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続・樹の散歩道
  ナギイカダの種子が見つからない!!
  さらには雄花も見つからない!!


 地中海地方の原産とされるナギイカダは奇妙な外観をもっているが、公園や植物園でしばしば植栽されているのを見るほか、しばしば公的な場所でかなりの長さにわたって生垣として利用されている風景も見るため、特に珍しい存在ではなく、しかも丈が低くて葉も暗色で地味であり、特に目を引く植物ではない。ただし、たまに赤い小さな果実が変な箇所についているのに気づいた者がこの植物の個性を知って喜ぶことがある程度で、決して人気のある植物ではない。自分でも全くの関心の対象ではなかったが、この植物の雄花が見つからないという知り合いのぼやきを耳にし、これが雌雄異株の植物であったことを初めて認識させられた。そこでこの機会に改めてナギイカダの花や果実を観察してみることにした。 【2017.1】 


 
        果実をつけたナギイカダ
 葉に見えるのは茎が変化したものとされ、葉状枝と呼んでいる。花・果実は葉状枝の向軸側、中脈のやや下寄りの苞の腋につく。小さな蕾もみられる。果実は液果であるが・・・。  
         雌花をつけたナギイカダ
 寒い時期から少しずつ花が開き始め、花と赤い果実が同居した状態がふつうに見られる。葉状枝の先端は鋭いとげ状で、管理する立場からは扱いにくい植物の典型である。 
 
     
 ナギイカダは地中海沿岸部原産のキジカクシ科(従来はユリ科)ナギイカダ属の常緑低木 Ruscus aculeatus で、明治初年(1860年代)に観賞用としてヨーロッパから渡来したとされる。公園植栽樹や生垣としてしばしば見かけるが、とげがきつ過ぎて人が普段接近するような場所には危なくてなじみにくい印象があり、決して親しまれている植物とは言い難い。ナギイカダを一般住宅で使用するとなると、生垣とした場合は背丈が低いが、野良猫の浸入防止に効果があるかも知れない。幅を少し広めに仕立てれば、低くても頭の黒い動物の浸入も抑えることができそうである。  
 
<参考情報>  
 ・  ナギイカダの葉のように見えるのは枝から変化した葉状枝で、長さ1.5〜3.5センチの卵形。堅くて厚い革質で、先端は針状の棘で終わる。中央の脈上に花を1個つける。(樹に咲く花)
 注:葉状枝は葉状茎仮葉枝偽葉とも呼んでいる。 
 ・  ナギイカダ属雌雄異株(注)の常緑低木で、地中海沿岸を中心に約6種が分布する。この属の植物は、葉の上に花をつけているように見えるが、じつは葉のように見えるこの部分は枝が扁平になったもので、形態学的には偽葉という。一見するとミズキ科のハナイカダに類似しているが、ハナイカダでは花柄が葉柄と葉身の中央脈に合着しているのであり、形態学的な意味はまったく異なる。(植物の世界)
 注:ナギイカダ属の花の性型は単純ではないようである。(後で触れる。) 
 ・  ナギイカダの和名は、葉状枝がナギの葉に似ており、かつ花をのせた様子が筏のようなので名付けられた。(新牧野日本植物図鑑) 
 ・  ナギイカダは新枝の主軸や側枝には膜質の鱗片葉をつけ、これは本来の葉が退化したものと考えられており、葉腋に出た葉状枝が十分に大きくなるころ単褐色に枯れて落ちる。(世界の植物、植物の世界) 
 ・  ナギイカダ属は地下茎をもつ常緑半低木6種(注:交雑種の存在も認知されている。)からなる属で、ナギイカダの原産地はヨーロッパ、北トルコ、北アフリカ、アゾレス。ナギイカダの果実は食べると軽い吐き気をもよおす。(A-Z園芸植物百科事典)
 注:果実を口に含んでみたが、甘さはなくて美味しくない。 
 ・  Gertrude Jeky Uが英語名の butcher's broom (ブッチャーズ・ブルーム 肉屋の箒)の語源について次のように記している。
 「(英国の)田舎ではナギイカダが沢山あって、肉屋はナギイカダの小枝を束ねてニレの木の大きなまな板上の肉片を払い落とす(拭う)のに使用した。」(A Study on the Genus Ruscus and its Horticultural Value) 
 ・  ナギイカダはヨーロッパでは古くから薬用として外用、内用の利用がなされてきた歴史があり、また、若い芽は食用にされたという。 
 
