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樹の散歩道
 
    レンギョウ5兄弟
       一体何処が違うのか? 
            


 春に鮮やかな黄色の花を豊かに付けるレンギョウ類(モクセイ科レンギョウ属)には兄弟が大勢いて、図鑑を見ればその内の5種が採り上げられていて、読めばなるほどそういうものかと頷くが、直ぐに識別点を忘れてしまう。
 ふつうに見かけるのはシナレンギョウが多く、5種のレンギョウが満遍なく植栽されていることはないため、比較が困難である。しかも、いずれも雌雄異株であると言われているものの、雄花と雌花の形態的な違いに関しても情報がない。
 花のない時期には誰も見向きもしない花木であり、やはり、花の時期に花で識別できるようになりたいものである。 【2009.4】
 


 名称からは、シナレンギョウチョウセンレンギョウは名前のとおりと理解し、一方、ヤマトレンギョウショウドシマレンギョウは当然日本の在来種であろうと理解するとともに、レンギョウも在来種かなと想像すると、そこにはワナがあった。何と、レンギョウも中国原産なのであった。シナレンギョウの名があるのに、あまりにもネーミングの構成がよろしくない。

 できれば5種類のレンギョウ類について、雄株の雄花、雌株の雌花を写真で見られて、なおかつその説明書きがあると非常に有り難いのであるが、こうしたものには出会ったことがない。むしろないのが不思議に思える。特に雄花と雌花の違いに関しては、

①  (レンギョウ属では)雄花は雌しべが小さく、結実しない。(樹に咲く花) 
②  (レンギョウ属では)雄株では雄しべが大きくて雌しべが小さく、雌株では雄しべが小さく、花柱が長くて結実する。(日本の野生植物) 

とした記述に止まっている。あまりにも情報が少ない上に、実際に体感で理解しようにも雌雄の個体を明示して並べて植栽している例などないからお手上げであるが、とりあえずは手近な資料の範囲で整理してみた。
 
     
 レンギョウいろいろ   
     
 レンギョウ Forsythia suspensa  
 
(岡山県林業試験場植栽)   
 
 中国原産。中国名 连翘国内図鑑では雌雄異株
 枝はよく伸びて下垂し、地面につくと発根する。【樹に咲く花】種小名は垂れるの意。
 葉は長さ4~8センチの卵形でふちには鋸歯がある。【日本の樹木】
 若枝の葉はしばしば3出状に分裂する。【樹に咲く花】
 花冠裂片は倒卵状楕円形で円頭、幅7~10mm。【日本の野生植物】
 (葉の展開前に開花する。)
 山渓の「樹に咲く花」には雌花とする写真が掲載されている。
 花柱が雄しべより長い。【「日本の樹木」ほか】
 髄は節を除いて中空。
 原産国の中国植物誌では雌雄異株としていない。(後述) 
   
 
 シナレンギョウ Forsythia viridissima  
 
 中国原産。中国名 金钟花迎春柳迎春条など。国内図鑑では雌雄異株
 葉は長さ6~10センチの長楕円形上半部に鋸歯がある。幅はなかばよりやや上が最も広い。【日本の樹木】 (全縁の葉もある。)
 花は下向きに咲き、花冠裂片はレンギョウより細く、長楕円形で幅約5mm。【日本の野生植物】
 (葉の展開と同時に開花する。)
 花柱が雄しべより長い。【「日本の樹木」ほか】
 山渓の「樹に咲く花」には雌花とする写真が掲載されている。
 髄は薄い隔膜が階段状につく(チョウセンレンギョウと同様)が、節はつまらない。【日本の樹木】
 観察したものの中には細い茎には膜があっても、少し太い茎が中空のものが見られた。
 原産国の中国植物誌では雌雄異株としていない。(後述)
 枝が無節操に長くのびずに直立し、管理しやすいため、レンギョウ類では最も多く植えられているという。 
   
