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続々・樹の散歩道
 コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ
 イスノキで見せる姿とは全く別物であることにビックリ!!


 おもしろそうな虫を求めて、たまたまコナラの葉裏をチラリと見たところ、小さな多数の黒点が全面に分布しているのを確認した。大きさは0.5ミリにも満たないもので、扁平で葉に密着していて、動く気配もない。ということは、コナジラミの幼虫の可能性を感じたが、それにしても小さすぎである。あるいは菌類の閉子嚢殻かもしれないし、まずは持ち帰って拡大写真を撮ることにした。その上で調べてみると、コナラの葉裏の黒い点は、イスノキの葉でよく知られた虫えいであるイスノキハタマフシからコナラに移住(二次寄生)したヤノイスアブラムシ Neothoracaphis yanonis有翅虫が産み落とした幼虫が成長した奇妙な極小の無翅成虫≠ナあることが判明した。アブラムシ類を理解するのは大変で、ワンダーランドをちょっとだけのぞき見ても、うなり声を上げるしかない。 【2020.1】 


 図鑑等で学んだことに基づいて、実際に目にした様子を適宜挿入して、変身の過程を追ってみることにする。しかし、手持ちの写真は全く不十分であるため、知り合いの救援を求めつつ、今後見かけた場合は、随時追記することとしたい。  
 
T  イスノキハタマフシ及びその住人のヤノイスアブラムシ  
 
@  一次寄主(冬寄主植物)のイスノキの芽の基部で越冬した卵(越冬卵)が春の新葉展開直前に孵化  
 
A  この幹母幼虫(1世代のみ・無翅型)が新葉に寄生して吸汁を始めると虫えいの形成が開始される。  
     
B  虫えい内で幹母から第2世代の有翅胎生雌虫が繁殖  
 
C  7月上旬に虫えいから有翅胎生雌虫が脱出  
 
 
    イスノキの葉のイスノキハタマフシ(葉表側)
 5月下旬の写真であるが、既にヤノイスアブラムシは脱出済みである。
    イスノキの葉のイスノキハタマフシ(葉裏側)
 左の写真の葉裏の様子で、虫えいが裂開して、空っぽである。脱出時期にはかなり幅があるようである。
   
      イスノキハタマフシの中の様子 1
 9月上旬に虫えいをザックリ切った際の中の様子で、ヤノイスアブラムシの幼虫がひしめいている。 
  イスノキハタマフシ内のヤノイスアブラムシ幼虫 
 翅芽が確認でき、有翅型の幼虫であることがわかる。
   
 
      イスノキハタマフシの中の様子 2
 5月下旬の時点の虫えいの中の様子で、かなり早いが有翅成虫が湧き出てきた。翅は水平に重ねている。 
 
 
     
D  二次寄主(夏寄主植物)のコナラの葉裏に有翅胎生雌虫が移住  
 
E  黄白色の幼虫を産下  
 
F  幼虫はコナジラミの幼虫のように見える黒色の無翅胎生雌虫となって夏を越す  
G  10月初旬から産仔を開始して黄白色の幼虫が増殖  
     
 
      コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ1 
 都内であちこちのコナラの葉裏を見たところ、案外広くみられることが判明した。しかし、イスノキが植栽されていることは極めて少ないことから、不思議なことである。
(10月上旬)
      コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ 2 
 背中の中央に、ロウ質なのか白い筋のあるものが多い。黄白色の虫は、成虫が産下した若い幼虫と思われる。 大きさは0.5ミリ弱である。(9月下旬)
   
    コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ成虫 2 
 背中に白い部分のあるタイプの成虫で、後脚がはっきりわかる。(9月下旬)
  コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ成虫 2 (腹側)
 裏返してみると、写真右側に1対の後脚が確認でき、その他の脚はごちゃついていれわかりにくい。(10月上旬)
   
       産仔中のヤノイスアブラムシ成虫
 産み落とされる寸前の仔虫の様子で、中空に浮いた状態となっている。(横浜市 鈴木さん撮影)
            産仔後の様子
 仔虫は成虫よりわずかに小さい程度であるから、見た限りでは複数産むとは思えない。(横浜市 鈴木さん撮影)
   
   
    コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ幼虫 1 
 よく知られているコナラの葉上で確認できる有翅型のヤノイスアブラムシの幼虫の姿である。体長は1ミリほどに成長している。(12月中旬) 
   コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ幼虫 2 
 黒いバックで撮影した幼虫で、終齢幼虫と思われる。
 (12月中旬)  
 
     
H  幼虫は10月下旬に有翅産性虫となる  
     
 
  コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ幼虫から有翅
  虫が羽化する様子 1
 (横浜市 鈴木さん撮影) 
  コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ幼虫から有翅
  虫が羽化する様子 2
(横浜市 鈴木さん撮影) 
   
  コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ有翅成虫 1    コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ有翅成虫 2 
 
 
     
     
 
