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続・樹の散歩道
  家庭内侵略害虫タバコシバンムシ


 台所の白いカウンタートップでごく小さい甲虫がモゾモゾ動いているのに目が留まった。色は暗赤褐色で、大きさは2~3ミリ程度である。調べたところ、世界中で極めて一般的な穀粉・乾燥食品等を食害する「タバコシバンムシ」であることが判明した。漢字で書けば「煙草死番虫」である。
 この
「死番虫」 の名はとんでもなく 戦慄的 である。
 これだけで
ゾクゾク・ワクワク してしまった。
 これは是非とも調べなければならない。 【2018.9】 


 タバコシバンムシ(煙草死番虫)の様子  
 
 まずはタバコシバンムシの様子からである。  
 
 
 
           タバコシバンムシ(背面)
 体長は約2.5ミリ。全体が黄色の微毛で密に覆われる。頭部は大きいが下方を向いていて背面からは見えない。
         タバコシバンムシ(腹面)
 下翅は折りたたみ収納途中の状態にある。歩いても飛んでも動きは遅いが、こうしてひっくり返すと脚をバタバタさせるため、写真撮影は容易でない。 
 
 
   
           タバコシバンムシ(頭部)
 触角は全11節で、基部の第1節がやや大きいほかは、どれもがほぼ同じ大きさの鋸歯状である。
          タバコシバンムシ(頭部)
 触角を収納した状態である。この小さな甲虫の幼虫、成虫が口器でポリエチレン、塩化ビニル、ポリプロピレンに孔を空けるとは驚きである。顔つきは凶悪そうには見えない。
 
 
 タバコシバンムシの個性  
 
 タバコシバンムシは類似のジンサンシバンムシと同様に世界中ではびこっているとされ、恐ろしいほどのたくましさを感じる。  
 
 ・  鞘翅目シバンムシ科ヒメシバンムシ属の甲虫 Lasioderma serricorne で、日本を含む世界共通種。名前は貯蔵葉タバコの大害虫であることに由来するが、食害はタバコに限らない。英語名はCigarette beetle 、中国名は烟草甲(煙草甲)
 ・  成虫は体長2~3mm の卵形で、体色は一様に赤褐色から茶褐色、黄色の短い毛を密生する。翅鞘には明瞭な条線や点刻がなく、触角は各節が同じ鋸歯状である。本種と類似したジンサンシバンムシは明瞭な条線と点刻があり、触角の末端3節が大きい点でタバコシバンムシとは異なる。(生活害虫の事典) 
 ・  頭は前胸の下にしかりとしまい込まれており、本種は脅威を受けると脚を体の下に引っ込めて動かなくなる(注:死んだふりをする。)。タバコシバンムシとヒトとの関わりの歴史は長く、3300年以上前に死亡したエジプト王ツタンカーメンの墓所の中の乾燥した樹脂の内部でも発見されている。(世界甲虫大図鑑) 
 ・  成虫の寿命は蛹室から脱出後10~25日で、この間食物は一切取らず(与えれば水は飲む)、もっぱら生殖活動に費やされる。(家屋害虫事典) 
  :お試しで成虫に小麦粉を与えてみたところ、この記述内容に反して、大喜びで夢中になって食らいついているようにしか見えなかった。この行動が何なのかはよくわからない。 
 ・  中腸内共生細菌消化を補助し、ビタミンやステロールを補給し、毒物への抵抗性を高める。細菌は菌細胞塊と呼ばれる特化した器官に貯蔵されており、雌では卵が卵管を通過する際に表面に付着し、孵化幼虫は卵殻を食べて細菌を体内に取り込む。(世界甲虫大図鑑) 
 ・  食品工場、倉庫、タバコ工場などで発生し、スーパーやコンビニの乾燥食品類からも発生する。一般家庭では台所の乾燥食品類に発生するほか、畳からも発生する。(生活害虫の事典) 
 ・  後腸内共生微生物を持ち、それが生産するビタミンB を利用していて、そのため極めて食性が広く、乾燥した植物・動物質のものであればほとんどのものを食害する。ただし、粒状のものよりは粉状もしくは粉砕されたものを好む。主な加害物は穀類の粉、香辛料、乾燥ペットフード、菓子類、漢方薬、タバコ、鰹節類、干し草、藁などである(生活害虫の事典)
*具体的な被害はすべて幼虫によって引き起こされる。 
 ・  タバコシバンムシは強い穿孔能力をもつ。そのため、食品包装の外部からも穿孔し、内部の食品を加害できる。具体的には、幼虫及び成虫はセロハン、ポリエチレン、塩化ビニル、クラフト紙を穿孔し、成虫はさらにポリプロピレンやアルミ箔も穿孔する。(生活害虫の事典) 
 ・  本種の発生を予防するには、日常的な清掃が効果的である。台所の乾物などから発生した場合には、速やかに発生源となっているものを廃棄し、発生を予防するには乾物をプラスチックやガラスなどの密閉容器に保管するのが効果的である。(生活害虫の事典) 
 各種シバンムシ類の概説、生態,防除に関しては特に「家屋害虫事典」に詳しい。
 