 
 チョウセンレンギョウ Forsythia viridissima var. koreana  
 
 朝鮮半島原産。国内図鑑では雌雄異株
 枝が弓なりに長くのびる。【樹に咲く花】
 葉は長さ5~10センチの卵形~卵状披針形で、上半部に鋭い鋸歯がある。下半部の幅が広い。【日本の樹木】
 シナレンギョウより葉の幅が広く、鋸歯が鋭くて多い。【樹に咲く花】
 雄しべが花柱より長い。【「日本の樹木」ほか】
 (葉の展開前に開花する。)
 雌花の方が裂片の幅がやや広い。【日本の樹木】
 山渓の「樹に咲く花」には雄花とする写真が掲載されている。
 節は詰まり、髄は薄い隔膜が階段状につく。【日本の樹木】
   
 
 ヤマトレンギョウ Forsythia japonica  
   (茎縦断面は未撮影)

 チョウセンレンギョウのような隔壁があるとされる。
 (関西育種場植栽)  
 
 日本特産で本州(中国地方)に分布。図鑑では雌雄異株
 岩場に生え、細い枝を長く伸ばす。【樹に咲く花】
 葉は長さ7~12センチの卵形又は広卵形で縁に鋸歯がある。【日本の樹木】
 花冠裂片は狭楕円形(丸みがある)で長さ12mm、幅5~6mm。【日本の野生植物】
 (葉の展開と同時に開花する。)
 花柱が雄しべより長い。【日本の樹木】
山渓の「樹に咲く花」には雌花とする写真が掲載されている。
 節は詰まり、髄は薄い隔膜が階段状につく。(チョウセンレンギョウ型と同じ。)【日本の樹木】
   
 
 ショウドシマレンギョウ Forsythia togashii  
 
  (関西育種場植栽)  
 
 日本特産で四国(小豆島)に分布。図鑑では雌雄異株
 葉は長さ4~8センチの卵型~長楕円状披針形で、ほぼ全縁。【日本の樹木】
 花は若葉が伸びた後に(又は同時に)開く。花弁は少し緑色を帯びた黄色。(花の色は黄色みが薄い。)
 (葉の展開と同時に開花する。)
 雄しべは花柱より長いチョウセンレンギョウ型(日本の樹木)
 (注)写真の個体ではなぜか花柱が雄しべより長い。
 山渓の「樹に咲く花」には雌花とする写真が掲載されている。
 髄は薄い隔膜が階段状につくが、節はつまらない。(シナレンギョウと同じ。)【日本の樹木】
 かつての分類ではヤマトレンギョウに含めていた模様。
   
 
 以上のとおりであるが、ダイジェスト版とすれば以下のとおりとなる。  
 
レンギョウ 雌しべが突き出る。
花びらの先が丸く、髄が中空。
中国レンギョウは雌しべが長い。
シナレンギョウ 雌しべが突き出る。
チョウセンレンギョウ 雄しべが突き出る。
ヤマトレンギョウ
ショウドシマレンギョウ
これらはいずれも花付きがよいものではないため花木として植栽されることはほとんどないため、覚えても無駄である。
 
 
  <参考: 髄の膜に関する表現例>  
  髄に薄い隔膜が階段状にある場合の表現は、次のようにいろいろで、苦労が見られる。英語なら、Chambered pith で済んでいるようである。   
   髄ははしご状(平凡社日本の野生植物:ヤマトレンギョウ、シナレンギョウ)   
   髄はひだ状で白色から淡褐色(平凡社日本の野生植物:サルナシ) 
   髄はひだ状(原色日本樹木図鑑:ミヤママタタビ)
 
   髄は薄板状(保育社原色日本植物図鑑:ヤマトレンギョウ、シナレンギョウ) 
   枝の髄は薄板状(保育社原色日本樹木図鑑:ヤマトレンギョウ)  
 
   髄は褐色で横に隙間がある(保育社原色日本植物図鑑:サルナシ)   
   枝の髄は梯子状に中穴がある。(保育社原色日本植物図鑑:クルミ属)   
   枝の髄はやや淡褐色で充実することなく竹節状に断続している。(保育社色日本樹木図鑑:ミヤママタタビ)  
   枝の縦断面の髄には横板がある。(北隆館原色樹木大図鑑:ヤマトレンギョウ、シナレンギョウ)  
   髄は階段状のすきまがある。小枝の髄は薄板を重ねた形。(保育社検索入門 樹木:サルナシ)   
   枝を縦に切ると薄い板を並べたような髄が見える。(保育社検索入門 樹木:ミミズバイ)   
   有室髄ゆうしつずい Chambered pith )=髄がたくさんの空室に分割されたものをいう。
  オニグルミ、サワグルミ、ハリギリ、サルナシ、チョウセンレンギョウなどがこの髄を持つ。
  (共立出版 落葉広葉樹図譜) 
 
