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続・樹の散歩道
 オリーブの花は両性花なのか雌雄同株なのか?
 それとも・・・


 オリーブの木は都内では公園にしばしば植栽されているほか、街路樹やビル周りの緑化木として並木としている例も目にする。このため色々な形態の紫色の果実を見ることもあって、こうした違いはたぶん品種に由来するのであろうと想像できる。ただし、ほとんど結実を見ない街路樹もあって、これは無慈悲な剪定による可能性があり、あるいは、果実が落ちて路面を汚すのを嫌った措置なのかも知れない。また、開花期には小さな白い花も見られ、何度か写真に収めたことがあるが、たまたま花のピーク時を過ぎた状態の木で、花をよーく見たところ、すべて両性花であると思い込んでいた花の中に、雌しべや子房が確認できないものが少なからず存在するのを確認した。ということは、オリーブの木の花はすべてが両性花なのではなく、かといって雌花と雄花で構成された雌雄同株というわけでもなく、両性花と雄花で構成されているように見えた。そこで、念のために複数の図鑑等で確認してみることにした。 【2017.7】 


     某マンションの公開空間のオリーブの並木      JR 田町駅芝浦口側のオリーブの街路樹
   
  (芝浦運河通り)
   
            オリーブの葉の様子
 モクセイ科オリーブ属の常緑高木 Olea europaea
        オリーブの葉 (葉裏と葉表) 
 葉の両面に鱗状毛があり、葉裏は銀白色。
   
         オリーブの葉表の鱗状毛 
  鱗状毛はグミ類のイメージに似ている。このためか、アキグミの英語名として autumn olive (秋のオリーブ)の呼称がある。 
        オリーブの葉裏の鱗状毛
 葉裏が鱗状毛でビッシリ覆われている点もグミ類にそっくりである。これが銀白色に見える要因である。 
 
 
 
  オリーブの果実(某マンション)      オリーブの果実
    (品種はミッション)
     オリーブの種子(核)
 
種子は硬くて厚い内果皮(核)に覆われている。
 
 
 図鑑等を見て気づいたのであるが、一般的な図鑑ではオリーブの花の構造につい詳しく記述していないのが普通であった。雄しべが2個あることさえ触れていないことが多いのである。こうした中で参考となったのは以下の2つの書籍の記述である。  
 
 植物観察事典(抄)
 オリーブ:Olea europaea
 ・ 他花受粉でなければ結実しないので、品種の混植が必要である。
 ・ 雌しべの発達の程度にムラがあって、まったく稔らない株がある。これは軽い両生分化の起こりである。
 ・ わが国では小豆島だけで営利栽培が行われている。 
 園芸植物大事典(抄)
 オリーブ属:Olea
 約20種が知られている。花は小さく、白色で両性または単生、腋生か頂生の円錐花序などにつく。花冠は4裂し短い花筒をもち、開花する花冠裂片は敷石状に配する。雄しべは2個、花柱は1個で短い。
 オリーブ:Olea europaea
 北アフリカなどの原産と考えられているが、詳細は不明。6月上旬に開花。円錐花序に10−30個の小さな花をつける。花は4萼片、径約3ミリの乳白色で鐘状合弁花冠を持つ。花冠は4裂、まれに5〜6裂する。雄しべは2個、雌しべは1個で子房上位。柱頭が退化して針状となった結実不能の不完全花が多く、結実不良の原因になることが多い。風媒花であるが、虫媒も行われる。自家不結実性が強い。栽培品種が世界で500品種以上あるといわれている。 
 
     
 @については、受粉できない半端状態の雌花が見られるとの見解である。つまり雄花と雌花に分化する途中にあるとしているが、現在をとらえてその生理的な機能に着目すれば、明らかに両性花と雄花があると表現した方がよいと思われる。

 Aについては柱頭が退化した不完全花の存在を指摘している。しかし、現在の状態はオリーブ自身の選択の結果が反映したものであり、それを指して不完全と表現するのは客観性に欠けており、花に対しても失礼である。これを客観的に表現すれば普通の雄花であるから、むしろ素直にそのように表現するのが適当であると思われる。

