トップページへ  樹の散歩道目次へ   続・樹の散歩道目次へ
続・樹の散歩道
  ビルの谷間の謎の樹木


 近年、都内の新しいビルの公開緑地のおしゃれ度が高まってきていて、従来のワンパターンの緑化木だけでなく、しばしば意外なものが植栽されていて、〝植生調査〟も楽しむことができる。先般、ある公開緑地を散歩していたところ、見慣れない高木を目にした。グランドカバー的に植栽される低木や草本類はふつうに外来の品種が多用されているのを見かけるが、高木となると植物園でもない限りは全く心当たりのない樹種に遭遇することはほとんどないはずである。仮に奇妙な外来種が植栽されていたら同定が容易ではないが、これもまた楽しみである。 【2018.7】 


 謎の植栽木の各部の特徴とその素性  
 
 花の時期ではなかったが、その特徴等は以下のとおりであった。  
 
 ・  樹名板はなし。 
 ・  樹高は7メートルほどで、胸高周囲長85センチ(=胸高直径は27センチ)。樹皮は縦に浅く割れている。 
 ・  葉は互生で3小葉をつけ、小葉は広披針形で、葉柄には1~2個の刺があることが多い。枝にも刺が見られる。 
 ・  新枝は1センチ前後の太さがあるものの、草のように柔らかく、発泡スチロール様の太い髄がほとんどを占めている。 
 
 
 細部はともかくとして、樹木で3小葉となればかなり絞り込まれる。そこで検索の結果、アメリカデイゴの細葉タイプであることが判明した。実は今まで目にしたアメリカデイゴは小葉が丸葉(広卵形)のものばかりであったことから、直感的にはさっぱりわからなかった次第である。少々悩んだお陰で、アメリカデイゴの葉柄に1~2個の刺があることが多いことや新枝が極めて軟弱であることを初めて認識した。未知の樹木との遭遇ではなかったことから、やや拍子抜けではあったが、この機会に細い葉と丸い葉のアメリカデイゴの情報を探索するとともに、従前から少々気になっていた本種の名前の由来を念のために確認してみることにした。  
     
<遭遇した細葉のアメリカデイゴの様子>  
 南アメリカ原産のマメ科デイゴ属の落葉低木
 アメリカデイゴはアルゼンチン、ウルグアイの国の花とされている。
 目にする丸葉のアメリカデイゴは樹が縦に深く割れてゴツゴツして、樹形がずんぐりしているのに対して、目にした細葉のアメリカデイゴでは樹皮の割れが浅い印象で、樹形もすらりと高く伸びていた。これが細葉の場合の通性なのかについては確認できていない。
 
 
   
        細葉のアメリカデイゴの樹形
 一般に見かける丸葉のアメリカデイゴは、どれもずんぐりした樹形であるが、こちらは非常にスリムな印象である。単に剪定によるものとは考えにくい。 
        細葉のアメリカデイゴの樹皮 
 丸葉のアメリカデイゴのようなゴツゴツ感がない。
   
    細葉のアメリカデイゴの葉(3小葉)の様子       細葉のアメリカデイゴの葉柄の刺 
 
 
      葉柄基部の托葉      小葉基部の蜜腺体     若い枝の断面(髄の様子)
 
 
 
 開花を待ったところ、アメリカデイゴ風の花を咲かせた。バックは某マンションである。

 移植後まだ間もないせいか、花の付きはきわめて貧相であった。

 先に触れたとおり、よく目にする丸葉タイプのアメリカデイゴの樹形と少々異なっていることに加えて、樹皮もあまりゴツゴツしていない点は、この手のアメリカデイゴの通性なのかは確認できていない。 
         細葉のアメリカデイゴの開花時の様子  
 
     
 一般に見かける丸葉タイプのアメリカデイゴの様子  
 
   品川区民公園の丸葉のアメリカデイゴの様子 1
 屈曲した樹幹、枝の様子はお馴染みである。北面は花が少ない。南アメリカ原産のマメ科デイゴ属の落葉低木。
Erythrina crista-galli
  品川区民公園の丸葉のアメリカデイゴの様子 2
 陽の当たる南面は一変して真っ赤な花をタップリ付けている。アルゼンチン、ウルグアイの国の花とされている。 
   
