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続々・樹の散歩道
  オキナワスズメウリの個性


 ある知り合いからオキナワスズメウリの種子をもらったことから、室内の植木鉢で実生栽培をしてみることにした。白い縞のある赤い果実がかわいらしく、観賞用として人気がある。グリーンカーテンにも利用されているというつる草であるから、よく伸びて、室内では取り扱いが難儀で、仕方なく、窓に複数の吸盤を貼り付けて、ひもで吊り上げて支えることにした。 【2020.8】 


1  オキナワスズメウリのあらまし  
 
 ウリ科オキナワスズメウリ属の1年生の攀援(はんえん→よじ登り)草本(つる草)Diplocyclos palmatus で、高さは6メートルほどにも達する。
 葉は5~7(~9)浅裂~深裂し、表面は微細な突起がありざらつく。
 雌雄異花同株で、花冠は鐘形で5深裂、雄花の雄しべは3個で離生。雌花には3個の仮雄しべがつき、花柱は先端で太くなり3裂、柱頭2裂。
 果実は球形で直径2~3センチ、ほとんど無柄、3室。はじめは緑色であるが次第に赤くなり、白の縦縞が認められる。開裂しない。種子は褐色で長さ6~7ミリ、両面に突起があり、突起部分の厚さは1~2ミリに達する。辺縁に隆起した環帯がある。長さ5ミリ、幅3ミリ、厚さ3.5~4ミリ。
 吐噶喇列島(とかられっとう)以南、及び台湾・南中国・ネパール・インド・マレーシア・フィリピン・スリランカ・タイ・ベトナム・オーストラリア・熱帯アフリカに分布。(日本の野生植物、中国植物誌ほかより)
 
 
 実生栽培したオキナワスズメウリの様子  
 
 室内の小さな植木鉢で栽培したのであるが、1年目には花をつけずに冬越しし、2年目に開花・結実した。  
     
 
    オキナワスズメウリの芽生え 1
 芽生えに際しては2枚の子葉を展開する。
     オキナワスズメウリの芽生え 2 
 最初に見せる本葉は3裂していた。
   
    オキナワスズメウリの葉の様子
 葉は5~9深浅裂し、葉表はざらつく。 
    オキナワスズメウリの巻きひげの様子 
 巻きひげは2分岐する。
   
    オキナワスズメウリの葉表の様子 1
 濃緑色の腺点が多数散在していて、特に葉の基部付近での密度が高い。
    オキナワスズメウリの葉表の様子 2 
 葉脈状には短い毛が見られ、葉面全体にも散在している。さらに、葉面全体に先の尖った低い突起が多数あって、ザラザラ感の原因になっている。
   
    オキナワスズメウリの腺点(葉表) 1 
 腺点は丸みのあるのっぺりしたただの突起である。右側にあるのは短い毛で、下方にあるのは尖った突起である。
    オキナワスズメウリの腺点(葉表) 2 
 他の植物でもそうであるが、腺点の機能はよくわかっていないようである。  
   
  オキナワスズメウリの腺点の蜜滴(葉裏側) 
 腺点の裏側では写真のように、蜜滴がたまっているのがふつうであった。
    オキナワスズメウリの腺点(葉裏側) 
 蜜滴を取り除いた腺点の裏側の様子で、凹んだ中心に突起が見られる。
   
      オキナワスズメウリの雄花
 3個の雄しべは離生し、花被筒に着生。花糸は短く、花葯は卵形で葯室は曲折。退化雌しべは見られない。
      オキナワスズメウリの雌花 
 写真では分かりにくいが、退化雄しべは3個、花柱は細く、上部は3裂、柱頭は大きく2深裂。  
   
   オキナワスズメウリの雌花のつぼみと花後
 雄花と雌花は小さいため遠目には区別しにくいが、雌花は子房がぷっくり膨らんでいるので区別しやすい。
   オキナワスズメウリの雌花(左)と雄花(右)
 雌花は雄花よりやや小さいことが知られている。
 
 
 オキナワスズメウリの若い果実 オキナワスズメウリの成熟果実 1  オキナワスズメウリの成熟果実 2 
 
 
   
    オキナワスズメウリの成熟果実 3 
 果実はこの鮮やかな色彩と愛らしい姿から、沖縄おもちゃウリの名があり、英語でも Lollipop Climber (ロリポップ・クライマー)の名もある。丸いペロペロキャンディをイメージしたよじ登り植物の意である。
  オキナワスズメウリの成熟果実 4 (横断面)
 果実は3室で、成熟果実ではぶよぶよの多十質の袋状態で、確認した果実では各室には3~4個の種子が見られ、全体では9~11個の種子が入っていた。
   