注:不完全花とは一つの花で、萼・花びら・雄しべ・雌しべのどれかを欠く花を指す語として慣用的に用いられることがあるが、完全花の対語として無理やりつくった印象があり、違和感がある。
 
 ということで、参考にはなったが表現振りには不満が残った。いずれにしても、オリーブは外来種であるから、栽培の長い歴史を有する海外の情報の方が知見の集積が反映しているはずである。そこでウェブ情報を検索すると、簡単に納得情報が得られた。以下はその例である。
 
 
【britannica com】(抄)
 オリーブの花には完全花(注:両性花の意)と雄花の2つのタイプの花がある。完全花は雄しべと雌しべがあって果実をつけ、雄花は花粉を出す雄しべだけがある。
(書籍の「ブリタニカ国際大百科事典」でも、「オリーブの花には芳香があり、花弁は4枚ある。完全花では2本の雄しべと1本の雌しべがあって花後に結実するが、このほかに、雄しべだけを持つ雄花もあり、花粉を提供する。」とあった。) 
【SFGATE:homeguides.sfgate.com】(抄)
 オリーブの木には2種類の花がある。花粉を生産する雄花と、雄しべと雌しべがあって実をつける両性花である。雄しべは花粉をつくる葯があり、雌しべはオリーブの果実を結ぶ基部の子房につながっている。雄花は黄色で、両性花はやや小さく緑がかった黄色である。両者が同じ木につき、いずれも蜜を出さない。花の構造は品種が自花受粉なのか、あるいは異花受粉なのかでそれぞれに役に立つ。ある変種は柱頭と呼ぶ雌しべの先端に接近した雄しべをもっていて、自花受粉のために花粉が直ちに付着する。別の場合は葯が柱頭からはなれて開き、異花受粉ができるような状態としている。 
 
 
 ということで、オリーブの木の花は両性花と雄花で構成されていることについて確信を持つことができた。以下は観察した花の様子である。  
 
    オリーブの両性花と雄花の様子  
      両性花 1        両性花 2         両性花 3        両性花 4
       
       両性花 5
      両性花 6
 
    両性花の花後
 花冠脱落後の萼筒に包まれた子房の様子である。
たぶん雄花
雌しべと子房が貧相なタイプ
       
       雄花 1          雄花 2         雄花 3         雄花 4
       
       雄花 5
 
       雄花 6
 
        雄花 7
      雄花の花後
 花冠が脱落してカップ状の萼筒のみとなったもの
 
 
 花は5〜7月、前年枝の葉腋から円錐花序をだし、芳香のある黄白色の花をつける。萼筒は浅く4裂し、花冠も4裂する。両性花では1個の雌しべと子房が確認できるが、雄花では雌しべと子房が貧相であるか、ほとんど退化している。花が小さい割りには2個の雄しべの葯が大きく、葯が裂開すると花粉が流れ落ちる。花粉を完全に放出した葯は褐色となる。
 なお、新牧野日本植物図鑑で、雄しべが2本ないし4本としているが、雄しべが4個の花は確認できなかった。 
 
 
<参考メモ>  
 【ブリタニカ国際大百科事典】(抄)
 オリーブはおそらく地中海東部または中央アジア南部の原産とされ、明らかに史上最も古い栽培植物のひとつである。前3500年頃にはすでにクレタ島でオリーブが栽培され、前3000年にはセム人がこの木を栽培していた証拠がある。 
 【SFGATE:homeguides.sfgate.com】(抄)
 オリーブは風媒花である。大量の花粉をつくり、ひとつの雄花が2万個の花粉粒を出す。
 このため、多くの人がオリーブ花粉でアレルギーをおこすため、都市部では普通のオリーブを植栽することが禁じられていて、そこで不稔性で花をつけない "Swan Hill""Wilsonii" といった品種が用意されている。
注:「花をつけない」としている点については、あとで確認する。 
 【香川県農業試験場・青字はオリーブの本(抄)】
 オリーブの品種は、世界で1200種以上あるとされているが、香川県へは約60品種・系統が導入され、その内4品種が一般に栽培されている。いずれも用途から果実加工(テーブルオリーブス)用、油用、兼用種に分類できる。
 香川県での栽培4品種は以下のとおり。