     丸葉のアメリカデイゴの葉(3小葉)の様子       丸葉のアメリカデイゴの深く割れた樹皮 
   
       アメリカデイゴの総状花序の様子
 花はマメ科で広く見られる蝶形花であるが、少々様子が異なっていて、旗弁が下向きとなっている。このことについて、小花柄が180度ねじれたもの(植物の世界)とされる。
         アメリカデイゴの花の構造 1
 翼弁は小さく、萼からわずかに出ている程度であるため、旗弁に隠れてよく見えない。
   
        アメリカデイゴの花の構造 2
 萼と旗弁の手前側を欠き取った状態で、小さな翼弁の様子がやっとわかる。翼弁の大きさには幅が見られた。 
        アメリカデイゴの花の構造 3
 さらに、手前側の翼弁と竜骨弁を除いた状態で、雄しべの全体の様子が確認できる。 
 
 
 
                     アメリカデイゴの雄しべと雌しべの様子
 雄しべは9本が合着し、1本が離生した2体雄しべで、雌しべは1個。(上の写真では、各部位を確認しやすいように、雌しべと1本の離生雄しべを下方に引き下ろした状態としている。)  
 
 
                     アメリカデイゴの合着した9本の雄しべ
 
 
                  花柱が白い綿毛におおわれたアメリカデイゴの雌しべ
 花柱は有毛で、頂端に小型で頭状の柱頭がある(日本の野生植物)と表現されている。
 
     
 
 アメリカデイゴの花の旗弁が下向きとなっていることが、特定の花粉媒介者に対応した構造と思われるが、調べてみると、本来の花粉媒介者はスズメ目のとまる鳥やハチドリであるらしい。

 ということは、小さな鳥が旗弁にしがみつくか、あるいはハチドリがホバリングして蜜をなめるためにくちばしを花に突っ込めば花粉が頭につくというシナリオと思われる。

 国内では積極的に花粉媒介する者がいないためか、ほとんどの花は次々と落下し、結実した姿を見ることは少ないが、そこそこ結実する事例はある模様である。国内で誰が花粉媒介しているのかはわからないが、何らかの昆虫が関わってるのかも知れない。また、個人的な関心であるが、例えばメジロに豊かな蜜の存在を教えてあげれば、早速送受粉に貢献するかもしれない。
    アメリカデイゴ花の奥の
    豊かな蜜の様子
 
     
 アメリカデイゴに関して確認したい点  
 
 アメリカデイゴに関して確認したい点は以下のとおりである。  
 
 一般的な図鑑では、アメリカデイゴの小葉が細いタイプと丸いタイプをどのように整理しているのか 
 デイゴ(梯悟、梯姑)の名前の音と漢字表記の由来は 
 別名の奇妙な「カイコウズ(海紅豆)」の名前の由来は 
 
 
(1)  アメリカデイゴの小葉の違いについて  
 
   そもそも、一般に植栽されているアメリカデイゴは、目にした範囲ではほとんどが小葉が卵形のものばかりである。果たして、原産国ではどうなのかという疑問も生じるが、とりあえずは国内の複数の図鑑をみてみると、概略次のとおりであった。   
   
    図鑑におけるアメリカデイゴの和名及び葉形に関する記述例  
 
図鑑 小葉の形状に関する記述内容
樹に咲く花 (★葉の形状に幅のある記述となっていない。写真は細葉タイプを掲載。)
別名カイコウズ。小葉は長さ8~15センチの卵状長楕円形で、裏面は白色を帯びる。
植物の世界 (★葉の形状に幅のある記述となっていない。)
小葉は卵状長楕円形で、ホソバデイコとも呼ばれる。
樹木大図説 (★葉の形状に幅のある記述となっていない。図は丸葉タイプを掲載)
カイコウズとよぶのは誤り。小葉は卵状楕円形
日本の野生植物 筆頭和名はカイコウズ。別名アメリカデイコ。小葉は卵形から卵状長楕円形
新牧野日本植物図鑑 別名カイコウズ。小葉は卵状広楕円形から楕円状披針形、先は鋭形、基部は円形。
園芸植物大事典 別名ホソバデイコ。頂小葉は披針形~広披針形であるが、個体変異がかなり著しい。園芸品種にマルバデイコ(‘Maruba-Deiko’)がある。これは葉が卵形となったものを栄養繁殖したものである。
〔参考〕中国植物誌 小葉は長卵形または披針状長楕円形
 
     
   上表で整理したとおり、アメリカデイゴの小葉の形状に関して、各図鑑で必ずしも変異の幅があるとはしていないが、複数の図鑑で幅があることを明示しており、特に園芸植物大事典では「個体変異がかなり著しい。」と具体的に記述している。
 要は、アメリカデイゴでは小葉が丸いものから細いものまで、連続的な変異がふつうに存在するということであろう。