 
 1  ナギイカダの種子   
 
 じつは、多くの図鑑に目を通したが、なぜかナギイカダの種子についてはほとんど触れられていないことに気づいた。もちろん写真は皆無である。そこで、念のために日比谷公園の日陰の目立たない存在となっている生垣でわずかに見られた果実(12月時点の赤い果実)を採ってつぶしてみたが、不思議なことに種子が入っていない。さらに他の果実で確認しても同様で、種子が全く見つからない。果実をつけても種子が入っていないということは自然界ではないわけではないとされる雌株だけでの「種なし果実(単為結果)」ということになる。それにしても、ことごとく種なしとは奇妙である。  
 
     ナギイカダの果実 1
 結実は年によって差が見られる。果実の大きさには大小が見られる。 
    ナギイカダの果実 2
 葉状枝が小さいと、こうして果実が大きく見える。果実が2個のこともある。 
      つぶした果実
 白い果肉だけで種子がない。種子がなければ鳥散布にもならない。 
 
 
 果実の種子について触れている図鑑等はわずかで、目にしたのは次のとおりである。  
 
 ・  漿果は紅色、球形、径10〜12mm、殆ど無梗、種子1個入る。(樹木大図説) 
 ・  果実は9〜11月に紅熟し,球形で直径0.5〜1cm余りで,中に1種子がある。(世界大百科事典)
 注:果実に種子が1個というのが必ずしも標準というわけではないようである。(後で紹介する。) 
 
 
<メモ>  
越谷のアリタキ植物園のナギイカダで種子を見たとする観察者の報告がある。 
海外ではナギイカダの種子が園芸用としてふつうに販売されている。 
種子は鳥散布されるらしいが、鳥がどうやってこんなトゲトゲの植物にとまるのかわからない。 
 
     
 ナギイカダの花  
 
  ナギイカダの開花時期については、一般には春とされるが、1月〜4月としているものも目にする。花にはまだ早いと考え、過去に撮影したナギイカダの写真を確認したところ、都内の2箇所で4月に撮影した花の写真があったが、何れもが雌花であった。

 一方、果実の探索の際にたまたまナギイカダの生垣が国立公文書館の石垣の上に存在することを確認した。今度は不思議なことに果実が皆無で、その代わりというわけでもないが、12月にもかかわらず複数の株で既に花をパラパラとつけているのを確認した。そこで目を凝らして見ると、何とすべて雌花であった。ということは、この場所の個体群に限っては、雌株の単為結果はなく、あるいは別の言い方をすればの雄株がないから果実ができないとの単純な説明も可能かもしれない。
 
 
      ナギイカダの雌花 1      ナギイカダの雌花 2        ナギイカダの雌花 3
 
 
          ナギイカダの雌花 4
 花被片は6個、外側の3個は楕円形で大きく、内側の3個は披針形で小さい(樹に咲く花)。
        ナギイカダの雌しべと子房
 1個の雌しべの花柱は短く、退化した雄しべ(仮雄しべ)の花糸が薄膜状になって子房を覆っているものと解される。仮雄しべの先端の白色のひだ状のものは、退化した雄しべの葯と思われる。
 
 
 
  ナギイカダの雌花の仮雄しべを引き離した状態
暗紫色の膜状の花糸で隠れていた子房は黄緑色であることが確認できる。
 ナギイカダの雌花の仮雄しべを引きはがした状態
 仮雄しべを剥がすことで子房の全体の姿が現れた。 
 
     
  <参考メモ>  
   【新牧野日本植物図鑑】
 ナギイカダは雌雄異株で花にほとんど柄がない。花被は広鐘形で花被片は6枚、外片3枚は卵状楕円形で内片よりはるかに大きい。(雄花の)雄しべ3個は筒状に集まる。(雌花の)雌しべは1個で子房は球形、周囲に仮雄しべがある。
 
     
   ところで、先の「雄花が見つからない」とする証言は日比谷公園の生垣の観察結果である。さらに、小石川植物園のナギイカダも雄花が見つからないとの個人の観察報告も見られる。ということは、国内ではナギイカダの雄株は非常に少ない可能性を感じる。

 ところが、これに反する記述を目にした。「植物の世界」には「日本で栽培されているナギイカダの多くは雄株で、雌株は少ないようである。」とあるのは奇妙である。赤い実をつけるのはナギイカダのさやかなウリであるはずで、雌株が少ないとする見解はにわかには信じ難い。