 
 シバンムシ(死番虫)の名前の由来  
 
   シバンムシの名は英語名の deathwatch (dethwatch beetle)の訳語とされている。
 死の時計(死の時計虫)の意であり、死番虫の訳語自体がなぜ?という印象があり、さらに周辺情報を学習すると、いろいろともどかしく感じる点があることが判明した。 
 
 
(1)  訳語としての「死番」について  
 
 直感的には「死番」の語はどうみても日本語ではなく、違和感がある。そこで、まずは英和辞典でdethwatch(beetle)の語を調べてみる。  
 
【研究社新英和大辞典】 
deathwatch 
臨終の看取り;(死者の)通夜(vigil) 
死刑囚の監視人 
(米)(重大発表などのため待機している)記者団 
deathwatch 
1  シバンムシ(シバンムシ科の甲虫の総称;家屋の木材を荒らす;deathwatch beetle ともいう。雄が雌を呼ぶときに木材に頭を打ちつけてだすカチカチという音が死を予報するとの俗説から) 
コナムシ(book louse)  管理者注:チャタテムシ類かも知れない 
 
 
 これを見ると、deathwatch の意味は 死を看取ることや死に立ち会うことを指す場合と、 カチカチと音を出す甲虫を指す場合、及びこれらから派生した意味があることがわかる。の watch は見る(看る)意で、のwatch は時計の意ということになる。

 そこで、「死番」であるが、これはまともな日本語ではないが、印象としてはのイメージでとらえた勝手な造語であろう。

 しかし、海外情報を見ると、甲虫を指す場合の watch は虫の発するカチカチ音、つまり deathwatch は「死の時計」の意に軸足のあることがわかる。
 
 
 
ENCYCLOPEDIA BRITANNICA 
Deathwatch beetle(マダラシバンムシ)は、鞘翅目シバンムシ科のシバンムシ類(anobiid)、穿孔虫で、古い家具や木材に穿孔するときに孔道の壁面に頭や顎を打ちつけてカチカチ音を発する。その音は実際には求愛行動なのであるが、迷信によれば、迫り来る死の前兆と信じられていた。その名前は死の間際の病人立ち会った(on watch)者がしばしば耳にしたことを信じたことに由来する。これらの甲虫は一般に小さく(1-9ミリ、あるいは1/2インチ以下)、円筒形である。邪魔をされると、脚を引っ込めて死んだふりをする。
B Encyclopedia of Life
マダラシバンムシXestobium rufovillosum)、the death watch beetle はシバンムシ科の小さな(4-7ミリ)木材穿孔虫である。この幼虫は広葉樹材に寄生するが、木材に菌類が含まれていることが必要で、そうでなければこの甲虫は食することができない。このため、マダラシバンムシは木材含水率が14%以上の木材中で主としてみられる。森林では、death watch beetle はさまざまな種類の広葉樹で見られる。この甲虫が家に侵入すると、家の構造材(特にオーク)と重い広葉樹材の家具(クリやオーク)で見られる。Death watch beetles はヨーロッパでは一般的で重大な害虫である。北米の東部でも一般的であるが、あまり重大な害虫ではない。この甲虫の幼虫は幼虫室と孔道を丸パン型の糞粒に由来する分離したペレットで満たし、これは本種の寄生の診断に役立つ。孔道と出口の孔の径は約3ミリである。この害虫は7年に至るまで生き、あるいは条件がよければ1年で生活環を完了する。相方(mates)を引きつけるため、成虫は通常、夜間に頭を木に打ちつけてカチカチ音を発する。この不気味な音は迷信的に死の予兆と見なされ、この甲虫には一般名としてdeath watch beetle の名がもたらされた。 
世界甲虫大図鑑(翻訳書) 
マダラシバンムシ Xestobium rufovillosum
・ マダラシバンムシは中型で楕円形をした厚味のある木食性昆虫で、退色は赤褐色から暗褐色または黒色である。長く、淡色または黄色味がかった、髪の毛のような剛毛が全体を覆う。ヨーロッパとアジアの広範囲に分布。
:マダラシバンムシはヨーロッパ、アジア北部、北米に分布するとされる。
マダラシバンムシが死を告げるという迷信は、雌雄ともに木材にとまって(とりわけ夜にむき出しのオーク材の梁の上で)カチカチと不気味な音を立てることに由来する。この儀式は、最初に交尾相手を探す雄がドラミングを行い、静止している雌がそれに応えて音をたてるというものだやがて雄が雌を見つけて交尾に至るが、雌は雄がたてる音を基準に交尾相手を選ぶ。報告によれば、オーク材を使っている19世紀以前の英国の建物はほぼすべてが過去に、あるいは今現在、この甲虫の食害を受けている。
・ 音をたてる際、本種はすべての脚で体をもち上げ、平らな頭頂部を足場である木に向けて、体ごと振り下ろす。
・ Xestobium 属(マダラシバンムシ属)は17種からなり、大部分はヨーロッパ及び北米に生息し、どの種も広葉樹材:書籍での訳語は「硬材」としているが、明らかにhardwood の訳語を誤ったものであろう。)を食害する。
 