 そこで気になるのが、「マルバデイゴ」の名の栽培品種(園芸品種)が存在するとされていることである。学名としては、Erythrina crysta-galli L. cv. Maruba Deiko H. Murata 又は Erythrina crista-galli‘Maruba-Deiko’の名を目にする。命名の経緯はわからないが、明らかに日本人が命名したようである。しかし、国際的には全く認知されていないようである。そもそも、自生種で葉の形状に大きな変異が存在するのであれば、変異に連続性があったとしても葉の丸いタイプを勝手に変種として位置付ける立場の者がいるかも知れないが、わざわざ栽培品種として命名することなど考えられないし、仮の話が品種登録にも全く耐えないと思われる。

 ということで、マルバデイゴの名の個体は、仮に無性繁殖したものがあったとしても差別化が可能な特性は有していないと思われ、単一の系統のものとは考えられない。

 一方、アメリカデイゴの別名として「ホソバデイゴ」の名があるとしている例(植物の世界、園芸植物大事典)がみられる。これはデイゴの葉が(菱状)卵円形であるのに対して、たぶん細葉のアメリカデイゴを念頭においた、あまり適正でない呼称の例と思われる。この呼称は混乱を招くだけであるから、使用すべきではないと思われる。

 ところで、アメリカデイゴでは細葉タイプと丸葉タイプのどちらが原種なのか、あるいはどちらの自然分布が多いのであろうか。残念ながら有用な情報は得られない。先のマルバデイゴを栽培種ととらえる一部の見解は、細葉タイプを基本種と信じた立場であるが、真実はわからない。アメリカデイゴの学名で世界の画像を検索すると、やはり葉のかたちは細葉タイプと丸葉タイプがふつうに存在することだけは認識できる。

 なお、流通の世界でどうしても小葉のかたちによって区別して呼ぶ必要があるのなら、便宜上の流通名として「マルバアメリカデイゴ」「ホソバアメリカデイゴ」と勝手に呼ぶのは特に害はないと思われる。  
 
 
注:  真正のマルバデイゴであると言い張る個体があったとしても特に関心はないが、鹿児島大学農学部の指宿植物試験場にマルバデイコ Erythrina crista-galli L.‘Maruba-Deiko’ が植物遺伝資源として保存植栽されている模様である。場所柄、真正のマルバデイゴであるといわれる個体を無性繁殖したものと思われる。 
 
     
(2)  デイゴ(梯悟、梯姑、梯沽)の名前の由来   
     
   アメリカデイゴ Erythrina crista-galli の和名はその名のとおり南アメリカ原産で、アメリカのデイゴの意味である。一方、デイゴ Erythrina variegata は東アフリカから印度、東南アジア、太平洋諸島、ニューギニア島原産とされ、日本では移入されている沖縄等へ行かなければ見られない。デイゴは沖縄の県花に選定されている。

 和名デイゴ(デイコ)は漢字表記で梯悟、梯姑などを目にするが、音も漢字もさっぱり具体的なイメージがわかないのは理由がある。音は琉球の方言に由来し、追ってテキトーな漢字が充てられたことによる。

 この経緯については樹木大図説が、呉 継志「質問本草附録」の該当分を訓読文で引用している。 
 
     
 
「質問本草附録」(呉 継志)訓読文(抄)

梯沽(琉球土名デーグ)
「・・・梯沽は本と土名音ありて字なし、徐葆光、周煌俱に書して梯沽と日ふ、蓋し方音を取る也、今之を用ふ・・・」 
 
     
   本書の訳注書が存在し、該当箇所の訳注は以下のとおりである。   
     
 
「訳注 質問本草」(原田禹雄、2002.7.25、榕樹書林)(抄)

「・・・梯沽もとは方言名で、音はあっても字はなかった。徐葆光と周煌は、ともに梯沽と書いた。方言名を採用したのであろう。現在これを用いている。」 


〔本書解説・注〕
 ・  〔解説抄〕質問本草は天保8年(1837)に刊行された9巻5冊の書で、薩摩藩の意思に沿った取組の中で、呉 継志が渡清する琉球の人々に託して、中国各地の医師と本草家に対して移入された植物について写生図や腊葉標本、鉢植えなどによりその名称と効能についてたずねた成果をとりまとめたものとされる。なお、著者とされる琉球の呉 継志については実在したか否かを含めて諸説ある模様である。 
 ・  本種の琉球方言には、デイゴ、デイグ、ディーグ、ディグ、ズフキ、アカヨーラ、ズグ、デゴ、デンギ、ドゥフギー、ブージィ、レリ、レンギ、ヂィンギなどがある。 
 ・  徐葆光は、琉球国王 尚敬の冊封副使として1719年に来琉。「中山伝言録」を著した。周煌は琉球国王 尚穆の冊封副使として1756年に来琉。「琉球国志略」を著した。 
 
