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街の鉄蓋
  都会の道路はマンホールの蓋や小蓋だらけだ!
  その13 化粧蓋


 まずは、化粧用鉄蓋(舗装用鉄蓋)とは、鉄蓋に盆状の凹みを設けて、表面にタイルやコンクリートブロック、天然石材などを充填して、周囲の舗装材と同じ又は類似した仕上げが可能な仕様とした鉄蓋のことで、仕上がったものが化粧蓋(化粧鉄蓋)である。
 一般に鋳鉄製の鉄蓋は無粋でダサい模様に覆われていて、色彩も暗黒色で目立ち、歩道の景観を損ないがちであることから、蓋表面に同色系の素材を使用して、できるだけ目立たないように仕上げることが、おしゃれな町の景観形成に貢献している。こうして、歩道上の鉄蓋は小型のものは別にして、やがて古来の鋳鉄の質感むき出しの体裁のものはほとんど姿を消すことになると思われる。 【2021.9】


   化粧蓋は小型のハンドホール蓋を除き、ほとんどの種類のものに存在するため、網羅的に収集する元気はないが、その事例を以下に掲げてみることにする。    
     
     
     
 
   天然石のゴージャスな化粧蓋・下水道合流管マンホール蓋
 帝国ホテル沿いの歩道でみられたもので、色合いに幅のある御影石のピンコロによる石畳の一部に溶け込んでいる。蓋の周辺の石は丸い形態に合わせて配置され、蓋の内側も丸い形態に合わせて個々の石を加工しているという芸の細かさを見せている。蓋ひとつごとに手間をかけ過ぎではないかと心配になるほどである。これにかかるコスト負担のルールはどうなっているのであろうか。 
 
 
   レンガの化粧蓋・下水道雨水管マンホール蓋
 レンガの色合い、素材感はよいが、鉄蓋の縁がじゃまで残念である。目地をきっちり合わせるための加工が施されている。やはり、労力がもったいないと感じざるを得ない。 
 
     
 
  タイル貼りの化粧蓋・旧下水道局マーク 
 歩道のコンクリートブロックは色あせた古いタイプであるため、結果として蓋が目立っている。タイルはいろいろな形態が用意されていることがわかる。
  タイル貼りの化粧蓋・下水道局サクラマーク 
 方形の蓋でも、タイルを加工して貼るのは面倒であることがわかる。本当に気の毒である。
   
  下水道合流管マンホール蓋    天然石・下水道合流管マンホール蓋 
 このケースでは、周囲の御影石の目地に合わせるのではなく、一枚の御影石を丸く加工して貼っている。ところがよく見ると、加工が下手で、石が厚すぎて枠から大きく上にはみ出ている。転倒注意蓋である。
   
 
  天然石・下水道合流管マンホール蓋 
 地域の商店街で見られたもので、気取った地域でなくても石貼りの化粧蓋がふつうに見られた。
  天然石・下水道合流管マンホール蓋
 左と同じ街路で見られたもので、ごく自然な印象で、歩道では鉄剥き出しの蓋は明らかに劣勢である。 
   
 レンガ貼り化粧蓋・下水道汚水管マンホール蓋  
 コジリ穴や鍵穴の存在は、作業を複雑にするから、やはり作業者泣かせとなっていると思われる。
  タイル貼り化粧蓋・下水道汚水枡蓋 
   
 天然石化粧蓋・下水道雨水管マンホール蓋
 この蓋のふちはシンプルでじゃまな印象はない。 
コンクリートブロック化粧蓋・下水道雨水管
マンホール蓋
 
   
 天然石化粧蓋・電気施設ハンドホール蓋
 東京駅の丸の内側でいられたもので、日本の顔を意識したのか御影石の加工が極めて丁寧である。 
  天然石化粧蓋・電気施設ハンドホール蓋
 こちらの蓋の内側の御影石の加工はかなり雑で、もう疲れてしまったのであろう。大雑把に目地を合わせているが、今度は点検者がテキトーに嵌めてずれている。  
   
  タイル貼り化粧蓋・東京ガス    天然石化粧蓋・東京ガスTBマーク 
   
 タイル貼り化粧蓋・東京ガスKマーク 
 目地を合わせる気などはさらさらないという気持ちが伝わってくる。
  タイル貼り化粧蓋・都水道空気弁蓋  
 丸形よりも方形の方がタイルを合わせやすいのは明らかであるが、それでも手間がかかっている。
   
  レンガ貼り化粧蓋・防火水槽蓋 
 これも点検者が周りの目地に合わせることなく嵌めて立ち去った痕跡である。
   タイル貼り化粧蓋・防火水槽蓋
   
 天然石化粧蓋・信号施設蓋(丸警)    天然石化粧蓋・信号施設蓋(K印) 
 
一枚板填め込みである。中心にマークがあるとわざわざ切り抜く手間がかかるから、やはりマークは隅に寄せるべきである。
   
  天然石化粧蓋・NTT 
 鍵穴のために、わざわざ御影石の板に手間をかけて穴を開けるなど、本当にばかばかしいようにも見える。
  タイル貼り化粧蓋・NTT 
 周りのコンクリートブロックの並びに対して、マンホールの都合なのか、蓋が微妙に傾いているが、何とタイルはわずかな傾きに忠実に対応し、丁寧に加工されているのにはビックリである。
   
 コンクリート貼り化粧蓋・日本テレコム
 これも先のものと同様である。こんなものに注意を払う人などほとんどいないから、過剰対応である。
  天然石化粧蓋・KDD
 中心部に少々割れが生じている。歩道上であるが、歪みが生じるのであろうか  
 
     
   以上、化粧蓋の事例を掲げてみたが、特に御影石の仕上げ材は歩行者の靴にとっても馴染みがよく歩きやすいし、耐久性にも富んでいることは間違いない。しかも、グレードの高いエリアのみならず、狭い商店街でも天然石貼りの蓋がふつうに見られるのは結構なことである。

 しかし、ごちゃごちゃした蓋のデザインに合わせて石板やタイル、ブロックを加工するのは大変な手間がかかることは容易に想像できるから、化粧用の鉄蓋の仕様をもう少し見直した方が良いと思われる。