   
      オキナワスズメウリの種子 1 
 果実から取り出した直後の種子で、淡褐色の薄い膜に覆われていた。両面に丸く大きく張り出していて、辺縁部を厚い環帯が取り巻いている。何とも個性的な形態である。
      オキナワスズメウリの種子 2
  薄膜を取り除いた状態で、表面がざらついていて、途端に美しくない質感となってしまう。
   
 
               オキナワスズメウリの種子 3
 
奇妙な形の種子が見られた。環帯が2つあるから、2個の種子が癒合した状態にあるようである。環帯に沿って種子を割ると、それぞれの種子に胚がふつうに収まっているのを確認した。
   
 奇妙な形態の種子内の胚の様子を見極めるために、種子の環帯中央の溝に沿って割って見ると、以外や薄っぺらな胚が姿を見せた。胚は無胚乳で、2個の子葉が主要部分である。 

 丸い出っ張り部分は胚の形態が反映しているものと予想したのであるが、全く関係がないのは驚きであった。

 そうなると、そもそも、この個性的な種皮の形態にどんな必然性があるのか、さっぱりわからない。人の理解を超えた世界である。
    オキナワスズメウリの種子断面と胚   
 
     
 3 オキナワスズメウリの雑情報   
     
(1)  オキナワスズメウリの毒性   
     
   日本国内での分布が限られていたせいか、よろず情報が少ない中で、例えば「朝日百科植物の世界」に「中国名は毒瓜で、果実や根に有毒成分を含んでいるが、インドなどでは若芽を食用にすることもあるという。」とした記述が見られるが、「日本の野生植物」には毒性に関する知見が不十分と見なしているのか、特に触れていない。こうして国内の図鑑・書籍情報は極めて貧困であるため、同様に分布のある中国の「中国植物誌」を見ると、中国名は「毒瓜(海南植物誌)」又は「花瓜(広東)」で、「果実と根に劇毒がある。」としていて、毒性のあることの認識がちゃんと名前に反映している。さらに、百度百科では「毒性成分は苦味素(?)及び皂甙(サポニン Saponin)である。」としている。ここで、「苦味素」の日本語名は未確認であるが、苦味成分であることは間違いない。

 なお、ウリ科等の食用として栽培される野菜では時に中毒症状を引き起こす原因物質として、ステロイドの一種の苦味物質である「ククルビタシン類」の存在が知られていて、何らかの原因でこの成分が多いものに起因した中毒症状例を厚生労働省が紹介している。しかしながら、オキナワスズメウリに関して、ククルビタシンの含有量やこれを人が食したときの食味、中毒症状、致死量等に関する詳細な国内情報は目にしていない。

 そこで英語・中国語サイトを検索すると、おおよそ以下のようなよろず寄せ集め的雑情報を目にした。  
 
     
 
 オキナワスズメウリの乾燥葉はケニアで子牛や雌羊の死をもたらした。(Pl@ntUse) 
 子供が約15個の熟したオキナワスズメウリの果実を食べた後に頭痛、嘔吐、下痢、けいれんを引き起こし、15時間以内に死亡。豚が少量の果実を食べ、呼吸困難、ひきつけを起こし、最終的には死亡。(中国植物物种信息数据库) 
管理者注:子供が苦い果実を10個以上も食べることなど考えにくいから、少々怪しさを感じる。
 
     
(2)  オキナワスズメウリの利用   
     
   世界各地に広く分布していることから、真偽不明な多数の情報を目にすることができるが、少しだけ以下に掲げてみる。
 有毒植物は同時に薬効があって、地域で使用されている例が多いが、オキナワスズメウリについても有毒であるにもかかわらず、やはり薬用、食用としての興味深い利用例を目にできる。 
 
     
 
 オキナワスズメウリの果実と根は解毒消腫に効果がある。(頭条百科・百度百科) 
 オキナワスズメウリの葉はケニアや東南アジアでは野菜として食べられている。東南アジアでは若い果実と芽も時々食べられている。ケニアでは根がアンチベニン(antivenin 抗蛇毒素 )として、果実と葉が腹痛を治すのに使われる。タイでは茎が去痰薬として、果実が緩下剤(下剤)として使われ、ネパールでは種子が解熱剤として使われる。(Pl@ntUse)