     
   要は、漢字表記のひとつ「梯沽」は沖縄での方言に清国の冊封副使が漢字を充てたというストーリーである。

 デイゴ(デイコ)については、梯悟、梯姑、梯沽、梯枯と漢字表記が多数あって、個々の漢字表記はいずれもだれかの仕業であろうが、すべて音に基づく所詮当て字であるから、意味などないし、こだわることは何もない(注:沖縄方言のデイゴの音が何に由来するのかはほとんど論じられていない。)。ちなみに、中国ではデイゴは「刺桐」で、アメリカデイゴは「鸡(鷄)冠刺桐」で、前者は材が桐に似て刺があることによるものと思われ、後者は花の印象が鶏の鶏冠に似ることによるものであろう。漢字本家の呼称には属性が反映した意味がある。

 なお、まだ触れていなかったが、属名と種名にいて濁音版と清音版の2種が併存しているのは困ったことである。沖縄県人であれば、デイゴであろうとデイコ、ディーグであろうと、昔からの呼称を使えばよいが、図鑑の植物名として、デイゴ属、デイコ属、デイゴ、デイコ、アメリカデイゴ、アメリカデイコが混在しているのは迷惑なことである。 

 次に、沖縄の方言とされる例えばデイゴ(デイコ)の音は何に由来しているのであろうか。何らかの意味があるのか。
 これは想像してもさっぱりわからないが、坂﨑・邑田は中国でのデイゴの名称「刺胴」の中国音〔Cì tóng〕が沖縄で訛ったのではないかとしている(日本植物園協会誌2014:デイゴの名称と伝来について)が、説得力に欠ける。もしそうであれば、最初から「刺胴」の漢字表記もセットで導入されていたはずであり、真実はなお謎である。
 
     
(3)  カイコウズ(海紅豆)の名前の由来   
     
   一般にアメリカデイゴの別名とされているこの名称に関しては明らかになっていて、中国の雲南、貴州、広西、広東、福建、台湾、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどに産するマメ科のナンバンアカアズキ属のナンバンアカアズキAdenanthera pavonina L. var. microsperma の中国名「海紅豆」(海紅豆属)が誤って用いられたものとされる。熱帯アメリカ原産とされ、海紅豆の名は「海外からきた赤い豆」の意で、赤い豆ができるが、姿形はアメリカデイゴには全然似ておらず、誤用に至った背景はわからない。

 カイコウズの呼称が誤りに由来するとされていても、日本の野生植物では筆頭和名として掲載されているほか、樹名板としてもその使用事例を目にし、元々誤用であったとしても、既に確実に市民権を有しているようである。現に日本語大辞典でも既に認知されている。また、鹿児島県は県木を「カイコウズ」と定めている。ただし、広辞苑第七版ではカイコウズの説明をデイゴの俗称、ナンバンアカアズキの漢名としていて、は勘違いと思われる。 
 
     
4   しばしば目にするサンゴシトウの学名と漢字名の怪   
     
 
 
        サンゴシトウの総状花序の様子
 蝶形花で旗弁が上側にあるのであるが、立ち上がらない(完全に開かない)ため、花が筒状に見える。眩しいほど鮮やかな赤色である。
         サンゴシトウの葉の様子
 特に頂小葉は菱状の広卵形となっている。
 なお、樹形はアメリカデイゴより、かなり小型である。 
 
     
 
           サンゴシトウの花 1
 上段は旗弁を引き抜いた状態の花で、下段は通常の状態である。結実はほとんどなく、まれに豆果が見られるそうである。
          サンゴシトウの花 2
 旗弁を取り除いた状態である。翼弁も竜骨弁も非常に小さい。また、アメリカデイゴと較べると、萼は深めで、雄しべと雌しべの様子は同様である。 
 
