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樹の散歩道
     正式な名前とは  



 いろいろな地方で樹の名前を聞くと,しばしば「正式な名前は知らないけれども,昔から○○と呼んでいる。」と答えが返ってくることがある。実際のところ,日本全国すべて地方であり,それぞれの地域で呼び慣れた樹の名前があり,地方名とも,方言ともいうが,それらは間違いなくその樹木の名称の一つであり,遠慮することはない。ただ,便宜上共通する認識を持つために標準的と思われる名称を図鑑等で使用しているということである。いわゆる和名であり,標準和名とも呼ばれるものである。したがって,学名のようにルールに従ったものではない。

 英語名でも, common name(一般名) として,複数の名称がズラリと並んでいるのが普通である。

 なかには地方名の方が標準和名よりその樹の特徴を端的に表現しているものもあり,かえって印象に残ってついでに覚えてしまうこともある。
 例えば,ミズキは枝が幹に輪生状につき,その段数で樹齢がわかることが知られているが,この様子から,ダンダン,ダンダンノキの方言が知られており,また,イスノキの別名のヒョンノキは空になった虫コブを吹いたときの音に由来するとか,親しみが持てる。

 学名は,生物名を国際的に確定するために与えられるラテン語表記の名前で,植物は国際植物命名規約 International code of botanical nomenclature,動物は国際動物命名規約 International code of zoological nomenclature に従って命名されることになっている。一般的には, 「属名」+「種小名」で表示する。

 外来の園芸種などでは和名がないために学名をそのままカタカナにして表示することがよくある。特に学名の属名の部分をカタカナ表記して,通常の呼び名にしている例が多く,草本類の園芸品種ではこれらカタカナの洪水状態にある。これらカタカナは和名と違って直感的には意味不明であるため,一度聞いても直ぐ忘れる現象が生じてしまう。

 ただ,学名で都合がいいのは世界共通であるため,より多くの情報がほしい場合にインターネットで簡単に広い検索ができる点である。ウェブ上の翻訳は依然としてイマイチであるため、各国語に堪能であれば最高である。普通は英語と格闘することになるが,多様な情報が怒濤の如く押し寄せる。