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街の鉄蓋
  都会の道路はマンホールの蓋や小蓋だらけだ!
  その8 共同溝の鉄蓋


 「共同溝」の文字は市街地の歩道を歩いていれば、鋳鉄製の大きな角型蓋や丸形蓋に記されているのをしばしば見る。さらにその大きな蓋では、歩道の一定距離が丸々蓋となっていて、この場合は蓋表面が歩道の仕上げ面と変わらないのが普通で、文字の刻印も控えめであることから、その存在に気がつかないこともある。
 共同溝とは概念的には「電気、電話、水道、ガスなどのライフラインをまとめて道路などの地下に埋設するための設備」を指しているが、通常は「電線共同溝(C.C.Box)」として、特に電線に主眼を置いて敷設空間(管路)を地下に設置し、とりあえずは無電柱化を実現しているケースが多いようである。 【2021.6】


     
   共同溝がキッチリ整備されていていれば、多数の電柱が林立していたり、電線がぐちゃぐちゃに錯綜している風景は一掃されることになる。しかし、後から共同溝を整備することは道路を大規模に掘り返すことになるから、容易ではないことは明らかで、そのため、無電柱化(電線地中化)が実現しているのは都心の一部や再開発地域に限られている。

 ただし、道路の狭い商店街でもスッキリした景観を実現するため、簡便的な「ソフト地中化方式」によって電線の地中化を実現している例も見る。この場合は、歩道が狭いため、やむを得ず街灯の支柱を兼ねた鉄柱の上方に変圧器等のボックスを設置している。(広い道路では歩道の道路側に地上機器を設置している。)

 単に鉄蓋に共同溝と表示されていても、具体的にどれだけの事業者が共同しているのかは蓋を見てもさっぱりわからないのは不満であるが、ほとんどは電線のみが収まっているのであろうと想像することにしている。

 なお、電線共同溝の管路は道路管理者(国道であれば国、都道であれば東京都、区道であれば区役所)が設置し、電気・通信事業者がケーブルを設置することになっている。 
 
     
 
注:   電線共同溝(時に共同溝)をC.C.Box(C・C・ Box)と表記していて、鉄蓋にもこの表記が見られる。
 国土交通省では、この略称に関して次のように説明している。
 「最初のCには、Community(地域・共同)、Communication(通信・伝達)、Compact(コンパクト)の3つの意味が込められていて、電線共同溝の特徴をよく表しています。2番目のCは、Cable(ケーブル)を表しています。」
 調べた範囲では、これに類するものの英語名は utility tunnel, 又は utility corridor と呼ぶのがふつうらしいから、シーシーボックスの呼称は国土交通省が勝手に思いついた内容を満載して呼んでいる可能性がある。 
 
     
   まずは、天然石貼りのゴージャスな共同溝(電線共同溝)からである。   
     
 
           港区の石貼りの丸形電線共同溝蓋
 中央に港区の紋章「電線共同溝」とした文字が入っている。いい仕上がりである。 
 
           港区の石貼りの角型電線共同溝蓋
 これは角型の電線共同溝蓋である。手間をかけているだけのことはある。 
 
     
   以下、旧建設省、国土交通省、東京都、区の共同溝の例を見てみる。
 電柱のないところには共同溝ありという構図である。 
 
     
 
  建設省共同溝鉄蓋・変形東京市型地紋    建設省共同鋼鉄蓋・変形東京市型地紋 
   
  建設省・共同溝鉄蓋・変形東京市型地紋
 シンボルマークマークなしで「東京電力地中電線路」とある。ということは、中身は東電の電線ケールだけか。 
   建設省・共同溝角型鉄蓋
 旧建設省のシンボルマーク入りである。地紋は古典的な菱格子である。 
   
    建設省・共同溝角型鉄蓋・格子模様 
 3枚構成の大型の角型鉄蓋である。これも古典的な地紋である。
    同左1枚の蓋の様子・格子模様
 
   
 国土交通省・共同溝鉄蓋・変形東京市型地紋
旧建設省時代と同様の蓋で、文字だけを変えている。
 
       同左中央部分
 やはり、「国土鉤虫症共同溝・東京電力地中電線路」とある。 
   
  国土交通省・共同溝鉄蓋・耐スリップ型
耐スリップ型の鉄蓋(マンホール)は近年のトレンドで、東京都、区の共同溝にも採用されている。中央に国土交通省の小さなマークと「共」の文字が入っている。メーカー自慢のデザインが優先されているということになる。
  国土交通省・共同溝鉄蓋・蜘蛛の巣模様
 「共同こう」とひらがなが混じった表記となっているが、単に鋳出の技術的な事情か?
 国土交通省のシンボルマーク入りである。 
   