 ナギイカダの増殖は実生も可能とされるが、叢生する性質から株分けによるのが容易とされるから、流通する苗木は基本的に株分けによるクローン増殖されたものと思われる。「植物の世界」の記述が、ある地域での観察に基づくものであるとすれば、その場所のナギイカダは苗木業者がきちんと苗木の雌雄をキッチリ管理せず、雄株だけを販売してきたことになるが、こんなことは考えにくい。じつは、世界大百科事典にも「日本には(ナギイカダの)雌株は少ない。」との記述がある。これらは、誤りの伝染であろう。 

 なお、国内の図鑑ではナギイカダを雌雄異株として説明しているものの、雄花の写真は全く紹介されておらず、辛うじて一部で雄花のイラストを示している例があるのみであった。(後で紹介する。)  
 
     
  さらなる種子の探索  
     
   雄花の探索にはまだ早いため、とりあえずは諦めて、種子の存在をもう少し探索してみることにした。

 その1 小石川植物園:
 ササと競合状態となっていて、厳しい試練にさらされて瀕死状態となっているが、わずかに赤い果実をつけていた。また、種なしを予想したが、案の定、種子は全く入っていなかった。雄株がないことによるものであろう。全体が雌株と理解した。 

 その2 赤塚植物園:
 以前に大きな株に赤い実をつけていたのを確認していたが、改めてみると、果実は凶作で、わずかしかついていなかったが、やはり種なしであった。やはり雌花がパラパラとついていて、全体が雌株と理解した。

 その3 埼玉県 花と緑の振興センター:
 センターのホームページで雄花をつける雄株の存在を紹介していたため、雄花に加えて種子の存在も期待して出動したものである。しかし、小振りな3つの株があったが、何れも雌花をつけた雌株で、残念ながら雄株は存在しなかった。赤い果実は皆無で、小さな緑色の未熟な果実がわずかに見られただけであった。関係者に聞くと、赤い果実をつけた姿は見たことがないとしていた。

 その4 越谷アリタキ植物園:
 個人ブログで雄花、種子を確認したとしていて、期待できるため、念のために種子の存在の有無を確認することにした。
 1つの株はナギイカダの雌株で、わずかに赤い実をつけていたが、残念ながら種なしであった。
 ところが! この株から少し離れたところに意外なものが植栽されていた。ナギイカダに似るが、人の背丈ほどもある株で、樹名板は見られない。葉はナギイカダよりも薄くて平らで、はるかに大きく、明らかにナギイカダ属樹種であることだけは間違いななさそうである。赤い実は見られなかったが、よく見ると花がパラパラとついていて、何とこれが雄花であった。個人ブログでナギイカダの雄花としていたものであろう。ひょっとすると、この正体不明の雄株のナギイカダ属樹種の雄花の花粉が、先のナギイカダの雌株の雌花に付着して、ときに種子の入った果実をつけるということなのかも知れない。

注:アリタキ植物園では正体不明のナギイカダ属樹種については「ナギイカダ」とみなしている模様である。この樹種については後ほど検討する。 
 
     
        アリタキ植物園の謎のナギイカダ属の様子  
 
     アリタキ植物園の謎のナギイカダ属の株
 株は叢生し、大人の背丈ほどの高さがある。枝は全体が湾曲し、ナギイカダとは外観が全く異なっている。
     謎のナギイカダ属の葉状枝の様子
 葉状枝はナギイカダより大型で薄い。ナギイカダのように中脈部分で強く折れ曲がっていない。先端部は鋭いとげ状である。 
 
     
   
           ナギイカダの葉状枝との比較 
 謎のナギイカダ属の葉状枝は、ナギイカダよりもやや淡色である。
      葉状枝上の雄花の様子
 
     
 
   謎のナギイカダ属の雄花 1    謎のナギイカダ属の雄花 2    謎のナギイカダ属の雄花 3
 
     
 
        謎のナギイカダ属の雄花 4
 雄花の外観は、ナギイカダの雄花として紹介されているイラストに近い印象である。本種でもたぶん3個の雄しべが筒状に集まっているものと思われる。
    謎のナギイカダ属の雄しべの花粉の様子
 米粒のような形の花粉が開いた葯からたくさん出ている。この花粉をナギイカダにつけたら(種間?)交雑種の種子ができるかも知れない。
 
