤瘡毒;根有止血、消腫止痛的功効、用于月経不調、吐血、衄血、便血、崩漏、痢疾、脘腹疼痛、風湿痺痛、跌打損傷;葉有清熱解毒、止血、化淡止咳的功効、用于癰腫瘡毒、蕁麻疹、外傷出血、支気管炎;果実有活血止痛的功効、用于跌打損傷

管理者注:「杜鵑」は日本にも分布があり、和名はシナヤマツツジ。別名としてトウサツキ、トウヤマツツジ、タイワンヤマツツジの名がある。 
   
  (和漢三才図会)

巻九十五 毒草類~和漢三才図会17(平凡社・現代語訳)より(抄)

羊躑躅(れんげつつじ、ヤチツチョツ) 
黄躑躅(こうてきちょく)、老虎花(ろうこか)、黄杜鵑(こうとけん)、驚羊花、玉枝、羊不食草(ようふしょく-)、 鬧羊花(どうようか) 〔俗に蓮華豆豆之(れんげつつじ)という〕

<本草綱目に依拠した部分>
羊躑躅(ようてきちょく)(ツツジ科)葉集落近くの諸山にはみな生えている。小樹で高さ二尺。葉は桃の葉に似ていて、三、四月に花を開く。黄色で凌霄花(蔓草類紫葳)に似て五弁、蘂・弁はみな黄色で、気味はみな悪い。
 花〔辛、温、大毒がある〕 羊はこの葉を食べると、足をばたばたさせ地を蹴って死ぬ。

<著者記述部分>
 思うに、羊躑躅〔和名は以波豆豆之(いはつつじ)、また毛豆豆之(もちつつじ)ともいう〕は、「本草綱目」の諸説によると、今いう蓮華躑躅(れんげつつじ)である。丹波や和州(やまと)吉野山に多くある。木は二、三尺、高いもので五、六尺。葉は楊梅(やまもも)の葉に似ていて薄く、微白毛がある。三月に花を開くが、五弁で凌霄花(のうぜんかずら)に似ている。一茎八、九萼、遠くから見ると蓮華のようである。それでこう名づける。また赤蓮華というものもある。〔蘇頌が、嶺南に深紅色の羊躑躅がある、というのがこれである〕。大体、躑躅の品種は多いが、黄色のものはただ蓮華躑躅・豆萁躑躅(まめがらつつじ)の二種のみである。黐躑躅(もちつつじ)・岩躑躅なども同類であるが、花の色は黄ではない。

管理者注:
イワツツジはモチツツジの別名で、レンゲツツジとは別種扱いされている。
日本の黄花のツツジとしてはレンゲツツジの黄花があり、キレンゲツツジの名がある。
豆萁躑躅(まめがらつつじ)は何を指しているのか確認できない。 
   
  (クセノフォン(クセノポン)のアナバシス)

 紀元前にまで遡る時代、ギリシャ人の傭兵軍団が、ツツジ属の蜜が原因で中毒症状を起こしたと思われる記述が見られ、しばしば紹介されている。

 「アナバシス -敵中横断6000キロ-」(クセノポン 著、松平千秋 訳、1993.6.16、岩波文庫)より
 (巻4第8章 抄)
 ギリシャ軍は登頂を果たした後、豊富な食料を蓄えている多数の村で宿営した。ここでは、ほかに何も驚くようなこともなかったが、ただここには蜜蜂の巣が多数あり、蜜を食べた兵士はみな錯乱状態に陥り、嘔気や下痢を起し、真直ぐに立っていることができなかった。少量しか食べなかったものはしたたか酒に酔ったもののごとく、多量に食べたものは狂人のごとくなり、瀕死の状態に陥る者すらあった。こうして多数の者が倒れてしまい、まるで戦いに負けた時のような体たらくで、士気の沈滞は甚だしかった。ところが翌日になって死人は一人も出ず、前日とほぼ同じ時刻に正気に還り、三日目、四日目には、ちょうど麻薬でも飲んだ後のような気分で、起き上がることができた。 
   