             コナラの葉裏のヤノイスアブラムシ有翅成虫 3 
 たぶん、腹には仔虫を抱えているものと思われる。
 
     
I  有翅産性虫となってイスノキに戻る  
     
    以下は、11月下旬にイスノキの葉裏で見られたアブラムシで、1枚の葉裏に1〜2匹がとまっているのがしばしば見られた。
 たぶん、ヤノイスアブラムシの有翅産性虫と思われる。いずれも腹部が随分小さい印象があったことから、既に産仔したのであろう。たぶん、イスノキの葉裏にたどり着くと、さっさと産仔するものと思われる。肝心な胎生の幼虫についてであるが、とりあえずは目に入らなかった。
 
     
 
    イスノキの葉裏のヤノイスアブラムシの
    有翅産性虫 1(背側)
 
    イスノキの葉裏のヤノイスアブラムシの
    有翅産性虫 2(腹側)
 
 
     
 
          イスノキの葉裏のヤノイスアブラムシの有翅産性虫 3(背側) 
 
           イスノキの葉裏のヤノイスアブラムシの有翅産性虫 4(腹側) 
 腹部が極端に小さく(産仔中又は産仔後にぺちゃんこになったのであろう。)いかにもアンバランスである。
 
     
J  イスノキの葉裏に両性世代の雄虫と無翅の産卵雌虫を産下  
     
   12月上旬にイスノキの葉裏を確認すると、成虫とともに多数の胎生の幼虫(仔虫)を確認した。背部の4条の斑点模様はコナラの葉裏で見られる幼虫の場合と同様である。とりあえずは、雄と雌の区別はわからない。   
     
 
 イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの有翅産性虫と幼虫
この写真では、1匹の成虫と2匹の幼虫が見られる。 
   イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの幼虫 1 
 この写真では5匹の幼虫が見られる。
 
     
 
           イスノキの葉裏のヤノイスアブラムシの有翅産性虫 5(腹側) 
 仔虫を産み落としたと思われる有翅産性虫の腹を改めて見てみると、縮んだ蛇腹のような状態となっている。既に役目を終えているから、お迎えが来るのを待っているだけなのであろう。
 
     
   イスノキの葉裏でヤノイスアブラムシの有翅成虫が産仔する現場をぜひとも確認したかったが、実際にはこれが困難であったことから、コナラの葉裏で見られた同有翅成虫を補足し、少々気の毒ながらテープで磔(はりつけ)状態として様子を見たところ、ほどなく5匹の仔虫を産んだ状態を確認することができた。以下の写真のとおりである。   
     
 
                  微小な幼虫を産み落とした有翅産性虫(腹側)
 有翅虫の腹は萎縮していて、既にないに等しい 
 
     
 
               イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの幼虫 2  
 
     
 
   イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの幼虫 3 
 翅芽が見えないから、無翅の産卵雌虫であろうか? 
 体長は0.5ミリほどである。
   イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの幼虫 4  
 左の幼虫より小さな若い幼虫か? 雄虫は何処に?
 
     
 
                イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの幼虫 5
 
すくすくと育って、体長は1ミリほどになっている。体の表面に見られる毛状のものは、透明なガラス管状の形態となっている。余分な体液を蒸散させる役割があるのかは未確認。コナラの葉裏で見られる幼虫と似ているが、こちらは無翅型である。雌雄は不明。
 
                イスノキ葉裏のヤノイスアブラムシの幼虫 6(腹側)
 腹側の様子である。幼虫をひっくり返そうとすると、口針(写真赤矢印)がしっかりと葉に食い込んでいて、簡単ではない。
 
     
K  雌は交尾後に芽の基部に産卵  
     
L  卵で越冬(以下繰り返し)   
     
     
<追記 1>   
     
U  イスノキエダコタマフシ及びその住人のイスノタマフシアブラムシ   
     
   イスノキの虫えいについては種類が多く、ふだんはその一部しか目にすることがなく、ごく一般的な存在であるイスノキハタマフシの印象が特に強い。このため、虫えいから有翅虫が脱出する時期については夏がふつうという思い込みがあったが、イスノキエダコタマフシイスノタマフシアブラムシ Monzenia globuli の場合は、秋に有翅虫が脱出することを最近知った。しかも、このアブラムシは前記のヤノイスアブラムシのように寄主転換はせず、周年イスノキで生活するという。日本原色虫えい図鑑ほかによれば、イスノキエダコタマフシ及びイスノタマフシアブラムシの生態は以下のとおりである。   
     
 11月下旬から12月上旬に両性世代の雌が、イスノキの芽あるいは枝の基部に産卵。卵は暗緑色で、表面が微細な白色棒状のロウ物質で覆われる(卵期は約5カ月)   
     
A  4月末から5月初めに孵化。幹母1齢幼虫は、芽の基部に小さな虫えい原基(径0.3ミリ)を形成   
     
B  6月下旬に虫えい(径約1ミリ)の中で幹母成虫となり、7月初めに産仔を始める   
     
C  第2世代は8月末頃に成虫となり産仔を始める   
     
D  その後、虫えいは急速に肥大して、径11ミリくらいになる。虫えいは緑色で壁は薄くて柔らかい   
     
E  10月下旬に虫えいは裂開して、中から100〜120匹の有翅産性虫が出現   
     
 
   イスノキの芽の部位のイスノキエダコタマフシ
 イスノキでしばしば見られる虫えいで、イスノタマフシアブラムシが中で蠢いている。 (10月下旬)
        裂開したイスノキエダコタマフシ 
 ほとんどのアブラムシは脱出済みであるが、虫えいの外壁に赤褐色と暗褐色の小さなアブラムシが群れていて、1匹の有翅虫もとまっている。有翅虫は別種の印象があることから、これらは別物かもしれない。(11月上旬)
   
