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木の雑記帳
  新聞広告の木材を知る
   マダガスカルのモンゾの名の木とは


 新聞広告で、しばしば聞き慣れない木材の工芸品が登場するたびに、世界では本当に多様性に富んだ様々な木が利用されているものだと感心しつつ、後学のためにその素性を探ってみるのは楽しいことである。しかし、時に玉砕することもあり(こちらを参照)、流通上の呼称と樹木の種類をつなぐことの難しさを痛感することもある。
 今度はバオバブで知られるマダガスカル島の産とされる謎の「モンゾ」の名の木材が登場した。【2013.10】 


 
    学名や英語名は付されていないから、広告文に記された以下の単語のみが手がかりとなる。

 @  マダガスカル Madagascar
 A  モンゾ Monzo
 B  (黒)紫檀 Rosewood

   
 日本語検索では情報が少なく全く捜査は進まないため、英語の検索に切り替えると、これら単語の組合せにより、次の2種が捜査線上に浮かんできた。

@  マダガスカル・ローズウッド(Madagascar Rosewood)    Dalbergia baroni
 マメ科ツルサイカチ(ヒルギカズラ)属
A  リードウッド(Leadwood)
 Combretum imberbe
 シクンシ科コムブレトゥム属
 
     
   そこで、まずは@のマダガスカル・ローズウッドについて検証する。

 これは超有名な材で、ギター、楽器、高級家具、工芸に使用される高級材である。少し前に、マダガスカルの国立公園内で、この木(報道では「シタン」の名が使用されていた。)が大量に違法伐採されていて、紫檀が大好きな中国人が貪欲に買い漁っていることが問題となっていた記憶がある。新聞広告の製品も中国産であり、この点では符合するが、この木には「モンゾ」の呼称はない。高級材として知られるマダガスカル・ローズウッドの名を敢えて使わないなどあり得ないから、残念ながらこれは対象外である。

 次に全く聞いたことのないAの
リードウッドについて検証する。

 英語名のリードウッド Leadwood は「鉛木」の意で、材が重いことによるという。多くの英語サイトで、この木は Monzo(ツォンガ語でMondzo とも表記されている。)とも言うとしているから、ほぼこれに間違いないといった印象である。ただし、この木は東アフリカ原産とされるも、具体的には南アフリカ、ナミビア、モザンビークからタンザニアにかけて分布するとしていて、マダガスカルに存在することが確認できない点は気になるところである。ただし、輸入製品の広告はそんなに厳密なものとは考えられないことから、多分、これを指しているのであろう。

 なお、広告文で使用されている「黒紫檀」の呼称は国内では一般性がないのに対して、中国語サイトではふつうに見られることから、中国発の造語と思われる。中国からは上記の杖のほかに、複数の彫刻製品が輸入されていて、国内の複数の事業者により通販されているのを確認した。材の様子については海外サイトで多数の写真が紹介されていて、やはり、黒みがかった紫檀風といえなくもない。

 このリードウッド Leadwood (モンゾ Monzo)に関する情報を要約すれば以下のとおりである。
 
 この樹は半落葉樹で、樹高が20メートルほどになり、南アフリカのコムブレトゥム属の樹木の中では最も樹高が高く、蛇の皮のような樹皮の模様が大きな特徴となっている。

 材は非常に硬くて丈夫で耐蟻性があり、かつては枕木に使用されたが、他方、様々な部族が多くの方法で植物体の各部位を利用していた。

 葉を燃やした際の煙は咳、風邪、呼吸器病を和らげるのに利用された。花も咳止めとして利用できた。葉は魔法の力があると信じられていた。根の煎汁は下痢や腹痛の治療に利用された。住血吸虫に対しては根と葉が併用された。根の樹皮を煮たものは皮鞣しに使用された。幹の傷ついた部位から滲出した樹脂は食べられ、ブッシュマンの食べ物の一部となっていた。リードウッドの灰は歯磨きとして使用された。材は非常に硬く強靱で、燃えるときは非常に高温で火持ちがよい。アフリカ人は金属が登場する以前はこの木を鍬を作るのに使用した。幹は囲いや穀物を搗く臼を作るのに利用された。

 現在は装飾品や家具、彫刻用に賞用されている。
  
リードウッド(モンゾ)の樹皮
   (Wikipedia より) 
   
 材色は、心材では鮮やかな赤褐色から暗褐色で、年数を経るにつれて暗色となる。辺材は淡黄色である。

 呼称に関しては次のような地域名がある。
 hardekool (アフリカーンス語Afr.); Motswiri (ペディ語Pedi); Ummono (ソト語Sotho);
Mondzo (ツォンガ語Tsonga); Motswere (ツワナ語Tswana); Umbondwe omnyama (ズールー語Zulu); Mohwelere-tshipi (北ソト語Northern Sotho); Muhiri (ベンダ語Venda); Omumboromboga (ヘレロ語Herero)

【plantzafrica.com , wood-database.com , en.wikipedia.org より】