  訳注: 蜜を食べた兵士は・・・できなかった: 黒海付近に多い有毒の植物(アザレアとか夾竹桃の類など)に起因する。 
  管理者注: 
 
 クセノフォンは古代ギリシャの軍人、歴史家で、アナバシス Anabasis は本人の従軍散文。紀元前401年という古い時代のはなしとして、花蜜による中毒が発生したことが記述されていることで知られていて、しばしば引用されている。
 「朝日百科 植物の世界」には、この作品の本文中に「この中毒はハナヒリノキ Leucothoe grayana やツツジ属 Rhododendron の植物蜜から採った蜂蜜に起因する。」と記録しているとしているが、岩波の翻訳本では該当箇所を確認できない。そもそもハナヒリノキ Leucothoe grayana はツツジ科イワナンテン属の日本固有種とされている。なお、この植物に関しては Rhododendron ponticum あるいは Rhododendron luteum と推定されている。
   
  (国内ツツジ科の有毒種と果実可食種) 
   
 
<果実が食べられるもの> 
イワナシ  イワナシ属   朔果は紅紫色で、食べられる。【山渓 日本の樹木】 
アカモノ 
(イワハゼ)
シラタマノキ属   果実は朔を成し、其赤色を呈せる肉質部は萼の増大宿存して果実を包めるものにして食すべし。美味なり。【牧野日本植物図鑑】
ハリガネカズラ  ハリガネカズラ属   液果は白色に熟し、食べられる。【山渓 日本の樹木】 
ナツハゼ  スノキ属   奬果は帯褐黒色に熟し、果面白粉あり、小児採り食ふ。【牧野日本植物図鑑】 
イワツツジ  スノキ属    奬果は紅熟し、球形にして直径1cm余、食すべし。【牧野日本植物図鑑】 
ウスノキ  スノキ属    液果は赤色に熟し、酸味があり食べられる。【山渓 日本の樹木】 
クロマメノキ  スノキ属   ・奬果は球形にして紫黒色に熟し、食ふべし。採りてジャムを製す。【牧野日本植物図鑑】

・果実は生食のほか、ジャム、ジュース、果実酒などにする。風味がよく、ブルーベリーに勝るとも劣らない。その他同属のクロウスゴ、マルバウスゴ、ヒメウスノキ、アクシバの果実も食べられる【山渓 樹に咲く花】 
コケモモ  スノキ属    球形の奬果を結び、熟して紅色を呈す、直径凡7-10mm、食ふべし。【牧野日本植物図鑑】
ツルコケモモ  スノキ属    奬果は球形を呈し、表面滑沢にして紅熟し、食ふべし。【牧野日本植物図鑑】 
シャシャンポ  スノキ属    液果は黒紫色に熟し、食べられる。【山渓 日本の樹木】 
イワナシ  イワナシ属   
<有毒とされるもの> 
ホツツジ  ホツツジ属  ・蜜は有毒【山渓 日本の樹木】

・この花から集められた蜂蜜を飲んで中毒したということがあって、ホツツジが有毒植物に加えられるようになった。【伊沢一男:薬草カラー図鑑】 
イソツツジ  イソツツジ属   蜜には毒がある。【山渓 日本の樹木】 
アセビ  アセビ属  ・有毒植物の一にして其葉を煎じ菜園の虫を殺すに用ふ。馬此葉を喰へば苦しむとて馬酔木の和名あり。【牧野日本植物図鑑】