   国土交通省・角型共同溝蓋(部分)
 複数枚で構成された大型の蓋である。 
   同左シンボルマーク部分
 シンボルマークがなぜか変な方向を向いている。 
   
   歩道に設置された変圧器 
 電柱が存在しない代わりに、歩道に変圧器等の地上機器を設置する必要がある。これも地下に設置することは技術的には簡単ではないようである。
 落書き用ボードとなっている。 
  旧東京水産大学構内の共同溝鉄蓋
 星形のマークが旧東京水産大学の校章で、現在は東京海洋大学となって校章も変わっている。 
   
  東京都・共同溝鉄蓋・波型模様
 中央に都シンボルマークと管理番号が入っている。
 地紋は東京電力が長きにわたって執着している模様と同じである。  
  東京都・共同溝鉄蓋・変形東京市型地紋
 旧建設省と同じ模様の蓋を採用している。中央に東京都紋入りである。 
   
  東京都・共同鋼鉄蓋・波型模様
中央に都紋と「東京都共同溝」の文字があり、その下にそれより大きな文字で「東京電力」としている。税金で東電のケーブル管路を提供している構造である。 
   東京都・共同溝鉄蓋・鱗模様
 中央に都シンボルマークと C C Box の文字をデザイン化したマークが見られる。東京都の共同溝のマークとなっている。 
   
   東京都・共同溝鉄蓋?
 汎用の安っぽい縞鋼板に蝶番を付けた鉄蓋で、たぶん共同溝と思われる。 
      同左マーク部分  
 都シンボルマークと管理番号だけが刻まれている。
   
  東京都・共同溝角型鉄蓋・亀甲模様(部分) 
 下水道の大型鉄蓋と同一の仕様で、遠目には共同溝には見えない。
  東京都・共同溝角型鉄蓋・菱格子模様
 
蓋上部に見られる星形のマークにGの文字が入ったものは東京ガスの旧社章である。ということは、この共同溝には東京ガスが絡んでいるということか。  
   
  東京都/共同溝大型鉄蓋・○×模様
 これも古典的な地紋で、下水道の蓋でもふつうに見られる。 
  同左1枚の蓋の中央部分の様子
 
   
  東京都・共同溝角型鉄蓋・鱗模様
 東京都のCCBoxマーク付きである。  
  東京都・共同溝角型鉄蓋(3連蓋の部分)
 デザインとしては比較的新しいものかも知れない。
 残念な点は特に細い棒状の植物系のゴミが表面の溝にかかりやすいことである。 
   
  東京都・共同溝・滑り止め強化タイプ    同左部分  
 この微細な下地の模様は、滑り止め仕様の信号機施設用鉄蓋でしばしば見られるものと同じである。
   
   
   東京都・共同溝化粧蓋
 同じく、東京都のCCBoxマーク付きである。 
  港区・共同溝化粧蓋 
   
  港区・共同溝鉄蓋・蜘蛛の巣模様 
 中央に港区の紋章があり、下方にC・C・BOXの表示がある。
   港区・共同溝鉄蓋・凹型亀甲模様 
 共同溝の表示はないが、周囲の環境から判断したもの。
   
  大田区・共同溝鉄蓋・東京市型地紋 
 共同溝の表示はない。
  千代田区・共同強鉄蓋・鱗模様 
 中央に千代田区紋章、下方にCCBOXの表示がある。
   
  港区・角型大型共同溝化粧蓋
 港区の紋章のみで、共同溝の表示は見られない。 
  品川区・角型大型共同溝化粧蓋
 品川区の紋章にCCBOXの表示がある。 
   
   狭い道路での電線地中化の例
 もちろん、共同溝の角型蓋が存在する。本来の電柱はないが、電柱のような鉄柱が比較的狭い間隔で林立していて、先端部に変圧器が取り付けられており、その下には街路灯がある。電線がないのだけが救いである。 
   左の街路の共同溝の中の様子  
 共同溝蓋を開けて作業をしている風景である。ケーブルがごちゃごちゃと収まっていて、写真左上にはケーブルの方形の管路が見える。