     
(1)  サンゴシトウの素性   
     
   サンゴシトウはデイゴ属の2種の交配種とされ、一般に以下のように紹介されている。

 サンゴシトウ(珊瑚刺桐)は、デイゴ属の Erythrina herbacea L.半低木性の株基部が木質になる“宿根草”) と Erythrina crista-galli L.(アメリカデイゴ・花粉親)交配種で、園芸家 William Macarthur (1800-1882)によって1840年にオーストラリア(ニューサウスウェールズ)で作出された。属名はギリシャ語の“erythros”=赤色 に由来。種小名は英国の植物学者 John Carne Bidwill(1815-1853)への献名である。

 草本と木本の種間交雑種とは恐れ入谷の鬼子母神である。   
 
     
(2)  サンゴシトウの学名   
   
   サンゴシトウの学名は、通常 Erythrina × bidwilli とされているが、The Plant List では Erythrina bidwillii Lindl. を accepted name とし、Erythrina corallodendron T.C.Huang & H.Ohashi をシノニムとしている。詳細は未確認。

 さらに、一般に普及していないが、本交配種とは別系統の園芸品として Erythrina × bidwillii Lindl. 'Camdeni' 、Erythrina × bidwillii Lindl. 'Blakei' がしばしば紹介されている。 
 
     
(3)  サンゴシトウの和名   
     
   サンゴシトウの漢字表記である「珊瑚刺桐」のうち、「刺桐」は デイゴ Erythrina variegata の中国名であるから、やはり珊瑚刺桐は中国名を取り入れたものであろうと直ちに想像される。

 そこで、中国植物誌をみると、Erythrina corallodendron の中国名として、筆頭名龙牙花(龍牙花)を掲げ、その他 象牙红(象牙紅)珊瑚树(珊瑚樹)珊瑚刺桐(珊瑚刺桐)の名を掲げている。

 ということで、サンゴシトウの名前、漢字名は中国由来であることを確認できるが、この学名が少々気になる。なぜなら、園芸植物大事典にはサンゴシトウの説明で、「日本では Erythrina indica , Erythrina corallodendron などの誤った学名がときにあてられている。」とあるからである。一方、中国植物誌ではこの学名の種について、決して交配種として説明はしておらず、単に南米原産としているだけである。

 いよいよもって、真実がどこにあるのかさっぱりわからない!
 
     
5   東京のビルの谷間の意外な植栽木の例   
     
   特に新しいビル周りの公開空間で意外な樹種の植栽例を見ることがある。他との違いを演出したいという施主様の意向に応えたものなのか、単に緑化木生産業者の手の平の上で踊っているのかは明らかではない。ただ、比較的大きな樹が植えられるのがふつうであるから、緑化木生産者の見込み生産の結果として、その時点で供給できるものの範囲で選択しているのは間違いない。 
     
   <都内のビルの谷間で見かけた意外な植栽樹の例>   
 
列状植栽:   
  ナナミノキ(モチノキ科モチノキ属)   
  ムサシノケヤキ(ニレ科ケヤキ属) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 注:樹冠が狭いほうき状の園芸品種で、近年植栽がふえている。 
  イヌマキ(マキ科マキ属)   
  センペルセコイア(ヒノキ科(旧スギ科) セコイア属)   
  オリーブ(モクセイ科オリーブ属)   
  ホルトノキ(ホルトノキ科ホルトノキ属)   
  ゴードニア・ラシアンサス(ツバキ科ツバキ属)   
  アカガシワ(レッドオーク ブナ科コナラ属   
  サンゴシトウ(マメ科デイゴ属)   
  ハルニレ(ニレ科ニレ属) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 注:アキニレは都内でも単木的に植栽されているが、ハルニレは少ない。新宿御苑には葉表がざらつきのない大きなハルニレがある。 
単木植栽:   
  ハナノキ(カエデ科カエデ属)   
  ウラジロガシ(ブナ科コナラ属) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 注:一般にカシ類ではシラカシの植栽がほとんどを占めていて、たまにアラカシも見る。
  イヌシデ(カバノキ科クマシデ属) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 注:アカシデはしばしば植栽例を見る。 
  ジューンベリー(バラ科ザイフリボク属)   
  グアバ(バンジロウ フトモモ科バンジロウ属)   
  ハイノキ(ハイノキ科ハイノキ属)   
  タイワンツバキ(ツバキ科タイワンツバキ属)   
  フェイジョア(フトモモ科フェイジョア属)   
  アズキナシ(バラ科アズキナシ属)   
  ウラジロノキ(バラ科アズキナシ属)   
  ヒトツバタゴ(モクセイ科ヒトツバタゴ属) ・・・・・・・・・・・・ 注:別名の「なんじゃもんじゃの木」の名が必ず紹介されているが、その名前ほどにはインパクトはない。