・有毒植物。葉をかむと苦い。奈良公園にアセビの木が多いのは、シカが食べないからである。【山渓 樹に咲く花】

・有毒成分はアセボトキシン類。【植物の世界】 
ナハヒリノキ  イワナンテン属  ・有毒植物【山渓 日本の樹木】

・圊中の糞蛆を殺すに此枝葉を使用する処あり。【牧野日本植物図鑑】

・有毒植物で、昔は葉を粉にしてウジ殺しに用いたり、家畜用の駆虫剤にした。この葉の粉が鼻に入ると、激しいくしゃみがでることから、ハナヒリノキの名がついたといわれる。ハナヒリはくしゃみのこと。【山渓 樹に咲く花】

・有毒成分はグラヤノトキシン類。【植物の世界】 
レンゲツツジ  ツツジ属  ・本州、四国、九州に分布。
 ツツジ属レンゲツツジ亜属 Pentamthera レンゲツツジ節 Pentanthera
 Rhododendron molle var. glabrius 中国のトウレンゲツツジの変種扱い
 Rhododendron japonicum → 消える運命
 漢名 羊躑躅は誤用。是れ支那産の R.molle G Don の名なり。【牧野日本植物図鑑】

・古くから園芸植物として栽培され、多くの品種がある。また欧州では中国産の R.molle G Don と交配し R. ×Kosterianum Schneider の名のもとに多くの園芸品種がある。【保育社 原色日本植物図鑑】

・この植物は有毒である。家畜がこの葉を食わないので放牧地に於ける灌木としては唯一のものである。【樹木大図説】

・有毒植物で、葉にはアンドロメドトキシン、花にロドヤポニンなどを含み、家畜が食べないので、牧場などにも多い。花が黄色又は橙黄色のものをキレンゲツツジという。【山渓 樹に咲く花】

・有毒成分はロドトキシン。【植物の世界】

・葉にはアンドロメドトキシン、花にはロドジャポニンという有毒成分が含まれている。これらはケイレン毒で、呼吸停止を起こして死亡する。アンドロメドトキシンはツツジ科の多くの種類に広く含まれていて、グラヤノトキシンと化学的には同じものとされている。グラヤノトキシンはハナヒリノキの成分として知られている。レンゲツツジは有毒植物として知られ、(日本では)薬用には利用しない。【伊沢一男:薬草カラー図鑑】
・レンゲツツジは毒性分として、葉にはアンドロメドトキシン、花にはロドヤポニン、根にはスパラソールが含まれます。【東京都福祉保険局】

(注) アンドロメドトキシン、アセチルアンドロメドール及びロドトキシンの名は以前の呼称で、現在はグラヤノトキシン。【アルバータ州政府】
ネジキ  ネジキ属   有毒植物。ヤギが葉を食べて死んだという記録が残っている。【山渓 樹に咲く花】
 有毒成分はリオニトキシン。【植物の世界】 
<参考:外国産> 
トウレンゲツツジ ツツジ属   Rhododendron molle G. Don 【中国樹木誌】
 Rhododendron molle var. molle 【植物の世界】(基本変種とする考え方) 
カルミア・アングスティフォリア  カルミア属   Kalmia angustifolia ホソバアメリカシャクナゲ
 有毒物質を含む。【植物の世界】 
カルミア・ラティフォリア  カルミア属   Kalmia latifolia アメリカシャクナゲ
 有毒物質を含む。【植物の世界】 
ロドデンドロン・マクシムム  ツツジ属 
(シャクナゲ類)
 Rhododendron maximum
 有毒成分はアンドロメドトキシン。【植物の世界】 
 
