トップページへ   木あそび目次へ

木あそび
  
耳かきは 
やっぱり ツゲが一番? 


 朝日マリオン「暮らしの良品探訪」で、遠藤ケイ(イラストレーター、作家)が、耳かきに関して次のように述べている。
 「耳かきには、一般に象牙、べっこう、金、銀、ツゲ、竹、綿棒などがある。中でも一番がツゲの耳かきだ。金属の耳かきは、耳に入れたときに冷やっとする。竹は先を火で炙(あぶ)って曲げるので、使っているうちに戻ってきたり、割れたりする。べっこうは柔らかすぎるし、象牙は硬すぎる。ツゲは昔からくしの材料に使われる木で、木質が硬く、密度があって、粘りがある。丈夫で狂わない。感触が優しく、人肌の温かみがある。」

 「木」に軸足を置いている以上、自分としては「ツゲ」が一番と言いたいところであるが、個人的な結論を言えば、各種天然素材は手に取った感触が良く、かき易さは先端部の形状で決まるということである。耳の穴はヒンヤリするかどうかの違いはわかるが、素材の違いを判別する感性はないであろう。ただし、いろいろな素材の耳かきをそのときの気分で使い分けるのは間違いなく楽しいことである。【2007】


@ ツゲ  東京では櫛で有名な「十三や」の製品である。店の主人の説明では材料は「薩摩つげ」ということであった。柄は非常にきれいに磨かれている。店はもちろん櫛が専門であるが、気軽な買い物用として大小のつげ製の耳かきも置いている。つげ製品によく見かける「本つげ」の焼き印は伝統的に意識して使わないこととしているというのは印象的であった。
「十三や」商店   1,470円(大)
東京都台東区上野 2-12-21

A 竹  これはドラッグストアの吊しで、「煤竹(すすたけ)」と表示した普通の製品である。本当の煤竹ではないと思われる。職人が本気で丁寧に作ったものは先端が皿形になっていて、磨きもすばらしいものがあり、ウン千円級となる。
B 銀  東京日本橋の刃物店「木屋」のオリジナルであるが、購入時の製品は写真の先端部(これだけが銀)にクロムメッキの円筒形の柄とキャップが付いていた。柄が円柱状では先端部の面の向きがわからないし、この形状のクロムメッキの柄は滑りやすく手の感触がよろしくないので、銀の先端部をもぎ取り、これに自作のイスノキの柄を取り付けたものである。柄は面の向きがわかりやすいように、断面をかまぼこ形とした。ということで、当初の面影は全くなくなっている。
 値段を抑制した製品であり贅沢は言えないが、銀の色合いと感触を楽しむのであれば、もう少し高い物を購入すれば目的は達成される。銀はその抗菌性と高級感が特徴であり、耳かきでも多くの製品がある。数千円級のものは柄も一体の銀製で先端部はもちろん皿状で、きれいに磨きもかかっていて、これとは全く別物となる。
C 象牙   象牙製品を扱うこぎれいなこじんまりした店であった。象牙のしっとり感、心地よいヒンヤリ感は持つ手にも快感である。この製品の場合は、先端部が比較的角度が付いていて、自分には使いやすい製品である。
ギャラリー 若菜  1,050円  
東京都台東区谷中 7-18-13

D べっ甲  店は上で紹介した象牙製品の店からしばらく歩いたところにあった。べっ甲製品の製造直売店で、製品の展示は多くはないが、店舗内のガラス越しに作業場が見えるようになっている。作業場の二人は親子と想像した。
 遠藤ケイに言わせると、べっ甲は柔らかすぎるとしているが、素材の特性に応じた形状とすればよいわけで、この製品は角柱に近い形状で、手触り、使用感は良好である。また、紹介した製品の中では唯一、先端部が皿状に彫り込んであった。
なお、店頭には長めの白べっ甲の耳かきも置いていたが、値段を聞いたところ1万円ということで、感嘆の声をあげてしまった。
赤塚べっ甲製作所   1,000円
東京都台東区谷中 7-6-7


 【余談】
 なお、お値段お手頃な照明付きの耳かきが昔から知られており、自分もかつては単3電池を使った製品を持っていたが、程なく回転式のスイッチ部分が壊れてしまったた。そのときの感想としては、本体に単3電池を収納することから胴がかなり太く、先端部を繊細にコントロールしにくかった印象があった。
 最近ボタン電池式のスリムなタイプがあることを確認したので、早速調達し、かーさんとお互いにホジホジしようと思ったのであるが、意外なところに障害あった。お互いに目が怪しくなってくると、すばらしく明るいだけでは準備万端とはならないことが判明したのである。【2007】