     
    ということで、残念ながら真正のナギイカダの雄花、種子は目にすることができなかった。  
     
4   ナギイカダに関する海外情報の探索 特に花の雌雄性について   
     
   ナギイカダはそもそもが渡来種であるから、国内情報よりも海外情報の方が豊かなはずである。で、やはりそのとおりであった。ただし、英国の個人のホームページでは、ナギイカダの花が多数掲載されているが、雄花を誤って雌花として説明している事例がしばしば見られた。英国はナギイカダの原産地域の一部であるが、残念ながらこの小さな花に関する知見が必ずしも広く共有されていないようである。翻訳書の情報を含めて以下に抽出してみる。   
     
 
 ・  ナギイカダ属は通常は雌雄異株で果実を得るためには両性の株が必要である。しかし、ナギイカダRuscus aculeatus)は時に両性花となり自花稔性の花をつける。(A-Z園芸植物百科事典) 
 ・  ナギイカダ属のほとんどの植物は雌雄異株(雄株と雌株が別)であるが、ナギイカダはしばしば自花稔性の両性花をもつ。こうして雌雄両全株(両性花)としての能力があるが、最大限に結実させるためには、雄株と雌株の両方(6本の雌株に対して1本の雄株)を植栽するのが望ましい。花は春に葉状枝の上面に1つ又は2つ開き、雌花又は両性花は晩夏から冬にかけて熟す赤い液果をつける。(Missouri Botanical Garden)  
 ・  ナギイカダ属では、ほとんどの場合花は雄花か雌花で、したがって雌株のみが液果をつける。しかし、両性花をつけるものが園芸的に選抜されてきたため、1株だけでも液果をつける。(英国で)数種が庭園に利用されているが、英国南部にも自生するくナギイカダがたぶん最も広く栽培されている。(The Cambridge University Botanic Garden) 
 ・  ナギイカダの葉状枝は主軸についた葉のようであるが、これは順応(adaptation)であり(葉は葉状枝の基部についている)、この中心に花がつき、鮮やかな赤色の種子が2個又はそれ以上入った果実がつく。樹冠下の日陰に生育する(当植物園の)この植物は hermaphrodite で、雄花と雌花の両方をつけ、よって液果がよく着く。一般的には雄花と雌花はたぶん別々につく。(Royal Botanic Garden Edinburgh)
注:hermaphroditeの語は一般に両性花をつける雌雄両全株の意であるが、ここでは明らかに雌雄同株の意味で使用しているようである。 
 
     
   要はハナイカダの性型について、一般的には雌雄異株であり、両性花をつけるものもあるということは間違いなさそうであるが、雌雄同株のもの(エジンバラ王立植物園)もあるようであり、いよいよ複雑なことになってしまってめまいがしそうである。   
     
5   ナギイカダの雄花の形態に関する情報   
     
   ナギイカダの雌花は先に掲げたとおりである。一方で、真正のナギイカダの雄花の現物にはまだ接したことがないが、海外のウェブ情報から雄花のおおよその形態は認識することができ、先に掲げた謎のナギイカダ属樹種の雄花にやや似ている印象がある。ただし、個人が提供するウェブ情報の奇妙な形態の写真も複数目にし、果たして正確な同定にに基づくものかもわからないため、イラスト情報を以下に拾い上げてみる。   
     
   ナギイカダの雄花のイラスト   
 
   新牧野日本植物図鑑    原色世界植物大図鑑  L. Watson and M. J. Dallwitz The Families of the Monocotyledons (手前側の雄しべの一部をかき取った図で、中にあるのは退化した雌しべと子房である。非常に精密な図である。) 
 
     
   比較用:ナギイカダの雌花のイラスト   
 
  新牧野日本植物図鑑     原色世界植物大図鑑  L. Watson and M. J. Dallwitz  The Families of the Monocotyledons (手前側の仮雄しべをかき取った図である。)
 
     
6   とりあえずの総括   
     
   ナギイカダの花、果実、種子に関して、現時点で推定を含めて総括すれば、次のようになると思われる。   
     
 
@  国内ではナギイカダの雌株がふつうに栽培されている。 
A  ナギイカダは雌株だけでもそこそこ単為結果(タネは入っていない)している風景をふつうにみるが、全く実をつけないこともある。(毎年の豊凶差の可能性もある。) 
B  ナギイカダの雄株は殆ど存在しない可能性がある。この原因は、苗木生産者が単為結果する雌株のみを増殖して販売してきたことによるものと思われる。こうしたことからか、国内の図鑑では雄花や種子の写真が一切掲載されていない。 
C  多くの結実を期待するためには、例えばミズーリ植物園の記述にあるように、6本の雌株に対して1本の雄株を混ぜるなどの扱いが望ましい(注:こうすれば種子を見ることができる。)が、ナギイカダはそれほど引き合いの多い樹種ではないし、苗木生産者も雌株と雄株を管理して生産・販売してこなかったのであろう。 
D  両性花をつけるナギイカダを導入すれば、1つの株でそこそこの結実と種子が得られるはずである。 
E  種子ができれば、1つの果実には2個又はそれ以上の種子が入っている模様である。 
 
