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刃物あそび
 
    木挽きの実際
             


 既に無形文化財的存在となった木挽き職人、林以一氏の仕事ぶりを公開の場でたまに見ることができる。浦安市で公開実演があって、久しぶりに仕事ぶりを拝見した。お弟子さんも元気そうであった。【2008.2】   


 場所はディズニーランドにも近い千葉県浦安市の東京中央木材市場内である。市売日に合わせて公開実演されていた。木挽きの対象は屋久杉で、お弟子さんと一緒に対面で前挽大鋸により相挽きをする仕事を拝見できた。

木挽き風景

 水平に挽く「すくい挽き」による木挽きである。さらに二人が対面して交互に挽く「相挽き」の風景である。半天を羽織っているのが林以一氏で、手前がお弟子さんである。
 タイミングがずれれば鋸がぶつかることになるが、声を掛け合うことなく、それこそあうんの呼吸でタイミングがずれることは決してない。
 鋸は腕力で挽くのではなく、上半身を前後させて挽く。
 本当は半天、腹掛け、股引、地下足袋スタイルが様になるが、当日は少々寒かったためか、足は防寒靴である。
 前挽大鋸を調整しながらの作業である。目立てと同様に大切なアサリ出し(個々の鋸刃の左右への振り分け)の調整作業風景である。金床の上で両端の尖ったアサリ鎚を使用する。


道具拝見

作業中の周辺には、使用中のもの以外に以下の3枚の前挽大鋸が見られた。所有する鋸のごく一部であろう。それぞれ形状が微妙に違う。右の鋸は運搬時の刃部の保護のための木製のカバーがついている。
使い込んでいる鉄の道具はいい色艶となり、美しい。


 上は普通の目立てヤスリで、断面は薄い菱形である。
 下はちょんがけヤスリで断面は三角形である。ちょんがけは、刃先を鋭い形状とするためのヤスリがけをいう。
 刃先の拡大写真である。少々わかりにくいが、先端が爪のようになっている。