     
   レンギョウ属樹種は本当に雌雄異株なのか 【2015.10 追記】  
     
   中国原産のレンギョウシナレンギョウについて念のために中国植物誌で見てみると、前項で記したように、何れも雌雄異株とした説明は見られず、雄しべと雌しべのサイズが異なる2種類の花(について、具体的なサイズが淡々と記述されている。つまり、雌雄異株とは見なしていないということである。 
 そこで、中国植物誌のレンギョウ属の説明を見ると、何と本属の花は(雌雄異株ではなく)明確に「両性」であるとしているのである。 何としたことか!!

 本家中国の植物に関しては、国内の図鑑だけを見ていたら危ないということをしみじみ痛感した。
 
     
   (中国植物誌より)  
 
レンギョウ(連翹)
中国名:连翘(連翹)
花1 雄しべ長 3-5ミリ、雌しべ長 5-7ミリ 
花2 雄しべ長 6-7ミリ、雌しべ長 3ミリ 
シナレンギョウ(支那連翹)
中国名:金钟花(金鍾花)、迎春柳、迎春条
花1 雄しべ長 3.5-5ミリ、雌しべ長 5.5-7ミリ 
花2 雄しべ長 6-7ミリ、雌しべ長 約3ミリ 
 
  <参考> 
 中国植物誌によれば、中国にはレンギョウ属樹種が最も多い7種1変種分布し、花は両性で、果実は薬用となり、解熱解毒、しこりをほぐし、消腫の薬効があり、中国では常用の中薬となっているとしている。
 
     
   つまり、レンギョウ、シナレンギョウのいずれも、雄しべの方が長いタイプと雌しべの方が長いタイプの両方があるということになる。日本の図鑑における一般的な整理とは異なっている。   
     
   そこで、安易なWEB検索をしてみると、中国の図鑑の記述と一致する情報が日本植物生理学会の「みんなのひろば (2014.4.17)」に掲載されているのを確認した。関係部分は以下のとおりである。   
     
 
 レンギョウの仲間ではどの種にも、雄しべが長くて雌しべが短い花と、雄しべが短くて雌しべが長い花が咲きます。それぞれのタイプの花を雄花、雌花と書いている図鑑もたくさんあります。しかし、この雄花にも子房を持つ雌しべがありますし、雌花の雄しべにも花粉ができます。このことから、これらは厳密な雄花、雌花ではなく、どちらも雌雄両方の性質を持つ花(両性花)と見るべきでしょう(雄しべが長い花と雌しべが長い花の2タイプがある)。このような花を異型花と呼び、雄しべが長い花(雌しべが短い花)を短花柱花雌しべが長い花を長花柱花と呼びます。 
 
     
   ということで、国内の図鑑に基づいて花に関する記述内容を整理してもたいした意味がないような展開となってしまった。ただし、国内の図鑑での記述は、国内での存在比率の高いタイプが反映したものである可能性もある。あるいは、単に長きにわたって園芸業者が接ぎ木増殖してきたものの偏りが反映しているにすぎないのかも知れない。

 以上のことを踏まえ、改めて不分明な点を整理すると、それぞれの樹種に関して、短花柱花長花柱花をつける個体の実態上の構成比率がどうなのか、また外来種(レンギョウ、シナレンギョウ、チョウセンレンギョウ)について、原産国の自生地では短花柱花と長花柱花の構成比率はどうなのか、さらに、2種の花の結実率がどうなのか等が明らかになっていない。案外、基本的なことが長きにわたって情報が整理されていないようである。

 なお、レンギョウ類の結実性に関しては、長花柱花と短花柱花の一方だけでは結実が難しいとする情報があるほか、たまたま両方が植栽されている園地で果実をつけているのを目撃したという証言を耳にした。