   管理者注:ツツジ属の国内種で毒性が確認されているものはレンゲツツジのみであった。 
   
  (その他参考資料)  注:rhododendron の適訳がないため一定していない。
 
   
 英語版 Wikipedia Rhododendron の項 抄
 
毒物学:
 ツツジ類 rhododendron のうちのいくつかの種はその花粉や蜜に含まれるグラヤノトキシンの名の毒素に起因して、草食動物とっては有毒である。一般に、ツツジ類 rhododendron やアザレア類 azalea (注:特に落葉性のツツジ類)の蜜を摂取したミツバチの蜂蜜を食べると、具合が悪くなることが知られている。クセノフォン Xenophon は、ギリシャの兵士たちが紀元前401の一万人行軍の間、ロドデンドロン・ポンティクムが周囲を覆う村で蜂蜜を食した後に奇妙な行動を見せたことを記述している。また、伝えられているところによれば、ポンペイウスの兵士たちは第三次ミトリダテスの戦いの間の紀元前67年に、ポントスの部隊により故意に残されたツツジ属 Rhododendron 由来の蜂蜜を食したことによって生じた致命的な惨事に苦しんでいる。その後、これら植物に由来する蜂蜜は軽い幻覚や下痢症状をもたらすことが知られるようになった。疑わしいツツ類 rhododendron はロドデンドロン・ポンティクイム Rhododendron ponticum とロドデンドロン・ルテウム Rhododendron luteum (かつては Azalea pontica)で、いずれも小アジア北部で見られる。トルコのイスタンブールでは11件の同様の事例が記録されている。ツツジ属 Rhododendron は馬に対してきわめて強い毒性を示すが、ある動物がその植物を摂取して数時間で死んだとしても、ほとんどの馬はちゃんとした餌がある限りはそれらの植物を避ける傾向がある。
 英語版 Wikipedhia Honey~Toxic honey の項 抄
 有毒蜂蜜:
 セイヨウキョウチクトウ oleanders 、シャクナゲ類(rhododendrons)、アメリカシャクナゲ mountain laurels、ナガバハナガサシャクナゲ sheep laurel、アザレア azaleas の花から採れる蜜は中毒を起こす可能性がある。症状としては、めまい、脱力感、過度の発汗、吐き気、嘔吐がある。また、時に低血圧、ショック、心拍不整、けいれんが起きる可能性があるほか、まれに死に至る場合もある。
 honey-health.com ~ Poisonous Honey 抄
 Batum 付近のコーカサスでは、シャクナゲ類(rhododendron)やツツジ類(azalea)が自生している。この地区の養蜂家はこれらの植物が満開となる春には蜂蜜を利用していない。その一方で、Ssanjuk は中毒作用がこれらの植物に拠るとすることに疑義を呈していて、中毒自体は蜂蜜を樹の洞から桶に集める際に多くの蜂がつぶれて、その結果蜜蜂の毒液が蜂蜜に含まれることによって発生するものであると断定している。
 North Korea Today No.154 Jun 2008 抄
 北朝鮮の両道郡で、ツツジ類(azarea)の花を食べた子供たちが死亡した。Sambong 中学では9人の生徒がツツジの中毒で死亡した。大人であれば食べられるものとそうでないものを知っているが、小さな子供たちは区別が出来ず、空腹状態にあって何でも口にしてしまう。彼らは3、4個のジャガイモ食べた後、まだ空腹で、山に駆け上って何でも摘んで口にした。この春、彼らはひとつかみのツツジの花びら数回食べ、中毒で死亡した。Chan Mi-oak は言う。「彼らは籠いっぱいのツツジの花びらを採って食べたが、もし、一度に食べ過ぎていれば胃けいれんを起こしていただろう。もし、腹が空っぽの時に食べていれば、口に泡を出して死んだであろう。自分はツツジを食べたときは胃けいれんを起こした。自分のような大人でも空腹を制御できないのであるから、子供の場合は言わずもがなである。」
 Lee Sung-ja は言う。「うちの上の子には毎日注意を与えている。上の子は大丈夫だが、下の子は自分が近くにいなければ花を食べてしまうかもしれない。だから、二人が外に出るときはいつでも上の子には弟が花を食べないように忠告を与えている。上の子は同級生が大勢死んでいて、自分に問うてくる。母さん、僕どうすればいいのと。この言葉は痛く私を苦しめる。両親のいない子供たちはいとも簡単に死んでいる。」