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樹の散歩道
 
  栗物語6 中国栗で焼き栗体験
             


 中国栗日本栗より甘味が強い上に、渋皮が簡単に剥がれる特性があって、国内の焼き栗は百パーセント近くが中国からの輸入品が占めている。これを国内で栽培しようとする試みがかつて見られたが、わが国ではクリタマバチの被害が激しいため、その経済栽培はほとんど見られない状況にあった。
 しかし、岡山県育ちの中国栗の木が岡山県林業試験場(平成22年度から岡山県森林研究所に改称)の構内にあって、もちろん中国栗固有の渋皮離れのよさがあることに加え、クリタマバチにも強い特性があることも確認されているため、今後の普及が期待されている。【2008.10】 


 実は、かつて日本全国に広がったクリタマバチの被害は、1941年(昭和16年)に岡山県で初めて被害が発見されたという。中国から導入された苗木について入ってきたものといわれている。
 これにより、従来から栽培されていた多くのクリ品種は壊滅的な打撃を受けたことから、耐虫性のある品種の育成が急がれ、園芸試験場(のちの「果樹試験場」。現在はとてつもなく長い名となって「独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所」となっている。)の努力で複数の抵抗性品種が育成された経過がある。
 同じ岡山県から、今度はいいものが発信されることになる。
 名称は岡山1号、岡山2号、岡山3号と3種類ある。いずれも中国栗の自然交雑実生から選抜・育成されたもので、中国栗譲りの渋皮離れのよさはもちろんのこととして、クリタマバチの加害を受けにくく、さらに実を加害するクリシギゾウムシ(幼虫はいわゆる栗虫の名で知られている。)やクリミガ等の害も少ない傾向が確認されている。2008年3月13日にこれらは種苗法に基づき品種登録されている。
 写真は「岡山1号」で、日本栗とは違って、やけに毛深い。大きさはふつうに見かける天津甘栗より一回り大きい。中国栗の外見上の特徴は、座部(色が薄くてざらついたお尻の部分。)が小さめであることで、これにより識別が可能である。10月上旬に成熟する。
 さて、せっかくなので中国栗の新栗を焼き栗にして渋皮離れの具合を確認するとともに、試食することにした。

 フライパンで転がしながら焼くこととしたが、破裂したら元も子もないため、安全を第一に一部に切り込みを入れることにした。

 結果としていい具合に笑いグリ状態となった。
 渋皮離れのよさはうれしくなるほどで、クリッと剥けてしまった。渋皮を脱いで露わとなった素肌はクリーム色のしっとり肌で、もううっとりであった。お見事!! 味も甘くて合格!! 

岡山県森林研究所
 岡山県勝田郡勝央町植月中1001


【2010.12 追記】

 平成22年12月から、まずは岡山県内限定で上記岡山1号・2号・3号の苗木の販売が開始された。スタート価格は、「ぽろたん」の当初価格を意識したのか、3千円ほどである。岡山森林研究所のチラシには以下のような説明が付記されていた。

 2品種以上の混植をお勧めします。岡山1号と、岡山2号、岡山3号を混植してください。自家受粉は収量が落ちます。
 ニホングリと混植しますと、渋皮が剥けにくくなりますので、中国栗のみによる混植をお勧めします。
 結実は、苗木の植栽後、3年目以降です。  ← 桃栗三年だ!!
【2011.4 追記】 

 岡山1,2,3号が焼き栗状態になったものが手に入った。冷凍保存してあったものをフライパンで焼いたものだそうである。剥き実は一般的な天津甘栗と同様の色合いで淡褐色となっているが、味は良好である。岡山2号と岡山3号は岡山1号よりわずかに小粒であるが、甘さは1号より優っているという。これらで保存性のよい栗納豆も作ってみたいものである。