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樹の散歩道
   最強!恐怖のムカデの毒牙!


 多くの人から嫌われる生物はいろいろあるが、生活空間でムカデほど嫌われ、恐れられ、おぞましく思われている生物はないと思われる。その大きさを問わず、こんなものが突然体にビタッと取り付いるのを目にしたら、体力に自信がある屈強の男でも恐怖に顔を引きつらせて絶叫することであろう。あるとき、この憎き不快害虫が身近なところに突然姿を現した。【2010.10】


 ヤマザキのミニロールケーキの「ロールちゃん」をついつい深夜にパクついてしまって、僅かな食べ残しを袋の口を折って、テーブルに放置して、その翌朝・・・
 袋の中に、何やら茶色い細いものが見えた。よく見ると、 ゲゲッ! 小さいながらもムカデである!何ということか! どこから侵入したものかと気持ちが落ち込む一方、なぜムカデがロールケーキに引き寄せられるのかと驚き、嘆き、さらには、ほかにも兄弟分がいるのではと、急に身の回りが心配になってしまった。

 しかし、気持ちを落ち着かせ、折角の機会でもあり、少々小粒のムカデであるが、その毒牙を観察したい好奇心が頭をもたげてきた。ムカデに噛まれた体験はないが、話はよく耳にする。どんな口なのか、以前から気にはなっていた。そこで、プラスティック容器に捕捉してアルコールを垂らしおとなしくしてもらう≠アとにした。

 種類はアオズムカデのチビであろうか。体長はまだ僅か33ミリ。頭幅も1.3ミリほどしかない。本当はもう少し大きめの迫力のある個体を採り上げたかったが、仕方がない。
 頭部は上から見ると平らでツルッとしたのっぺらぼうで、2本の触覚が目立つだけであり、口は全く見えない。小さな単眼は確認できる。毒牙は裏側からでなければ見えない。そこで、でんぐり返すと・・・
 頭の幅が1ミリちょっとのチビムカデにもかかわらず、基部ががっちり太く、強力なパワーを感じる毒牙を格納している。これを思い切り開いて、夾むようにしてグサリと食らいつくのであろう。あー怖い怖い!
 
 ところで、ムカデがロールケーキを好むとは聞いたことがない。確か肉食のはずである。いい参考書に行き着かないが、荒俣宏の「世界大博物図鑑1」には「アリストレスの<動物誌>には、脂っこいにおいがするとそちらへ寄っていくという。」としている。このロールケーキは158円の安い製品で、植物性油脂を使用したホイップクリームを巻き込んでいる。ムカデは植物系の油でも特に好き嫌いはないようである。
<ムカデに関するメモ>
 動きが恐ろしく速い。一撃を加えて退治しようとしても、そのすばしこさから取り逃す場合がある。
 体が薄いため、特に小さい個体では僅かな隙間を出入りできそうである。屋内では襖(ふすま)と敷居の間の僅かな隙間に逃げ込まれることがある。
 しばしば耳にする被害談では、寝ていて噛まれることがあるそうである。布団の中に隠れているのであろうか。考えただけでもぞっとする。考え過ぎると、身の回りが全て心配になってしまう。
 世界に約3000種以上が知られている。日本産は約130種あり、最大は体長約15cmになるトビズムカデ。口器として2対の小あご,1対の大あごのほかに1対の強大な毒爪(どくそう)と呼ばれる顎肢(がくし)がある。【平凡社世界大百科事典】
 ヒトを噛むのはトビズムカデとアカズムカデのみとされる。顎肢は大きく、濃黒褐色の牙(毒牙)があって、その末端の背側に毒孔が開く。田舎では種油に浸けて傷薬とすることもある。激しい痛みはセロトニンによる。【生活害獣の事典】
<参考:ムカデの話>
 ムカデのみならず、身の毛もよだつ多数の毒虫に関する蘊蓄を傾けた良き参考書が存在する。 「毒虫の飼育・繁殖マニュアル」(秋山智隆著 2001.9、(株)データハウス)である。その一節を以下に紹介する。
 「ムカデはそのあまりにも毒々しい体つきと色彩、性格の荒さや興味深い生体などから一部マニアに人気のある生き物である。国内ではとりわけ巨大なものが好まれる傾向にあり、大型種もしくは大型個体であればあるほど、かなり高価で販売されている。
 食性は、おもに昆虫や死肉等。夜行性で日中は主に土の中及び樹木や石の下など、湿ったところに潜み、夜間になるとエサを求めて活動を始める。エサを発見すると極めて俊敏に追う。頭部の巨大な大アゴで噛みつき、そこから毒を注入する。
 上記書には、海外産の巨大なムカデがマウスをむさぼり食っている写真が掲載されている!!また、タランチュラをも食うという巨大ムカデ等が多数写真付きで紹介されている。こんなのが、顔にドサッと落ちてきたら、その毒牙にかかる前にショック死するであろう。
【追記 2010.11】
 先に採り上げたサンプルがあまりにもチビ助で迫力に欠ける点に不満があったが、幸いにしてほぼ標準サイズのムカデ(多分これもアオズムカデであろう。)が手に入った。体長は約8センチで、いかにもムカデらしい色艶を備えているため、以下に記録としてとどめることとしたい。
(勇敢な捕獲者:垂井 厚世さん)
  この艶があって初めてムカデらしく見える。      毒牙も硬さを増しているようである。
 
 ムカデは憎らしくなるほどすばしこいが、寒い時期になると突然動きが緩慢になってしまう。
 このムカデも簡単に捕獲されてしまった。