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木あそび
   おがくず粘土「もくねんさん」であそぶ


 ある時、「もくねんさん」の名で、おがくずを原料としたユニークなねんどが存在することを知った。都内で鉛筆を製造する会社が、製品製造過程で発生するインセンスシーダの多量のおがくずを有効利用して、環境に優しい学童用ねんどを開発し、自ら製造・販売しているものである。
 子供たちにとっては、毎日お世話になっている鉛筆を作った際の木くずが原料であることから親しみが湧き、さらに慣れ親しんできた鉛筆の木の香りがそのまま残っている点も他に例がなく、保護者からも優等生的教材として評価されているようである。【2010.10】 


 もくねんさんのあらまし
 以下の写真は、この製品のパッケージの表と裏で、製品の特性を簡単に記述している。詳しい説明は箱の中に添えられている。
 上に掲げた「もくねんさん」は、300gのパッケージのひとつである。
 原料は鉛筆軸木の加工時のおがくずポリビニル・アルコール(PVA)であるという。PVA自体は身近な存在で、事務用の透明の液状合成糊にも利用されている水溶性の合成樹脂である。久々に最もシンプルなオブジェを作ってみた。やや弾力があって、何よりの特徴はおなじみの鉛筆の木の豊かな香りがあることである。乾燥すれば、説明書のとおり素焼きの素材感となって、しかも木材が原料であるから乾燥後に刃物で削ることもできるという。
  もくねんさんによる作品例 1:もくねんさんウンチ 

 かなり創造力に欠ける作品であるが、質感を確かめるために作っでみた。転がして棒状にしたりひねったりする加工性はよい。
 わずかにカスが手に付着するが、気になるほどではない。
    もくねんさんによる作品例 2:コースター

 これも全く創造力に欠けている作品で、説明しなければ何だかわからない。商品とし素焼きや珪藻土のコースターが存在することを思い出して試作したものである。残念ながら吸水性はなかったが、素焼き、珪藻土とは異なる不思議なクッション性があって、陶器のカップには優しいコースターが誕生した。 
  乾燥したもくねんさんの質感

 棒状にして乾燥したものをカットしてみた。左は小刀で切ったもの、で右は胴付鋸で切ったものである。
 乾燥して堅くなるため、鋸の方が切りやすい。木材のように(というより、木材そのものであるが、)さくさくと切れる。切断面もきれいである。面白いことに、結果として、また元のおが屑が少々発生した。
  鉛筆の軸の加工時には、原料木材の4割もがおがくずと化してしまうとのことで、これを上手に活用する技術を開発した功績が評価され、パッケージには以下の受賞歴がパッケージ側面に記されている。

 平成15年度全国地場産業優秀製品 優秀賞受賞
 平成17年度中小企業優秀技術・新製品賞 優良賞受賞
 2005年東京都ベンチャー技術大賞 奨励賞受賞


 商品として「乾くと木になる“おがくずねんど”です。」としているのは、印象のよい上手なキャッチコピーである。
 もくねんさんの観察
@  もくねんさんの特徴
針葉樹系の香り−正に鉛筆の香りがある。
粘土にはやや弾力があって、ちぎる際にもやや伸びる特性がある。
原料が木であるため、乾燥すると驚くほど軽くなる。
乾燥すると、表面の質感はその色と相まって、素焼きのような印象となる。
表面はつるつるにはならないが,絵の具の乗りは良さそうである。
 なお、実用上の支障ではないが、乾燥にはやや時間を要する。
A  顕微鏡で見ると・・・
 間違いなく、木材が原料であることを体感できる。
   水に解いたもくねんさんの顕微鏡写真
 仮道管と放射組織が接した部分の破片である。
       同顕微鏡写真
 仮道管の有縁壁孔が並んでいるのが確認できる。
   
  乾燥したもくねんさん表面の拡大写真
 まるでパーティクルボードのようである。
       さらに拡大した写真
 木材の削片であることがよくわかる。
B  木粉を使ってもくねんさんを自作できるか
 もくねんさんの製造に当たり各種添加物により微妙な調製をしているのかはわからないが、木粉(おがくず)PVAでもくねんさんもどきができるはずである。そこで、サンダーの集塵袋の木粉PVAL原料の事務用液体糊と若干の水を合わせてこねてみた。
 本物のもくねんさんの微妙な弾力と扱いやすさには及ばなかったが、似たものにはなった。
  自家製木粉粘土によるオブジェ第2弾:木粉ウンチ

 試作品は、やや手にべたつく難があることに加え、柔軟性、弾力性に欠けていて、とぐろを巻くと表面に細かい割れが生じてしまった。たぶん、本物の商品化には試行錯誤があったであろう。
 この試作品は広葉樹の木粉であるが、色合い、質感が何やらリアルなものとなってしまった。大体の様子はわかったのであるが、後始末が悩ましい。置物としたら間違いなくひんしゅくを買ってしまうであろう。
C  線香の基材になりうるか
 色合いと感触から、以前に体験した線香の粘結基材のタブ粉(タブノキの内皮の粉末)を思い出した(参照)。そこで、もくねんさんを薄く延ばし、生乾きの状態でそば切りのようにして、香料成分抜きの線香を試作してみた。
    もくねんさんで作った線香もどき
 インセンススティックのイメージである。
    もくねんさん線香の燃焼の様子
 匂いには特に違和感はないから、線香基材として特に問題はないと思われる。
 完全乾燥後に点火すると、立ち消えもなく、線香の基材と同等の機能が認められた。ただし、灰はやや色の濃いものとなった。白檀の粉末でも練り込めば、線香の製作が可能と思われる。