      イスノキエダコタマフシの断面
 イスノタマフシアブラムシの大小有翅幼虫と有翅成虫がひしめき合っている。(10月下旬)
       イスノキエダコタマフシの断面
 イスノタマフシアブラムシの有翅成虫のみが見える。通常はこの下に小さな幼虫も見られる。(11月上旬) 
 
     
 
 
 1個のイスノキエダコタマフシを割って取りだしたイスノタマフシアブラムシの有翅産性虫の集団   虫えいを冷凍状態にして割ったものである。そうでもしなければ、翅を持ったアブラムシが室内で拡散してとんでもないことになる。わずかに幼虫が見られる。(11月上旬) 
 
     
 
 
    イスノタマフシアブラムシの有翅産性虫 1      イスノタマフシアブラムシの有翅産性虫 2 
 
     
 
              イスノタマフシアブラムシの有翅型の幼虫など
 虫えい内で見られた幼虫ほかを取り出したものである。有翅型の幼虫としては成熟度により暗赤褐色〜淡橙色〜淡黄緑色のものが見られる。一方、無翅型の黒色の大小のアブラムシも見られる。黒色のものは複数見られることから幹母とも思えず、これが何なのかは未確認である。(11月上旬)  
 
     
 
   イスノタマフシアブラムシの有翅型の幼虫 1     イスノタマフシアブラムシの有翅型の幼虫 2  
   
   
   イスノタマフシアブラムシの有翅型の幼虫 3      イスノタマフシアブラムシの有翅型の幼虫 4  
   
   
  イスノタマフシアブラムシの無翅型の幼虫? 1   イスノタマフシアブラムシの無翅型の幼虫? 2(腹側)
   
  イスノタマフシアブラムシの無翅型の幼虫 3 ?      イスノタマフシアブラムシの幼虫? 4 ? 
 
     
F   有翅産性虫が葉裏に両性世代の無翅のを産下する
 このアブラムシは寄主を転換することなく、周年イスノキで生活し、1年4世代を重ねる
 
 
     
 
  有翅産性虫がイスノキの葉裏に産下した幼虫? 
  (11月上旬)
有翅産性虫がイスノキの葉裏に産下した幼虫? 
   
有翅産性虫がイスノキの葉裏に産下した幼虫? 有翅産性虫がイスノキの葉裏に産下した幼虫?(腹側)
 
     
   形態に違いのある上記2種が、有翅産性虫が産下した無翅の雄と雌なのであろうか? 参考書がなくて、断定できない。   
     
<追記 2: イスノキの謎のアブラムシ>   
     
    謎のアブラムシ その1 (10月上旬)  
 
   イスノキの梢端で見られたアブラムシ A-1
 わずかにイスノキハタマフシの古い虫えいが見られるイスノキの梢端でわずかに見られた有翅型のアブラムシ幼虫である。触角が長く、ヤノイスアブラムシやイスノタマフシアブラムシとは異なっているが、素性は不明である。 
   イスノキの梢端で見られたアブラムシ A-2 
 明らかな角状管尾片が確認できる点も、。前出の2種とは異なっている。
 
     
     
    謎のアブラムシ その2 ( 横浜市 鈴木さん撮影 )  
 
              イスノキエダコタマフシの表面のアブラムシ B-1 (10月下旬)
 裂開前のイスノキエダコタマフシの表面で群れていたというアブラムシである。よく見ると、触角は長く、明確な角状管と尾片を持った姿はイスノキの梢端で見られたアブラムシに似ている。
 虫えいの住人とは異種のアブラムシが、虫えいの外壁から吸汁しているように見える風景であるが、素性は未確認である。
 
     
 
  イスノキエダコタマフシの表面のアブラムシ B-2
 この虫えいでは有翅型の成虫が見られる。
(11月上旬)
  イスノキエダコタマフシの表面のアブラムシ B-3 
 成虫はやはりヤノイスアブラムシやイスノタマフシアブラムシと異なって、翅のたたみ方が異なっている。 
 
     
 謎のアブラムシ その3  
 イスノキの葉裏でヤノイスアブラムシの観察をしていた際に、径1ミリほどのカルデラ状の微少な穴が見られ、顕微鏡で中をのぞき込むと、小さな虫の腹節らしきものが見られた。住人を掻き出すと、暗赤褐色の正体不明のアブラムシが2匹登場した。
 イスノキの葉に開放系の虫えいをつくるアブラムシの一種ということなのであろうか・・・ (12月上旬)
 
 
イスノキの葉裏の微少な虫えいか?  左の虫えいの中のアブラムシ(種名不明)