     
7   アリタキ植物園の謎のナギイカダ属樹種の検討   
     
   まずは、ナギイカダ属各樹種のおおよその通性を把握する必要がある。海外情報を拾いあげてみれば、以下のとおりである。   
     
   ナギイカダ属の各樹種の比較(MORPHOLOGICAL VARIATION IN THE GENUS RUSCUS:Giulio Veronese ほかより)  
 
分類  茎 葉状枝  花 メモ
Ruscus aculeatus
ナギイカダ
分枝; 直立; 70-100 cm 先端はとげになる;多数;楕円形;基部でねじれる;濃緑色;長さ1.5〜3cm 向軸性(葉状枝の上面につく);雌雄異株 種小名は「トゲの」の意
R. aculeatus 'Lanceolatus' 非常に幅が狭く、通常長さが幅の5倍あり、一般にナギイカダより長い。 雌性品種で、他の雄花や両性花の花粉で実を結ぶ。 ナギイカダの栽培品種
R. aculeatus 'Christmas Berry'  
ナギイカダ・クリスマスベリー
−  −  hermaphrodite
両性花 
ナギイカダの栽培品種
国内でも苗木が販売されている。 
R. aculeatus 'Elizabeth Lawrence' 
ナギイカダ・エリザベス・ローレンス
−   − hermaphrodite
両性花 
ナギイカダの栽培品種 
R. hypoglossum
ヒロハナギイカダ

ルスクス・ヒポグロッサム
分枝しない;斜上、しばしば上部がしだれる;40cm  先端はとげにならない;無柄;基部でねじれる;楕円形;厚い;濃緑色;長さ10cm 向軸性;雌雄異株 種小名は「下方に舌の」の意
シーザーの頭の冠はこれで作られていたとの説がある。
R. hypophyllum
ルスクス・ヒポフィルム
分枝しない;直立;70cm(又は日陰では1m) 先端はとげにならない;楕円形;光沢がある;薄緑色;長さ10cm 位置不定(葉状枝の上面か下面、両面につくこともある);雌雄同株 種小名は「葉下面に生ずる」の意
国内でも植栽され、切花に利用されている模様。
R. × microglossus 分枝しない;斜上;しばしば上部が枝垂れる;50-50cm 先端はとげにならない;有柄;基部でねじれる;濃緑色 位置不定;雌雄異株 交雑種
R. hypoglossum × R. hypophyllum
R. streptophyllus 分枝しない;斜上;頂部が枝垂れる;60cm 先端はとげにならない;基部はねじれる;長円形から楕円形;暗緑色 向軸性;雌雄同株 種小名は「捩れた葉の」の意
R. colchicus 分枝しない;直立又は斜上;しばしば上部が枝垂れる;60cm 先端はとげにならない;有柄;倒卵形から長円形;
背軸性(葉状枝の下面につく);雌雄異株
種小名は「黒海沿岸の」の意
R. hyrcanus 分枝する;直立又は斜上、頂部が広がる;30-50cm 先端はとげになる;長円形又は楕円形;光沢がある;濃緑色 向軸性;雌雄異株 -
 
     
   謎のナギイカダ属樹種は葉状枝の先端が鋭いとげ状となっており、上表でこれに合致するのは、ナギイカダ以外では R. hyrcanus のみである。 しかし、本種は1メートルを超えるものではないし、また、ナギイカダが雌雄二型であるとも聞かないから、情けないことにあっさりとお手上げである! ひょっとするとナギイカダ属近縁の樹種なのか?・・・

  これを同定された方がいたら、ぜひとも情報提供願いします
 
     
  <参考比較:ナギとハナイカダ>   
   
 
      ナギの葉の様子
マキ科ナギ属の常緑高木 Nageia nagi
      ハナイカダの雄花
ハナイカダ科ハナイカダ属の落葉低木
Helwingia japonica
     ハナイカダの雌花
 果実は素っ気ない核果で紫黒色に熟す。 
 
