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刃物あそび
 
  美しい包丁
             


 昔の家庭用の包丁はホオノキの柄の菜切り包丁一本槍で、各家庭にはこれが複数あるのがふつうの風景であった。やがてステンレス系の洋包丁タイプが登場し、洋風の牛刀をアレンジしたいわゆる三徳型の包丁(文化包丁とも)が主流を占めるようになった。これにより今までのうっとうしい錆を追放したことから、ステンレス包丁は大いに歓迎された。 また、このタイプでは刃部の金属が柄部まで一体(本通し) となっていて、さらに柄部を黒色の樹脂を含浸させた積層合板でサンドイッチにしていることから、和包丁の弱点であった柄部の耐久性が一気に高まることとにもなった。
 身近な道具の進化は楽しいもので、さらに近年は柄部を含めてオールステンレスのデザイン性に優れた製品がシェアを伸ばしている。衛生管理上の機能も飛躍的にアップした。
【2008.10】


AQUA17(アクア17)

非常にスマートな印象でうっとりある。刃渡りは3サイズあり、これは17センチのものである。

柄の模様が美しく、板目模様のようである。断面の形状は角の取れた菱形である。

柄の末端部を下から見た形状は上のとおりで、これで安定したグリップが得られる。
 メーカーの説明では「鍛造本割込包丁」としている。刃部は特殊鋼をステンレス鋼でサンドイッチした複合材(武生特殊鋼材株式会社製の高品位ステンレス三層鋼V−700)を使用して鍛造したものとしている。もちろん柄部は溶接である。量産する事業規模の体制ではないため、打ち抜き又は型鍛造の手法には依っていないことから、自ずと手作業による工程が多いと思われる。
 柄のデザインが個性的で、一見すると手になじむのか不安を感じるが、手にすると全く違和感がない。滑り止めを兼ねた波紋状の模様も美しい。
 デザインは大久保 裕生氏で、財団法人大阪デザインセンターのグッドデザイン選定商品(平成20年5月期)となっている。武生(たけふ)の刃物というと鎌のイメージを持っていたが、近年は若い世代がデザインを重視した製品の生産も意識している模様で、結果として伝統的打刃物と斬新な刃物の両方が共存することとなって、このことで却って力強さを感じる。

 この製品は2007年に登場したもので、製品を初めて見たのは同年に都内で「東京えちぜん物語」として、福井県越前市の伝統工芸・物産展が開催されたときである。(2008年も開催)
 この製品はもちろん越前市内の製造元であるタケフナイフビレッジで展示販売しているほか、JR武生駅前の「観光・匠の技案内所」でも展示販売している。(2008年9月)
 越前打物に関して、製品のしおりには次のようにある。
 越前打刃物ものがたり

越前打刃物」は1337年(南北朝時代)京都の刀匠・千代鶴国安が府中(現・福井県越前市)に刀剣製作の水を求め、かたわら近郷の農民のために鎌を作ったことから始まったといわれています。その後、江戸時代には福井藩の保護政策により、株仲間が組織されるなど、販路も全国に及びました。現在は日本古来の火づくりの鍛造技術、手仕上げを守りながら、鎌・刈込み鋏・手包丁などを主製品としています。昭和54年には、刃物産地としては最初の伝統的工芸品の指定を受けています。
タケフナイフビレッジ協同組合
 福井県越前市余川町越前の里前
武生特殊鋼材株式会社
 福井県越前市四郎丸町21-2-1


GLOBAL G−2(グローバルG−2牛刀)
 柄部のドットパターンが印象的で、これがすべり止めになっていてる。非常にスマート、斬新なデザインで、従来の包丁の重苦しいイメージを払拭した感がある。握りの感触も良好である。デザインは工業デザイナーの山田耕民氏で、1990年度グッドデザイン賞を受賞した製品である。

 このシリーズが登場したのは1983である。実は、刃柄一体型のステンレス製包丁の先鞭をつけたのがこの製品である。製品開発のドラマがテレビで取り上げられた経過があり、それによれば、刃部とは別に製造した柄部の接合部に高い強度を確保する難問をやっとクリアして製品化が実現したという。その品質とデザインは海外でも評価が高く、海外のシェフの要望にも応えた結果、プロ仕様もあり、製品のラインアップも豊富で、デパートでズラリと並んだ製品群は壮観である。
吉田金属工業株式会社
 新潟県燕市吉田下中野1447-3


グレステンホームナイフ 819TK
 切った素材がくっつきにくいように穴を空けた包丁はテレビショッピングでしばしば見たような気がするし、均等にくぼみを入れたハム切り包丁もあったような気がするが、一般的な包丁でくぼみを入れた包丁はこれが初めてではないだろうか。これだけ均等に綺麗にくぼみを入れると、結果として美しいデザインになってしまう。
 このシリーズでもやはりステンレス柄の製品が追って発売されているが、柄の形状、すべり止め加工した表面の形状ともにやや無骨な印象で、個人的にはどちらかといえばこちらの方を選ぶ。

 なお、会社は刃物屋さんらしくない名称であるが、包丁の事業のほかにスポーツ事業も手がけていて、グラススキー用具の「グランジャー」の開発者であるほか、ウッドクラフトで知られる北海道津別町などで、このための「グレステンスキー場」を運営しているそうである。
(注)津別町のスキー場は、2007年に廃止された同町内でコクドが経営していた「津別スキー場」とは別物である。
ホンマ科学株式会社
 新潟県十日町市明石町24番
(参考) シェルビー(SHELBY)三徳包丁(小型)
 普及価格の量産品である。刃部はモリブデンバナジウム鋼としている。柄部はグレーの梨地に表面処理されたステンレススチールで、もちろん中空構造である。
 三徳型は普通タイプと小型タイプの2サイズがあって、ホームセンターではいずれも千円を切っていた。実用品、道具としての機能をしっかり満たしていて、使用上の不満は全くない。要は包丁とは適合した一定レベルの鋼材を素材として、適正な熱処理をしてあれば、研ぎ澄まされたプロの切れ味を求めるのでない限り、家庭での使用の基本的な機能に問題はなく、あとは適時研ぎで切れ味を維持すればよいということを実感できる。先の製品に比べればオーソドックスなデザインであるが、実に堅実な製品で、むしろその簡素な仕様に好感が持てる。
株式会社タフコ
 新潟県三条市三竹3丁目1番53号
 なお、ステンレスの一体型の包丁は衛生的で柄部の耐久性にも優れるが、冬場の空調が抑制気味であると、これを手にした場合にひんやりするのはどうしても避けられない。手に対する優しさ、握り心地の点のみを言えば、やはりホオノキの柄に優るものはない。