 
  :和名が「死番虫」となっていることから、翻訳書でもこれにつられた翻訳となっていると思われる例がみられる。「ビジュアル世界一の昆虫(翻訳書)」では「デスウオッチ・ビートル(死を看取る虫)」としている。  
 
     
   国内の図鑑では deathwatch の詳細の意味合いについては言及がないが、この手の神秘的な雰囲気の漂う事象の博物学的講釈は荒俣 宏が大好きであるから、きっと食い付いているはずとの確信を持って氏の世界大博物図鑑を見ると、案の定これを採り上げていた。  
     
 
D  新装版世界大博物図鑑 蟲類 :荒俣 宏
シバンムシ(死番虫、番死虫 英名 deathwatch beetle
節足動物門昆虫綱鞘翅目シバンムシ科Anobiidae に属する昆虫の総称
Anobium属、Stegobium属、その他
〔名の由来〕:
英名は「死時計虫」、すなわち死の時を告げる虫という意味。家の中でこの虫が時計に似たカチカチという音を響かせると、家族に死人が出るとする俗信にちなむ。
和名シバンムシは英名を訳したもの。そもそもは日本昆虫学の祖である松村松年が著書「日本昆虫学」で、「番死虫」なる名を与えたことに由来する。「人の死をみとる虫」という意味だが、前述のとおり、英名はこの虫のかもしだすカチカチという時計のような音にちなむものなので、「死時計虫」という和名が適当であろう。ただし、デスウォッチという単語が、「臨終をみとる」の意味でひろく使われることも確かである。松年は英語に堪能だったので、おそらくつい慣用の意味を当てはめてしまったのだろう。
★管理者注: 当初の「番死虫」の名について、「番」と「死」がどこでひっくり返って「死番」となったのかは確認できない。
  誤植であろうか?
〔博物誌〕:
西洋では、夜中にカチカチ音をたて、しかも死体に集まる甲虫として有名である。イギリスのランカシャー州では、シバンムシの発する音が特に3回で途絶えたら、病人の死は決定的だと言い習わした(民俗神話伝説事典)。
・日本ではシバンムシを「貧乏虫」とよび、その虫は貧乏神にとり憑かれていると考えた。もっともこの俗信を紹介している小泉八雲は、シバンムシとチャタテムシを混同しているふしがあり、「貧乏虫」というのがチャタテムシの一名だった可能性もある(日本瞥見記)。
 
 
メモ
deathwatch beetle は博物館に収蔵されたミイラに虫食い穴を開けることがしばしばあるという。
(Forensic Taphonomy:The Postmortem Fate of Human Remains)  
 
     
(2)   分類名としての問題点   
     
   シバンムシ(死番虫)の呼称自体には不満があるが、少なくともこの名は成虫がカチカチ音を発することが由来となっていることは間違いないところである。

 英語の death watch (beetle)の名は一般的にはヨーロッパ等に生息してカチカチ音を発するマダラシバンムシXestobium rufovillosum)の common name として理解されている。
 その他のカチカチ音を発する甲虫としては、英語版の Wikipedia では同じ科のAnobium striatum(アノビウム・ストリアツム)、チャタテ科のいくつかのいわゆる booklice(ヒラタチャタテ)、Atropos divinatoriaClothilla pulsatoria が含まれるとしている。