 ミッション(Mission):アメリカのカリフォルニア州で発見された、スペイン系品種。国内オリーブ栽培の果実加工用、油用兼用の最主要品種。果実は中型でハート形
 マンザニロ(Manzanillo):スペイン原産の果実加工用品種。世界中で多く栽培される主要品種。香川県における果実加工用の主要品種。自家不結実性が強い。果実は大型
 ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco):スペイン原産の油用品種。果肉が柔らかすぎるため加工には不向き。自家不結実性が強く、不完全花が多発するが花粉が非常に多いので授粉樹としての価値が高い。観賞用樹として最も苗木生産量が多い。果実は中型
 ルッカ(Lucca):原産国不明の油用品種。自家不結実性は弱く、1本でもある程度着果する。果実は小型。 
 
 
 これらをみると、自家不結実性については品種により強弱があることがわかる。

 また、Aの資料を読んでピンと来た。
 山手線田町駅の芝浦口側、芝浦運河通りに、唐突にもオリーブの街路樹が見られる(冒頭で紹介)のであるが、芝浦公園沿いの3本を除いて花も実も見ないのである。ひょっとすると、海外での経験則を踏まえ、賢明にも都市部での植栽用として、花をつけにくい品種を選定したものなのかも知れない。オリーブの花粉によるアレルギー症状は国内では栽培実態のある香川県の小豆島に限られている模様であるが、花粉アレルギーの元凶のひとつとして突然に袋だたきとなったら大変であるから、想像通りであれば正しい選択なのかも知れない。

 しかし、 調べてみると先の "Swan Hill" 及び "Wilsonii" の名の品種は花はつけるが花粉はほとんど出さず、実をつけないタイプとされているから、花がないのは品種由来とは考えにくい。ということは、やはり強い剪定で花つきが抑制されているのであろうか?
 そこで、真相を知りたく、港区の関係部局にメールで照会したところ、たぶん担当でもわからないのであろう、全く音沙汰なしである。

 そもそも花も実もつけないオリーブでは、まったくオリーブらしくないとも言え、何とも情緒に欠けて寂しい限りである。
 
 
世界大百科事典(世界有用植物事典も同様)にはなぜかオリーブの花として、雄しべが2つ描かれた花の図を「雌花」として掲載している。オリーブには単性花の雌花はないからこれは誤りとなる。単に花としたかったところが、誤植で雌花としてしまったのであろうか。  
 
【追記 2021.4】  
オリーブの核、種子、胚、芽生えの様子  
 
   以前にオリーブの種子の発芽テストをしてみたのであるが、発芽率が非常に悪かった経験がある。オリーブの種子は非常に硬くて厚い内果皮(核)に包まれていて、種子の保護には都合が良さそうであるが、発芽にはかなりの試練になっているのではないかとの印象があった。

 調べてみると、小豆島のオリーブ園の経営者のHPがあって、オリーブの実生栽培に関して紹介していた。本業での増殖はもちろん挿し木であるが、手すさびでの実生栽培の経験も十分あって、要約すると以下のようなあっけない方法であった。

 そもそもオリーブは発芽率はよろしくない。しばしば種子の尖った部分をペンチでカットするとよいと紹介されているが、腐敗を招きやすくおすすめできない。要は湿り気が多めの土に浅植えして、放っておけばよく、芽が出たらラッキーと思えばよいということである。

 こんなことを言いながら、自分の苗畑にズラリとオリーブが発芽した写真を紹介しているのは癪に障る。文句を言っても仕方がないので、もう一度変わり映えのない発芽テストをしてみることにした。  
 
     
 