     
  【2017.5 追記】 ナギイカダの種子を確認 !!    
    都内某所で、種子の入った果実をつけたナギイカダの木を確認した。普段見るナギイカダよりも葉がやや大きい印象があるため、これが通常のナギイカダであると断定する自信が持てない。ひょとすると両性花をつけるナギイカダの品種である可能性もあり、花については改めてその時期に確認することとしたい。まずは、暫定的にナギイカダの品種と理解することにする。  
     
 
    ナギイカダ品種の果実 1
 果実も少々大きめの印象がある。
   ナギイカダ品種の果実 2 
 果実を押しつぶして種子を出した状態である。1個の種子が入っていた。
    ナギイカダ品種の種子
   種子の様子である。
 
     
  【2018.4 追記】 ナギイカダの芽生えの様子   
   先に登場したナギイカダの種子2個を取り播きしておいたところ、2個とも芽を出してくれた。   
     
 
     ナギイカダの芽生え 1
 まずは暫定的?に地際にカップ状の葉状枝のようなものを出して、茎が伸び始める。
    ナギイカダの芽生え 2 
 茎の頂部に複数の葉状枝を出し始めた状態である。
    ナギイカダの芽生え 3
 葉状枝を展開した様子である。  
     
 
    ナギイカダの芽生え 4 
 とりあえず展開した葉状枝は左のもので4個、右のもので3個であった。
  ナギイカダの若い葉状枝の様子
 内側の葉状枝以外は基部に鱗片状の葉が見られた。 
 
 
     
  【2018.6 追記】 種子の入った果実を付けたナギイカダの素性   
   種子が発芽することを確認できたこのナギイカダについては、たぶん両性花をつける品種であろうと推定していたが、花の時期を見過ごしてしまったことから、仕方なくこれを管理している関係者に確認したところ、やはりナギイカダの品種であるとのことであった。改めて両性花の写真を撮影できたら追記するとともに、どこかで雌雄異株の本来のナギイカダの雄花及び本物の果実、種子を確認できたら追記することとしたい。  
      
  【2018.4 追記 ナギイカダ属のルスクス・ヒポフィルムの雄花と雌花の様子】   
   ルスクス・ヒポフィルム Ruscushypophyllum は緑の葉状枝が長持ちして重宝することから、生花店では属名のルスカス(ルスクス)あるいはマルバ(丸葉)スルカスの流通名でふつうに切り枝として販売されている。先の表で整理したとおり雌雄同株であることから、雄花と雌花を観察するには好都合である。  
     
 
 
             ルスクス・ヒポフィルム(ルスカス)の花の様子 
 雌雄同株で、雄花や雌花が葉状枝の表か裏に付く。
 
     
 
      ルスカスの雄花 1
 ナギイカダよりも花柄が長く、花被片が細い点が異なっている。
      ルスカスの雄花 2
  花粉を出した状態である。
       ルスカスの雄花 3
 裂開する前の葯の様子である。
     
       ルスカスの雄花 4
 花粉の様子で、例のナギイカダ属と同様にラグビーボール形である。
   ルスカスの雄花の退化した雌しべ
 手前側の雄しべを取り去った状態で、貧相な退化した雌しべが確認できる。
       ルスカスの雌花
 仮雄しべに囲まれた雌しべの柱頭が濡れている。(横浜市鈴木さん撮影)
 
     
   本種は、葉が主役の切り枝として利用されるため、生産者が出荷する際にはゴミのような存在である花をむしり取ってしまうことも多く、生花店で豊かに花をつけたものはあまり見ないが、日持ちがよく、長く店頭に置かれているうちに花をつけることもある。 したがって、購入した場合も、水差しして放置すればやがて花をつけることが多い。本来は赤い果実をつけるが、生花用としては実付きのものは見ない。    
     
   なお、切り枝用のルスカスに似たものとして、同じキジカクシ科でダナエ属のダナエ・ラケモサ Danae racemosa も、ササバ(笹葉)ルスカスあるいはダナエの慣用名で流通している模様である。
 本種はルスカスよりも細い葉状枝をつけ、赤い実付きのものも見られるという。花(両性花)の付け方は茎から花序を出す。属名はギリシャ神話の美しい娘ダナエにに因むという。イタリアンルスカスの名がときに本種の流通名として使われることがあるが、英語名の italian ruscus の語は混乱が見られ、種名を特定できなから、呼称としては適当ではないと思われる。