 つまり、マダラシバンムシを含む科のすべての甲虫がカチカチ音を発するものではないことがわかる。ところが、日本ではこの科名 Anobiidae の日本語の分類名を「シバンムシ科」としてしまっている。これに連動して、この科の下位の分類の属名や種名がカチカチ音とは全く縁がなくても、ことごとく○○シバンムシと名づけられることとなってしまっている。

 言い換えると、極めて個性的な習性が英語の一般名に反映した外国の特定の甲虫の名をそのまま頂いて変な訳語とし、よりにもよって日本語の科名、属名、種名にまで適用してしまうという、安易な整理がなされてきた歴史があるということである。

 こうした歪んだ整理に起因して、専門家でも奇妙な記述をしているのがふつうに見られる。(先に資料を引用した際には触れなかったが)例えば、「シバンムシはシバンムシ科に属する昆虫の総称。英名は deathwatch beetle 」としている例(世界大百科事典、日本大百科全書、家屋害虫事典、都市害虫百科、世界大博物図鑑、研究社英和大辞典など)が一般的に見られる。前半は現在の整理の下では仕方がないが、後半のdeathwatch beetle の英名が科全体の種に対して包括的に適用されるものと理解しているのは誤りである。日本国内だけでの珍現象である。

 オックスフォード英語辞典でさえ、この点については具体的で、特定の昆虫を指す場合のdeathwatch の語の説明では

 「時計のカチカチ鳴る音のようなノイズを発する様々な昆虫の一般名。無知で迷信深い人が死の前兆と考えた。特に デスウォッチビートル(the death watch beetle) のマダラシバンムシ(Xestobium rufovillosum)、あるいはコチャタテ(Trogium pulsatorium) 、チャタテムシ目のチャタテムシ類。」
としている。

 「死番虫」の妖しい漢字を目にすると、誰もが何かを期待してしまうことは間違いなく、実に誤解を招きやすく、極めて不適当な整理となっていることが残念である。 
 
     
 
   本家 デスウォッチ・ビートル deathwatch beetle
 和名:マダラシバンムシ
 Xestobium rufovillosum

 マダラシバンムシの和名をもらっているとおり、全体にまだら模様が確認できる。

 (写真は Wikipedia より)         
 
     
  <参考>   
  Anobiidae(シバンムシ科)の昆虫を総称した英語名の例Anobiid beetleAnobiid powderpost beetle
Anobiidae(シバンムシ科)の中国での分類名は 窃蠹科
マダラシバンムシの中国名は 报死虫(報死虫) で、この訳語は死番虫より適正である。
 
     
   マダラシバンムシのカチカチ音   
     
   タバコシバンムシは捕獲して観察したが、マダラシバンムシは身近にはいないため、そのカチカチ音がどんなものなのかは実感できない。そこで、動画検索をしたところ、ユーチューブで Deathwatch Beetle と題し、小さな甲虫が体全体を使って小刻みに頭突きをしてカチカチ音を発している姿を記録した動画を確認することができた。非常にありがたいことである。

 想像していたよりもドラミングのピッチが速いのには驚いた。! 
 
     
  カチカチ音の動画  
     
     
  <参考:その他のシバンムシ類の例>   
 
ジンサンシバンムシ
Stegobium paniceum
 ジンサンとは人参のことであり、高価な乾燥朝鮮人参を食害することにちなむ。また、「薬屋泣かせ」とも呼ばれ、やはり漢方生薬を加害することに対する呼称である(家屋害虫事典)。
 同様の視点で、英語名は drugstore beetle 、中国名は药材甲(薬材甲)である。
 ホストはほとんどすべての乾動・植物質に及ぶ。(家屋害虫事典)
 日本を含む世界共通種でタバコシバンムシに類似するが、翅鞘には明瞭な点刻を備えた条溝がある。この特徴と触角の先端3節が長く大きい点で、タバコシバンムシとは容易に識別できる。(生活害虫の事典)
ケブカシバンムシ
Nicobium hirtum
 木造建築物を加害する代表的な種で、加害樹種も問わない。(家屋害虫事典)
マツザイシバンムシ
Ernobium mollis
 ほとんどすべてのマツ類の樹皮、樹皮下を食害し,しばしば用材も加害する。(家屋害虫事典)
オオナガシバンムシ
Priobium cylindricum
 多様な樹種の床材の被害が確認されている。(家屋害虫事典)
クシヒゲシバンムシ
Ptilineurus marmortus
 本来は食材性の種であるが,経済的な被害とはなっておらず、もっぱら畳表の害虫として知られている。(家屋害虫事典)
フルホンシバンムシGastrallus immarginatus  和紙の書籍、特に糊が多く使われた書籍で被害が多いとされる。(家屋害虫事典) 
 従来、古本の紙に穴を開けるのはシミの仕業とされていたが、実はフルホンシバンムシによるものである。(日本国語事典)
 成虫は食物をとらないので加害しない。(都市害虫百科)
 