    オリーブの核
 発芽しない種子を掘り出してみると、核の先端部が口を開いていた。見た目には種子が成長を初めて核を割ったようには見えず、発芽する気があったのかは不明。
内蔵された種子の胚の幼根は口が開いた側にある。
   オリーブの核の断面 
 発芽しない種子を掘り出して、ペンチで無理矢理核を縦に割ったもので、不規則な裂開面となっている。左側の核の片割れの中で、種皮に覆われた種子が姿を見せている。
   
   オリーブの割れた核
 土の中で核が自然に割れていたケースで、核はきれいに開いているが、種子が成長してこじ開けたようには見えない。 核が割れるタイミング、メカニズムはよくわからない。
   オリーブの種子 
 取り出した種子の様子で、種皮には淡色の網目模様がある。根は全く伸び出ていない。
   
   オリーブの割れた核と種子
 これも土の中で核が割れていたケースで、開いた後にかなりの期間が経過した模様で、核の割れた面や内側が黒変している。種皮がほとんど脱落した白色の種子は健全に見える。しかし、まだ発芽する気がないようである。 
   オリーブの種子内の胚 
 種子を縦割りにした断面で、子葉幼根・胚軸の形態がはっきりとわかる。は非常に薄い胚乳に覆われていたことがわかる。
   
   オリーブの種子の胚 A 
 この胚では子葉が細長い形態であった。
   オリーブの種子の胚 B 
 この胚は2枚の子葉が比較的巾広で、水に浸漬したところ、なぜかパックリ開いた。
 
     
   (オリーブの芽生えの経過)   
 
 オリーブの芽生え 1 
 核の殻を地表に残し、種皮をかぶった子葉が出てきた。
 オリーブの芽生え 2 
 種皮を脱ぎにくそうにしていたため、後ほど手伝ってしまった。
 オリーブの芽生え 3 
 2枚の子葉を展開したところである。子葉の先端部が損傷しているのは人為的なものである。。
 オリーブの芽生え 4
 子葉の間から本葉が出てきた。
       
 オリーブの芽生え 5 
 本葉が2枚展開した。
 オリーブの芽生え 6
 
 オリーブの芽生え 7 
 本葉がやっと3枚となった。
 オリーブの芽生え 8
 本葉が8枚出た状態。
 
     
  【追記 2021.5】   
  オリーブの材の様子   
     
   オリーブの材を使ったキッチン用品をしばしば見る。カッティングボードボウルが多いが、個性的な色や木目模様が魅力である。そもそも、オリーブは木材の生産を目的として植栽、栽培されるものではないから、オリーブオイルの生産を目的とした植栽樹に気象害や虫害があって、更新するために伐採されたものが加工に回されるものと思われる。

 オリーブの木はスギやヒノキのように通直には育たないため、採取される木材は短尺のものが多く、大きな家具材にはならないようである。

 次の写真はオリーブ材のカッティングボードの例である。 
 
     
 
        オリーブ材のカッティングボードの例
 オリーブ材は緻密でずっしり重く、木目の模様や色合いが瘤材の杢を思わせるような多様な表情を見せることが魅力である。販売されている製品でも、すべて異なった外観となっている。
 
     
   なお、オリーブの材に関する講釈として、次のような例を目にした。 【.woodassistant.com より抜粋】  
     
   オリーブ材はOlea europaeaOlea. capensis という2種のオリーブの木に由来する。

 オリーブの木は高さ40メートルにも成長することができるが、こうした例はまれで植栽管理されたものの多くは高さ10メートル、径1〜1.5メートルほどになる。

 オリーブ材は強靱であるが、外部要素や昆虫の影響を受けやすい。このため、一般に屋内家具や小さな木製品として目にする。外観的には一貫した肌目や木目、そして加工時に極めて独特なフルーティーな香りがあることが世界中で有名である。

 オリーブの材は防虫、防腐に必須の天然オイルが少ないのが欠点で、屋外での使用には適していない。屋内で長くもたせるには、オリーブ材の家具では長年にわたって外部要素に曝されないように処理する必要がある。加えて、生のオリーブ材は乾燥が難しく、この過程で反りが生じる可能性がある。これを避けるため、オリーブ材は低温乾燥窯によって非常にゆっくりと乾燥する必要がある。