     
  【追記 2018.10】 タバコシバンムシの飼育試験  
   冒頭で登場したタバコシバンムシについて、その幼虫と蛹の姿を確認するため、数匹のタバコシバンムシの成虫を捕獲して透明のプラスチックケースに収め、やがて発生するかも知れない幼虫の餌となる小麦粉を与えて様子を見たところ、いつの間にか幼虫がウジャウジャに発生していた。成虫の雌雄を判別する能力はなかったが、結果はオーライである。驚くほどの繁殖力で、無事幼虫と蛹の姿を確認することができた。   
     
 
   
      飼育中のタバコシバンムシの成虫
 成虫は何も食べずに繁殖活動に専念するとされるが、多少は小麦粉を食べてくれたような気がする。しばしば交尾している姿が見られる。 
         タバコシバンムシの幼虫
 全身毛だらけである。頭蓋は前頭部が淡赤褐色。
   
 
         タバコシバンムシの蛹室
 楕円形の蛹室は複数が結合した状態となっていた。蛹室は老熟幼虫がフラス(食べ物のかじりカス)やペレット(虫糞)を唾液で固めたものという。殻状で意外と硬い。 
      タバコシバンムシの蛹室(裏側) 
 左の蛹室の裏側の様子で、プラスチックケースに貼り付いた面の様子である。貼り付いた面を利用しているため、剥がせば中が見える状態となる。まだ幼虫状態である。
   
    蛹室内のタバコシバンムシの蛹の様子          タバコシバンムシの蛹
 毛玉状のものは幼虫から蛹化した際の脱け殻である。
 
     
   麺類の束をターゲットとした場合は、自由奔放に孔を開けて潜行した後に蛹室をつくる。   
     
  【さらなる追記】 タバコシバンムシの飼育試験 その2- 卵と孵化後間もない幼虫の確認   
    先の飼育試験では餌として小麦粉を使用したため、粉に紛れてタバコシバンムシの卵と孵化後間もない時点の幼虫を確認することができなかったため、改めて米粒を餌として飼育してみた。これによって、ついでながらタバコシバンムシの2種類の体位による交尾風景も確認することができた。  
     
 
       タバコシバンムシの交尾 1
 写真中、白い部分は米粒である。しっかり結合している。後背位又はマウンティング、別名バックわんわんスタイルである。英語でもDoggystyle というが、わんこでは射精までこのスタイルで、その後の交尾結合時には右の写真のスタイルとなる。たぶん上に乗っかっているのが雄で、「雄上位型交尾体位」と呼んでいる例がある。
          タバコシバンムシの交尾 2
 「反向型交尾体位」と呼んでいる例がある。交尾の名にふさわしい本来の体位である。人間には困難な体位で、そのせいか、人間の場合には交尾とは呼ばずに、気取って性交と呼ぶが、交合交接交媾の語は幅広く使用されている印象がある。 
 
     
 
         タバコシバンムシの卵 1
 米粒に産みつけられた卵(矢印)の様子である。
       タバコシバンムシの卵 2 
 卵は非常に小さく、0.5ミリにも満たない。
   
       タバコシバンムシの初齢幼虫 1       タバコシバンムシの初齢幼虫 2  
 
     
   最後に、シャーレに平に敷かれた米粒の中で、タバコシバンムシの幼虫がどんな具合に蛹室をつくるのかが気になったため、念のために確認してみた。幼虫は米粒をかじって、フラスやペレットの白い小さな粒を散らかし、これを綴って蛹室をつくる場合と、米粒を空洞状体にしてこれを蛹室としている場合が見られた。いずれに場合も下面はシャーレの底面を使うため、シャーレをひっくり返せば蛹室の中が覗ける状態であった。